神話の軍神と賢神による新たなる神話譚(仮)

神嵜煉

序章 神々は召喚される

第1話 プロローグ

最も最古の英雄は死後、神達に迎えられ、軍神という神になる。

軍神は後の人々に英雄王と謳われた。

軍神は武神でもあったという。

人から逸脱した何かを持っていたという。


――曰く、軍神は全ての英雄の原型であったとされる。


――曰く、軍神は万の兵と1人で渡り合い、これを殲滅したという。


――曰く、軍神は多種多彩の武具を用いち、その技量は達人を越えていたという。


――曰く、軍神の眼は全てを見透すことが出来たという。


――曰く、軍神は神の与えた試練を乗り越えたという。


――曰く、軍神は戦場で無敗を誇ったという。


――曰く、軍神は戦闘で無敗だったという。


――曰く、軍神は精霊の長の寵愛を受けたという。


――曰く、軍神は化物を1人で討伐したという。


――曰く、軍神は常人の物差しで語ることは出来ないという。


――曰く、軍神は最初に神となった人間である。




軍神は最古の英雄であり、最初に神となった人間である。

賢神と謳われた王と義兄弟の盃を交わし、どのような状況でも離れることはなかったという。

その信頼関係は常人には想像の付かないものだったという。



賢神は最初に王族から神となった人間。

後に人々から皇神と謳われた。

神となり、賢神と称された。


――曰く、賢神は全ての王の原型であったとされる。


――曰く、賢神は神の与えた試練を乗り越えたという。


――曰く、賢神は軍神と渡り合えたという。


――曰く、賢神は悪意を赦さなかったという。


――曰く、賢神は全ての技量に優劣を付けることが出来なかったという。


――曰く、賢神は化物を1人で討伐したという。


***********


大陸の大半を保有するのが、神聖ジリール皇国。

その歴史は古く、建国は神話にまで遡る。


元々は国に属さない都市で、どの国も欲しがることのない土地であった。


その理由の1つに挙げられるのが魔物や化物といった類いの生物が蔓延る"魔窟"と呼ばれる森や山に囲まれた土地であったこと。

人々はそれらの脅威から逃れるために高い塀で都市を覆った。だが、そのために外の情報が全く入らない土地となった。

もう1つは土地柄が不便だったこと。

これらの理由がこの土地をここまでにしてしまった。


そんな閉鎖を続けるこの土地にも転機は訪れた。

この土地にも独自の文化や宗教が存在する。それらは時代が過ぎるに連れて昇華されていった。


神聖シメリア教はこの土地に唯一ある宗教だ。

複数の神々を同時に崇拝する多神教である。また、人から神になった者も同じように崇拝する。


この最初に人の身で在りながら、神になることを赦され、神格化した二人の人物がこの土地の転機となった切っ掛けである。




2人は神に願った。


――この土地が良くなることを。


1人の神は神託で2人に合計30の試練を与えた。

その神託の内容の大半が魔物や化物の討伐だった。彼らはそれを見事に乗り越えて、この土地の災いを消し去った。

その後、1人はこの土地の主として国という組織を作り上げ、もう1人は戦場で数々の武功を上げた。


それが神聖ジリール皇国の原点。


初代聖皇ギルバート・ジリールは死後、神になることを赦され、賢神という神となった。

後の人々は彼を皇の中の皇と讃えて、"皇神"と謳った。


英雄 ジルク・アラスカは死後、神になることを赦され、軍神という神となった。

後の人々は彼を英雄の英雄と讃えて、英雄王と謳った。


この国の神話は全て2人の神から始まるのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る