第10話 天翼の騎士《ウィングナイト》
「フェアリー、お疲れ様です。
天工精霊エレが索敵を終えて話しかけてきた。
フェアリーとは反対側の
小さな妖精に似た身体に透明な二枚の
空間魔法を得意とする【赤天族】と治癒魔法と自然魔法を得意とする【白天族】に創り上げられた汎用天使型宇宙兵装、
天界の三大氏族の技術を結集して創られた傑作兵装が
ちなみに、
「ちょっと、出るのが早かったかな。まあ、シルバーソードのクルーとスタンドウルフ隊の実戦経験も積めたし、練度も少し上がったかな」
フェアリーの
「フェアリー隊長、俺、全然、出番無かったんですけど」
スタンドウルフ隊のバー二ィからの通信である。
機動突撃艦シルバーソードを円環状に防御する直衛に入っていたのだが、光子魚雷の遠隔射撃ぐらいでほとんど出番はなかったようだ。
「まあ、仕方ないわ、直人とクリスが頑張りすぎたから。あと、サファエルの
フェアリーはちょっと一息ついて、波動剣を異空間の鞘に納めた。
「リー・ファ、現在の被害状況は?」
「シルバーソードに特に損傷はありません。ただ、ラクトエルがダウン気味です。時間魔法戦も
隻眼の副艦長は勝ち戦でも浮かない顔で言った。
歴戦の勘が何かを告げているのかもしれなかった。
「そう。スタンドウルフ隊の回収を急いで。それから長距離ワープの準備をして」
フェアリーも少し嫌な予感がしていた。
「了解です」
フェアリーはこんな時、コーシ・ムーンサイトがどうしてたのか? 思い出していた。
あの人はいつも冗談交じりの笑顔でくだらないことを言っていた。
ひとりになってはじめて、自分はあの人に支えられていたことがわかる。
私はまだまだね。一軍の将としては失格ね。
彼女がさまざまな物思いに沈んでる間、状況はただ平穏に過ぎて行った。
「スタンドウルフ隊、回収完了。フェアリー隊長、戻ってきて下さい」
リー・ファ・リーが安堵の表情で通信を送ってきた。
「はーい、今、帰るわよ」
フェアリーも少しだけほっとしてシルバーソードに帰投しようとした。
その時、巨大な重力震反応が現れた。
フェアリーの眼前に巨大な惑星が出現していた。
「
リー・ファ・リーが難しい顔をしている。
「いや、私の予想した最悪の事態からはほど遠いわ。大丈夫よ」
フェアリーは正直、少しほっとしていた。
確かに、厄介な相手だが、勝てない相手ではない。
そのまま右の拳を
【波動拳】、光子波動エンジンの力をそのまま拳に乗せていく。
重力変異が巻き起こり、
最初の
出現した
生き残った
ただ、天工精霊との相性、搭乗適性がある天使が少なく、騎士不足さえなければ、今の戦局を変え得る戦力と言えた。
討ち漏らした
一度、帰還したクリス、直人のスタンドウルフ隊も補給を終えた順に出撃、迎撃に当たる。
サファエルも最後の力を振り絞ってイージスシステムを展開させて防御に務める。
ラクトエルだけはやることないので熟睡中である。
「コーシ隊長、前線が大変なことになってます」
次元レーダー担当のセジエルが困惑顔で言った。
紫の髪と瞳をもつ、二枚羽のちょっと神秘的でかわいい感じの天使である。
そこはサムエルの旗艦、ソードシップ『ホワイトナイトソード』の
「状況説明を頼む」
コーシ・ムーンサイトは、艦長のサムエルが頷くのを見てセジエルに
「えっと、すでに機動突撃艦シルバーソードは百万の
「なるほど、その
コーシ・ムーンサイトは素朴な疑問を口にした。
「そこからなんですか! そこから説明しないとダメなんですね」
「
「―――そこ、はぁ~。基礎から説明いたしますわ! 基礎から!」
セジエルの怒って頬をふくらました姿がまたいいのだが、怒らせすぎると厄介そうなので、あくまで真剣な態度で聞いてみた。
丁寧な説明が終わった所で、艦長のサムエルから衝撃の報告が続く。
「あのー、システィーナ様からコーシ隊長宛に、
「えっ?」
最近、あまり驚くこともなかったコーシ・ムーンサイトだったが、ちょっと目を丸くしてしまった。
全天スクリーンのサイドスクリーンに紅色のソードシップが映っていた。
セットって、いや、ソードシップまでついてくるんだ。
「それ、ひょっとして、俺が乗って出撃ですか?」
「そうです。当然です!」
セジエルはきっぱり言った。
天海士のパミール・フェノンも、艦長のサムエルも激しく同意した。
人間、いや、天使も驚きすぎると思考が停止してしまうんだなと納得した。
「でも、騎士適性とか、ほら、いろいろあるだろ」
最後の抵抗を試みてみる。
「大丈夫ですよ。超戦歴豊富で優秀な天工精霊がサポートしてくれるから、かかしが乗ってても余裕で勝てます」
サムエルが太鼓判でダメ押しをした。
「いや、かかしって、天界にもあるの?」
素朴な疑問が浮かんだが、もちろん、セジエルは華麗にスルーして冷酷に告げた。
「コーシ隊長、出撃お願いします!」
コーシのフローティングシートがカプセルに覆われたかと思うと、勝手に奈落の底に沈むように降下していった。
そんなシステムあったんだ!
「はじめまして、天工精霊のエルです。システィーナ様からサポート依頼されました。よろしくね!」
「おぅ、よろしく! 初心者なのでお手柔らかに」
しどろもどろだが、とりあえず、挨拶を返しながらコクピット内をキョロキョロした。
「ソードシップ【クリムゾンソード】の方は、私、天工精霊のエルザがコントロール致します。
前面モニターに紅い瞳をした黒髪の二枚
何となくエルと雰囲気が似ている。お姉さまとか言ってるので、姉妹とかかな?
「聖剣【クリームグリムゾン】の認証完了、騎士適性、登録オールグリーンです。出撃準備OKです!」
天工精霊エルが騎士認証を完了し、出撃準備が整ったようだ。
「了解! 【クリムゾンハート】出撃!」
つい、ノリで叫んでしまった。
「【クリムゾンハート】出撃! ソードシップ【クリムゾンソード】に格納後、長距離ワープに入ります」
天工精霊エルザからも通信が来て、何か戦場に直行するようだけど、心の準備が………。
「大丈夫ですよ。超急速睡眠学習で戦闘レシピは叩き込んでおきますから。少し海馬が暴れるのはお許し下さい」
天工精霊エルの青い瞳が残忍に光ってるような気がしますが、まさかね、そんな性格悪くないよね。
妖精だもんね。いや、精霊だったか。
「ふふふっ………しばし、おやすみなさい、コーシ様、よい悪夢を!」
天工精霊のエルザの紅の双眸が妖しくきらめく。
さっき、悪夢とか言わなかったか?
あ、だめだ、眠くなって―――コーシ・ムーンサイトの意識は、悪夢のような過去戦闘データの海の中へ沈んでいった。
「左腕のイージスシールド大破! 実弾砲撃です。すぐに予備と交換します。ですが、攻撃可能範囲に敵影は観測できません」
天工精霊エレが不審な表情でフェアリーに報告する。
「どうゆうことなの? ステルス砲撃ということ?」
「―――あっ、ありました。エルお姉さまの過去戦闘データとリンクしたら。千年以上前の戦闘データのようなので、これは天使大戦の頃の
次元変動弾。砲弾を異次元空間にランダム転位させて、敵を砲撃する砲弾である。
出所も分からなければ、砲手の位置も特定しずらい悪夢のような武器である。
天工精霊エレが敵の正体を見出すと同時に、再び、左手の楯に砲撃が命中した。
「くうっ!」
歯をくいしばっていたが、フェアリーはあまりの衝撃にうめき声を上げた。
威力が凄まじい。
左の楯を実弾防御仕様に変更してたので大破は免れたが、そんなに長くは持ちそうにない。
「超重力震です! 大質量の物体が転位してきます!」
天工精霊エレの叫び声がした。
フェアリーも息をのむ。
やがて、目の前に現れたのは、巨大すぎるブラックホールのような天体であった。
その中から漆黒の十枚の翼をもつ機体が現れる。
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