千百三十五話 広場での戦いと魔歯ソウメル
斧槍のような鎌腕は凄まじい数――。
<血鎖の饗宴>を発動した。
同時に<闘気玄装>を発動し強める。
続けて<水月血闘法>を実行。
体から出た無数の血鎖が――前方へと――。
ごぉと波打ちながら扇を模りつつ進み、無数の鎌腕と衝突――。
直ぐに鎌腕は血鎖に溶かされ蒸発するように消えた。
次の鎌腕の群れも血鎖の群れと触れると蒸発して消える。
え? 天井が海?
否、湖か、天井の殆どが超巨大な水槽を超えたフォースフィールドのような物に覆われていた。ここは【バードイン霊湖】に繋がっている造りのようだ。なんて構造だよ!
「にゃごぉ!?」
「「おぉ?」」
相棒とポーさんたちも少し驚いている。相棒は俺の気持ちを読んだように黒虎の姿に変身し、俺の背後に移動しながら尻尾を絡めてきた。
信頼を凄く感じる。
「――皆、正面から続いている鎌腕の攻撃は任せろ」
俺の声と共に相棒は少し後退。
「了解したが、上の水は落ちてこないよな」
「はい!」
ムクラウエモンとポーさんの声に頷いて、
「まぁ大丈夫だろ――」
と言いながら半球をイメージして<血鎖の饗宴>を展開させる。
まさに飛んで火に入る夏の虫と言えるように――。
次々に飛来してくる先端が斧槍のような鎌腕の遠距離攻撃は、<血鎖の饗宴>の中に吸い込まれるように消えていく。
<血鎖の饗宴>の血鎖の群れは大波と大波が衝突し合いながら直進。
ミクロの血の鎖は凄まじい勢いで擦り合っている分かる。その血鎖の大波の津浪が埠頭を襲うように前列の百足高魔族ハイデアンホザーを一騎に飲み込む。
百足高魔族ハイデアンホザーだったモノは瞬時に潰れ散る。
燃焼したような蒸発音が響きまくった。前列の背後にいた百足高魔族ハイデアンホザー部隊は退きながら鎌腕を伸ばしてくるが、無駄だ。
雨霰といった勢いの鎌腕の連続攻撃を<血鎖の饗宴>で溶かし続けながら――逃げ遅れた百足高魔族ハイデアンホザーを狙う――。
次々に百足高魔族ハイデアンホザーの体を螺旋状の血鎖の群れが捉え貫く――。
一部の百足高魔族ハイデアンホザーは、<血鎖の饗宴>への対処は無理と悟ったか、退くことに徹した。
百足魔族デアンホザーよりも頭がいいから当然か。
<血鎖の饗宴>で俺たちを守るように扇状のバリアを展開させて、少し退かせた。
そして、右腕をチラッと見て、
「アクセルマギナ、状況は分かっているな。出て、戦いに備えてくれ」
「はい――」
戦闘型デバイスから銀色の魔力が迸り、その魔力は一瞬でアクセルマギナになった。
続けて、フィナプルスの夜会に手を当て、
「フィナプルスも出ろ」
フィナプルスが俺の腰から生まれるようにフィナプルスの夜会から出現。
翼を広げたフィナプルスは、周囲を見て、手元に黄金のレイピアを出現させた。
「「おぉ」」
ムクラウエモンとポーは、当然二人を見て驚くが、あまり説明はしていられない。
フィナプルスとアクセルマギナはポーとムクラウエモンに会釈した程度。
しかし、魔界王子テーバロンテは滅したが……。
どういう理由でここに留まり、俺たちを攻撃してくるのか。監督官の魔歯ソウメルに忠誠を誓ったか?
と考えながら広間の地形を把握。
最初に驚いたように、ここはとんでもない場所。
天井の大半と奥にかけて超巨大な水槽を思わせる魔法の膜が存在した。その魔法の膜が【バードイン霊湖】の水の流入を防いでいる。
天空の水族館ってレベルではない。
水底から水中を見上げている気分だ。
その水中には多種多様なモンスターがいる。
太刀魚に似たノコギリ刃の角と細長い胴体に二本の脚と蛇の尾を持つモンスターがうようよ泳いでいた。
血霊衛士が無数に屠ったメジラグだ。
やはり、この階層の一部は【バードイン霊湖】と繋がっている。
中央には巨大な水柱のような水槽が複数あった。
中心に鎮座するのは超巨大な水槽で、真下の高い壇と繋がっていた。
中央は一種の祭壇か? それとも手術台か、魔法陣的な仕組みか?
超巨大な水槽の中には、血霊衛士と人魚たちが戦っていた巨大な鮫のようなモンスターがいた。
が、中で拘束されている。
体中に硝子の杭が刺さっていた。
それら杭の頭から魔法の鎖が四方八方に伸びており、巨大な鮫のようなモンスターは超巨大な水槽の中で雁字搦め状態だった。
魔法の鎖は超巨大な水槽から外に飛び出て、壇にいる複数の百足高魔族ハイデアンホザーの体に繋がっていた。
その超巨大な水槽の回りには、他にも魔歯魔族トラガンと百足高魔族ハイデアンホザーがいる。
と、中央にいる存在が四腕四脚だった。
頭部はゴツゴツとした四角系で、細い四眼。
耳の位置にギザギザの穴があるが、あれが耳か?
全体的に大柄で、装甲と装甲の間から露出している肌の色合いから、銀色が混じるエナメル質だと分かる。
明らかに他と違う。
両肩に肩章付きの白衣にも見える、鎧のような装甲を至る所に備えたコスチュームを着ていた。
装甲も実は肌なのかも知れないが……。
背筋はジアトニクスさんのようにしゃんとしていて二本脚で立っている。更に鎧の下腹部辺りから根元が太い脚が二本出ていて、足裏が床に付いている。
斜め前に出ている二つの脚は関節が多い印象だ。
体の外に魔力が一斉放出されていないのは強者の証し。
同時に体の内部の魔力量は膨大で、魔力操作もスムーズ。
肩章といい白衣のような防護服といい、四腕四脚だから、あいつが監督官の魔歯ソウメルだろう。
更に、その監督官の魔歯ソウメルは、超巨大な水槽に閉じ込められている巨大な鮫のようなモンスターと魔線で繋がる巨大な勾玉のようなアイテムを頭上に浮かばせていた。
あの勾玉は人魚たちの秘宝?
【バードイン霊湖】で人魚たちが巨大な鮫モンスターと戦っていたが、その理由が分かった気がした。
推測すると、巨大な鮫モンスターは【バードイン霊湖】の主的な神格を有した存在か?
それを利用していたのが監督官の魔歯ソウメル?
心理学のプロファイリング的に、神格を得て魔界王子テーバロンテを出し抜こうとしていた。とかも考えられる。
地上の乱戦模様の理由かもな。
そして、四脚と聞いていたからグリズベルのような姿なんだろうかと予想していたが、違った。
近くにはカチ・ボルに似た存在も二体いる。
頭部がエイリアン風で、体が百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンが融合しているような魔族だ。
あれも魔界王子テーバロンテの眷属だろう。
魔界王子テーバロンテの眷属らしき監督官の魔歯ソウメルとカチ・ボルのような存在以外にも、壇の上には百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンの部隊が多い。
ざっと百はいるか。
ボス的な存在を把握したところで、周囲を見ているフィナプルスとアクセルマギナに、
「二人とも、ここは【バードイン迷宮】で【バードイン霊湖】と繋がっている地下空間。中央にいる存在がボスだろう。魔界王子テーバロンテの眷属で魔歯ソウメルのはず」
「はい、状況はある程度分かります」
「はい、話は戦闘型デバイスにいる時でも聞いていますから、説明は不要ですよ」
「了解」
壇の右側には、床に固定された寝台が複数あり、鎖などで雁字搦めにされている魔族たちが載せられていた。
病気を抱えていそうな魔族――。
点滴のようなカテーテルと繋がっている魔族――。
切り傷だらけの魔族――。
上半身に手術服を着た百足高魔族ハイデアンホザーに切断されている魔族――。
その寝台の向こう側には内臓類が入った半透明な袋が浮いていた。
近くに血液が入ったポリタンクのような物も陳列されている。
魔歯ソウメルがいる壇は巨大な四角形。
壇の縁は、天井のフォースフィールド的な魔法の膜とは色違いのセキュリティーゲートと似た魔法の膜によって囲われている。
ひょっとして中央にいる魔歯ソウメルが、百足魔族デアンホザーや魔歯魔族トラガンを融合させてカチ・ボルのような魔族を新たに造り上げた張本人か?
ロズコたちがいた刑務所近くの下層がこの辺りってことだろうか。
細かな地形をすべて把握しているわけではないが……。
血霊衛士で探索した感覚と血の匂い地図の場所的に、今俺たちがいる場所と近いと分かる。
魔歯ソウメルがいる壇の下に近い広間の中央には、巨大な檻が二つ並んでいた。檻の中には拘束具で拘束されている大柄の魔族がいる。
中央から右に離れた広間の壁には横幅の広い階段とアーチ状の出入り口と鉄格子付きの小部屋が複数あり、それら出入り口と鉄格子付きの小部屋の中に複数の魔素があった。魔素の形からして、鉄格子の中に囚われている魔族がいる? が、魔歯魔族トラガンらしき魔素もあった。
ここからでは右側の小部屋はあまり分からないから後回しだ。
急ぎ、血文字で皆に、
『俺たちが進んだ先は巨大な広間で、中央には魔歯ソウメルがいた。しかも天井と中央の高台の壇は【バードイン霊湖】と繋がっている造りだ。で、その天井は魔法の膜で覆われている。今は、その膜のお陰で湖の水は流入してこないが、何かが当たって魔法の膜が破れれば、一気に【バードイン霊湖】の水がこの空間に流入してくるだろう。そして、俺たちの進んできた通路内に罠はなかったが、魔歯ソウメルが自由に発動できる罠があるかもしれない。そういったリスクは捨てきれないが……ロズコにイスラさんたちの気持ちを考えたらな、キサラはどう思う?』
『シュウヤ様と一緒に討伐戦に参加したい、一矢報いたいと思っているはずです。ですから、皆を連れて直ぐに向かいます』
『了解した。ならば、派手に<
ヴィーネの血文字が直ぐに浮かぶ。
『分かりました。今すぐ皆と向かいます』
『はい、行きます!』
ヴィーネとキッカの血文字を見て頷くと同時に――。
膨大な<血魔力>を込めた<
<霊血の泉>も発動した。
続けて<血道第五・開門>を意識し発動――。
<血霊兵装隊杖>を発動する。
ゼロコンマ数秒も経たずに足下から<血魔力>が拡がり、血の湖が出来上がった。
「――ングゥゥィィ」
と
同時に<血鎖の饗宴>を操作――。
百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンを屠りつつ、血文字連絡を終えた。
そして、
『グィヴァ出ろ、左に多い百足高魔族ハイデアンホザー連中を頼む。中央と右の連中は俺たちがやる』
『はい、中央の壇の手前の大きい檻の中で囚われている魔族らしき存在は敵でしょうか』
『分からないが、攻撃を受けるまで様子見で、今は外にいる奴らを倒すことだけに集中だ』
『はい!』
右目から飛び出る闇雷精霊グィヴァ――。
瞬く間に女体となると、雷鳴を響かせながら<血鎖の饗宴>を回り込むように左側へと向かう。
闇雷精霊グィヴァの下の血の湖の表面に波紋が走る。
と、闇雷精霊グィヴァの移動先の左の広間で閃光が走った。
刹那、百足高魔族ハイデアンホザーの前列の上半身が一斉に切断されて真上に飛ぶ。
闇雷精霊グィヴァは側転を行い片膝の頭を床に付けて、膝頭を基点に横回転してから動きを止める。
闇雷精霊グィヴァの左腕は目映い暗い輝きを放つ雷刀のような形に変化していた。
その闇雷精霊グィヴァに他の百足高魔族ハイデアンホザーたちから、
「「フシャァァ――」」」
と斧槍のような鎌腕が伸びていく。
グィヴァは軽やかに立ち上がり、身を捻って駆け、斧槍のような鎌腕を避けてから動きを止める。
左腕を元に戻している闇雷精霊グィヴァは、俺をチラッと見てから敵を見据え、両腕を伸ばし、
「<雷狂蜘蛛>を使います――」
「了解した」
直後、闇雷精霊グィヴァの両手の先端に魔法陣が生成されると、その魔法陣は暗い輝きを放つナガコガネグモのように変化し、放たれる。
その放たれたナガコガネグモは分裂し増殖しながら百足高魔族ハイデアンホザーの部隊と衝突し、爆発。
ナガコガネグモの連鎖爆撃が<雷狂蜘蛛>か、強力だな。左側の百足高魔族ハイデアンホザーの部隊の大半を屠った。
闇雷精霊グィヴァの活躍で壇の防衛を固めていた百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンが左側に向かう。
近くにいる皆に、
「俺とロロは、壇近くにまで逃げた百足高魔族ハイデアンホザーの部隊を潰しながら天辺を目指し、監督官の魔歯ソウメルに突っ込む」
「分かりました。キサラやロズコたちが来るまで、ここで全体的なフォローを行います」
フィナプルスがそう発言。
フィナプルスなら確実だ。
アクセルマギナは、
「右端の鉄格子付近に向かいます」
「了解したぜ。俺とポーも、そこの魔銃持ちの嬢さんと同じく、右側の百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンを潰しに掛かる」
「主、承知致しました。ムクラ、先を頼むぞ」
「おう――」
魔蛙ムクラウエモンとポーさんが広間の右に向かう。
アクセルマギナも続いた。
右を見ながらも壇近くにいる連中に――。
<血鎖の饗宴>を向かわせる。
退いて逃げていた百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンを次々に貫いていく。
ポーさんは器用に大きな煙管を咥えながら吸っていた。
大きな煙管は重そうに見えるし、鈍器にもなりそう。
角の先端にある装具の輪には手を掛けていない。
遠距離から中距離戦を意識している?
すると、<血鎖の饗宴>を迂回するように移動していた百足高魔族ハイデアンホザーの一隊がムクラウエモンとポーさんに向け斧槍のような鎌腕を繰り出していく。
フォローの《
一部の百足高魔族ハイデアンホザーを《
一瞬で体をバラバラにしたが、いかんせん、百足高魔族ハイデアンホザーの数は多い。
ムクラウエモンの上に跳び乗ったポーさん。
ポーさんを乗せたムクラウエモンが跳ねた。
百足高魔族ハイデアンホザーが繰り出した鎌腕の遠距離攻撃を避ける。
と、ムクラウエモンは天井のフォースフィールドを彷彿とさせる魔法の膜に四肢を付けた。そのフォースフィールドは【バードイン霊湖】の水の流入を防いでいるんだよな……。
【バードイン霊湖】の水の中を泳ぐ魚たちと、貝の群れとワカメのような群れが見えていて、また不思議な光景だ。
ポーさんも髪が逆立つように下がって逆さま。
そんなポーさんを乗せているムクラウエモンはフォースフィールド的な膜の上を駆けていく。
大きいヒキガエルかガマガエルにも見えるムクラウエモンはぴょんぴょん跳んでいるから結構可愛い。
ポーさんを乗せて天井を移動するムクラウエモンに向けて百足高魔族ハイデアンホザーたちが飛ばしている鎌腕が天井の魔法の膜を突き抜けてしまう。
げ、ヤヴァいか?
鎌腕は【バードイン霊湖】の中にいたメジラグを貫いた。
水が一気に流れ出る。
急いで鎌腕を収斂させる百足高魔族ハイデアンホザーだったが、水の流入は直ぐにストップした。
天井の魔法の膜は自動的に塞がっている。
一安心、魔法の膜はかなり高度か。
刑務所の奥にあった魔法の膜よりも再生力が高いようだ。
と、その百足高魔族ハイデアンホザーにアクセルマギナが放った魔銃の魔弾が次々にヒット。
頭部が弾け飛び、胸元の歩脚も爆発するように散った。アクセルマギナは一体一体確実に敵を屠ってくれている。
フィナプルスも前進し、近付いてきた魔歯魔族トラガンの体を黄金のレイピアで突きまくる。
体を穴だらけにして倒していた。
と、ムクラウエモンの頭部に乗っているポーさんから笛の音が響いてきた。
同時にムクラウエモンの体から音波のような衝撃波が発生し、近くにいた魔歯魔族トラガンを吹き飛ばしていた。
更に、ムクラウエモンは口を広げ、
「げろげろ、げろげーろ、いっさむ――」
煙が混じる泡ぶくブレスを吐いた。
百足高魔族ハイデアンホザー五体と魔歯魔族トラガンに泡ぶくブレスを喰らわせた。
泡ぶくブレスを喰らった百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンは硬直。
蝋人形のようなモノに変化していた。
その固まった百足高魔族ハイデアンホザーにアクセルマギナが魔銃の弾丸を幾つも喰らわせる。
固まった百足高魔族ハイデアンホザーは崩れるようにバラバラになった。
大きいムクラウエモンは、他の固まった百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガン目掛けて跳んだ。
一気に固まった百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンを自らの大きさを活かして押し潰していた。
またも笛の音がムクラウエモンの頭部から響く。
ポーさんの煙管からか。
ムクラウエモンの回りに音楽的な楽譜が描かれた魔法防御層が展開された。色合いは薄い煙的だった。
さて――。
<血鎖の饗宴>を消した。
直ぐに、壇付近を逃げまわっていた百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンが動きを変えた。
左側と右側に移動している百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンは俺には注目していない。
相棒の黒虎ロロディーヌ――。
フィナプルス――。
闇雷精霊グィヴァ――。
とアイコンタクト。
「にゃご――」
「「はい」」
直ぐに<血道第四・開門>の<霊血装・ルシヴァル>を解除して、面頬装備を取り止めた。
もう走り出していた相棒に、壇を守っている百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンが群がっていく。
一部は闇雷精霊グィヴァの雷槍のような攻撃を喰らって散っていた。
「ロロ、壇の上に向かう――」
「ンン――」
黒虎ロロディーヌに跳び乗った。
そのまま両手に神槍ガンジスと魔槍杖バルドークを召喚。
同時に<龍神・魔力纏>を発動。
新たな<魔闘術>系統の高まりで胸元が熱く感じるまま魔槍杖バルドークに<血魔力>を通し<柔鬼紅刃>を実行――瞬く間に嵐雲に似た穂先が紅矛と紅斧刃に変化を遂げた。
紅斧刃を寝かすと、魔槍杖バルドークの螻蛄首から金属音と重低音の嗤い声が響く。
そして、壇を守るように魔歯魔族トラガンたちが多い空間に俺を乗せた
ハンマーのような腕を振り上げていた魔歯魔族トラガン目掛け<豪閃>――。
魔槍杖バルドークの紅斧刃が魔歯魔族トラガンの両腕と胸元を豪快に削いで胸を潰すように倒す。
技終わりの隙を狙うように左から百足高魔族ハイデアンホザーの鎌腕が迫るが――。
「――にゃご!」
と
中にいる拘束具で囚われている存在は無視して越える。
そのまま魔法の膜に向け「にゃごぁぁぁぁ」と紅蓮の炎を吐いた。
指向性の高い炎の槍にも見える紅蓮の炎は渋い――。
セキュリティーゲートと似た魔法の膜を紅蓮の炎は突き抜けた。
壇の上にいたカチ・ボルに似た魔族と魔歯魔族トラガンの一体をも貫いて、魔歯ソウメルの近くの床を貫くように溶かした。
そのまま魔歯ソウメルに近付く――。
魔歯ソウメルは一本の腕を重機関銃のように変化させる。
見た目はM2重機関銃的だ――。
「<バードイン霊重透膜>を破っただと! なんだ、お前たちは!!」
と叫びながら筒状の魔重機関銃っぽい腕を俺たちに向け歯の弾丸を連射してくる。
大小様々な歯の速度は速く、魔歯魔族トラガンの比ではない。
――
同時に、その
魔歯ソウメルとカチ・ボルに似た魔族は、
が、
目の前にいる魔歯魔族トラガンの頭部を狙った。
左腕で手刀を突き出すように繰り出した神槍ガンジスの<龍異仙穿>でその頭部を貫く。
魔歯魔族トラガンの血飛沫染みた液体を浴びた方天画戟に似た双月刃が煌めいた。
続けて、頭部を失った魔歯魔族トラガン魔族の死体に向け魔槍杖バルドークを振るう。
死体の腹に魔槍杖バルドークの柄を衝突させて吹き飛ばしてから前に跳躍――斜め後方からの鎌腕の攻撃を避けた。片足で着地後、直ぐに爪先回転を行い、追撃の鎌腕の攻撃を避ける。壇の上を右へと移動しながら――俺の背後を狙ってきた鎌腕を出した百足高魔族ハイデアンホザーに――。
<
数本の歩脚が潰れるように散った百足高魔族ハイデアンホザーは「フジャァ――」と奇声を発して魔法の膜の外に吹き飛んだ。
そのまま<双豪閃>――飛来してきた斧槍のような鎌腕を神槍ガンジスと魔槍杖バルドークで両断。その<双豪閃>終わりの隙を無くすように<血道第三・開門>――。
<
鎌腕を俺に繰り出した左にいる百足高魔族ハイデアンホザーに近付いた。
同時に<滔天神働術>と<水神の呼び声>を発動。
――水と血と魔界の大気に俺の意識が混じる感覚を得ると、周囲の水と血の粒が浮き上がる――。
その粒を自ら浴びるように百足高魔族ハイデアンホザーに向け<水雅・魔連穿>――。
神槍ガンジスと魔槍杖バルドークの連続突きが百足高魔族ハイデアンホザーの歩脚と胸と頭部に決まり、体を一瞬で穴だらけにした。
死体を弾きつつ右斜め前に出たところで、魔槍杖バルドークの<豪閃>で魔歯魔族トラガンの脚を切断し、左回転を行いながら神槍ガンジスで<血龍仙閃>を発動。
魔歯魔族トラガンの頭部を神槍ガンジスの方天画戟と似た穂先が捉えて、両断――そして、魔歯ソウメルとカチ・ボルに似た存在に向け――。
《
魔槍杖バルドークの前方から無数の《
魔歯ソウメルは、片腕からエナメル質の歯の群れを飛ばしてくる。
<鎖>を消しながら更に前進。魔歯ソウメルは、
「――お前の目的はこれか?」
と、
「それはなんだ? で、お前は魔歯ソウメルか?」
「そうだ……これは【バードイン霊湖】の秘宝……レイブルハースの勾玉だ」
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