調律師

小高まあな

1.Cherry blossoms say “Hello”

 その桜は、あたしみたいだと思った。

 周りの梅が咲き出して、焦って咲いてしまったその桜は、まるであたしみたいだった。

 周りから浮かない様にと、必死に焦っているその桜は、まるであたしみたいだった。

 桜の幹に手を置くとそっと呟いた。

「貴方は桜、よ。まだ、春を待っていていいのよ。ねぇ、もう一度、おやすみなさい」

 ゆっくりと、再び時がくるのを待つために、休養する桜を見ながら、思う。

 その桜はまるであたしみたいだけれども、あたしは桜と違って何度も花を咲かせることは無い。

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