あおイキあおイ

完熟ォ桃

出発の時1

  樹齢数千年、数万年かもしれない巨大な木の切り株に腰をかけた大男が言う。特撮戦隊ヒーローモノに出てくる巨大な怪物のような大きさだ。実際にはその半分の大きさも無いのだろうが、初めて相対した者にはそう感じさせる迫力がある。


「良いか?今からオマエをゾーンに入れる」


魔王様ともじいちゃんとも呼ばれるこの大男が立ち上げたと言われる『アーマー・ゾーン』

アーマー・ゾーンのおかげで、大概の所までは翌日配送、送料無料が可能になり星の皆は多いに利用していた。


主に配送は猫系の得意技であり、星一番の機動力、一番愛情深いとされるいつも子供を口にくわえながら配送するブラックキャット。


部下の数と尻尾の数では負けないと豪語する横縞模様の肌で有名なレフトリヴァー九便の九尾の猫。


どちらもまだまだ活躍しているがアーマー・ゾーンには敵わない。


だが利用者の口コミではアーマー・ゾーンは精度が悪い、私は少し高いけどブラックキャットを利用しますと言った声もある。


大男は孫の世話役であるググルを呼んだ。


「予定通り今から孫をゾーンに入れる。良いな?」


「はっ、魔王様。こちらに用意した物だけ坊っちゃまにお渡ししたいのですが」


そう言いながらググルは小さな麻袋を大男に差し出した。


大男は大きさの割には重量感のある麻袋を孫に投げ渡す

 

「オマエなら必ず征服出来るであろう、では行け」


と言いアーマー・ゾーンの呪文を唱え始めた。


大男の目の前に小ぶりな段ボール箱のような箱が浮かびあがる。箱の側面にはアルファベットがいくつか記されていて、AからZに向けて矢印が描かれていた。大男は到底この箱には入りきらないであろう大きさの孫を箱の中に入れる。


大男は普段孫を息子以上に可愛がっていたがまるでゴミをゴミ箱に入れるかのような動作で箱に入れた。擬音で言うならば『ポイっ』と。


不思議な事に孫は箱の中に吸い込まれるように入っていく。まるでどこかのロボットのポケットのようだ。


段ボールの蓋を閉めると矢印がグルグルと回りだし段ボールはそこから消えた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る