千三百二十八話 下の連中を凝らしてくル!
右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を再召喚。
左手に義遊暗行師ミルヴァの短剣を召喚。
両腕を下げてヘルメとコセアドに両手の握り手が見えるように――。
<握吸>と<握式・吸脱着>を実行し――。
掌の上に、義遊暗行師ミルヴァの短剣の柄と白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄を浮かせた。
「おぉ」
「ふふ、コセアド、閣下の御業は手品ではないですよ」
「は、はい!」
はは、コセアドも別段に手品とは思ってはいないだろ?
とは言わず直ぐ<握吸>を実行――。
義遊暗行師ミルヴァの短剣と白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄を両手に握る。
人差し指、中指、薬指、小指、と順繰りに動かし柄の感触を得ていく。
続いてアイテムボックスに仕舞っておいた――。
ゼガサッチ産の魔酒と――。
回収したばかりの魔戦酒バラスキアを取り出して、<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせてから、両手の武器を消す。
小声で、ヘルメとコセアドに、
「……鑑定してないが、この魔戦酒バラスキアに、戦公バフハールと推測される酔っ払いからもらったゼガサッチ産の魔酒を試す。そして、下の階に先行するのは俺だ」
と、魔軍夜行ノ槍業が揺れる。
『カカカッ、ここで魔酒とは、酒槍の道も弟子の道ではあったことを思い出したわい』
『フハハ、たしかに』
『ふふ、うん、ここで飲むとか、面白すぎ』
『俺たちに負けず劣らず、やることが豪快だぜ』
『……あぁ、神界の玄智の森で大豊御酒を得ては、<霊仙酒槍術>を得ていたのだったな』
『魔酒よりも、わたしの断罪槍を……』
『もう入手したのだ、後の楽しみにとっておけ』
魔軍夜行ノ槍業の師匠の方々の会話はそのタイミングで聞こえなくなる。
ヘルメは、
「ここで<霊仙酒槍術>の修業を行うのは閣下らしいですが、魔戦酒バラスキアは未知数、少し心配です」
「ここで魔酒とは……」
ヘルメとコセアドの心配そうな意見はご尤も。
が、俺は他とは一味、二味は異なるか。
「魔戦酒バラスキアはハルホンクが飲みたそうにしたから大丈夫なはずだ」
「ングゥゥィィ、大丈夫ゾォイ」
「あ、はい」
「……」
コセアドの顔は見ないが、たぶん、『この人たち、大丈夫なのだろうか』とか考えているに違いないが構わず<導想魔手>が握る魔戦酒バラスキアの瓶を右手で奪い――蓋を開けた。直後、芳醇な香りが鼻孔の奥と胸を焦がす。
匂いだけで体が熱くなった、こりゃ凄いお酒は確定だ。
ワクワクしながら魔戦酒バラスキアの瓶を傾けて中身の液体を飲む――舌、喉がッ、熱いぃ――うぉぉぉぉ――と、薄いミント味!?
え、炭酸が強まる。更に僅かな梅のような味に変化を遂げた。
――美味い!! 同時に視界に光と闇の薔薇の花々が出現しチカチカする!
面白くなってきたァァ。
しかも、普通の飲み物ではない――。
食道や胃の蠕動運動が開始される前に、魔戦酒バラスキアの液体が触れた俺の細胞や内臓の体のすべてに吸収されていく感覚――。
ハイテンションのまま
魔戦酒バラスキアの瓶の素材を余すことなく
「ええ?」
「ングゥゥィィ――ウマカッチャン、ゾォィィ!!」
「まぁ!」
「うあっ!?」
コセアドも驚天動地。
芳醇な酒の香りを漂わせる武道着系統に様変わり。
元々がハルホンクの防護服だが……。
光と闇の魔力が渦巻くような陰陽の印と、槍と酒の印が胸にあるシンプルな柔道着っぽい。
端には繊維質の形を保ちながら液状化していた。
そして、恒久スキル<神獣
更に魔力が倍増した。
これはこれでかなり格好いい。
ピコーン※<魔戦酒胴衣>※恒久スキル獲得※
おぉ、衣装のスキル化か。
体が軽い……。
蝶のようになった気分でヘルメに体が軽いとアピールしようと、振り向く。とヘルメたちの頭部が薔薇に変化していた。
げぇ、これは幻覚か?
瞬きを行うとヘルメとコセアドの顔が元に戻った。
……良かった、少し副作用があるようだな。
「新衣装は素敵ですが、閣下の目が少しすわっているような……」
「そ、そうカ? ハハッ」
「シュウヤ殿……魔酒の影響で……」
二人の口から薔薇の魔力と共に花弁が舞う。
ヤヴァいが、少し面白いし、不安はマッタク、ナッシング――。
「フハハ、ダイジョウブヴィ、ビィはビクトリー!」
「……閣下が酔っ払いに……」
「……」
四眼のコセアドの表情に汗の粒が生まれるが、そこから薔薇の花が咲いていく。
瞬きすると、その薔薇は消えた。
よーし、「下の連中を凝らしてくル!」と宣言。
右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を再召喚。
左手に義遊暗行師ミルヴァの短剣を再召喚。
<鬼想魔手>が持っていたゼガサッチ産の魔酒を仕舞う。
「閣下なら大丈夫とは思いますが……」
「え、は、はい」
<導想魔手>と<鬼想魔手>を消す。
<生活魔法>で水を足下に撒く――。
<血道第三・開門>――。
<
<血道第四・開門>――。
<霊血装・ルシヴァル>――。
<滔天神働術>を発動――。
<滔天仙正理大綱>を発動――。
<水月血闘法>を発動――。
<闇透纏視>を発動――。
<闘気玄装>を強める――。
<魔闘術の仙極>を発動――。
<黒呪強瞑>を発動――。
<光魔血仙経>を発動――。
階段を下りようとしたら直ぐに棒手裏剣が飛来してきた。
心臓の鼓動音が世界に谺した。
その鼓動音にノルような棒手裏剣を義遊暗行師ミルヴァの短剣で軽く弾きながら<武行氣>で一気に降下。
「な!?」
目の前の四眼四腕の魔族の四眼は出目金的だ。
鼻の孔が大きく、右頬にエルフが持つような刺青がある。
ラマガンの顔には刺青は無かった――。
目の前の四眼四腕の魔族の右上腕と下腕の間をノーモーションで――。
白蛇竜小神ゲン様の短槍の<白蛇竜異穿>で穿つ。
「ぐぇぁ」
四眼四腕の魔族は脇腹から血飛沫を飛ばしながら吹き飛び椅子と木柱に衝突した。
白蛇竜小神ゲン様の短槍をコグロウの大針に変更。
木柱と衝突している四眼四腕の魔族は、既に脇腹と左上腕と右上腕から大量に血を流して動けていないが、そいつを睨みながら――。
<握吸>と<握式・吸脱着>と<握吸>を連続実行。
そのまま素早くコグロウの大針で<禹仙針術>を使用し、<投擲>した。
脛をコグロウの大針が突き抜けた。
そのコグロウの大針を<握吸>で右手に引き寄せて消し、白蛇竜小神ゲン様の短槍を再召喚。
刹那、居間にいる四眼四腕の魔族たちが棒手裏剣を<投擲>してきた。
二つの棒手裏剣が頭部に迫る。やや遅れてもう二つの棒手裏剣が飛来。
棒手裏剣の飛来速度が異常に遅く感じる。
ゆらりゆらりと棒手裏剣を避けながら棒手裏剣を<投擲>してきた手前の四眼四腕の魔族との間合いを零とした。俺と触れた机が吹き飛ぶ。
居間にいる四眼四腕の魔族は三名から四名に増えていた。
まだ隠れていたか――。
目の前の四眼四腕の魔族は至近距離で棒手裏剣を<投擲>。
その棒手裏剣を鼻先で避けながら左手の義遊暗行師ミルヴァの短剣で<飛剣・柊返し>を実行――下から上へと義遊暗行師ミルヴァの短剣を振り上げる。その刃が棒手裏剣を持つ右下腕の下を捉えて前腕を切断。
更に右手の白蛇竜小神ゲン様の短槍で<龍豪閃>――。
やや変則軌道に振るった白蛇竜小神ゲン様の短槍は、宙に舞う斬った右下腕を血飛沫に変えながら四眼四腕の魔族の右上腕から胸へと穂先が入る。
一瞬で四眼四腕の魔族の胸に龍の前足の爪が通り抜けたようなギザギザ状の傷痕が誕生。
四眼四腕の魔族の右上腕と胸の一部がズレ落ちる。
その魔族は険相を通り越した表情となり、
「がひぅ」
と、口から漏れた声は異質な声となる。
そんな四眼四腕の魔族の左右から俺の頭部と胸を突き刺そうと魔剣と短槍が迫った。
体を横に傾け、短槍の穂先を義遊暗行師ミルヴァの短剣で受けた――。
更に魔剣の刃を白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄で受けながら横回転――。
白蛇竜小神ゲン様の短槍一本で、魔剣持ちの四眼四腕の魔族の右上下腕と左下腕を回すように、横に回転しながら、その四眼四腕の魔族の背中を取る。
そのまま四眼四腕の魔族の首を義遊暗行師ミルヴァの短剣で刺し倒す。
「な、速すぎる――」
そう言いながら、残りの四眼四腕の魔族が、二つの短槍で、俺の頭部と足下を狙ってきた。
僅かに前進し――。
頭部に迫る短槍の穂先を義遊暗行師ミルヴァの短剣で受ける。
白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先で足下の穂先を受けながら横に回り、四眼四腕の魔族の右足の内側を左足で蹴り上げた。
「ぐ――」
四眼四腕の魔族は蹴りで体勢が崩れたように見えたが、反撃に四腕が握る二つの短槍を振り上げて突いてくる。
が、余裕の間で避けた。
右から白蛇竜小神ゲン様の短槍で<刺突>のモーションを取り、左手の義遊暗行師ミルヴァの短剣を<投擲>――。
フェイクからの<投擲>はバックステップで避けられた。
四眼四腕の魔族は背を壁にした。
直ぐに、追い打ちの白蛇竜小神ゲン様の短槍で<血穿>を繰り出す。
四眼四腕の魔族は二つの短槍をクロスしつつ下げる機動で白蛇竜小神ゲン様の短槍の<血穿>を防いできた。
白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先と二つの短槍の柄の衝突部から激しい火花と金属音が響く。
その間に落ちていた義遊暗行師ミルヴァの短剣を<握吸>で左手に吸い寄せる。
四眼四腕の魔族は、口から薔薇の魔力が出たように見えたが、消えた。
「チッ、お前は何者だ……」
「名はシュウヤだ、パリアンテ協会ではない。レン家と話し合いにきた存在だ。で、お前らは魔傭兵ドムラチュアだな」
「そうだ――」
と至近距離から左下腕と右下腕の手に持っていた棒手裏剣を下手投げで投げてきた。
即座に<血魔力>を体から放出させる。
<血想槍>と<血想剣>の雷式ラ・ドオラと蒼聖の魔剣タナトスを眼前と胸に出して、<投擲>された棒手裏剣を弾きながら<血穿>と<鬼神・鳳鳴名鳥>――。
※鬼神・鳳鳴名鳥※
※鬼神槍技術系統:極位戦舞スキル※
※龍異仙流技術系統:上位突き※
※神獣槍武術系統:上位亜種突き※
※血槍魔流技術系統:上位突き※
※光槍流技術系統:上位突き※
※闇槍流技術系統:上位突き※
※水槍流技術系統:最上位突き※
※水神流技術系統:最上位突き※
※風槍流技術系統:最上位突き※
※龍豪流技術系統:上位薙ぎ払い系※
※豪槍流技術系統:極位薙ぎ払い系※
※血龍仙流系統:極位薙ぎ払い系※
※三叉魔神経網系統:上位亜種※
※低空の突き技から始動する戦舞※
※使い手の背後に巨大な鳥を思わせる魔力の翼が迸る※
※<鬼神キサラメの抱擁>と<火焔光背>が必須※
※〝鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼〟を装備した状態だと鬼神槍流技術系統が強まる※
※使い手の背後に迸る魔力の翼は、鬼神キサラメが愛する鳳鳴名鳥の形※
至近距離からの雷式ラ・ドオラと蒼聖の魔剣タナトスを主軸にした低空機動の突きと斬りの戦舞が決まる。
四眼四腕の魔族の体を一瞬で微塵切り。
四眼四腕の魔族が持っていた短槍は、居間の宙空で<鬼神・鳳鳴名鳥>の戦舞の突きと斬撃を浴びて急回転しながら天井と壁に突き刺さっていた。
近くの壁と机と椅子と箪笥などは木屑となって消えている。
幅木が残るのみ。
すると、<禹仙針術>のコグロウの大針が脛を突き抜けていた四眼四腕の魔族が動く。
這って一階の外に出ようとしているようだ。
と、ガクンと、体が地面に吸い付くような重力が増した感覚を得た。
能力が落ちたか……。
魔戦酒バラスキアの効果が切れたと分かる。
ブースト効果は<脳脊魔速>的で、かなり戦闘向きな能力向上。
しかし<脳脊魔速>のような超加速ではない。
副作用もあった。が、強力な魔酒が魔戦酒バラスキアだ。
あ、<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>のお陰もあるか。
光魔ルシヴァルだから平気な魔酒かも知れない。
そして、<魔戦酒胴衣>はそのままだ。
すると、二階からヘルメとコセアドが下りてきた。
「閣下、またもや、お見事すぎる!」
「凄い、十数秒で、強者たちを倒すとは……」
ヘルメたちに頷きながら匍匐前進している四眼四腕の魔族に近付いて、前方に白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先を突き刺した。
すると、外にいた光魔沸夜叉将軍ゼメタスが、
「閣下ァァァ」
「あれ、もう終わったのですか」
光魔沸夜叉将軍ゼメタスとラムラントが現れる。
続いて、ナギサと、
「戦いは!!」
「閣下を守りたかったですが、やはり閣下は強い!」
アドモスが反対側から現れた。
ガードナーマリオルスの体が回る回転音も外から響いてきたからもうすぐ入ってくるだろう。
さて、俺たちに怯えた様子で見上げている四眼四腕の魔族に
「……状況は理解しているな? 所属は魔傭兵ドムラチュアと思うが、知っていることを教えてもらおうか」
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