エピローグ

 あの事件から一週間――


 一週間の間に大小様々なことがあって、ドタバタした一週間だった。


 まずは小さな出来事として、鳳さんのファンクラブができたことも挙げられる。

 事件を解決したことによって、セラさんのようにマニアックではない、ちゃんとしたファンクラブが設立して、狂喜乱舞していた……自分のは――なかった……。


 大きな出来事の一つとして、風紀委員の設立と活動が認められたことがある。


 だけど、認められたとはいっても、制約があった。


 風紀委員が活動できる範囲はセントラルエリア限定で、他の治安維持部隊が使っている監視カメラの映像が見れる携帯のアプリは使えないという制約があった。

 その件に関して、一番文句を言うかと思った鳳さんは何も言わなかったので、意外だと思った。

 そう思って、これでいいのかと聞いてみると、鳳さんにとって、一番の目的は風紀委員の設立だったので、制約をつけられても気にしていないとのことだった。

 

 それと、あの事件の犯人だったドレイクさんがなぜか釈放されて、鳳さんの使用人兼のボディガードになったということもあった。

 この間ドレイクさんと会って話をしたけど、会うといきなり事件について謝ってきた。

 どうして釈放されたのかはわからなかったが、強面だけど、寡黙なだけでいい人そうだと話してみて思った。


 放課後、新たな治安維持部隊として正式に認められた風紀委員にあてがわれた風紀委員本部に、一足先に到着して幸太郎ソファに座りながらスナック菓子を食べて、のんびりと一週間のことを思い返していた。


 風紀委員本部――聞こえはいいが、場所は高等部校舎の中にある空き教室である。


 大きな後ろ盾がいないから、専用の建物が作られないという理由もあるが、人数が少ない風紀委員にはこれくらいがちょうどいいとの判断らしかった。


 当然、他の治安維持部隊のような建物ではないということに麗華は不満を抱いていたが、一週間経つと、不満がなくなったのか、私物をたくさん持ち込んできた。


 麗華は私物で情報収集を行うための最新型のパソコン、自身の美貌を逐一チェックするための姿見、大量の着替えが入った大きなクローゼット、本物のホワイトタイガーの毛皮で作られたラグ、本革のソファ、冷蔵庫、大画面の薄型テレビと、お高そうなものわざわざ業者を呼んで持ってきてもらい、部屋を飾りつけた。


 彼女が飾りつけた本部は、何だか胡散臭い成金の部屋だと幸太郎は思った。


 幸太郎は麗華の私物であるソファに座り、ボリボリとスナック菓子を食べていると、勢いよく扉が開かれ、風紀委員である麗華とセラが入ってきた。


 入ってくるや否や、麗華は幸太郎に詰め寄った。


「ソファの上でスナック菓子を食べるなと何度言ったらわかるのです! ああ、ボロボロとお菓子のカスが……」


「ああ、ごめん鳳さん」


「謝っている暇があったらさっさと立ち上がってお菓子のカスを拾いなさい!」


 麗華に叱られて幸太郎は慌ててソファから立ち上がり、ソファの上に落ちているお菓子のカスをウェットティッシュでふいた。


「せっかく私の温情で風紀委員の正式メンバーに仕方がなくさせたというのに、この体たらく。やはりあなたは一から教育しなければなりませんわね!」


「それ美味しそうですね、食べてもいいですか?」


「新商品で中々美味しかったから食べてみてよ」


「――って! 人の話を聞いていますの! ……取り敢えず、私にも食べさせなさい!」


 人の説教も聞かずに和気藹々とした雰囲気でスナック菓子を食べているセラと幸太郎に、麗華は怒りながらもスナック菓子を食べた。


 中々美味しくて麗華とセラは黙々と幸太郎が手に持ったスナック菓子を食べて、あっという間に中身がなくなった。


 まだそんなに食べていないのに、あっという間になくなったお菓子を見て、幸太郎はショックを受けた。


「し、新商品だったのに……」


「腹ごしらえもしたことですし――そろそろ風紀委員の活動をはじめますわよ!」


「わかりました。今日も怪我に気をつけて頑張りましょう」


 ショックを受けている幸太郎を無視して、麗華は風紀委員の活動である、セントラルエリアと、校舎の巡回をするために、セラと麗華はさっそく本部から出ようとする。


「さあ、行きましょう――七瀬君!」


「ほら! 何をぼさっとしていますの? さっさと行きますわよ――七瀬さん!」


 まあ、また買えばいいか――


 二人に促され、幸太郎は気持ちを切り替えて二人の後について巡回に向かった。




――つづく――



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