出発の時5

人は一生涯の中で何回ギョッとすることだろう?アニメでは目が飛び出る程度の驚きだ。大抵の人は経験せずに生涯を閉じるのではないだろうか?


背中に生えた羽を羽ばたかせ箱からフワフワと浮き出て来ると目の前に白い物体が迫ってくる。


目見当のスピード感から考えてみても普通に避け切れるスピードではない。


「大蛇か!!!」


一瞬だけ小さい頃おじいちゃんの狩りに連れていってもらい真っ白な大蛇を仕留めた時の戦闘が頭によぎったが、その答え合わせなどする暇もなくエミは時を止めた。


とっさに時を止めてしまったものの、エミは自分の魔力を多少はわきまえている。まだ1秒程止めるのが精一杯なのだ。間髪入れずに瞬間移動をした。


エミの体はそこから消え、60センチ程横にズレたところに現れた。瞬間移動もたいした威力はまだ発揮出来ない。


ジタバタと足は走り、手は泳ぎ少しでも遠くへ逃げたい意思は感じる。


爆竹でも鳴らしたかのようなバチーンという音がホームに鳴り響いた。


「いってーーー!!」


エミはかろうじて無事だったが尻尾の先っぽだけを新幹線にかすめてしまい先端が赤黒く腫れ上がってしまった。


「フーッ!フーッ!」


痛みがひくのか、気持ちの問題なのか、効果は定かではないが尻尾をつかみ先っぽに息を吹きかけた。

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