女神の影

 狭霧が覚えている母、須勢理は、雲宮の武人たちが囁く噂の中の人とは少し違っていた。


 彼らがいうように、朝から晩までいつも大弓を担いでいたわけではなかったし、軍馬にまたがっていたわけでもない。


 ときどき父について戦に出かけると何か月も王宮を留守にしたが、出雲にいるあいだは、母はいつも狭霧のそばにいてくれた。まるで、離れていたあいだの埋め合わせをするように――いや、それ以上だった。


「大好きよ、狭霧」


 一日に何度も声に出してそういって、力強く抱きしめてもくれた。


 美しい染めがほどこされた衣装に身をつつんで、何人もの侍女をひきつれて王宮を行き来するさまは、兵たちがいうような女将軍というよりは王妃だった。


 でも、たしかに須勢理はほかの姫たちとはすこし違っていて、女ながらに武人めいた雰囲気をまとっていた。その一番の理由は、腰に提げた剣だったろう。王妃の姿をしているときでも、須勢理は剣を片時も離さない人だった。宝玉でいろどられた美しい剣を、自分の身体の一部のように馴染ませて王宮を行き来する姿は凛々しくて、狭霧はよく真似をした。


 手ごろな大きさの棒を探してくると、剣のようなかたちに削ってもらって、帯に挿して……。ある日を境にやめてしまったけれど。


 あるとき、水鏡に映して自分の姿を見たら、ちっともかっこよくなかったのだ。


 それどころか、おもちゃの棒を腰に挿している姿はえらく間抜けで。


 恥ずかしくてたまらなくなったのだ。






 数日おきには兵舎へいくというのが、狭霧の決まりだった。


 兵舎の奥には弓の練習ができるひらけた場所があって、そこで弓を引くためだ。


 何年も通っているので手馴れてはいたし、弓を構える姿もそれなりにさまになった。


 子供用の小さな弓に練習用の矢をつがえて引き絞り、遠くに掲げられる木板の的を狙うと、矢羽から指を離す。


 ピュン。耳元で弦が風を削って矢を弾き出し、矢は風を切って的へ。そして……。ガ。やじりは遠くで木板に突き刺さった。でも、ど真ん中ではなくて、かろうじて的に当たったというべき端っこだった。


「はあ」


 狭霧はため息をついて弓を下ろした。


 誰もが使える稽古場なので、向こうでは年若い少年兵が狭霧と同じように弓をつがえていたが、彼が扱うのは大人用の大弓だ。それはよっぽど力強く唸って、的に当たるとバン、と木板を粉々にしてしまう。


 そっちに目をやっては、狭霧はまたふうと息をした。


 思わず、手にする小さな弓を見るが……。


 幼い頃から、狭霧は母についてここに出入りしていたが、須勢理は男が使うのと同じ大弓を構えて、次から次へと矢を射ていた。でも実際にやってみると、それがどれだけ凄いことなのかが身に染みる。弓を引くには、かなりの力がいるのだ。子供用の小さな弓ですら、狭霧の力では扱いきれないほどに。


 ふと、後ろから近づいてくる気配があった。


「狭霧姫、背が丸まっていますよ。弓は引くのは力ではなく、姿勢ですよ」


 年の頃三十過ぎの武人だ。


 弓の名手で、若い武人たちに弓の引き方を教える役目についているので、狭霧も彼には世話になっている。狭霧はつい目を逸らして、いい返してしまった。


「力だって要るわよ。姿勢だけ良くたって、うまくいくわけがないわ」


「でも、あなたの母上は、それは見事に弓を操っておられましたよ。あの細腕で」


 その武人の名は、箕淡みたみといった。箕淡は何度も須勢理と戦を共にしたとかで、狭霧と顔を合わせるたびに須勢理の話をした。


「戦の国、出雲の弓自慢がたばになってかかっても、須勢理様の腕前にはかないませんでした。武王のそばで軍馬を駆り、馬上で大弓を構えて……」


 須勢理はもはや伝説の人だったのだ。


 箕淡が須勢理の話を始めると、何人もの武人たちが話の輪に入ってくる。


「須勢理様は刃の女神そのものでした。荒くれた戦場で女ながらに敵を蹴散らして、そのうえ我々に微笑んで、導いてくださるのです。あの美しい笑顔は、今でも思い出します」


「須勢理様が微笑んでくださると、力がみなぎるんです。出雲が負けるはずがないと。狭霧様、ここにいる連中はみんな、あなたの母上に命を預けた覚えがある者ばかりなんですよ」


 武人たちは、いとしい戦友を懐かしむように昔を語った。


 狭霧にとっても須勢理は憧れの女性だ。だから、母の武勇伝を聞かせてと武人たちにねだったこともよくあった。


 でも。ここしばらくはそれを耳にするのが苦しい。


 狭霧は弓を抱える腕に力を込めて、強張った笑みを浮かべてしまった。


「今日は調子が良くないみたい。……わたし、今日はこれで失礼するわ」


 矢筒にはまだ何本も矢が残っていたのに、急にここを去ろうといい出した狭霧を覗き込んで、武人たちは不思議がった。


 苦笑した箕淡は、うなずいて手を差し伸べてくる。


「では、あなたの弓を片づけておきましょう」


「いいのよ。自分でやるから」


 狭霧は、すぐにでも武人たちの輪から遠ざかってしまいたかったのだ。矢筒から、残った矢を勢いよく引き上げると、ちょうどやじりが指先に当たってしまった。


「った……!」


 思わず指を口元へ。くわえた指先からは血の味が広がる。鋭く尖ったやじりの先端で指を切ってしまったのだ。


「これはこれは」


 箕淡がぷっと吹き出した。


「さすがは須勢理様譲りの弓の名手だ。ご自分の指まで射てしまうなんて」


 きっと軽い冗談だったのだろうが……たちまち狭霧の頭には、かあっと血がのぼってしまう。


 集っていた武人たちも吹き出して、そこには豪快な笑いが生まれる。でも……。


 恥ずかしさと悔しさと苛立ちで、顔を赤らめた狭霧はついにそこを逃げ出してしまった。


(どうせわたしは、弓だってろくに引けないわよ)


 目が潤んだのを隠すようにがむしゃらに駆けたので、狭霧には背後を気にする余裕もない。兵舎の陰を選んで駆け抜けながら、ふいに狭霧の頭には、彼らが話していた須勢理の姿が思い浮かんだ。


『荒くれた戦場で女ながらに敵を蹴散らして、そのうえ我々を振り返って微笑んでくださるのです』


 兵舎の入り口あたりまで戻って、人影のない日陰を見つけると、狭霧はそこにしゃがみ込んでしまった。


(どうせ。わたしは振り返りもできないわよ。……逃げるだけよ)


 溢れた涙をごしごしと腕でこすって乾かすと、深呼吸をした。


 手には抱えたままの弓矢。冷ややかな武具を抱きなおすと、狭霧は懸命に腰を上げた。


(早く返して、ここを出よう)


 向かう先は、武器庫だ。


 




 武器庫には、剣や矛や弓矢などの武具がところ狭しと積み上げられていた。戦の国出雲一の規模を誇るだけあって、館がまるごと武器で埋まっている。


 そこには見慣れた顔があった。安曇だ。


「ああ、狭霧。来ていたんですか」


 安曇は男を二人ほど引き連れていて、武具の種類や数をたしかめていた。男たちの袖から伸びる腕にいくつもの火傷のあとが見えるのからすると、彼らは武具をつくる集落から呼び出された匠だろう。やじりや剣をつくるたたら師は、炎を従えるのだから。


「狭霧? どうしたんです」


 安曇は眉根を寄せると、二言三言匠たちにいい置いて、狭霧のそばへやって来た。


 ゆっくりとした手つきで狭霧の腕から弓矢をすくいあげてしまうと、彼は丁寧に表情を覗き込んでくる。


「なにかありました? ……涙が」


 泣き顔は隠したと思っていたのに……。安曇には通じなかった。


 父代わりの安曇から優しく心配されると、狭霧にはまた涙がこみ上げる。思わず、安曇の大きな胸に抱きついてしまった。


 しばらくして、狭霧の唇から出ていったのはこんな言葉だった。


「わたし、輝矢の嫡姫むかひめになりたい」


 安曇は素っ頓狂な声をあげた。


「……えっ」


 狭霧は安曇にしがみついたままで、訴えるように顔を見上げた。


「ねえ、いいでしょう? 誰に頼めばいいの? とうさまにお願いすればいい?」


「いや、あのの。その……。なにをばかな……いや!」


 安曇は見るからに動揺している。優しい丸顔は強張り、手つきはぎくしゃくとして――。


「よく考えなさい! あなたは大国主の娘で、輝矢かぐや様は伊邪那いさなの……敵国の王子なのですよ?」


 声を上ずらせながら安曇は説得をこころみるが、狭霧も負けなかった。


「『血の色は無用』っていうのが出雲の掟でしょう? 輝矢が伊邪那の子だって、出雲のために力を尽くせば、出雲の男って認めてもらえるでしょう? わたしは牢屋に嫁ぐことになったっていいのよ、相手が輝矢なら」


 狭霧の声も高ぶっていき、細い指はぎっちりと安曇の衣を握り締める。狭霧も必死だったのだ。


「お願い! わたしがとうさまの娘だって、どうせ意味なんかないでしょう? 出雲では血筋なんか、なんの意味も持たないんだから」


「そんな……狭霧。落ち着いて。あのですね、なんていえばいいのか。……ええと」


 安曇は懸命に言葉を探していたが……。安曇が狭霧のための言葉を見つける前に、武器庫を覗き込んだ少年がいた。


 しばらく狭霧と安曇のやり取りを盗み見ていたようで、いい合いの続きを待っているのか、戸口の木枠に半身を預けた彼は、じっと中の二人を見つめている。いや、少年が見つめているのは狭霧一人だけだ。その目は、やたらと冷ややかだった。


 視線の鋭さが痛くて、狭霧はそれに気づく。


 振り向くと……戸口に立っていた少年には見覚えがあった。


 笹の葉先に似た鋭い目つきが印象的な、年の頃十七、十八という少年。高比古たかひこだった。


 彼が着ているものは、かなり上等だ。


 衣も袴も汚れ一つない白色をしていて、腰帯は縞模様が織り込まれた綾布。筒袖を留める手纒たまきにも、袴を留める足結あゆいの紐にも玉飾りがついていて、腰に佩く剣の鞘は金色に磨かれていた。


 彼が身にまとうのは、大国主や彦名に準ずる位のものに許される貴人の服だ。大国主の側近である安曇や……異国の王子、輝矢と同じ部類の。


 狭霧はむっと顔をしかめた。


(海賊のくせに。……輝矢と同じなんて)


 狭霧は、つい喧嘩腰になってしまった。なにしろ、狭霧を見る彼の目つきがひどいのだ。蔑まれていると感じるほどに、彼は鋭く狭霧を睨んでいた。


 目が合ったせいか。高比古は薄い唇を小さく開いて、すうと息を吸った。


 狭霧と交わしたはじめての言葉は、かなり険悪なものだった。


「わからないな。なんであんたみたいな姫を、大国主がかわいがってるんだろうな」


 そのうえ彼は冷笑までする。彼は、狭霧をぼろくそに馬鹿にする眼差しを向けた。


「思うとおりに伊邪那の王子と添い遂げればいいさ。それがどれだけ馬鹿ばかしいことかあんたが自分で気づくまで、何年でも。……そうしろよ。誰もあんたのことなんか気にしない」


 狭霧の目から落ちていた涙は、その一瞬で乾いた。人を見下げるようないい草に激昂して、狭霧に満ちるものは、戸惑いから憤りに変わってしまった。


「なんなのよ、あなた! 無礼ね!」


 狭霧が顔を真っ赤にして怒鳴ると、高比古はふんと鼻で笑う。それは明らかに嘲笑だ。


「無礼? 出雲で血筋は関係ないといいつつ、自分は身分が高いと驕るのか? 出雲にあるまじき高慢な姫だな。格好悪いぞ」


 その刹那……狭霧の頭の中でなにかが弾けた。火を噴く山のような、崖っぷちに叩きつけられた荒波のような。


 むっかあーーー!


 狭霧は安曇の胸の中から飛び出ると、高比古の目の前に立ちそびえた。


「話したこともないくせに知った口をきいて……! あなたにどれだけ力があったって、海賊なんかが出雲の王宮を偉そうに歩くのは我慢ならないわ。みんなそう噂してるんだから!」


 だが、高比古のほうが一枚も二枚も上手だった。


「それで? ほかにいいたいことは?」


 しらけた冷笑を浮かべて、彼は狭霧が力の限り暴れる姿を面白がる。


(この……!)


 狭霧の中を、ありとあらゆる暴言が駆け巡っていた。


 まるでいい足りないし、できる限りの罵声を浴びせてやりたいが、きっというだけ無駄だ。狭霧がどれだけひどい言葉を投げつけようが、高比古はいまのようにきっと聞き流すし、むしろ子供扱いして面白がるだけだ。


「……大っ嫌い!」


 あらん限りの感情をたった一言に込めると、狭霧は足早に高比古のそばを通り過ぎて、武器庫の外を目指した。


「あの、狭霧! ……高比古! おまえは……!」


 背後では、安曇が高比古に説教でもはじめそうに声を荒げたが、狭霧にはいまも振り返る余裕などない。


 空回りしてしまいそうな足を動かして、ひたすら駆ける。


 何棟もの武器庫が建つ庭を突っ切って、兵舎の門を出て、奥宮へ続く大路を逸れると、林の中へ駆け込んで……。


 緑の中をめちゃめちゃに走って、誰もいない場所を探した。ぼろぼろと涙がこみ上げて、流れ落ちて止まらなかった。


 木立の奥まで駆け込むと、細い幹を背にして、大路を行き交う人々の目から自分の姿を隠す。


 ひどい態度をとったのは向こうのほうだと疑わなかったから、高比古の言葉が悔しいわけではなかった。勝ちはしなかったとしても、いい負けた気はなかったから。


 大声を上げて泣き喚きたいのは、高比古のひどい言葉のせいではなかった。


 彼の言葉は、思い切り泣きたくてたまらない理由を突ついて呼び覚ましただけで、それはもともと、狭霧の中にあったのだ。……それがまた悔しい。


 唇を噛んで顎を引くと、ひっくひっくと嗚咽をこぼした。


(どうしてわたしは、とうさまとかあさまの娘なのよ。名前ばっかりで、超えなきゃならないものばっかり大きくて。……わたしなんか、武王にだって、武人にだって、王妃にだってなれるような子じゃないのに)


 春が来たばかりの空は薄青く澄み、陽射しは白くまばゆいが。風はまだ冷たい。


 ざ、ざ……。木立の狭間をすり抜ける冷ややかな風は、葉ずれの音をかき起こす。


 自然の騒音にうずもれるようにして、狭霧の背はずるずると梢に沿って滑り落ちていき、いつか脚はぺたんと地べたについてしまった。それから……狭霧は、小刻みに肩を震わせた。


「う……うっ……」


 出雲の西方の王都、杵築の雲宮。壮大な王宮の端で、狭霧はすすり泣いた。


 武人も、侍女も、下男も……気が遠くなるほど大勢の人が働くこの宮は、狭霧には大きすぎた。それから、歴代最高の武王として名高い父、大国主も。伝説の女神として人々に語られる母、須勢理の存在も。


 いまの狭霧には遠すぎた。


 


 


 カタカタ……。


 冷たい春風が輝矢の館の木戸を叩く物音に、男の声が混じった。


「輝矢様、安曇です」


 わずかなすき間ができるだけで、春風はビョオッと勢いよく輝矢の館に入り込んでうねり、脇月や火皿台などの調度類をカタカタと揺らす。


 そのとき輝矢は窓辺であぐらをかいていて、木窓から差し込む淡い光を頼りに漢籍を読んでいた。


 輝矢に世の中のことを教えるよう命じられた聖たちが、決まった時間に訪れはするが、それ以外にその木戸が開くことはめったにない。あるとき突然、狭霧が疾風のように忍び込んでくる以外は。


 安曇が一人で自分を訪ねてくることなど想像もつかなかったので、輝矢は漢籍から目を上げると、二重の目をひらいて丸くした。でも、目を丸くしたのは安曇も同じだった。安曇は狭い館を一通り見回すと、えらく気の抜けたいい方で謝った。


「あれ? ……あ、失礼」


 輝矢はすぐにわかった。安曇がなにをしにここへきて、なにに落胆したのか。


「狭霧なら来ていませんよ。狭霧がなにか?」


 鈴の音に似た穏やかな声で輝矢が尋ねると、安曇は照れ臭そうにこめかみを掻く。


「姿が見えないんです。さっき兵舎で、若い策士といい争ってしょげていたんですが……。いえ、こちらの話です」


 安曇は丁寧に頭を下げて勘違いを詫びると、ゆっくりと木戸を閉じていった。


 ガタッ、ギ、ギッ! 頑丈な木戸は閉まり、春風が吹きつける音すら遠ざけるほど強固に、館は再び出口を閉ざされ、輝矢は外の世界から隔てられてしまった。


 読みかけの漢籍に目を戻す気になれずに、輝矢は閉じた木戸を見つめてぼんやりとした。


(若い策士って……)


 策士というのは、策略家だ。戦についていって軍が勝利をおさめられるように智恵を働かせたり、戦がらみの神事をとりまとめたりする者のことだが、とくに出雲では、霊威をもつ巫覡の長として戦に赴く人物を指した。


 政とともに神事を司るのは、出雲東方の王都に住む王、彦名を筆頭にする表の王家と呼ばれる意宇の館衆だが、策士の位は館衆の中でも一番上のはずだ。それほどの位をもつ「若い」策士とは……。


(高比古か)


 なにかにつけて囁かれるその名と、時おり耳にした噂話が、輝矢の中でじわじわと繋がった。


 狭霧がいい争ったという相手は、年の若さも生い立ちの悪さもものともせずに、身に備える才能だけを力として彦名の後継となったという少年なのだろう。


 漢籍を支える指に力がこもって、わずかに震えた。それから、息苦しくて仕方なくなった。それは、どこかで狭霧が泣いているような気がしてたまらなかったせいだ。それなのに――。


(どうして。狭霧、ここへ来なかったの)


 狭霧が一番の笑みをこぼすのも、泣きじゃくるのも、それはどれも輝矢のそばのはずだった。


 そしてそれは輝矢にとってはたった一つの光で、誇りだった。人質として暗い館に閉じ込められているという事実を静かに受け入れたり、時には忘れられるほどに。


 木壁に備わった突き上げ式の窓は大きくつくられていたが、そこには、格子が何本も打ち付けられている。せいぜい風が通り抜ける程度で隙間は狭く、頭も通らないほどだ。


 固く閉まった木戸は、風すら通さない。安曇が去ったいま、小さな館は静寂に満ちていた。



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