勇者のいない世界で

@hosome252

序章 勇者、死す

勇者が死んだ。


そのニュースは、瞬く間に世界に広がった。

人々は、嘆き悲しんだ。

魔王に勝つ術を、失ったのだ。もう誰も、魔王による支配を止められない。

魔王を倒せるのは、勇者だけだということを、人々は知っていた。


だがそれ以上に、「勇者」の師そのものを、人々は悲しんだ。

勇者は、良き友だった。

強く、優しく、暖かい。

人々は、勇者が好きだったのだ。



彼は、見返りを求めなかった。

戦闘で疲れ果てた勇者を、よそ者と追い出した村が襲われた時も、彼は真っ先に駆けつけ、その危機を救った。



魔物討伐の報奨金は、全て各国の孤児院に渡るように手配をした。

時折孤児院を訪れ、子どもたちと遊んでいる姿を見かけた者も多い。



「勇者」がいなくなった世界は、少しずつ活気を失っていた。

確実に増えていく、魔王の勢力圏。

それを打破する手段はない。

あの強く優しい、勇者はもういない。










……そう。勇者はもういない。

残っているのは……

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