あの頃の夢と今の僕
@324
第1話
ちらちら降る真っ白な雪が、町中を銀世界へと変貌させる。
僕の隣を歩く女の子は、今年初めての雪にはしゃぎ僕の前へと飛び出す。
「ああ、雪だぁ」
彼女は、振り返ってにっこりと僕に微笑んだ。
「君さぁ、こんなに雪見るのは初めてなんじゃ無い?」
「初めてだよ。凄いなぁ、雪って」
「でしょ。……でも、こんな風に雪が見れるのも今年が最後なんだよね?」
寂しそうな顔をする女の子。
僕は、悲しみをぐっと堪えながら笑顔を作った。
「……うん。でも、また必ず会いに来るから。」
「ありがとう」
彼女の満面の笑み。これを見るために生まれてきたんだ。……そう思えるような笑顔だった。僕は彼女の笑顔が見たかっただけだった。いや、見たかっただけではなく独占したかったのかもしれない。……だから、僕は罪を犯した。
「あのさ、伝えたい事があるんだ。」
「ん、なーに?」
彼女は、僕の方へと近づいてきた。
女の子特有のいい香りが僕の鼻をくすぐる。その香りにドギマギしながら僕は切り出した。
「君の事が、好きだ。だから、僕と……」
答えは、分かっていたはずだった。
それでも、言わずにはいられなかった。例え、それが彼女の心を深く傷つけるかもしれなくても。
一瞬驚いた顔をした女の子は、そのまま俯いてしまった。地面には、彼女から滴った涙がポツポツと跡をのこしていた。
「……君なんて大っ嫌い。……だから、もう話しかけないで。」
自分の家の方へと走り出した彼女。
「待って、待って……」
僕は、追いかけ遥かに今より小さい手を伸ばした。しかし、その手は届く事はなくただ虚空に取り残されていた。
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