♮(ナチュラル)
@setuna
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30年後の君へ
僕は今大学三年生だ。今のあなたは50代だね。いったいどんな未来になっている?僕はこのタイムカプセルを使ってあなたに聞きたいことがあるんだ。
科学は今の生活にとって何ですか。あなたは今の社会に満足していますか。
留学先の英語の試験で僕はとても答えに迷う質問があったんだ。
科学は日常に対して悪い影響を与えている。科学は我々にとって必要ですか?
随分と酷い言いぐさの質問だと僕は思った。科学を最初から害あるものと認識した問い手が態々学生に対して英語の文章で意見を語れというのだから…。僕は自分の意見なんて書けなかった。科学は確かに人間の本質を侵食している、けれど日常にとっては不可欠なものだとか薄っぺらな難しい言葉を並べた。僕にはどちらの言葉も他人の評論を読んで得た言葉だ。僕にはそれを語る資格などない。僕はあまりに自分の意見が少ない。知識が乏しすぎる。必要不可欠かいらないものかなんて決断できるわけがないんだ。
いつだったか、バスの中で長距離移動に退屈していた時に、退屈しのぎにこんな質問をされたんだ。
宗教はいらないんじゃないか、君はどう思うんだ。
僕はこう答えた。
宗教は僕個人もそこまで執着していない。だけど宗教は社会にとってはいるんだ。古来宗教ってのは伝統であり規範であり集団を型作る要素であったんだ。宗教を人から外してごらん。人は自由を得る。自由は確かに素晴らしい。でも危険を孕んでいる。それは人の行動範囲を全く縛っていないんだ。人が集団性を失うということだ。集団性を失うということは、人は拡散を選ぶ。するとどうなると思う。人間はあまりに不安定になる。だから宗教は外してはいけない。確かに、宗教は間違いを教えをも含んでいるかもしれない。だけど考えてごらん。宗教ってのは人間が作ったものさ。人間が今までの過去の経験と知識の蓄えからつくったものだ。間違いがあって当然だ。宗教ってのは母体じゃないんだ。土壌なんだ…
僕はこれを言った後、これは科学にだって言えるところがあるんじゃないかと思った。科学は未だできて幼い。将来科学がこの立場をとってかわるようになるだろうが、一体どんな風に未来の人は考えているんだろうか。
僕はその答えを聞くためにこれを手紙に託した。君からの快い解答を待っている。
「…長ったらしいくだらねぇ手紙よこしてんじゃねぇよ馬鹿野郎が」
そう言って彼は一枚の手紙を握りつぶした。彼は過去からの問いに対して即座に答えられなかった。
「くそなんで昔の俺に諭されてやがるんだ俺は」
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