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『キーン コーン カーン コーン』


6時間目の数学の授業。前回、期末テストとあって今日は返却日。授業前の教室の雰囲気は必然的に重くなり、口数も減っていった。そのお通夜モードの沈黙を打ち破るかのように突然、扉が開き、先生が入ってきた。

授業開始早々に名前が読み上げられていく。呼ばれた生徒は皆、足に枷をはめているかのように足取りが重かった。そしてその後、喜ぶ者や悲しむ者が次々と続出し、次第に静まり返った教室はまるで虫の音のようにザワついていった。


生徒の半数が行き渡ったころに自分の名前が呼ばれ、皆と同じく、足枷をはめたようにノロノロと先生のほうへ向かった。

テスト用紙が渡された後、先生に「お前は今回、平均より低かった。次は頑張れ」

と何というか愛想笑いのような顔でテンプレのような言葉をかけられた。


でも仕方ないだろうな。この人は仕事でやっているんだ。たぶん本気で言ってるんじゃないだろうな。本当のところは上から評価されたいだけなんだろうな。


席について机の上にテスト用紙を投げ、退屈な授業から目をそらすように窓に映る空を見上げた。


何でこんなことをやってるんだろ?


おそらく大半の人の勉強に対する答えは一緒だろう?皆、口を揃えて『将来のため』と答える。いくら十人十色とはいえ、同じ環境にいれば考え方も似てくる。

でもほとんどの人は勉強とは無縁の仕事に就いている。なんだ、全然意味がないじゃん。

それでも敢えて『勉強』に意味をつけるなら『目的のない子供に目的を持たせる』ことだと定義する。目的を持たし、その目的に向かって何をすべきかを考え、行動に移す。たとえば、丸暗記や一夜漬け、勉強に対する方法だってひとつじゃない。人にはその人に合った方法があってその方法が将来に繋がってくる。だから勉強するのだと、自問自答の結論が出た。

でも今の世の中は誰もそんなことは教えてはくれない。ただ「勉強をしろ」とだけしか言わない。このテスト用紙はそんな世の中の体現をしているようで無性に腹が立ってきた。無性に心がむしゃくしゃしてテスト用紙で作った紙飛行機を窓の外に投げた。

『意義のある人生を送りたい』

その願いをのせて紙飛行機は風にのって遠くへと飛んでいった。

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