千百二十九話 魔コイン類の束の鑑定結果

 

 次は魔コインの束の鑑定結果を、


「ラムーさん、魔コインの束の鑑定結果を頼む」

「はい、レブラの魔白金コイン三十枚とレンシサの魔白金コイン百五十枚にディペリルの高級魔コイン五十枚です。どれも魔力が豊富に内包されており、魔力源となりえる代物。肖像もしっかりとしているので、これら魔コイン類を使用できる環境の村や街の商店などで提示すれば、それに見合った品物と交換が可能でしょう」

「お、ならこの魔コイン類は皆で分けてくれ。ジアトニクスさんも遠慮無く取ってくれていい」

「「「「おぉ」」」」


 【グラナダの道】の面々と囚われていた魔族たちが嬉しそうな声を発した。痩躯なジアトニクスさんは背筋を伸ばしたまま、


「分かりました、感謝致します――」


 と胸元に手を当てて丁寧にお辞儀をしてくれた。

 なんか軍人っぽい印象がある――。

 俺も『どう致しまして』という意味を込めたラ・ケラーダを返した。


 そして、普通の人族に見えるから、かえって目立つビートンさんが、


「まじか、太っ腹すぎる!!」


 と発言。

 つるっ禿げで渋いロズコとミジャイは、拳を突き合わせ、


「隊長、シュウヤ様についていくと決めて大正解だ!」

「おうよ、当たり前だ」


 と笑顔で語り合う。続いて、


「「やったな」」

「おこぼれどころか大金かよ! かぁ~、やっぱ最高の魔君主だな!」

「おう、運が巡ってきたぜぇ、マワリテメクルだぜぇ!」


 ビートンさんとギンさんとピエールさんが抱き合って喜ぶ。

 エトアさんも「ふふ、皆が喜んでましゅ、ボクも嬉しいでしゅ~」と喜んでいる元囚人の魔族たちを見て嬉しそうに笑っていた。


 背丈が低くて、少女のような見た目でもあるから可愛らしい。

 続いて、鱗人カラムニアンっぽい魔族の女性が、ガッツポーズしてから、


「やった~」

「ふふ、魔歯ソウメルを倒して憂さを晴らしたら、シュウヤ様たちと一緒に外に出て、どこかの街や村で色々と買い物がしたいわ」

「シュウヤ様たちと一緒に居れば、それができる」

「うん、でも、なんか夢みたい」

「そうねぇ……でもでも、無数にいた百足魔族デアンホザーの部隊をシュウヤ様たちが倒したのは現実よ? まだ下にいるようだけど……」

「あ、うん、伸びた歩脚を槍で弾いたと思ったら、一瞬でその歩脚を伸ばしてきた百足魔族デアンホザーに近付いて、その体を貫いて倒していたし、圧巻だった。集積官のリダヒと魔歯魔族トラガン部隊をあっさり倒したと【グラナダの道】たちが語っていたのも頷ける」

「うん、魔界王子テーバロンテを倒しただけはある」


 と鱗人カラムニアンっぽい魔族と魔嗅豚族プレグシュルのファウナさんとフーに似た魔族が抱き合いながら話していた。

 

 三人の顔は美形でスタイルも良い。


 鱗人カラムニアンっぽい魔族の方は、先程も見せていたが、鱗の形状と色を変化させることが可能。


 今も鱗の形状と色を微妙に変化させていた。

 見た感じ、周囲の景色を全身の鱗に写して隠れる能力を連想するが……そんなカムフラージュ能力を持つかも知れない鱗人カラムニアンっぽい魔族の女性は興味深い。


 あ、胸の膨らみとスタイルの良さで勝手に女性と判断したが、性別がない魔族の場合もあるのか?


 魔嗅豚族プレグシュルのファウナさんは女性の顔のままだが、顔の部位が内部に吸い込まれて消え、代わりにその顔の内部から色々な鼻が出て、鼻だらけの顔に変化できる。

 

 魔族の生態系はセラ以上に複雑なんだろうな。

 そんなことを考えながら、皆に、


「先ほどの話の続きではないが、この魔コイン類も魔石のように各地で通貨代わりに使えるなら、結構な金かな」


 と聞いた。

 ミューラー隊長たちとロズコたちが頷く。

 すると、ラムーさんが、


「はい、通用すれば魔石代わりになります」

「了解した。魔コイン類だが、土地柄によって価値は異なるのかな」

「はい、魔コインが通じない、または、魔コインを見て激怒する魔族の魔商人と魔役人がいる場合があります。そうした魔族と出会ってしまったら……最悪殺し合いに発展し、倒しても、その地域の権力者から賞金をかけられて、賞金稼ぎや魔傭兵、下手したら軍などに追われるはめになる可能性もあります。捕まれば喰われるか奴隷扱いか……」


 ラムーさんの言葉の節々に合わせて【グラナダの道】の面々以外のロズコたちも頷いていた。


 イスラさんも俺に近付いてきて、


「私の他にまだ他のマカラ・ベルマランがいた頃、魔石と神々や諸侯が刻まれた魔コイン類は交易の要だった。特に【ケイン街道】沿いの村や【サビルの森】にある【エミラ村】に狩魔の王ボーフーンの支配地域の【狩魔の大平原】、【グリズベルの大陰歩山】、【狩魔の王ボーフーンの地】、【朽ちた山道ベンアル】、【血槍イーヴァルの丘】などでは、セラの金貨を見たことがある」


 と教えてくれた。

 ケイン街道などは……〝列強魔軍地図〟にあった。


 〝列強魔軍地図〟には、


 【甲狂ドラゴン丘】。

 【黒藻蜘蛛の森】。

 【魔霊ヴェサルガの墳墓】。

 【ブラックヘブン城】。

 【魔界八大湖ペッサマグラス】。

 【地獄火山デス・ロウ】。

 【無間地獄】。

 【破壊されたアムシャビス族の地】。

 【紅光の霧】。

 【怒りの憤雀馬岩連山】。

 【憤怒の魔匈奴】。

 【ゼアの央火】。

 【憤怒のゼアの地】。

 【怒峰闇楽天堕バミューダ】。

 【紅玉環の大峡】。

 【破壊の王ラシーンズ・レビオダの地】。

 【破壊ノ極致・無】。

 【破壊白無大伽藍】。

 【破壊の王の槌墓場】。

 【メリアディの命魔逆塔】。

 【破壊の魔雷凄】。

 【狂気の王シャキダオスの地】。

 【メリアディの書網零閣】。

 【魔命を司るメリアディの地】。

 【グルガンヌ大亀亀裂地帯】。

 【暗雷の槍墓場】。

 【闇雷ルグィの森】。

 【グルキヌスの谷】。

 【決死崖】。

 【目牙】。

 【瀝青の闇】。

 【ムグの森】。

 【バージデランの山嶺】。

 【天魔鏡の大墓場】。

 【魔蛾ノ大塔】。

 【蛾の傷場】。

 【地獄の大平原】。

 【陰蛾平原】。

 【リルドバルグの窪地】。

 【狩魔の大平原】。

 【グリズベルの大陰歩山】。

 【狩魔の王ボーフーンの地】。

 【魔神血沼】。

 【血沼地下祭壇】。

 【暴虐の大平原】。

 【ボシアドの街道】。

 【大魔城バルアド】。

 【旧神ベキアンの討伐記念大魔塔】。

 【暴虐の王ボシアドの群岩城】。

 【四大死海の大領域】。

 【闇神リヴォグラフの地】。

 【闇神リヴォグラフの絶魔殿】。

 【闇神リヴォグラフの闇渦の領域】。

 【魔毒鳴山】。

 【魔城ハーグリーヴズ】。

 【毒森の虎蜘蛛】。

 【キルアンの大街魔塔】。

 【魔毒の女神ミセアの毒釣り堀】。

 【毒嵐谷センシーヴァル】。

 【毒の守森城パーシント】。

 【大蛇パパスフィッシャーの地】。

 【ボシアドの魔楽街砦】。

 【闇神リヴォグラフの裂谷の地】。

 【ヘイヴェーン闇牙峡谷】

 【穿山ウアンの戦場】。

 【魔牛馬ラナディスの暴風】。

 【ゴウルボウルの魔鋼の森】。

 【十層地獄大門層】。

 【ライランの血沼城】。

 【魔城ルグファント】。

 【ヘイバトリクス死丘】。

 【ヒメリウスの魔岩街】。

 【リュバの把針沼】。

 【ホルレインの雨霊】。

 【コーネリアスの智恵】。

 【バシニア地獄火門城塞】。

 【ホルレイン愚烈兵城】。

 【ホルレイン平原】。

 【ホルレイン山】。

 【アリゾンの棚岩場】。

 【アリゾンの虎口谷城塞】。

 【アリゾンの氷竜列城】。

 【アリゾン平原】。

 【アリゾン氷列の孔場】。

 【グルガンヌの森】。

 【グルガンヌ湖】。

 【グルガンヌ砂漠】。

 【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】。

 【ライベガの篳篥村】。

 【グルガンヌ山脈】。

 【グルガンヌの大草原】。

 【グルガンヌ中亀裂群】。

 【グルガンヌ冥道】。

 【グルガンヌの骨場】。

 【グルガンヌの滝壺】。

 【テフカンドラゴンの毒沼】。

 【大河ハレゼレル】。

 【魔剣師デボロアの墓】。

 【魔沸骨洞窟】。

 【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】。

 【ゴールデンアックスの狩り場】。

 【獅魔金斧ゼガの廃城】。

 【大骸骨ドス・ボル霊廟】。

 【ソンリッサの子唄】。

 【ソンリッサの滝泳】。

 【ソンリッサ小草原】。

 【ソンリッサの群れ丘】。

 【ソンリッサの誘い谷】。

 【ソンリッサの宮ノ原】。

 【ソンリッサの群れ森】。

 【ソンリッサ山脈】。

 【巨大ソンリッサ伝説の地】。

 【仙妖魔秘剣ノ谷】。

 【フーディの陰・鳴秘森】。

 【フーディの烈羽平原】。

 【黒髪幼妙墓】。

 【グロウバロウ柩車】。

 【仙骨瞑剣ヶ丘】。

 【仙妖魔の小平原】。

 【悪愚王祖パインモースの墓】。

 【ルグファント平原】。

 【魔猪王イドルペルクの丘】。

 【宵山ルグファント断崖】。

 【亡剋鬼謀ノ廃砦】。

 【皇魔ヴァハンと闇神アーディンの霧残骸迷宮】。

 【魔将デグロの砦】。

 【悪愚槍岩群トースン】。

 【血槍イーヴァルの丘】。

 【闇神アーディンの槍森群】。

 【悪神デサロビアの大王眼宮】。

 【悪神デサロビア吸霊山脈】。

 【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】。

 【黒兎の避暑地】。

 【悪夢の絶叫パフィナクルナ山】。

 【ヴァーミナの冥々森】。

 【氷原ボーフーン】。

 【狩魔の王ボーフーンの郷楽城】。

 【三衝三鬼城】。

 【魔公爵ゼンの大城閣】。

 【ゼンの街道】。

 【キンヴァル平原】。

 【バーミデルの砦】。

 【大魔獣ベサルヴァル生息地】。

 【ヴァルトルア烈火闘技場】。

 【ルグファント森林】。

 【亡痕戦旗ノ群】。

 【眼魔シアド・イアブの魔霊城】。

 【狂眼トグマの砦廃洞穴】。

 【血炎大山エショド・ルシュハア】。

 【血法大魔城トータルヴァインド】。

 【高祖吸血鬼達ノ永久墓廟】。

 【ルグナドの血法大院】。

 【ルグナドの血大迷宮】。

 【ルグナドの脾臓宮】。

 【ペースン大峡谷】。

 【血炎柱エンショウ】。

 【トモラギの荒涼地】。

 【戦神ヴァイスと大闘地】。

 【ウラニリの大霊神廟】。

 【忌丘神狼ハーヴェスト】。

 【双月ノ破壊碑マハハイム】。

 【吸血神ルグナドの大地】。

 【荒神猫キアソードの封印地】。

 【キュイル大街城】。

 【ドバーの港街】。

 【怪夜の暗黒街セイヴァルト】。

 【怪魔の街・ヴァルアン】。

 【吸霊忌・リヴォグラフ仇黒戦場】。

 【血の大海ハブランドア】。

 【ルグナドとレブラの避暑地】。

 【魔街異獣の繁殖地】。

 【ヴァルマスクの大街】。

 【パイロンの丘】。

 【ドムラピエトーの湖】。

 【ミドランドの寺院】。

 【ハルゼルマの荒涼地】。

 【ローレグントの砂古城】。

 【ペインアルファの羅城】。

 【荒神パグルの右腕封刹山】。

 【デンヤーエルの魔塔】。

 【バフシュルト血大城】。

 【フォーラルの血道】。

 【ミアンラロスクの脚岩】。

 【ドームラランの道】。

 【血炎大竜ヴァインシュルトの峡谷】。

 【吸血鬼ラヴァレの大砦】

 【怪魔キーレファニスの墳墓】。

 【ルグナドの大血沼】。

 【吸血神ルグナドの大灯台】。

 【吸血神ルグナドの類縁地】。

 【吸血断崖城エイジハル】。

 【トークマダルクの大魔塔】。

 【虚無ノ大源森】。

 【廃城ギリコル】。

 【堕落の戦巫女シチィルの宮廷】。

 【水帝フィルラームの屛風大岩山】。

 【戦巫女バーメルの砦跡地】。

 【元八大龍王ニルヴァーナ永眠の地】。

 【戦神ドン・ベルアン打倒記念碑】。

 【ヒアドゥの森】。

 【戦技魔姫ザスーヌの地】。

 【変異獣の大森林】。

 【ヘーフィル城】。

 【廃城エイゲルバン】。

 【アジャベリの巣】。

 【魔霊大森林キジキル】。

 【魔霊弧の墓】。

 【恐蓮キヒマリフの毒沼】。

 【霊堕サーチモルの旧宮】。

 【血雷幻塔キシュアル】。

 【大吸血鬼魔竜蒼ムーンの月影】。

 【ゲトビ・ソルガンの牢獄大魔城】。

 【エイヴィハンの地】。

 【レンガ・マフィルの魔連血九刀群】。

 【ディーラの断崖迷宮】。

 【覇王メイズスの魔谷】。

 【古城ゼド・マリス】。

 【フォンマリオンの魔塔】。

 【バーヴァイ城】。

 【バーヴァイ平原】。

 【古バーヴァイ族の集落跡】。

 【ケーゼンベルスの魔樹海】。

 【ローグバント山脈】。

 【魔皇ローグバントの古城】。

 【ルーレの廃墟】。

 【ヒュポルアの渓谷】。

 【トムラ・ヒュポルアの孤児院】。

 【バルアの古道】。

 【ケムサーの里】。

 【テンシュラン遺跡】。

 【シテングの古代遺跡】。

 【源左サシィの槍斧ヶ丘】。

 【源左蛍ノ彷徨変異洞窟】。

 【緑王玉水幢ノ地下道】。

 【コツェンツアの碑石】。

 【開かずのゲイザー石棺群の間】。

 【源左ミーロの墓碑】。

 【立花弦斎の羨道】。

 【源左ゼシアの命秘道】。

 【ベルトアン荒涼地帯】。

 【百足大迷宮】。

 【ゲーメルの大霧地帯】。

 【黒魔族の京洛】。

 【メイジナの大街】。

 【メイジナ大街道】。

 【メイジナ大平原】。

 【メイジナ海】。

 【シャントルの霧音唖】。

 【レムラー峡谷】。

 【デアンホザーの地】。

 【デアンホザーの百足宮殿】。

 【テーバロンテの王婆旧宮】。

 【レン・サキナガの峰閣砦】。

 【蜘蛛魔族ベサンの魔塔】。

 【ベサンの大集落】。

 【サネハダ街道街】。

 【廃城デラバイン】。

 【デラバインの廃墟】。

 【マセグド大平原】。

 【マセグド城】。

 【モース砦】。

 【トンガバー城】。

 【トンガバー沼地】。

 【ロクザルルの湖】。

 【ロクザルル城】。

 【ロクザルル街道】。

 【レンコデの街】。

 【バードイン城】。

 【バードイン霊湖】。

 【バードインの森】。

 【バードイン寺院跡】。

 【バードイン迷宮】。

 【恐煉の大地】。

 【魔竜婆ペベアル冥道】。

 【ペントリアム砦】。

 【恐王ノクターの贄場】。

 【ノクターの大血湖】。

 【不窟獅子の恐魔塔】。

 【恐王ノクターの洞穴祭壇】。

 【ファダイクの恐楽贄場】。

 【破壊ノ大古墳跡】。

 【悪漠ノ地平線】。

 【無限魔峰】。

 【デェインの隠陽大鉱山】。

 【魔賢ホメイス大滝】。

 【右拳緑命岩】。

 【魔皇ペジトの大古墳迷宮】。

 【魔皇ヒュベルの異界道】。

 【ヴォークライの墓場】。

 【レムリア平原】。

 【レンシサの魔境御殿】。

 【魔王バドメイアの廃城】。

 【古城レムリア】。

 【ケイン街道】。

 【サビルの森】。

 【エジムンド街道】。

 【ペントモリアの異原森山道】。

 【ルアンの里】。

 【魔龍皇大顎塚】。

 【破壊神サージメント・バイルスの上円下方墳】。

 【シーフォ・オパル・イズ・パズスの古城】。

 【極魔破壊魔山グラドパルス】。

 【キスバル大平原】。

 【無窮のグラナダ】。

 【怪夜ノ霧】。

 【怪魔ノ崖】。

 【ベアマンドの幻瞑暗黒魔塔】。


 などの地名と地形が刻まれている。

 さて、皆に、


「……神々や諸侯の肖像が刻まれている魔コイン類は、その神々や諸侯が支配する土地か信奉している支配者の土地ならば安全な通貨だが、街や村の雰囲気が分からない間は、取り引き自体を止めるか、どうしても取り引きを行いたい場合は、魔石を使用すればいいってことだな。そして、ある神々や諸侯が支配する土地で、敵対している神々や諸侯が刻まれている魔コイン類を知らずに使えば、どうなるか分からないってことか」

「「「はい」」」

「「あぁ」」

「そうですね」

「「その通り!」」


 皆当然の如く肯定。


 【グラナダの道】の方々は鋼の兜と鎧がやはり格好良い。

 ミューラー隊長も、


「……そうですな。魔商人や土地柄などは、ある程度観察していれば分かりますから、その場その場で通用する魔コインを利用すればいいだけのことです。実際に我らはそうしてきました」


 と発言すると、【グラナダの道】の面々も、


「「「「はい」」」」


 とハモって同意した。

 

「基本はそうですね。ま、相手の魔商人次第が大半だと思いますぜ」


 とロズコが発言。皆頷く。

 ミジャイも、


「ミューラー隊長とロズコの話が大半ですが、儀式にも用いられる魔コイン類はコインの表裏に刻まれている肖像と魔印に、その素材と内包されている魔力量で違いがあり、レア度も異なる。ですから、多種多様な魔コイン類を扱える魔商人は魔傭兵たちから人気が高いです。怒り出す魔商人のほうが稀だと思います。まぁ、その辺りはミューラー隊長たちが話していたように、土地柄と言えばそれで済みますが……」


 魔コインにはレアがあると。

 刻まれた肖像にも種類があるのかな。

 魔力の内包量の差異と、素材も魔白金、高級なものなど、色々あるようだからな。


「魔コイン類を触媒にした儀式では、モンスター召喚などが可能なのかな」

「はい、一発限り倒れたらお終いな上等戦士から、永遠に復活可能な上等戦士と絆を得られるものなど……触媒にする儀式は多種多様。他にも自らの血肉に生贄、魔造書、魔法陣、獲得している<死霊術>系統、<召喚術>や環境などで変化します」


 ジアトニクスさんが素早く返答してくれた。

 ゼメタスとアドモスも魔コイン類を使用する。

 

 ゼメタスとアドモスはガルモデウスさんからもらったアニメイテッド・ボーンズとプレインハニーを取り込んだことで、魔界沸騎士長に進化を果たした。

 アニメイテッド・ボーンズにルシヴァルの紋章樹の印が刻まれて、そのアニメイテッド・ボーンズが溶けながら沸騎士たちの体に降り注いだ時は不思議で面白かったなぁ。

 

 魔界沸騎士長に進化すると、その二人が愛用している骨盾も縁から虹色の魔力が放射状に飛び出すような進化を遂げて、全体的な見た目も魔界騎士風に変化した。

 

 特徴的なのは兜の槍烏賊のように変化する部分だろう。

 その時アドモスは、


『可能ですぞ。しかし、頭部の横に出っ張りが増える分、余計な攻撃が当たりやすくなるため、攻め重視と普段の場合は、この鍬形の飾りが基本となります』


 と語っていた。

 槍烏賊のような兜は衝撃的な格好良さだった。

 更に、上等戦士ゼアガンヌという名の新しい部下を得ている。

 そして、魔界沸騎士長から光魔沸夜叉将軍へと進化を果たした際のステータスには……。


 ※光魔沸夜叉将軍に進化し、大量の黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズを獲得した※


 とあったように、黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズを大量にゲットしているはず。


 更にステータスには、


 ※光魔沸夜叉将軍となったことで、魔界のグルガンヌの東南地方の領域は上下に拡大※

 ※更にディペリルの高級魔コイン、レブラの高級魔コイン、メファーラの高級魔コイン、レンシサの魔白金コインを獲得したゼメタスとアドモスは、グルガンヌの滝壺で、新たなる部下を造るための儀式を考え中※


 ※グルガンヌの滝壺の横には、隔離された天然塩が生まれるようになり、グルガンヌの滝から地続きの地下遊泳場とグルガンヌフィッシュが泳ぐ大きな池も生成されて、ソンリッサの群れ森から大量のソンリッサが滝壺に集まるようになった※

 ※ゼメタスとアドモスは発狂してソンリッサ調教合戦を少しだけ始めていたところだった※


 とあったからな。

 ……俺もいつかはグルガンヌ地方に行ってみたい。

 地下遊泳場とグルガンヌフィッシュとか、そこに貝殻の水着を着けた美人さんたちが集まったら南国的な楽園だ。


 <筆頭従者長選ばれし眷属>のヴィーネ、キッカ、エヴァ、キサラ、ユイ、レベッカ、クレイン、ビーサ、キッシュ、ミスティ、ヴェロニカ、ビュシエ、ルマルディ、サシィ……。


 常闇の水精霊ヘルメ、闇雷精霊グィヴァ、光魔騎士バーソロン、光魔騎士シュヘリア、<光邪ノ使徒>のピュリンとイモリザ、蜘蛛娘アキ、キスマリ、メル、フー、サラ、ルシェル、ベリーズ、ペレランドラ、ビア、サザー、クエマ、クナ、カットマギー、リツ、ナミ、リサナ、ミレイヴァル、フィナプルスと……。


 地下遊泳場で、サマーエッチキャンペーンを開催できる。

 美味しい料理を皆で食べて、いい御酒、魔酒か、を飲み合う。


 皆での談笑タイムも楽しそうだ。 

 脳内映像だけで幸せな気分となった。


 ……ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡をゼメタスとアドモスの骨盾に格納できれば……俺もグルガンヌ地方に飛べるようになるかもしれないな。


 と、山若葉な季節のイベントよりも……。

 今は今、魔コインについて思ったことを、


「……弱肉強食のモンスターたちが支配する地域なら当然通貨なんてないだろうし、支配者が狂気的で無悪不造むあくふぞうだった場合は、魔コイン類は通貨ではなく、ただのエネルギー源としての価値しかないんだろう?」


 と皆に聞くと、


「「「「はい」」」」

「そうですな」

「「あぁ」」


 と返事をしてくれた。

 頷きつつ、キサラとヘルメとミジャイに視線を向け、


「バーソロンからは聞いていないし、バーヴァイ城では魔界王子テーバロンテの肖像が刻まれた魔コイン類は見かけもしなかったな……」

 

 ヘルメは、


「バーヴァイ城の内部には食料庫、兵舎、倉庫などが豊富にありましたから、倉庫には肖像が刻まれている魔コインなどが保管されているかも知れません」


 キサラも、


「バーヴァイ平原では綿花畑が広く、紡績職人も多いと聞きましたよ。ですから、魔石に魔コインもどこかに保管されていると思います。更に魔界王子テーバロンテは恐怖と絶対的な力で支配していた。通貨はあまり必要ではなかったのかも知れない」


 頷いた。


「魔界王子テーバロンテはバビロアの蟲物の恐怖で支配者層を押さえて周辺地域を効率的に支配していたからな」


 皆が頷くと、ミジャイは、


「あるはずですぜ。テーバロンテの肖像が刻まれた魔コインを見たことがあります。そして、その魔コインと魔石の保管庫のことなら何回か耳にしました。バーソロン様も、わざわざ陛下に報告するほどでもないと判断したんでしょう。それに今となっては、大ホールに極大魔石の山ですからね」

「あぁ、たしかに。イモリザ、ツアン、ピュリンと魔皇獣咆ケーゼンベルスのナイスな独自行動のお陰だ」


 ミジャイとキサラとヘルメが頷く。

 俺も頷いた。

 ミジャイに、


「アチたちの会話にあったのかな」

「はい、アチ殿、ベイア殿、キョウカ殿、ドサチ殿、ベン殿、ターチベル殿、デン殿たち将校は、平原に湧くモンスター対策、いえ、平原に現れるといったほうがいいですね、それらモンスターから魔綿花畑を守るための戦力の割り振りや、エミリアや他の職人たちが紡いで出来た魔糸と紡績品を仕舞うための倉庫のことなど、色々と話していました。一方、バーヴァイ城の防衛の要となっている光魔騎士グラド殿は、バーヴァイ平原の右の【古バーヴァイ族の集落跡】の防衛と、その更に右側に拡がっている【マセグド大平原】から来るテーバロンテ残党軍の百足高魔族ハイデアンホザーの部隊や恐王ノクターの強襲偵察部隊などとの戦いがあって、あまり話ができず」

「そっか」


 やはり光魔騎士グラドがいるだけでもかなり違う。

 さすが、壊槍グラドパルスと繋がる一族なだけはある。


 そこでヘルメが、


「閣下、バーヴァイ城の地下にはバーソロンが知り得ていない冥界シャロアルの出入り口などに繋がる地下通路が複数あるようですから、それら地下通路の幾つかは、魔界王子テーバロンテの宝物庫や古バーヴァイ族が残した秘密の地下部屋へと続いているかも知れませんよ」


 ……なるほど、ありえる。

 魔界王子テーバロンテは……。

 小さい魔族が踊っていた風景画を鍵にした【バードイン城】の蔵書室らしきところや【バードイン迷宮】の地下を宝物庫代わりに利用していたようだが……バーヴァイ城にもあるかも知れない。


 そして、ヘルメが言うように、古バーヴァイ族、バーヴァイ族の秘密もあるかもだ。

 

 他の地域にも言えることだが、マッドフラッド的に地下には古代の文明の痕跡が眠っているとかあるかも知れない。


 その考えの下、


「……そう考えると、バーヴァイ城の地下の探索をしたくなる」

「はい、魔裁縫の女神アメンディ様の救出ですね。冥界の神の一柱と推測されるドボログ・ガンバードと、その勢力の打倒も狙いたいところです」


 頷いた。

 

 魔裁縫の女神アメンディ様は、己を冥界シャロアルから救い出してくれれば、バーヴァイ地方に恵みを齎せるというような話をしていた。

 デラバイン族、源左、ケーゼンベルスの黒い狼たちに恵みが齎せる。天然の恒久スキル効果が俺たちに掛かるってことだと思うし……優先度は高いか?


 キサラも、


「更に、古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルも眠っているか封じられていると聞いています」

「あぁ、魔裁縫の女神アメンディ様と、生きているのなら古バーヴァイ族たちも救いたいところだ」

「はい、魔裁縫の女神アメンディ様を古バーヴァイ族も信仰していたのなら、古バーヴァイ族の生き残りがいても、デラバイン族たちと仲良くできるかも知れないです」


 たしかに。


「「魔裁縫の女神アメンディ様……」」


 【グラナダの道】と元囚人の魔族の一部からボソッとアメンディ様の名前が聞こえた。知っている方がいたか。


 キサラは気にせず、


「バーヴァイ城の地下は【幻瞑暗黒回廊】にも通じています」

「【幻瞑暗黒回廊】か。センティアの部屋を使えば、セラから魔界のバーヴァイ城の地下に行けるってことだ」


 こうした俺たちの会話を注意深く聞いている元囚人の魔族たちと【グラナダの道】の面々。


 【幻瞑暗黒回廊】は魔界セブドラの各地に存在する。

 その【幻瞑暗黒回廊】がある場所を知っている方もいるかもしれない。

 他にも俺たちが知らない街や村の位置などの情報を得るため、皆に〝列強魔軍地図〟に触って魔力を送ってもらいたいが……ま、後だな。


 キサラは、


「……はい。現状、魔の扉の鏡からセラへの道は確保しているので、【幻瞑暗黒回廊】を利用した魔界セブドラからセラへの道の確保は必須ではないですが……魔界セブドラの各地には【幻瞑暗黒回廊】の出入り口が存在しているはずなので、魔界セブドラの遠くに移動できる方法の確保という点では、センティアの部屋の使用も考えるに値するかと思います。また、バイオリン属の擦弦楽器の〝ベベルハンの悪魔〟を持つビュシエもいますから、シュウヤ様のハイセルコーンの角笛と合わせて使えば、魔界セブドラの大半の傷場から惑星セラの傷場に移動が可能」


 と発言。頷く。

 ミューラー隊長たちと元囚人の魔族たちの一部は、


「「傷場を所有している……!?」」

「「傷場を利用できる……」」

「「おぉ」」

「……センティアの部屋……【幻瞑暗黒回廊】を利用できるのか……凄い……」


 とそれぞれ語る。

 

 ジアトニクスさんも頷く。

 やはり【幻瞑暗黒回廊】を知っていた。

 魔界セブドラでは結構有名か。


 まずは、


「皆、俺は傷場を所有していない。神々や諸侯が所有している傷場を、利用できる算段が付いているだけだ」

「あぁ、そういうことですか」

「「なるほど」」


 頷いてから、キサラに、


「……ペルネーテの魔法学院ロンベルジュから塔烈中立都市セナアプアの浮遊岩の元魔法学院に行けたように、一瞬で魔界セブドラの遠い土地に転移移動できるのは便利だ」

「はい、シュウヤ様はゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡を設置しましたが、転移を含めた様々な移動手段は、多ければ多いほどいいと思います」

「わたしもそう思います」


 キサラとヘルメの言葉に頷く。

 キサラは更に、


「しかし、センティアの部屋の使用は……自分で勧めておいてアレですが、躊躇してしまいます」


 と発言。ヘルメも数回頷き、


「若いディアのことですね」

「はい、シュウヤ様は、ディアには学院生として平和に過ごしてほしいと考えている」


 キサラの言葉に頷きつつ、


「……都合勝手な想いだが」

「ふふ、優しい都合勝手です。わたしたちの争いには死が付き纏いますからね。魔界となったら眷属化は必須ですし……」

「あぁ、それに、俺たち光魔ルシヴァル一門は無敵ではない」


 ディアは俺の眷属に成ることを望んでいるようだが、魔法学院ロンベルジュを卒業してからでも遅くはないはずだ。ま、これは学院生として平和的に過ごしてほしいという俺の勝手な思いでしかない。だから受け入れる覚悟はしている。


 と、


「「「……」」」


 少し沈黙の場となった。


 キサラは皆を見据えて、


「……はい、わたしたちは傷を受けたら痛みもありますからね。あ、わたしも前衛ができるのに、シュウヤ様はそんなことはお構いなしに体を張って守って下さいますから……感謝です」


 キサラの頬を朱に染めた語りは色っぽい。

 そして、人差し指で俺の胸元をツンツクしてくるキサラが可愛い。

  

 すると、ヘルメは頭部以外の体を一瞬で液状化させて、


「「「「「「おぉ……」」」」」」


 と周囲を驚かせつつ、俺の右半身を液体の体で覆ってくれた。

 そのヘルメは、


「ふふ、閣下は優しいですから」


 と俺の右耳に息を吹きかけながらキサラに語る。

 耳と首筋が擽ったいが、心地良い。

 右半身が一気に浄化されたような気分になった。

 

 キサラも笑みを浮かべながら、


「ふふ、はい」


 と発言。

 頭部以外は液状化しているヘルメも、直ぐに涼しげな水飛沫を周囲に発してキサラの笑みに応えていた。


 俺たちは、不死系で肉体の再生は瞬時に可能だが……。


 魂を滅されるような攻撃をまともに体と精神に喰らったら終わりだと思うからな。


 イスラさんたちは俺たちの会話を興味深そうに聞いている。


 キサラは、


「そのディアですが、ペルネーテの魔法学院ロンベルジュではイジメを受けていたようですからね……あのまま塔烈中立都市セナアプアで同学年のドロシーと、メトちゃんは魔界セブドラですが、シルバとハウレッツと一緒に平和的に過ごしてもらうのも良いかもしれないです。しかし、行方不明のお兄さんのことはきな臭いですから……そうも言ってられない雰囲気もある」

「ミスティとレベッカとユイが残った理由の一つだな」


 と言うと、キサラは蒼い目を少し大きくさせ、


「……気付いていたのですか?」


 と驚いていた。

 なんとなくだが……。


「あぁ、予想の範囲。ユイたちは、俺たちが魔界で忙しいことを考慮して言わなかったんだろう?」

「ふふ、はい。ユイたちも、ルマルディとハンカイのサポートなどで忙しいこともあります、役割分担のつもりもあるでしょう」


 頷いた。

 

「ミスティは魔法学院ロンベルジュの先生で講師、レベッカは魔法学院ロンベルジュの卒業生で魔法学院ロンベルジュの七不思議と上級顧問のサケルナートを知っているからな」


 キサラは微笑むと、


「はい、レベッカとミスティとユイには……『なるべくシュウヤには黙っててよ?』と言われました。『あ、聞かれたら言っていいけど……あぁ、でも、エロシュウヤは気付いてるくさい……変に気を使ってマッサージを繰り返して優しくしてくれたし、エヴァなら直ぐ言っちゃうかもだけど……』とも言われ、『ふふ、はい』と返事をすると、『魔界で魔神殺しとか、とんでもないことをやっている最中に余計な心配をかけたくないし、それに、今はディアがシュウヤの近くにいることも多いからね』と、『あと、魔塔ナイトレーン回りも結構見張っていることも言っちゃっていいから』とも、ミスティとレベッカとユイは話していました」


 キサラの皆のモノマネが少し上手い。

 そのモノマネのことではなく、


「そうだったか。ユイたちは、クレインとカットマギーとカリィにレンショウとレザライサたち【白鯨の血長耳】と連携し、【テーバロンテの償い】の残党潰し&魔薬に絡んだ上院評議員バルブ・ドハガルと【統場派・精狂街】潰しと……ルマルディの仇連中の情報収集もあるから忙しいとは思っていた。あ、クナの転移陣もあるし、第二王子ファルスの伝が利用できる副長メルにヴェロニカとベネットもディア関連に絡んでいるのかな」


 と語ると、キサラが少し体を震わせる。


「そうです、鋭い」

「ディアのアス家はオセべリア王国の大貴族だからな」

「はい、王族のコネは有効。シュウヤ様は、何れ王都グロムハイムに向かうとも言っていましたからね」


 頷く。

 そして、


「ディアのお兄さんの行方不明事件には、オセベリア王国の【王の手ゲィンバッハ】と宮廷魔術師サーエンマグラム卿の従兄弟サケルナートと中央貴族審議会の貴族たちに、【幻瞑暗黒回廊】を利用できるだろう【魔術総武会】の執行部隊なども絡んでいると予測しているから、気軽に皆と話していい場合と、ディアにだけ伝える場合や伝えてはマズイ場合などがあるのではないかと考えていた」


 キサラは頷いた。


「……ふふ、その通りで、知らないほうがいいこともあります。ですから、ミスティとレベッカは、セナアプアの【天凛の月】の活動や試作型魔白滅皇高炉の実験の合間に、一部の【天凛の月】幹部に内緒でメルたちと連携し、魔法学院ロンベルジュの七不思議と関係しているオセべリア王国の中央貴族と【魔術総武会】に、セナアプアの【魔術総武会】支部が不自然に動きを止めている件も合わせて調べていました」


 頷いた。


「三人の視線と態度から何かあるだろうとは思っていたが、セナアプアの【魔術総武会】も調べていたのか。気付かなかった。が、大魔術師ケイさんが一向に戻ってこないし……不自然だからな。【天凛の月】に魔塔ゲルハットの権利書を譲った件が、大魔術師アキエ・エニグマの幽閉に繋がっているのかな? と予測はできるが……」

「はい、でも、素晴らしい<筆頭従者長選ばれし眷属>たちですね。閣下の思考を予め読んだように動いていたなんて」


 というヘルメの言葉に頷いた。

 キサラはニコニコして、


「皆には愛があるんです。わたしもですが。あ、それに先ほども言いましたが、塔烈中立都市セナアプアの魔塔ゲルハットには転移陣ルームが出来ましたからね。サイデイルを利用すれば、ペルネーテとヘカトレイルとセナアプアに瞬時に移動できるようになったのは非常に大きいです」


 ヘルメと共に頷いた。

 テパ・ウゴさんが唸るような声を発して胸筋をピクピクさせながら頷いているが、あまり視線は合わせない。


「後、ケアンモンスターの跡地に周辺の土地の権利などの交渉はペレランドラが担当しています。クレインと連動している魔薬関連の評議員と評議宿と役人潰しにも一役買っているので、ペレランドラも忙しそうです」


 <従者長>ペレランドラは、ケアンモンスターの対処以外にも色々とがんばってくれている。


 すると、イスラさんが鋼の鎧に手を当てて小気味いい金属音を響かせる。


 そのイスラさんが、前に出て、

 

「……今の会話を聞いて、シュウヤ殿が本当に魔君主の一人なのだと確信できた」

「確信か。まあそれなりには動いている。では、そろそろ魔コイン類を取ってくれ。アイテムボックスがないのなら、俺が預かるとしよう」


 と言って、ミジャイとロズコとミューラー隊長に視線を向けた。


 隊長らしく空気を読んだミューラー隊長は、


「――では【グラナダの道】の分を取らせて頂きます。ヴァイスン――」


 ミューラー隊長はバスラートさんやヴァイスンさんにも視線を向けた。


 ミューラー隊長とバスラートさんとヴァイスンさんは、レブラの魔白金コイン、レンシサの魔白金コイン、ディペリルの高級魔コインをそれなりに取って仕舞う。

 残りはロズコたちが回収していた。


「残りの六つのアイテムボックスだが、俺が預かる」

「「「はい」」」

「「当然です」」

「そして、柄が男の一物を模した長剣、柄が女の陰部を模した短剣だが、無魔の手袋で回収しておく。いいかな」

「「え?」」

「放置かと思いましたが、呪いの品を回収!?」

「……一応、回収できるアイテムがあるからな。だれかに売るか、まぁ当分の間は死蔵予定だ」

「ングゥゥィィ……」

「あ、そういえば、ハルホンクは呪いの品もリスクなく食べることができる!」


 キサラが嬉しそうにそう発言。


「……ハルホンク、魔力的にはいいんだろう。それは分かる。が……大人の玩具的で、見た目もなんかアレだから、タベサセナイからな……」

「ングゥゥィィ、ワカッタ」


 と、肩の竜頭装甲ハルホンクは意外とあっけなく退き下がった。

 肩の竜頭装甲ハルホンクも意外に小心者だったりして、そんなことを考えると笑えてくる。

 

 魔界セブドラでもコレクターな方々はいるだろうからな。

 柄が男の一物を模した長剣、柄が女の陰部を模した短剣を高値で買ってくれるか、他のマジックアイテムと物々交換が可能かもしれない。


「ハルちゃんが珍しくアピールしましたが、いいのですか?」

「――イインダヨ」

「カエルとオヤジヲ、喰ッテイイ、ゾォイ?」


 と、その肩の竜頭装甲ハルホンクが魔蛙夢蔵右衛門とポー・ムラムのことを喰いたそうに聞いてきた。


「……げろげーろ」

「……私は美味しくないから……」


 魔蛙夢蔵右衛門とポー・ムラムは焦っていた。

 ま、先に柄が男の一物を模した長剣、柄が女の陰部を模した短剣を保管しておこうか。


 無魔の手袋を嵌めて、


「では、呪いの長剣と短剣を戦闘型デバイスのアイテムボックスにしまう――」



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