Perfect Wizard

@Gurimu-GGG

第1話


 魔法……かつては空想上の産物だった。

 しかし、後に始まりの魔法使いと呼ばれる事になるアドルフ・アークライトにより空想上の産物から現実の物となった。

 彼がどのように魔法を会得したかは様々な憶測が流れるが定かではない。

 だが、彼が魔法と呼ぶしかない超常的な力を行使し多くの奇跡を引き起こした事は疑う余地はない。

 アドルフには5人の弟子がいた。

 弟子達はそれぞれアドルフから学んだ魔法を世界に広めていくことになる。

 人々は想像を絶する力に怯え、恐怖する出て来たが、弟子達は力を合わせて魔法を正しい使い方を示した。

 その過程で魔法を正しく管理して行くために魔法管理局が設立され、魔法の力は人々の生活をより豊かに出来る物となった。

 魔法使いはいつしか魔導師と呼ばれ、人々の憧れと尊敬の眼差しを向けられるようになり、その数も次第に増えて行った。

 それから数百年、魔法は世界に根付く事になる。

 







 炎龍寺総真は生まれつき全てを持っていた。

 アドルフ・アークライトの5人の弟子の末裔である炎龍寺家の長男として生を受け、幼少期よりその才能を発揮し、神童として炎龍寺家の跡取りとしての地位を不動の物とした。

 物心ついた時から魔導師としての英才教育と受けた総真は自分が炎龍寺家の当主となり、世界を牽引する存在となる事に疑いを持つ事は無かった。

 幼少期の英才教育の変わりに彼は年相応の生活を送る事は無かったが、彼にとってはそれは不幸でなく、寧ろ魔導師として生きていく為には理想的な環境として受け入れていた。

 そして、時は流れ彼は15歳となった。


「それでは総真さん。学園へと向かう準備は出来ていますね?」


 炎龍寺家本家の屋敷で15歳となった総真は炎龍寺家現当主にして母親である炎龍寺不知火と向かい合っていた。

 広い座敷には総真と不知火の二人だけだ。

 総真は不知火の正面に正座している。

 背筋をピンと張り正座のお手本のように座っている。

 その表情は一切の緩みもない。

 そのせいか総真はとても15歳の少年には見えない。


「全て滞りなく、穂乃火と晶も同様です」

「結構です」


 親子でありながらも、二人の間には距離を感じるが、それが炎龍寺家の当主と次期当主の距離なのだろう。

 総真は15歳となり、来年度からは家を出て日本の魔法の最先端の都市である風見市にある風見ヶ岡学園に進学する。

 その中でも魔法を専門的に扱っている魔法科は全寮制である為、当然総真も寮で生活する事になる。


「貴方はいずれ炎龍寺を継ぐ身。己の役目を全うして来なさい」

「心得ています。母さん」


 総真は一度頭を下げるとスッと立ち上がる。

 その動きにも一切の無駄はない。

 話しが終わり、総真は遠く離れた風見市へと旅立つのだった。







 結城斗真はごく普通の家に生まれた。

 両親は共働きで家を空ける事が多かったが、隣の家の娘とは仲が良く家族ぐるみの付き合いがあり、特に困った事はなかった。

 幼少期は活発で運動が得意で勉強が苦手な普通の少年時代を過ごしていた。

 だが、中学2年生の時に斗真の生活は一変した。

 偶然、魔導師と知り合い魔法関連の事件に巻き込まれてしまった。

 その際に今までは斗真の中の秘められていた力が覚醒した。

 斗真は出会った魔導師と仲間達と力を合わせて事件を解決に導いた。

 それがきっかけで斗真は魔導師の世界に進む決意をする事になった。


「風見市か……」


 斗真は魔導師としての勉強をする為に風見ヶ岡学園に進学する事になっていた。

 魔法の最先端である風見市の中でも有名な風見ヶ岡学園の魔法科にダメ元で受験をしたところ、奇跡的に合格したのだ。

 試験で風見市に行った訳ではない為、風見市には初めて行く。

 すでに荷物は寮の方に送っている為、後は最低限の手荷物と共に風見市の寮に向かうだけだ。

 そこまでの道のりは把握している。


「そこで俺は魔導師としての実力を付けるんだ」


 斗真は無意識の内に去年の事件の際に手に入れた相棒の入った布袋を触る。

 事件の際に何度も実戦を潜り抜けた物の、斗真の住んでいる町にも魔法は存在しているが、便利な物と言う程度の認識で深く触れた事は無い。

 

「待ってろよ! 風見市!」


 斗真は布袋を背負うと自身に気合を入れる。

 そして、斗真は風見市へと足を向けるのであった。







 大神鷹虎は生まれた時から何も持っていなかった。

 鷹虎の記憶の中で最も古いのは施設の記憶だ。

 「大神鷹虎」と言う名も施設で付けられた物で親から貰った名ではない。

 自分が何故、施設にいるのかは鷹虎にとってはどうでも良い事だ。

 そこには自分と同じ境遇の子供達が大勢いた。

 子供達はそこで力を植え付けられた。

 力を植え付けられた結果、子供達の数は半分以下となり、幼心に居なくなった子供達とは二度と会う事もないだろうと感じていた。

 だが、鷹虎にとっては、大して話した事もない子供の事等どうでも良かった。

 残った子供達はそれぞれ名前が付けられ、そこで初めて鷹虎は大神鷹虎となった。

 鷹虎たちに待っていたのは戦いの日々だった。

 大人たちの指示で鷹虎たちは日々戦いに明け暮れた。

 戦いの理由は大人たちは世界平和の為だと言っていたが、鷹虎にとってはどうでも良い事だ。

 ただ、死にたくない。

 それだけが鷹虎や子供達を突き動かしていた。

 戦いが続き子供達の数は次第に続き10人にも満たなくなる頃、戦いの日々は唐突に終わりを向けた。

 理由は分からないし、鷹虎には理由等どうでも良かった。

 問題はその後の自分達の処遇だったが、鷹虎たちはバラバラなになったが、戦いとは無縁の世界に放りだされた。

 今まで戦いに明け暮れていた為、平和な世界に馴染むのは苦労したが、馴染んで見れば何ともない。


「今日中にはそっちに付くと思う。ちゃんと荷物は送ったって」


 鷹虎は駅のホームを携帯電話で話しながら歩いていた。

 電話の相手はかつて自分と同じ施設に居た子供の一人だ。

 様々な偶然が重なったのか再開した。

 電話の相手は色々と口うるさく言って来ているのか、鷹虎は面倒そうに答えている。

 鷹虎の行先は風見市だ。

 生活の保障はされていたが、将来を考えると風見ヶ岡学園の魔法科に進学する事を決めた。

 風見ヶ岡学園は魔法科や普通科、その他の学科も含めて卒業後の魔法管理局関連の企業や管理局への就職率が非常に高い。


「それじゃ電車が来たから切るから」


 鷹虎は電話を切ると電源まで切って連絡が来ても良いようにする。


「たく……風見ヶ岡学園か……面倒だけどここで3年間耐えれば卒業後は色々と楽が出来るからな」


 鷹虎には高い志がある訳ではない。

 ただ、生きていければそれで良い。

 戦いの日々で共に戦った戦友が死んで逝く中でそう思うようになった。

 生きていく事は当たり前の事だが、ただ生きていくだけと言うのは簡単ではない。

 風見ヶ岡学園の卒業生と言うだけで就職先も多い。

 学園を卒業してしまえば後の人生は楽に生きていく事が出来る。

 ただ生きていく為だけの為に鷹虎は風見ヶ岡学園を目指し電車に乗る。







 





 生まれつき全てを持ったいた炎龍寺総真、普通の家に生まれた結城斗真、生まれた時から何も持たなかった大神鷹虎。

 本来ならば関わる事のなかった3人の少年達は風見ヶ岡学園魔法科で出会い高う事になる。


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