ある大学教授の半生
@SHINKOU
第1話 序 文
私は、恩師ともいうべき久保田先生のことをただ先生と呼ぶ。それは今までつねにそのように呼んできたからであって、他意はない。
先生が癌で亡くなって、あれこれ二十年の歳月が流れた。享年54歳であった。先生は学問の世界では切れ者で通ってきた。「カミソリの久保田」と言われてきた。
先生にはやり残した多くの仕事が残ったままであった.仏教説話の世界においては、最先端の研究をしていた。また、秘蔵っ子のようにかわいがっていた弟子もいた.秘蔵っ子ではないが、私も弟子の一人であった。私にとって、先生の死は、心に大きな穴があいたようなものであった。
秘蔵っ子のようにかわいがられていた弟子は、美佐子さんと言った。卒業生の多くは国立大学や東京の有名私大へ進学した。しかし、美佐子さんは違った。地元の短大の国文科へ進んだ。その短大の国文科で教えていたのが先生であった。美佐子さんは短大を卒業すると、市内の女子大学の文学部国文科の3年次に編入した。
その後、美佐子さんは東京にある大学の修士課程に進んだ。今は博士課程に席を置いている。
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