千八十七話 ルマルディとハイタッチと、アルルカンの把神書の嬉しい悲鳴

 ジョディとシェイルは、


「「あなた様、お帰りなさいませ」」

「しかし、不安でした。キッシュが、血文字をあなた様に送ることができない。しかも光魔ルシヴァル宗主と<筆頭従者長選ばれし眷属>の繋がりが薄まった。今までにない感覚だ。と、顔を青ざめさせながら語っていましたから。わたしたちも……」

「はい、<光魔ノ蝶徒>のわたしたちも、あなた様との繋がりが薄まったと感じていました。不安がありましたが、わたしを治療してくださったあなたさまは強い。どんな状況でも負けない精神を持つ……ですので、なんとか平静を保っていました」

「すまん、心配をかけたな」


 と言いながら二人を抱きしめる。


「……ぁぁ、あなた様……本当によかった」

「ふふ、こうして帰ってきて抱きしめてくれるだけで幸せです」

「はい、あなた様の熱い玉鋼のような心を内に感じます。やはり、不動の揺るぎない魂をお持ちでいらっしゃる。わたしたちももっと強くあらねば……」

「そうですね、でも♪」

「うん♪」


 シェイルとジョディは呼吸を合わせるように両腕を動かすと、両手と大きい乳房の感触がいい胴体で俺を抱えて持ち上げつつ浮遊を行い、横回転――。

 

「ふふ〜♪」

「あなた様の匂いです〜♪」


 嬉しそうな二人。

 その表情には愛しさが溢れている。


 と、そのジョディとシェイルが輝いた。

 体から、<血魔力>が混じる白銀色と赤紫色の光を発していた。

 

 同時に光魔トップルの烏帽子が出現しては消えてを繰り返す。

 そんな二人の背中を撫でながら――着地。


 同時にサラからもらった腕環を肩の竜頭装甲ハルホンクを意識して右腕に嵌めた。


「「あなた様……」」


 二人は潤んだ瞳で俺を見る。

 二人の気持ちは理解できた。

 <光魔ノ蝶徒>のシェイルとジョディに<血魔力>を送る。


 俺の血を得た二人は一気に恍惚とした表情となって、


「「……ぁ、ん――」」


 微かな喘ぎ声を発して、体を痙攣させる。

 そのまま体が横に幾重にも分かれるような勢いで体がブレ始める。

 と、<血魔力>が濃厚な白銀色と赤紫色の蝶々をその体から放出させ始めた。その<血魔力>の蝶々たちはシェイルとジョディを模り、それぞれ体の向きを変えたり違うポーズを取ったりしながら周囲を飛び回っていく。


 不思議だが、分身系のスキルかな。

 ジョディは転移しながら大きな鎌のサージュを振るい回していた。

 そのジョディ本体は後退しながら床に乙女座り。


 と、ジョディは分身体のような蝶々たちの一部を収斂させながら立ち上がって、丁寧に頭を下げた。

 分身体たちも、本体のジョディに倣うように頭を下げながら、本体のジョディの体に重なっていく。


 そして、


「――あなた様、久しぶりの<血魔力>をありがとうございます。元気モリモリです! そして、セラと魔界の狭間ヴェイルの障壁は甘くないのですね。学びを得ました」


 と発言。

 シェイルも立ち上がって、


「ふふ、はい! もうあなた様を心配させるようなことにはなりませんので、ご安心を!」

「おう。魔界とセラの事象は、俺も初だったからな。それよりも、サイデイルの戦力がここに集結しているように見えるが、守りはどうなんだ?」

「あ、少し集結し過ぎですね、ふふ。でも、皆の気持ちの表れかと」

「俺もそう言ったからな! しかし、シュウヤ、蝶々の美人ばかり相手にしてないで、こっちにこい!」


 はは、ハンカイ、少し怒っている?

 笑いつつ片手を上げた。


「――おう、ハンカイも元気そうだ」

「おう、元気だ。魔界セブドラに行ったと聞いたが、角が生えるとかの変化はないのだな」

「あるわけないだろ」

「がはは」


 キッシュの肩にいた黒猫ロロ銀灰猫メトが床に下りて、


「ンン、にゃ~」

「にゃァ~」


 ハンカイに足下から挨拶。

 

「ロロも元気そうでなによりだ。こっちはメトか」

「「ンン」」


 ハンカイに喉声で返事をする相棒と銀灰猫メト

 すると、背後から、


「あなた様、光魔ルシヴァル精霊樹のルッシー様も成長し、サイデイルの城下町にモンスターが近付けば、警戒網の<警戒鈴礼威>が発動して、警戒音が鳴り響きます。そして、ソプラ、ブッチ、エブエ、キース、トーリ、エルザが要所に残っています」


 とジョディが説明してくれた。

 光魔ルシヴァル精霊樹のルッシーか。

 精霊樹は女王サーダインの攻撃を未然に防いでくれていた。

 更に成長して警戒網が敷かれたなら、サイデイルの守りはより強化されたことになる。


「了解した」

 

 ジョディとシェイルから離れて、ハンカイたちに近付いた。

 その近くにいたちびっ子槍使いが駆けてきた。

 大瑠璃の小鳥も一緒のムーだ。


 必死な顔で、


「……!」


 片足に抱きついてきた。

 そのムーの銀髪を撫でながら、


「ムー、元気そうだな」

「……ぅ」


 ムーは涙目の上目遣いで、頷くように少し声を出してくれた。

 

「よかった。槍は上達したか?」

「……うぅぅ」


 ムーはコクコクと何回も頷いて泣いていく。

 ――まいったな。

 ムーの頭部を優しく触るように撫でていく。


「にゃ~」

「にゃァ」

「……!」


 黒猫ロロ銀灰猫メトがムーの体に頭部を寄せていた。

 ムーは一気に破顔。


「ムー、少し遊んであげてくれ」

「……」


 ムーは数回頷くと、黒猫ロロ銀灰猫メトの頭部を撫でていく。

 相棒はあまり動かずムーの手に体を合わせてあげていた。

 優しい。


 そのまま、ネームス、モガ、ルッシー、シュヘリア、デルハウト、ママニ、フー、サザー、ビアとビアが抱く赤ちゃん、ヴェハノ、ぷゆゆ、サラ、ベリーズ、オフィーリアとツラヌキ団のメンバーたち、バング婆、ナナ、アリス、ダブルフェイス、リデル、パル爺、ドミネーター、トン爺、ナーマさん、アッリとターク、ドナガン、バーレンティン、イセス、ドココ、レネ、ジュカさん、ドミドーン博士、ミエ、蜘蛛娘アキ、ヒナ、サナ、スゥン、サルジン、ロゼバトフ、マウリグ、スゥさん、ソロボ、クエマたちを順繰りに見ながら歩いた。


「「陛下」」

「「「「「シュウヤ様!」」」」」

「「シュウヤ!」」

「てやんでぃ!」

「わたしは、ネームス!」

「ぷゆゆ~」

「「……」」

「ふぉふぉ」

「よかったよかった」

「シュウヤ兄ちゃん~」

「シュウヤ、ちゃんと腕輪を……」

「主ぃぃぃぃ……げぇぇ、神獣もいやがるぜ!?」

「シュウヤさん……」

「「「「ご主人様」」」」

「「「「主!」」」」

「「「「主様」」」」

「「「吸血王!」」」


 皆が俺を呼ぶ。


「全員集合! と言いたくなるメンバーだ。キッシュ、この部屋も拡張したんだな」

「あぁ、人数が多いからな」


 というキッシュの言葉を聞きながら――。

「皆、礼儀よりハグだ! 来い――」

「えぇ――!!」

「ふふ、そう来なくっちゃ!!!」

「シュウヤさん――」

「「いきまーす――」」

「スピードなら負けません――」

「俺はいかんぞ――」

「主ぃぃぃぃ~ちゅ~」


 アルルカンの把神書は狂ってるのか?


「にゃごおおお~」

「うぁぁぁ、しんじゅーはくるなぁぁ、うげぁぁぁぁぁ~」


 黒猫ロロは黒豹っぽい魔獣の姿で、アルルカンの把神書を噛んで振り回していた。

 荒い歓迎だが、甘噛みだろう。


 ハグからの流れでダンス的なハイタッチをしていく。


「「「うははは!」」」 

「「主様――」」

「ご主人様、無事のご帰還嬉しいです」

「ご主さま――」

「主――」


 腕が腫れる勢いで叩かれまくった。

 ビアのボディプレスは強烈だ……。


 と、最後のルマルディは恥ずかしそうな表情を浮かべて、俺の手を軽く叩く。


 皆、空気を読んだのか、自然と身を引いていた。

 目の前のルマルディに、


「待たせたな」

「あ、はい、魔界セブドラに向かわれて、皆さん、ううん、わたしも心配していました。あ、サイデイルの空はしっかりと守っています」

「サイデイルを守ってくれてありがとう」

「はい」

「俺は一時の帰還。魔界セブドラの光魔ルシヴァルの橋頭堡は築けたと言えるか。そして、まだまだ序盤の序盤。始まったばかり。ま、それはこの惑星セラも同じことなんだがな」

「ふふ、始まった・・・・ばかり……はい」

「おうよ。で、早速だが、<筆頭従者長選ばれし眷属>化を行いにきた」

「あ、ハイ! お願いします!」

「ウォォォ、神獣ぅぅぅぅ、俺は猫草じゃねぇぇぇ――」

「はは、それだけロロに愛されてるんだよ。で、ロロ、離してやれ」

「にゃ~」


 口を拡げてアルルカンの把神書を離した黒豹ロロはルマルディの足に頭部をぶつけていた。


「ふふ、神獣様、元気でしたか?」

「ンン、にゃぉ~」

 

 黒豹ロロはルマルディに撫でられていく。

 頭部から尻尾までを一気に撫でられた黒豹ロロは、気持ち良さそうに背中を低くして後ろ脚を少し伸ばしてから、腹を見せていた。


 はは、アルルカンの把神書とはまったく違う。


「うぅ、神獣のかみ癖は直っていないようだな……が、まずはお帰りだ、主」

「おう」

「で、俺のルマルディ、空極の【アルルカンの使い手】をついに眷属化か」

「そうなる」

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