Take five
城之崎灰流
第1話
たん、たん、たん、たん、たん――。
屋根を伝って落ちてきた雨のしずくが、ベランダの手すりにぶつかって弾ける。 たん、たん、たん、たん、たん――。
規則正しい音が閉じた窓越しに聞こえる。
机の電気をともして、BGMにはお気に入りのジャズミュージック。
外はあいにくの雨、そんな日だからこそ私は手紙をこうやって綴っている。
一枚目の手紙は、
「あなたといつの日までも一緒にいて、そしていつの日か一緒に死ぬ日を迎えれたら、すごく幸せなんじゃないかと思う」
などという、長くてのんびりとしたものになってしまった。
だから、くしゃくしゃに丸めてその辺に投げた。
二枚目の手紙は前回の失敗を踏まえて、
「いつまでも、あなたと二人手をつないで歩いていきたい」
前回よりは短くなったけど、やっぱりまだ少しのんびりしている。
しょうがないから、びりびりに破いてその辺に投げた。
三枚目の手紙は前の二つよりもひねくれた感じで、
「あなたのことが好きだけど、何か文句はありますか?」
なんだろう、ひねくれ過ぎちゃったかなぁ。
もったいないけども、四つにきちんと折ってその辺に投げた。
四枚目の手紙は今までの反省を込めて、
「あなたのことが好きです」
んー、なんだか普通すぎてつまらないかも。
割といい線いってたけども、紙ヒコーキにしてその辺に投げた。
たん、たん、たん、たん、たん――。
BGMの曲が変わる。外は相変わらずの雨。まだ、止みそうにはないなぁ。
お気に入りの曲が、ドラムのリズムに乗って始まった。
さて、それじゃぁ気を取り直して五枚目、行ってみよう。
Take five 城之崎灰流 @akeru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます