第一章 大脱走
第1話
赤色灯に照らされた薄暗い通路に、けたたましいサイレンと大勢の足音が響いていた。
瞳に獰猛で凶悪な光を宿した彼ら、彼女たちは全員
輝石使いたちの手には輝石が変化した
徐々に近づく目的地に全員表情を嬉々とさせ、歓喜の雄叫びを上げる。
しかし――歓喜の雄叫びが急に苦痛に満ち溢れた悲鳴に変わった。
そして、大勢の輝石使いが吹き飛ばされ、床に突っ伏して気絶した。
突然の状況に驚きながらも、激情に満ちた表情を進行方向に向ける。
進行方向――目的地を阻むかのようにして、一人の青年が立っていた。
青年の顔はボーっとしているが、よく見ればそれなりに整った顔立ちをしていた。それ以外特に目立った特徴はなく、印象に残らない顔をしていた。
ボーっとした顔の青年は武輝である巨大な大鎌――ではなく、槍を持っていた。
「ふざけんな! テメェ、ここまで来て裏切るつもりかよ!」
「そこどきなさいよ! もう少しで自由になれるのに!」
「お前だって自由になりたいんだろ? 今更良い子ちゃんぶってんじゃねぇよ!」
怨嗟に満ちた罵声に、無意味かもしれないというのに僅かな希望に縋ってしまった自分に青年は思わず心の中で自嘲を浮かべてしまう。
それでも、青年は――
「ごめんね、ここは通せないよ」
軽く言い放った青年の一言に、輝石使いたちの表情が激情に染まり、大勢から敵意を向けられるが、彼は自分の状況を理解していない様子で眠そうに欠伸をしていた。
多くの敵に囲まれている自分の危機的状況を理解していない、青年の呑気な態度がさらに怒りの炎に油を注ぐ結果になったが――
「ここは通さないって、僕が決めたから」
何気なく放った少年の言葉――その一言には決して退かない強固な意志と、有無を言わさぬ威圧感を放っていた。
多対一という圧倒的不利な状況だというにもかかわらず、たった一人の青年から放たれる威圧感に、大勢の輝石使いたちは気圧されるが――怯んだ心を奮わせるように雄叫びを上げ、青年に飛びかかる。
眼前にまで迫る多くの凶刃を目にしながらも、青年の表情はまったく変わらない。
真っ直ぐと相手を見据え、青年は武輝を握る手をきつくして――迎え撃つ。
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