千八十六話 サイデイルの皆と再会
長いキスの後、俺から離れたキッシュはバーソロンとキッカとクナを見た。
「キッシュ、セナアプアの大きい転移陣は成功ですよ」
「はい、セナアプアに南マハハイム地方の一部のセーフハウスとも繋がりました」
「おぉ、さすがは魔術師長と弟子! あ、シュウヤに紋章魔法陣
「ふふ♪ やってませんわ~♪」
クナは笑いながらそう発言。
<星惑の魔眼>を発動して俺を見ると、一瞬で頬が朱に染まる。
「素敵なシュウヤ様……♪」
「……」
ルシェルは『師匠がすみません』と言うように頭を下げてきた。
ルシェルの和風クレオパトラのような髪形とエジプシャンメイクは変わらない。
そして、結構な巨乳さんと分かる膨らみも素晴らしい。
と、キッシュは俺を見て、
「これでこのサイデイルの転移陣から各セーフハウス、セナアプア、ヘカトレイル、テリア、ペルネーテへの転移が可能となった」
地下の部屋の壁にも魔法陣があり、中心に魔宝石のような物が嵌まっている。
ハンカイの両腕と腹にあるような魔宝石だ。
床に敷かれている転移魔法陣と、その壁の魔法陣と魔宝石は関係しているようだ。
無数の銅線に電気配線のような線が岩肌を伝うようにあちこちに伸びている。
それらを見ながら、
「……あぁ、ここが地下の改良された転移陣か」
「うふ♪」
「この転移陣があれば戦力の移動も楽となる。アイテムボックスで輸送を行えば、結構な巨利を得ることも可能だ」
と言ったキッシュは俺の言葉に合わせて喜んでいたクナたちを見て、
「だが、市場が壊れるほどの薄利多売のようなことはしないと聞いている」
と発言。
「そうだな。黒猫海賊団の黄金ルートもある」
俺がそう言うと、皆が頷いてからキッシュが、
「クナとルシェル、サーマリア王国側の東のハイム川の各都市のセーフハウスにある転移陣の作業は?」
と聞いていた。クナは、俺を見ながら、
「それはまだですわ。当面は湾岸都市テリアだけで十分だと思いまして」
と語る。その視線には厳しさがあった。
急に真面目な表情となったクナ。
ヘルメ的な表情の変化具合だが、ヘルメとはまた違う怖さを感じた。
やはり魔族の出、ま、もう光魔ルシヴァル一門だ。
<
そんなクナに頷いてから、サーマリア王国のまだ見えない強力そうな王侯貴族や軍部などを想像しながら……、
「……その厳しい顔色は、これからの未来に繋がる投資や布石のような意味合いか?」
「ふふ♪」
「投資に布石ですか?」
ルシェルがそう聞いてくる。
「そうだ。ハートミットとの
と説明すると、クナは恍惚とした表情となる。
体が一度二度ブルッと震えると、
「あん♪ シュウヤ様と視線だけで意味が通じ合える仲になった……そして、痺れるほど読みが鋭いシュウヤ様……直ぐにでも抱いてほしい――」
おっぱいを揺らしたクナは倒れ掛かるような演技をしながら乙女走りで近寄ってきて、俺に寄りかかってきた。嬉しいが、
「……はは、柔らかいクナの体は好きだ。正直嬉しい。しかし、直ぐにおっ立つほど俺の息子は器用ではないんだ、悪いな」
「もう! いけず! 押し倒してバックからを期待していたのに!」
少し怒ったような感じだが、怒っていないと分かるクナの語りが面白い。
ルシェルは口を押さえて少し驚いているが、俺をチラッと見て頬を少し赤くしている。
そのクナの肩をぽんぽんと叩いてから、少し離れた。
クナは「ぁ……」と触っただけで感じているが、そのまま放置して、皆が笑顔となっている中、
「……で、話を戻す。外洋に通じる湾岸都市テリアでは、クナたちが世話になった【シャファの
ルシェルに背中を支えられていたクナが、キリリとした表情を取り戻し、
「ふふ、ハイグリアちゃんも古代狼族の神姫! 神狼ハーレイア様の恩寵を活かして驀進中でしょう。シュウヤ様に会いたい想いを封印して古代狼族として生きているハイグリアちゃんには好感を覚えますよ♪」
と発言。
バーナンソー商会とヘヴィル商会の事務所を潰して回るハイグリアか。
殴り合いの結婚をした仲なんだが……。
ま、いっか。
「キッシュ、上にルマルディがいるのかな」
「そうだ。皆もいる」
「了解。早く会いたいが、その前に紹介しておく」
バーソロンとキッカをチラッと見た。
キッシュもバーソロンとキッカを見て会釈してから、
「あぁ、そうだな。頼む」
キッカとバーソロンも会釈していた。
まずは黒と赤が混じる髪が綺麗なバーソロンに腕を向け、
「黒と赤が混じる長い髪を髪留めで止めている女性が、光魔騎士バーソロン。魔界セブドラの角鬼デラバイン族、その王族だ。<ルクスの炎紐>というスキルで伸縮自在の炎の紐を扱える。接近戦では、炎の魔剣ルクス&バベルを扱う魔剣師でもある。続いて――」
キッカに腕を向け、
「右の黒髪が基調の女性が、<
と紹介。キッシュは頷いて、
「二人ともよろしく、キッシュだ。サイデイルを治めている。正式な名は、キッシュ・バグノーダ・ハーデルレンデ、またはキッシュ・バグノーダ。冒険者ギルドには、キッシュ・バグノーダの名で登録済みだ。皆には女王や女王様にキッシュ様、司令長官などと呼ばれることもある。普通にキッシュと呼んでくれて構わない」
「分かりました。我は光魔騎士バーソロン。キッシュ、よろしくお願いします」
「キッカです。血文字では何回も話をしましたが、こうして実際に会うのは初めてですね」
「あぁ、キッカとは初めて会った気がしない。そして、二人ともよろしく。わたしは<
「「はい」」
「そして、サイデイルにようこそ。上で皆も待っているから付いてきてくれ。シュウヤも上に行こう」
「「はい」」
「了解した」
「ンン、にゃ~」
「……にゃァ」
出入り口に歩き出したキッシュ。
その両足に
「あ、ロロ……久しぶりだ、柔らかい感触をありがとう、嬉しいぞ。そして、この銀灰色の猫が……メトか!」
「にゃ~、にゃ~」
「にゃァ……にゃァ?」
と、キッシュの腕を一度は避けた二匹だったが、直ぐに捕まってあげていた。
キッシュは手に収まるほどの
キッシュは小さい
はは、こちらまで温かくなる。
キッシュは頭部を振るうように左右に動かして二匹の頭部の感触を鼻と頬で味わっている。
猫の頭部の薄毛や耳、鼻の感触は気持ちいいからな。
「――ふふ、二匹同時に猫を抱きしめるとか、生まれて初めてかもしれない」
「はは、相棒もメトも大人しくしている。嬉しそうだ」
「ふふ、うん、ゴロゴロと、アッ」
二匹はキッシュの頬をペロペロと舐めていた。
「ふふふ、ロロもメトも良い子だな。一緒に上に行こう」
「にゃ~」
「にゃァ」
相棒と
そのまま猫使いキッシュとなって先を歩く。
「――ぁぅ」
キッシュの可愛い声が響いた。
エルフ特有の感じる場所でもあるからな。
扉が開いている出入り口を出ると、直ぐに螺旋状の階段の踊り場となった。
皆に、
「この階段もクナたちが?」
「はい♪」
「シュウヤさん、師匠は地面を喰って加工してくれる不思議なスライムのようなアイテムを持つんですよ」
「ふふ、土の精霊が宿るアイテム、〝涙魔吸のドンゴーン〟です」
「へぇ」
そんなことを話しながら階段を上がると、キッシュの政務を行う大きな部屋と地続きの広い空間に出た。そこにいた皆がこちらを凝視。
ネームスが大きすぎて天井に頭部をぶつけているが――。
ルマルディとアルルカンの把神書もいる。
と、ジョディとシェイルが低空を飛んで向かってきた。
「――あぁぁ、あなた様!!」
「あなたさまぁぁぁ」
その両者を抱きしめながら横回転――。
「はは――」
「「あなた様ぁぁ」」
「元気にしてたか」
「「はい!」」
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