姉作俺向け萌え教材は二次元で三次元でS気質
明石竜
第一話【悲報】俺氏、中間テスト爆死の罰で変態アニヲタ女子大生な姉にヌードモデル強制される
……やばい。姉ちゃんから、絶対猥褻折檻される。今日は家に帰りたくねぇー。
五月下旬のある水曜日。北摂のとある伝統府立進学校、豊中塚高校一年五組の教室にて利川賢祐(としかわ けんすけ)は眺めた途端に青ざめ身震いした。
本日帰りのSHRで今しがた、クラス担任から一学期中間テスト個人成績表が配布されたのだ。
中学の頃はずっと学年上位一割付近だったけど、この高校じゃ平均未満かぁ。まあ俺、高校入ってから勉強怠け気味だったから自業自得だよな。
賢祐は己の不甲斐なさ至らなさをひしひしと痛感する。彼の総合得点学年順位は全八クラス三一六人中、一九五位だった。そんなわけで放課後、夕方六時頃。賢祐は数少ない親友と本屋などに寄り道して別れたあと、独りで重い足取りで、憂鬱な気分で閑静な高級住宅街に佇む自宅への帰り道を歩き進んでいくのだった。
☆
「おかえり賢祐、個人成績表配られた?」
「……うん」
「ほなはよ見せて」
「分かった、分かった」
帰宅後、賢祐は個人成績表をリビングでソファーに腰掛け、夕方アニメを観ながらくつろいでいた姉、聡実(さとみ)にしぶしぶ恐る恐る見せてあげると、
「賢祐、順位低過ぎっ! もっと本気で勉強せな、あかんやないっ!」
案の定、ぷんぷん顔で説教されてしまった。彼の姉は弟思いなのだ。
「姉ちゃん、まだ下に百二十人以上もいるし、そんなに低くはないだろ?」
「賢祐はうち似で体育とかの実技系が苦手な子なんやから、筆記試験くらいはもっともっとええ成績取らなきゃダメッ! さあ、約束通りヌードモデルの罰受けてもらうでー」
「俺、そんな約束した覚えないぞ」
賢祐は焦り顔できっぱりと主張する。
「とぼけたって無駄よ。証拠はちゃぁんと残しとるんやから」
聡実はにやけ顔でそう告げたあと、自分のスマホを賢祐の眼前にかざすと同時に音声データの再生アイコンをタップする。
『賢祐、今度の中間の総合順位、もし真ん中以下やったら、ヌードモデルになってもらうからね。全数が奇数の場合は2で割ったあと小数第1位で五捨六入した値以下よ』
『分かった、分かった。にやけるなよ気持ち悪い。真ん中以下とかそんなへま、俺がするわけ百パーないから期待するだけ無駄だよ』
こんな音声が流れたあと、
「このことよー」
聡実はニカッと微笑みかけてくる。
「……録音、してたのかよ。いつの間に……」
賢祐の顔は引き攣った。彼はあのやり取りをしっかりと覚えていたのだ。
「ふふふ、言い逃れ出来ひんようにこれくらい対策済みよ」
聡実は得意げにウィンクした。彼女は賢祐曰く重度のアニメオタクなド変態だ。とは言え小学校時代まんが部、中学時代美術部、高校時代漫研に所属しサブカル趣味にのめり込みながらも学業はずっと優秀で今春、阪大文学部に現役合格を果たした。そのため賢祐は頭が上がらないのだ。
高校時代までは黒髪ポニテ、丸顔丸眼鏡、一文字眉ぱっちり垂れ目な見た目が地味系文学少女って感じだったけど大学入学を機に、髪型はほんのり茶色染めセミロングふんわりウェーブにプチイメージチェンジした。幼児期からの趣味の絵もかなり上手く、将来の夢は漫画家。他にイラストレーター、声優、ラノベ作家にもなりたいなぁっとも思い描いてるみたい。
「姉ちゃん、中学の時とは〝母集団〟が違うだろ。俺が通ってる高校、勉強出来る子ばかりが集まって来てるんだから、俺の順位が相対的に落ちるのは当たり前だろ」
「見苦しい言い訳ね。うちが賢祐と同じ高校で常に上位十位以内に入ってたってこと、賢祐はよーく知っとるやろ? それに、中学の頃は賢祐とそんなに大きくは成績変わらんかった伸英(のぶえ)ちゃんだって、今回は賢祐よりずっとええ点取ってたから学年順位もけっこう上位やろ?」
焦り顔で弱々しく反論する賢祐に、聡実は得意げな表情で反論し返す。
「確かに。総合十六位だったし。でも伸英ちゃんも、姉ちゃんと同じで俺とは地頭が違うから、難易度が中学の時とはわけが違う高校のテストでは、大きく差がついたのは仕方ないことだと思うんだけど……」
賢祐は迷惑そうに言い訳した。
伸英ちゃん、フルネームは延山(のぶやま)伸英。賢祐のおウチのすぐ近所、三軒隣に住む同い年の幼馴染だ。学校も幼小中高ずっと同じ。お互い同じ高校を選んだのは、家から一番近いそれなりの進学校だからというのが最たる理由だった。
「伸英ちゃんは周りが勉強出来る子ばかりで授業の進度も速いから、落ちこぼれないように頑張らなきゃ。賢祐は進学校だから順位が落ちるのは仕方ないこと。その考え方の違いが今回の結果を招いたんよ。恥を知りなさい。さあ賢祐、うちのお部屋へカモーン♪」
「……俺、今からちょっとコンビニ行ってくる」
「待ちなさいっ! そりゃぁっ!」
「うおわっ!」
「束縛成功♪ 賢祐動き遅過ぎ」
賢祐は急いで逃げようとしたが、聡実に背後からあっさり捕まえられ吊り上げられてしまった。
「聡実、やり過ぎはあかんよー」
母は爽やか笑顔でこう忠告して、向かいのキッチンにて引き続き夕飯作りに勤しむ。
「はーい♪ 賢祐、優しく気持ち良くしてあげるから嫌がらないで」
聡実は引き続きにやけ顔だった。
「母さぁ~ん、姉ちゃんの変態行為を阻止してくれよーっ!」
賢祐の懇願も空しく、彼はお姫様抱っこされた状態で聡実のお部屋に強制的に連れて行かれてしまったのだった。
聡実のお部屋はフローリング仕様で広さは七帖。窓際の学習机の上は学用品、おしゃれなデザインのノートパソコンが勉強しやすいようきれいに整理整頓され几帳面さが窺えた。机棚にはビーズアクセサリーやオルゴール。シロクマ、ウサギ、リス、ネコ、インコといった可愛らしい動物のぬいぐるみもたくさん飾られ、普通の女の子らしいお部屋だな。と思われるだろう。だが、机以外の場所に目を移すとアニヲタ趣味を窺わせるグッズが所狭しと。
本棚には計五百冊を越える少年・少女・青年・成年コミックやラノベ、アニメ・マンガ・声優雑誌に加え、18禁含むショタ・男の娘・百合同人誌まで。DVD/ブルーレイレコーダーと48V型液晶テレビも所有している。アニソンCDやアニメブルーレイも多数所有し、専用の収納ケースに並べられていた。エロゲーも数本含まれている。
クローゼットの中には普段着の他、猫耳メイド・巫女・魔法少女・幼稚園児・ナース・バニーガール・チアガールなどのコスプレ衣装やゴスロリ衣装も揃えられ、本棚上や収納ケース上には萌え系ガチャポンやフィギュア、ぬいぐるみがバリエーション豊富に飾られてある。さらに壁全面と天井を覆うように人気女性声優や、萌え系アニメのポスターが多数貼られてあるのだ。女性ながら、男性キャラがメインの腐向けアニメはさほど好きではないらしい。ロリ美少女キャラの抱き枕まであった。今はベッド横に立てられていた。
「賢祐、ゴヤちゃんの『裸のマハ』のポーズとりなさい。さあ服全部脱げっ!」
「ぐはぁっ!」
賢祐は送り吊り落としのような形で一段ベッド上に叩き付けられたのち、聡実に馬乗りされる。聡実は相撲、柔道、プロレスの真似事にも嗜んでいて、賢祐は未だ力負けしてしまうのだ。背丈は一六五センチくらいの彼より五センチほど低いのだが……。
「賢祐のお○ん○んの上、ズボン越しでもめっちゃ座り心地ええ♪」
聡実の穿いているベージュのプリーツスカートが捲れて、露になった薄ピンクの花柄ショーツが賢祐の目にばっちり映ったが、苦しいことと普段から見慣れていることもあって賢祐はムラムラとは全くしなかった。
逆にもっか恍惚の笑みな聡実がしているようだった。
「重いぞ姉ちゃん、また太ったな。体揺らすなよ。姉ちゃんが俺に命じてること、相当な変態行為だってこと自覚してるのか?」
「しっかりしてるわ。高学歴層は皆変態なのよ」
「皆じゃなくて一部には変態もいるの間違いだろ」
「そんな細かいことは気にせずに。さあ、早く全裸に」
「いてててぇぇぇーっ! やるって、やるって」
腕挫十字固を決められ抵抗出来ず、賢祐は解放されたあとしぶしぶ靴下、夏用制服半袖ポロシャツ、Tシャツ、夏用学ランズボン、トランクスの順に脱いで全裸になって聡実のふかふかベッドに横たわり、両腕を輪っかの形にして後頭部に添えたわけだ。
「姉ちゃんっ! 俺のトランクスのにおい嗅ぐなよ」
賢祐の表情が引き攣る。聡実は彼の脱ぎたてトランクスを両手で持って鼻に近づけ、にんまり顔でくんくん嗅いでいたのだ。
「ごめん、ごめん。賢祐の一日分の汗と少量のおしっこのしみ込んだ香りが合わさってめっちゃええ匂いやったわ~♪ お詫びにあとでうちの脱ぎたてショーツの匂い、嗅がせてあげるよ」
「そんな物凄く汚いの、見る気にすらならないから」
「賢祐ったら、相変わらず見栄っ張りね。その姿勢でオーケイよ。さてと、気合入れて賢祐のヌード写生しちゃうよ」
ショーツをわざと見せるように床に腰掛けた聡実は4B黒鉛筆を右手に持つと、にやけ顔で楽しそうにクロッキー帳に描写し始める。
「早く描き終えてくれよっ!」
「まあ焦らずに。賢祐、相変わらず幼い体つきね。あそこの毛もまだ薄いし、中一としてもまだじゅうぶん通用しそう。うちはマッチョなのよりこの方が好みよ」
「おっ、おい。触るなよ」
男の象徴もばっちり観察された挙句、それの先っぽ近くを指で摘ままれてぷにぷにされてしまった。
「ごめん、ごめん。気持ち良かったでしょ?」
「全然気持ち良くない」
「見栄張っちゃって。しっかり反応して大きく硬くなっちゃってるくせに。我慢出来なかったら遠慮せずに出しちゃっていいよ。ティッシュも用意しておくから」
聡実はくすっと笑う。
「どうでもいいから描くなら早く描けってっ!」
賢祐は恥ずかしさと共にイライラ感も高まる。頬もほんのり赤らんでしまった。
それから三分ほどのち、
「姉ちゃん、まだか?」
「まだまだよ」
「姉ちゃんにずっと見られてめっちゃ恥ずかしいんだけど……」
「テストで結果出せなかったんだから、これくらいの辱めは当然の報いよ。悔しかったら期末でうちが納得出来るええ成績取って来なさい」
「姉ちゃん本当に気持ち悪い」
「うちにとってはそれ褒め言葉やで♪ えへへっ」
「……お巡りさんにこの変質者逮捕してもらいたいな」
こんな会話を交わした直後、ピンポーン♪ と玄関チャイムが鳴り響く。
「伸英ちゃんかな? 賢祐、この格好のままで待っててね」
聡実はそう言い残してこの部屋を出て、扉開けっ放しのまま玄関先へ向かっていった。
「こんばんはー」
訪れて来たのは、聡実の予想通り伸英だった。面長ぱっちり垂れ目、細長八の字眉。ほんのり栗色な髪を小さく巻いて、フルーツのチャーム付きシュシュで二つ結びにしているのがいつものヘアスタイル。背丈は一五五センチくらいで、おっとりのんびりとした雰囲気の子なのだ。学校がある日は毎朝八時頃に賢祐を迎えに来てくれる。つまり登校もいっしょにしてくれているのだ。さらに芸術選択で共に書道を選んだのが功を奏したか、クラスも今は同じである。
「こんばんは伸英ちゃん、困った顔してどうかしたのかな?」
「あのっ、聡実ちゃん。賢祐くんに酷い成績を取らせてしまってごめんなさい。私の教え方が悪かったみたいで」
「伸英ちゃんは全然気にせんでええんよ。テスト前でもメリハリつけんとラノベやマンガやアニメ雑誌ばっかり読んで、深夜アニメの録画もがっつり観て勉強サボった賢祐が悪いんやから」
自責の念に駆られていた伸英を、聡実は爽やか笑顔で慰めてあげる。
伸英はとても心優しい子なのだ。
……姉ちゃん、別にそういうこと伝えなくていいだろ。
二人の会話が自然に耳に飛び込んで来た賢祐は、指示通り全裸のままでいたものの、姿勢は体育座りに変えていた。
「あの、聡実ちゃん、賢祐くんに厳しく折檻するのはやめてあげて下さいね」
「気が変わって今回は折檻はしないことにしたよ。それなりにレベルの高い高校での最初の定期テストだし、いきなり好成績求めるのはかわいそうだと思ったから。代わりに優しく慰めてあげたよ」
「それはよかったです。ではまた」
「ばいばい伸英ちゃん」
そのあとこんな会話も聞こえて来て、
嘘つくなよ。プロレス技まで掛けて来てめちゃくちゃ折檻してるじゃないか。
賢祐は全裸体育座りのまま呆れ気味に心の中で突っ込んでおいた。
「お待たせーっ♪ 全裸で待機しててくれてありがとう」
聡実はそれからすぐに戻って来てくれた。
「姉ちゃん、早く仕上げて」
賢祐は大人しくさっきのポーズに戻る。
さらに五分ほどが経って、
「はい、描き終わったからもう服着ていいよ。ご協力ありがとう♪ これ、賢祐にプレゼント」
聡実は完成させたイラストを見せ付けてくる。
「いらねー。期末は、本気で真面目に勉強しないと」
賢祐は悲しげな気分で着衣した。
「賢祐、今度の期末でも総合順位百位以内に入れてへんかったら、M字開脚ポーズあへ顔でのヌードモデルと、うちの目の前で公開オ○ニー、うちのビキニ着て写真モデル、剃るとこ少ないんは残念やけどお○ん○ん周りの剃毛プレイと、ローションプレイ、浣腸プレイ、緊縛プレイ、足舐めプレイ。生理用品とうちのブラとショーツ買いに行かせるのもいいなぁ。それから、うちと毎日いっしょにお風呂に入ってもらって、USJでデートしてもらうでー」
聡実はこう脅しながら、えへえへっと笑う。
「どれも絶対に、やらねえから。一部犯罪だろ。さりげなく基準上げるなよ。姉ちゃんは大学生になってからますます変態化してるぞ」
賢祐は顔をやや引き攣らせ、若干怯えてしまう。
「うちもね、ほんまはかわいい弟を陵辱なんてしたくないんよ。せやから、うちが賢祐のために、丹精込めて最適な学習教材を作ってあげたわよ」
聡実はにこにこ顔でそう伝え、学習机の引出を開けた。
「じゃ~ん♪ うちお手製の萌えキャライラスト付き高校生の家庭学習用テキスト、芸術スポーツ系以外のどんな大学にも対応出来る五教科全部揃えとるで」
取り出すと得意げにかざしてくる。国、英、数、社、理。五教科分のテキスト、それぞれ一冊ずつの計五冊。どの教科もサイズは同じでB5用紙くらい。厚みは三センチほどだった。
「確かに萌え教材だな」
賢祐は不覚にも興味を示してしまった。全教科、表紙がかわいらしい女の子達のアニメ風イラストで彩られていたのだ。
「表紙に描かれてるこの五人の女の子達が学習内容を詳しく解説してくれる仕様になってるの。セリフ考えたんはうちやけどね。キャラ名も教科に関する用語を元に命名したよ。一部3Dイラストになっとるで。賢祐が一年生の今からこれを使って授業の予習復習を日々コツコツ真面目にこなせば、三年生になる頃には阪大どころか東大・京大にだって通用する学力が身に付いちゃうよ」
聡実は自信満々な様子でやや興奮気味に伝えてくる。
「かわいい女の子の絵が描かれてる教材使ったくらいで成績上がったら苦労しないって」
「まあまあ賢祐、騙されたと思って使ってみぃ」
「一応、中だけは確認してやる」
賢祐は教材を受け取ると、この部屋から出て行き自室へ。聡実のお部屋の向かいで、同じ広さ。学習机の上は教科書・参考書類やノート、筆記用具、プリント類、携帯型ゲーム機&対応ソフトなどが乱雑に散りばめられていて、勉強する環境には相応しくない有様となっている。けれども机棚に置かれた十数体の萌えガチャポンはわりときれいに飾られてあった。彼も聡実とよく似た系統のアニメグッズを部屋に飾っているのだ。聡実にはインパクトで遥かに劣るものの。この手のアニメに小四の頃から嵌っていた聡実に影響されて、当初「女の子が見るアニメだから」と毛嫌いしていた賢祐も小六の夏休みには嵌るようになってしまったわけである。
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