千百二十八話 神話級のボシアドの恩讐と魔界王子テーバロンテの掛毛氈
「「おぉ」」
「ボシアドの恩讐……これを扱えるような魔鍛冶師、魔金細工師などは限られるだろうが、扱えれば絶大な能力を持つ代物を造れるんだろうか」
ロズコがそう発言すると、アマジさんが、
「そりゃそうだろうよ」
「あぁ」
ギンさんも同意していた。
「否、道具が
「うむ。むしろ武器や防具として使うべきだ!」
テパ・ウゴさんの発言だ。
皆、少し沈黙し、頷いている者も数名いる。
「「「……」」」
「……暴虐の王ボシアド様のアイテムとは……」
ビートンさんが少し話題を変える。
「無二亦無三の魔界騎士、死海騎士を配下に持つ魔界の上級神の一柱が暴虐の王ボシアド様。その秘宝が盗まれるのは想像しにくいが、ここにあるんだよな」
「……魔界王子テーバロンテかその眷属は、このボシアドの恩讐を、どのように入手したのだろうか……」
「強い死海騎士も暴虐の王ボシアド様も、戦場では退くこともある」
「それはそうだが……」
「だいたい、暴虐の王ボシアド様の所領は遠いぞ」
「あぁ、ここからだとかなり北になる。魔界王子ライランが所有する【ライランの血沼】と隣接している辺りが、暴虐の王ボシアド様の領域の最南端ぐらいか?」
「そうだろう」
すると、ジアトニクスさんに背中を押されてエトアさんが前に出た。
「あっ、ジアトニクス……」
エトアさんはおろおろしてジアトニクスさんに振り向く。
ジアトニクスさんは笑みを浮かべて、
「……知っていることを伝えるべきだ」
と発言。彼の頭部の先端は浮いている。
先ほどの<魔闘術>系統は纏っていない。
そして、特徴的な頭部の断面の脳梁やウゴウゴと動いていた各部位も、先ほどと異なり蠢いていなかった。
エトアさんは、
「あの、ボクの友だちなら……こういった神々の秘宝でも盗むことができましゅ……」
と発言。
「「「おぉ」」」
「では、エトアと同じく、エトアの友も大盗賊チキタタの加護持ちか?」
「あ、あの、ボクはそのようなスキルはないでしゅが、友達は……」
エトアさんはそこで俺をチラッと見てから、ジアトニクスさんの背後に隠れてしまった。
そのジアトニクスさんは、
「エトアは、そういったスキル持ちが暴虐の王ボシアド様から秘宝を盗んでは誰かに盗まれを繰り返しているうちに、魔界王子テーバロンテの眷属が入手する機会を得たから、ここに〝ボシアドの恩讐〟があると言いたいのだな?」
「は、はい!」
「「ほぉ~」」
皆が頷いた。
ロズコは、
「エトアのダチってのは? エトアの<罠鍵解除・極>のようなスキル持ちってことか?」
ジアトニクスさんに隠れていたエトアさんは頭部を少し出して、
「はい、そうでしゅ。様々な<魔絶>をあつかえましゅ」
と言うとまた俺を見て、直ぐにジアトニクスさんの背後に隠れた。
「ほぉ……」
盗み系の優秀なスキル持ちの友だちか。
恐王ノクターの眷属ではないといいんだが……。
さて、
「では、次の品、百足魔族デアンホザーに似た魔族たちと底の見えない渓谷に城のようなタペストリーの鑑定結果を頼む」
ラムーさんは頷いて、
「はい、名は〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟、
「「おぉ」」
「これまた
「やっと魔界王子テーバロンテが支配していた【バードイン迷宮】らしい品といえる」
「あぁ、魔界王子テーバロンテが滅されてもまだ魔力が残っているってことは結構な品、
ロズコがそう言うと、ミジャイも、
「呪いもないようですから、シュウヤ様には色々と都合がいい品かも知れない」
と言いながら俺から皆に視線を向けて、ラムーさんに視線を向けた。
そのラムーさんに注目が集まる。
「はい、〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟に魔力を通せば、一定時間、【デアンホザーの地】、【デアンホザーの百足宮殿】、【テーバロンテの王婆旧宮】などが立体的に浮かび続けるようです。更に、魔界王子テーバロンテが封じた岩扉、魔鋼扉、百足門などを開ける」
「「おぉ~」」
「お宝が眠る場所の鍵ってことですな」
「あぁ。しかも上級神だから、まだ秘密があるかもしれないな」
「確かに、その土地からして、何かまだありそうな気がする……」
「「……」」
「百足魔族デアンホザーたちが異常に多い場所か」
「百足魔族デアンホザーたちの住み処ですね」
キサラとヘルメに視線を向けて、
「テーバロンテの王婆旧宮などか。それらの土地に移動した際の鍵となるなら、かなり重要だな」
「はい、閣下が入手すべきアイテムかと」
「はい、皆さんも文句はないはずです」
キサラがそう言うと、
「「はい」」
「当然です。シュウヤ殿にすべての宝物の権利がある。我ら【グラナダの道】の皆も、俺と同じ気持ちのはず」
ミューラー隊長が胸元に手を強く当て、軍隊式の挨拶をしてそう言ってくれた。俺もラ・ケラーダを返そうとしたが、
「「「「はい! 【グラナダの道】――」」」」
という気合い溢れる【グラナダの道】の魔鋼族ベルマランたちの声と金属音に圧倒された。
更にアクセルマギナが気を利かせたのか、戦闘型デバイスからオーケストラ風の低音のBGMを流す。
元囚人の魔族たちと【グラナダの道】の方々が少し驚いて俺の右腕を凝視していた。
「「「……」」」
すると、ロズコが、
「――ははは、俺も【グラナダの道】と叫びたくなるが、シュウヤ様は魔界王子テーバロンテを滅したんだからな、当然の権利だ」
と発言。イスラさんも、
「言わずもがな、私もシュウヤ殿が得るべき品だと思う」
「分かった。では、先に〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟はもらっておく――」
と、宝箱から〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟を回収。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます