第14話
母の葬儀は、初七日も兼ねて身内だけでひっそりと行った。
姪たちには母――おばあちゃんが死んだことは、まだ話していない。母親に続き祖母までも死んだとは、幼い子たちにはさすがに言えなかった。
このまま義兄の実家で暮らすことになるのかと思うと寂しかったが、今後二度と会えなくなるわけではないし。次に会うまでには私も立ち直らなければ。
実家に帰り、母の遺品を片付けることにした。
写真や衣服を整理しながら、母と最後に話した電話を思い出していた。
いつも自分から電話をしない私が、用もないのにかけたから驚いていた母。あの日は久しぶりに明るい口調で、姉とお花見に言った夢を見たと楽しそうに話していたっけ。
そういえば……あの時は急いでいて気にもとめてなかったけど、今思えばちょっとおかしなことを言っていたような気がする。
「なんだっけ……」
片付けの手を止めて台所へ行き、お湯を沸かす。
まだ母の匂いの残る台所に立ち、思いを馳せる。
姉と二人でお弁当を食べたと聞き、私も食べたかったと言って、それから……。
急に寒気がした。そしてまた首の後ろが痛くなってきた。
それから、「あんたはまだ駄目。孫たちも絶対に来させないわよ。お姉ちゃんと二人で十分だから」と、早口で言った。
楽しいお花見に、大好きな孫たちを呼ばないなんてありえない。それに、私は駄目――まだ駄目って、どういう意味なの?
二人で十分って、まるで――死んだ姉のところに行ってお花見したみたいな言い方……。
お湯が沸いたが、コーヒーを淹れる気にもならなかった。
だけど所詮は夢の中での話。夢の中……夢――。
私の中で何かが繋がりかけたとき、電話が鳴った。
「……もしもし」
受話器の向こうから、父の声が聞こえてきた。
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