2.その名はアルテシア(2)
2(other_side=day185602/-pt)
カレンがこの状況に陥った最大の理由を挙げるとすれば、それは『不運だったから』というほかないだろう。
カレンはごくごく平凡な農村で生まれた。父は農民で、狭くもなければ広くもない畑を耕して生活していた。家庭には何の問題もなかった――ただ一点だけを除けば。
カレンは『
生まれつき魔力保有量が高い人間――それが忌児だ。この世界では、魔力の高い子供は『魔物に近い存在』だとして忌み嫌われるのである。
それでも、カレンの家族はまだ善良なほうだった。忌児ゆえに忌み嫌いながらも、カレンが一六になるまできちんと育て上げたのだから。だからカレンは、忌み嫌われながらもそれなりに幸福だった。
しかし遡ること数日前、そんなせめてもの幸福すら打ち崩すような出来事が起こった。カレンの住む村に、盗賊が押し入って来たのだ。
盗賊は強い魔法の力で村人たちを委縮させ、そして金品や農作物を奪っていく途中にカレンに目を付けた。忌児は普通の人間には忌み嫌われているが、盗賊のように一般の倫理が通用しない者から見れば『高い魔力を持つ武器』になり得るからである。
かくして、カレンは奴隷として盗賊たちに連れられてしまった。
奴隷となったカレンの生活はそれはひどいものだった。高く売る為に傷つけられたり、飢えたりするようなことはなかったが、盗賊たちは常にカレンのことを威嚇し、そして恐怖によって押さえつけていた。
首輪をして盗賊たちのアジトの近くを歩かされるのも、その一環だ。盗賊たちは、奴隷がアジトの中で閉じ込められたままでは身体が弱ってしまい高く売れなくなると信じている。だから首輪で繋いで恐怖で支配した上で、アジトの近くを歩かせ運動不足を解消させていたのだ。
『彼女』と出会ったのは、そんな『健康管理』の最中のことだった。
その出会いは、カレンの人生をまったく別の物に変えてしまった。
3(アルテシア=day185602/3000pt)
ゴツゴツとした岩が転がっているあたりを乗り越え、ならず者がこっちに近づいてくる。
もう逃げるのは諦めた。身体能力的に逃げられないんなら、リスクがあっても戦って勝つしかないんだ。
というか、これから信仰を集めるとかで色々と危険なことをする必要性も出て来るかもしれないってのにこんなならず者程度でいちいち逃げ腰になってたら先が思いやられるってんだ。
ちなみに女の子のほうは、どうも足場の不安定なところをすぐに乗り越えるようなことはできないらしく、その場に取り残されてたが……こっちとしては好都合だ。ここで女の子が逃げてくれれば、そっちを気にせずにやれる。
俺の『権能』が何なのかはまださっぱりだが、規模が大きいかもしれない以上は色々と注意しなくちゃいけないしな。
……だが、女の子が逃げる気配はなかった。
まぁ、そりゃそうかもなぁ。前世で見たニュースとかじゃ、監禁されていた被害者は誘拐犯の言うことに逆らえない精神状態にされていたとかって言ってたし。こういうとき、抵抗するのって相当勇気が要ることなんだろうな。
……んじゃ、それも考えに入れてやっていくしかないか。
不思議と、そう考えると心のどこかで何かのスイッチが切り替わったような気がした。
「いいぜ、かかって来いや罰当たり。神罰、下してやる」
「なんだぁ? 頭でもイカれちまったのかこのガキ!」
両者の距離、およそ五メートル。
そこまで距離を詰めたあたりで、俺は自分から攻撃を仕掛けようと思って身構える。身体能力は可憐な美少女並な俺だが、殴ったりした反動でダメージを受けることはない。つまり、殴って拳を痛めるかもしれないとかそういう心配をして手加減することがないってことだ。
相手からの反撃も、まさか
どうよ! この冴え渡る頭脳! 我ながらこの神の頭脳が恐ろしい。
と、
その時だった。
ならず者の右肩あたりから、とんでもない風圧が迸ったのは。
「…………へ?」
ごうごうと、空気が渦巻く音が聞こえる。地面の砂どころか、岩肌の表面すらもまるで削りかすが出るみたいに巻き上げられ、暴力的なまでの気流に輪郭が与えられる。
それは、直径二メートルを優に超えていた。まるで巨大な貝殻のような威圧感を持つそれが、俺の目の前に現れる。こんなもん、現実の気象なんて比にならない。
まさしく――『超常』現象。
そう思わされる威容だった。
「はん、馬鹿にすんなよクソアマ。テメェ、どうせ旅の格闘家か何かだろ? でなけりゃ俺達の縄張りに入ってそんなデカい態度をとっていられるはずがねぇし、わざわざ倍はある体格差の相手に殴り合いを挑もうとするはずがねぇ」
…………いや、神様だからなんだけど、それはともかく。
ならず者、ならず者のわりに色々考えてるな……。そのへんはやっぱり、きちんと思考する一人の人間ってことなんだろう。悪党とはいえ、いや、悪党だからこそそこは甘くない。
「だがな、そうと分かってりゃあ何も不利な接近戦なんか挑む必要ねぇだろ。こうやって、遠距離からブッ叩くだけでテメェは何もできずにやられるんだからよ」
しかし、おかしいな……?
確かルールブックによると、この世界の魔法って、大体弓や矢に毛が生えた程度の威力って話だったんだが…………あれ、どう考えてもそのレベル越えてるよな? まともに食らったら腕とか足とかボキボキに折れて、バラバラになっちゃう感じだよな?
いや、
「安心しな、テメェは大事な商品になる。だから傷は、少ししかつけねぇように努力するから、よッッッ!!!!」
男は勢いよく腕を振り、その指先を俺のすぐ近くの地面に向ける。瞬間、渦巻いていた気流が一気に伸びて俺の足元に飛び込んでゆく。
膨大な気流の音を感じて、俺は少しでもダメージを軽減する為に身をかがめ、スライディングするように飛び退こうとした。
気流ってのは、所詮は空気の流れだ。何かにぶつかればその分かき乱される。この場合俺の近くの足元にぶつかる訳だから、低い姿勢でいれば地面にぶつかった分、直接俺の身体に命中する確率は低くなる。
その上、此処は水場の至近だ。はねた水を全身に浴びることで、滑りやすくなり、地面を転がる際のダメージも軽減できる……はず。焼け石に水だけど。
と、まぁそこまで考えたのはいいんだ。
まぁ、俺はプロじゃないので考えただけで行動には移せなかったけどね。
俺が咄嗟に屈もうと、バランスをとる為に腕を動かした瞬間。
何かが弾かれるような音と共に、全ての気流が跳ね返る。
……俺の身体は衣服どころか髪の毛一つ乱れることなく、平静を保っていた。
「…………………………は?」
そのマヌケな声は、ならず者のものだったか、はたまた俺のものだったか。
俺の足元にぶつけられたことで発生した膨大な乱気流は、俺の身体に到達する直前にその進行方向を変えて男の方へと戻って行った。その結果、自分の放った風をモロに受けたならず者は数メートルもノーバウンドで吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。
数瞬遅れて、俺の頭の上に巻き上げられた砂がパラパラと降って来る。その砂粒の一つ一つが、俺の身体に接触する直前に真上へと弾かれ、後続の砂粒を散らしていた。
「ぐ、くそ……一体、何、テメ……!?」
原因は明らかだった。
俺の『権能』がならず者の風魔法を無効化したのは、誰の目から見ても明らかだった。いや、無効化――と言っていいものか? 確かに俺から見れば『無効』にしたのは間違いないが、これはどちらかというと――、
「跳ね返し、か」
風だけでなく、自由落下で俺に降り注ぐ砂粒の一つ一つに至るまで跳ね返されているのが分かる。おそらく、『条件に一致しない干渉を全てはじき返す』のが俺の『権能』ってことなんだろう。
乱雑に跳ね返された気流の一部だけであの有様なんだし、ひょっとすると倍返しくらいにして跳ね返してるのかもしれないな……。
それで、跳ね返しの条件は少なくとも砂粒とか風じゃ突破できないくらいには厳しい、と……。
まぁ、このへんは考えてみれば当然なのかもしれない。仮にも『難題』なんて称した能力なわけだし、それに神様の力だし、そう簡単に打破できたら苦労しないよな。
「くそ、風の魔法か……!? にしたってこんな……!」
ならず者は起き上がりながら、そんなことを呟く。どうやらあのくらいじゃ戦闘不能ってわけではないらしい。
……風の魔法じゃなくて、『権能』なんだけどな。まぁまだこの世界には俺も含めて神様が顕現し始めたばかりだし、そんなことをいちいち言っても仕方がないか。
「このアマ、格闘家だと思わせるようなそぶりはこっちを油断させる為のフェイクか、ナメた真似しやがる……!」
ならず者は舌打ちして、今度は手元に気流を生み出したようだった。
…………色々と考えてるみたいだけど、残念なことに俺はただの神様なんだよなぁ……。
「だが今ので片付けられなかったのは痛恨だなぁ、もう油断はしねぇ! 魔術師だと分かった以上奴隷にもしねぇ! テメェは今、ここで確実に殺す!!」
バキバキと、風では絶対に出ない音が岩場中に響き渡る。
ただし、それは風そのものが出した音じゃない。
岩が。
さっきまでのように岩場の表面なんてものじゃない。小さな岩そのものが持ち上げられ、空中で他の岩とぶつかりあって粉々に砕けているのだ。
そんな暴風を操るならず者の顔面には、既にいくつもの青筋が浮かび上がっている。俺を強敵と見て、全力でぶつかろうとしているんだろうが……こんな大規模な攻撃されたら、あっちの方で縮こまってる女の子に流れ弾が飛んでいくかもしれないだろ! 一応岩場の陰に隠れてるみたいだけど!
「俺は奴隷にされるつもりもなければ、殺されるつもりもない。どうしても俺をオトしたけりゃ、そうだな――――」
俺は、これ以上被害が広がる前にと思ってならず者の方へ向かう。飛び散った小さな破片が、さながら弾丸みたいにして俺の方へ跳ねていくが……それらは全て直前で跳ね返され、そして気流の渦に呑み込まれていく。
そんなことには意を介さず、俺はただ突き進む。ならず者は、気持ち焦りながら気流の渦を俺の方へ向けてきた。
これ幸いと、俺は気流の渦に手を伸ばす。
そして、互いが互いに触れ――――、
「――――こんなこと辞めて、真っ当になって出直して来るんだな!」
その直後に、バキィン! と決定的な音が響き、あれほど暴力的だった気流が一瞬にして吹き散らされる。
「がァあ!?」
至近距離で乱気流を浴びたならず者も、全身を岩に強く打ちつけて、それからずるずると力なく崩れ落ちた。
……ふぅ、なんか全部終わったと思ったら安心して、切り替わったスイッチが元に戻った気がする。
「こん、な……馬鹿な…………」
男の意識ははっきりしてるが、相当強く身体を打ったらしく身動きが取れない状況らしい。うつ伏せに蹲ったまま、俺のことを見上げて睨みつけていた。
まぁ、コイツはコイツで、こうしないと生活していけない事情があるわけで、コイツから見れば俺はそんな中に現れた理不尽の象徴みたいなもんだし、そんな目で見たくなるのも分かる。
だが、だがだ。
そう考えて、俺は今も向こうに座り込み、訳が分からなそうな顔をしている少女の方を見る。
「……あの子はそれ以上の理不尽を感じてただろうな」
そう呟き、俺はならず者の前に立つ。ならず者は、ただ黙って身を強張らせるだけだった。多分、俺に殺されるとでも思ってるんだろう。殺す気で攻撃したんだから、ある意味当然だ。
そこで俺は、こう言った。
「俺は、神だ」
「…………は?」
「先程の光景を見て分からないか? 四つの属性の中にあんな芸当が可能な魔法はあるか? 俺は神で、お前は神に対して牙を剥いたのだ」
「へ…………ひっ!」
ようやっと俺の言っていることが理解できたのか、ならず者の顔が分かりやすいくらいに引き攣った。俺は気にせず、さらに続ける。
「無礼にも俺に弓引いたお前だが、俺は慈悲深いので殺すようなことはしない」
いくらなんでも、殺したりとかはやりすぎだからな。俺を捕まえて奴隷にしようとした件は…………まぁ、この全身打ち身でチャラってことにしておいてやろう。
さっきも言った通り、コイツはコイツで自分の暮らしの為に仕方なく悪事をはたらいているだけなのだ。悪事にはリスクがある。誰だって、リスクのある生き方より安定した暮らしがしたいはずなのだ。なら、責めるべきはそうしないと生きていけない環境でありコイツじゃない。
いやまぁ、悪いことしてるんだしそういう意味では罰せられるべきだと思うんだけど……まだこっちの法律っていうか文化とか良く分からないから、これがどこまで悪いのかっていうのも分からないんだよね。案外奴隷とか合法的な社会なのかもしれないし。
その場合、このならず者は悪そうだけど別に悪いことをしているわけじゃないってことになるから、あんまり思い切ったこととかはできないのだ。なんかこう……そういう場合って、歪んでるのは社会の在り方であってコイツ本人が悪いってことにはならんと思うのよね。
郷に入っては郷に倣う。神様でもこういうのは大事だと思う俺はやはり生粋の日本人なんだろうか……。
「その代わり、次はないぞ。あと、お前達が悪事をはたらいていると聞けば、地の果てまで追いかけて懲らしめてやるからな。分かったな」
「は……はいぃぃぃぃ!!!!」
俺が軽く凄むと、ならず者はそう叫んでのたうち回りながら逃げ去ってしまった。
…………あ、まだ色々と話があったのに……。ついでに俺の教えとかを広めて宣伝活動でもしようかなと思ってたんだが。
まぁ、宣伝活動はついでのつもりだったし、いいか。
さて、残るはあっちで座り込んでいる女の子だが………………。
…………どうしたらいいかな?
4(アルテシア=day185602/2943pt)
俺は、女の子の首輪に繋がれていた紐を取り外して、改めて向かい合ってみた。
無言で。
…………いやいや、実際何を話せばいいの? って感じなんだよ。だって向こうはついさっきまで盗賊に捕まってた元奴隷だよ。どんな苦労があったのかなんて俺には想像もつかないよ。多分色々と傷ついてたりしてるよ。滅多なこと言えないよ。うん。
……だが、女の子の方も自分から何かを話すような精神状態じゃないのは目に見えているわけで、俺が話し出さなくちゃ永久に沈黙ってことになりかねない。
…………うーむ、よし。
「俺は、神だ」
「っ! は、はい!」
俺がそう切り出すと、女の子はそう言って慌てて平伏してしまった。…………この世界にも頭を下げる文化とかあるんだね。って違う! そんなつもりじゃなかったんだ! ただ何も話の切り出し方が思い浮かばなかっただけなんだ!
「顔を上げてくれ」
「し、しかし……」
「俺は、フレンドリーな神だ」
「あ、はい……」
そう言うと、女の子はおずおずと顔を上げてくれた。しかし、フレンドリーな神っていうのもなかなか意味不明な言い回しだ。ルールブックには言語は自然と通じるようになるって書いてあったけど、そうじゃなかったら今頃意思疎通もできなくて詰んでたな……。
「とりあえず……これでお前は自由の身だ。元いたところはどこだ。そこまで送って、」
「いやです!」
と、そんな風に切り出そうとした矢先、女の子は遮るようにしてそう叫び、続ける。
「私は忌児だから……元々住んでいたところでも疎まれておりました。いまさら帰る場所などありません。どうか、神様のお傍に置いてください。一生かけてお仕えします!」
…………えぇ……。
まず忌児? っていうのが良く分からないけど、とりあえず元いた場所には帰りたくなくて、それでいて俺と一緒に行きたい、と……。……うーん、俺一人だったら飯の心配とかしなくていいけど、この子を連れて行くとなるとそうもいかなくなるし……。
まぁ連れて行くメリットもあることにはあるんだけど、ただの女の子を連れて旅するって色々と危険じゃないか……? 俺は食事とか睡眠とか要らないから良いけど、女の子となるとそうもいかないだろうし、何より神様同士の喧嘩とかが勃発する可能性を考慮すると……。
…………ただ、帰る場所がない、さりとてあんまり連れて行きたくないとなると、近場の村か街でも見つけてそこに置いて行くしかない、のか? それで素直に諦めてくれるか? なんかついて来ちゃいそうな気がするんだよなぁ。
……そもそも、助けておいて、適当なところに放り出して後は知りませんっていうのは、流石に無責任すぎるよなぁ…………。うーん…………。
……………………。
こうなってしまった以上、期間はどうであれ一旦は連れて行くしかない。まぁこの子が普通に暮らせそうな土地が見つかるまでは一緒にいよう。この子の話によると、『いみご』というのは何やら差別されているらしいけど、まさか全世界で差別されている訳でもないはずだ。
「……良いだろう」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁうん、だが」
頷いたと同時に食い気味に言う少女に、俺は断りを入れる。
「…………その前に、この堅苦しいキャラやめさせてくれ。俺、フレンドリーだからさぁ……。あ、そういうわけだから君も気楽にしていいからね。むしろ気楽にしてね」
「えっ」
……何だその『あれ? この
「そうそう。名前聞いてなかったな。君、名前は?」
「か、カレン……です」
カレンか。
ふむ……覚えたぞ。なんか初っ端から奇妙な旅の道連れができたけど、まぁ良いだろう。神と人の二人旅。なんか今から旅情を感じる。
「あ、あの」
と、そんなことを考えて一人でニヤリとしていると、今度はカレンの方から声をかけてきた。
「なに?」
「えっと…………」
言いづらそうにしているのを見て、俺は気付いた。そうか、名前が知りたいんだな。……よく考えたら俺も神って言ってるだけで名乗ってなかったな。
……しかし、俺って名前、まだないんだよなぁ。前世の名前を名乗っても良いんだけど……この身体でそれっていうのはちょっと、ねぇ……?
神話に語られるかもしれない俺の名前がどこにでもある平凡な七文字というのは……というか、俺の名前がそのまま神話に登場したら恥ずかしいとかいうレベルじゃない。
しかし今すぐ思いついたりもしないので、仕方なく俺は正直に言うことにした。
「あー、俺、まだ、」
「その、ベルトについている文字って、もしかして名前ですか?」
「……あ?」
俺の言葉を遮って、カレンは俺の服に大量についているベルトのうちの一つ――正確にはその金具――を指差した。どうでも良いけどこの子、俺の台詞よく遮るね。
「えーと、どれだ……?」
適当に呟きつつ、俺はカレンが指差している胸の辺りのバックルをいくつか掴み、見やすいように角度を傾ける。胸のあたりにある三つのバックルには、それぞれ文字が刻まれているようだった。
一つには『185602』、もう一つには『2943』という数字が刻まれている。おそらく後者に関しては信仰Pのことだろう。さっき跳ね返しを使いまくってたし、そのくらい消費していてもおかしくない。前者は……分からないな。心拍数か何かか?
そして、最後にもう一つ。
そこに刻まれていたのは――――、
『Artesia』。
アァ……アルテ……シア。アルテシア、か。
……うん、しっかり名前用意されてたっぽいな。まぁ自分で自分の名前考えるのとか大変だから、用意してくれてて有難いって感じではあるけど。
ベルト金具から視線を戻した俺は頷いて、これから一緒に旅をすることになる少女にこの世界で初めての自己紹介をした。
「あぁ。そうだ。俺の名前はアルテシア。よろしく、カレン」
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