千七十八話 <魔布伸縮>とバーヴァイ城への帰還
取り込んだアメンディの魔法布を意識。
すると、アメンディの魔法布は竜頭装甲の口ではなく七分袖の袖口から伸びた。
ピコーン※<魔布伸縮>※スキル獲得※
「おぉ、スキルを獲得した」
「なんと!」
「「おぉ」」
「まだ魔裁縫の女神アメンディ様は解放されていないと思いますが、祝福と同じですね!」
「ハルホンクが取り込んだだけではなく、アメンディの魔法布を扱えるスキルの獲得か?」
「あぁ、新スキルの名は<魔布伸縮>。たまたま、魔裁縫や魔布を扱う適正があったってことなんだろうか。そして、<魔布伸縮>のスキルを用いると、このアメンディの魔法布は結構伸ばせる――」
試しに<魔布伸縮>を実行。
ヘルメとビュシエとグィヴァにアメンディの魔法布を向ける――。
一瞬で、三人の体にアメンディの魔法布が巻きついた。
「あぅ~」
「えッ」
「うふ」
アメンディの魔法布で腰と胸元だけを巻いた。
ノースリーブのボディコン風のスタイルになった三人。
シュルシュルと巻くように、傍に三人を引き寄せて――ハグしたった。
「「あぅ~」」
「ふふ――」
<血魔力>を展開させたビュシエは興奮して、俺の背中に手を回してギュッと抱きついてくると、首筋に噛みついてきた。が、血といい、少女のエミリアと皆もいるから、急いで三人を離す。
「シュウヤさまぁぁ」
「閣下~、布で遊ぶ方法を~」
「うふふ、御使い様、これは新しい~」
布の横幅はあまり変化させられないが――。
<魔布伸縮>で長さを結構変化させられるアメンディの魔法布で三人の体を支えながら、また傍に運び、アメンディの魔法布を仕舞った。
「シュウア様にもて遊ばれてしまった、うふふ」
ビュシエは人指し指を口の端において悩ましく喋る。
少しエロい。前に戦ったことのある魔布使いの賞金稼ぎのようなことが可能になったか。
ヘルメが、
「閣下、楽しかったです。そして、<魔布伸縮>を使う閣下の姿を見て、魔布使いピアソンのことを思い出しましたよ」
「あぁ、俺も銀髪のピアソンを思い出していた」
ピアソンとは二度会っているんだったかな。
と、皆はアメンディの魔法布を凝視。
「……」
バーソロンは、ジトッとした視線でハルホンクの袖口を見ていた。
そのバーソロンの嫉妬した視線に合わせた訳ではないが、ハルホンクの防護服を意識しつつ袖口を少し変化させた。
「「「「おぉ」」」」
「服が変化したぞ!」
「おい、ヌジ! 先ほどの陛下の言葉を聞いていなかったのか」
「魔装天狗のようなアイテムだと仰っていたぞ!」
「あ、そうだったな」
魔雷教の方々とデラバイン族の紡績職人たちが歓声を発してそう発言している。
エミリアは数回頷いてから、
「それが、先ほど言われていた……」
エミリアの言葉に頷いた。
エミリアはハルホンクの防護服に興味津々だ。
「おう。ハルホンクの防護服は超絶優秀、
「「おぉ」」
感嘆の声を発している皆に見せるように――。
再び<魔布伸縮>を意識して伸ばす。
まぁ、これは<鎖の念導>の影響もあるかもなぁ――。
アメンディの魔法布の表面は先ほど見たマンデルブロー集合のような模様で、リアルタイムに動いている。
吸収する前のアメンディの魔法布に見えるが……。
ちゃんとハルホンクが取り込んだアメンディの魔法布と分かる。
根元の袖が七色に輝いていた。
アメンディの魔法布を構成する素粒子に固有振動数を忠実に再現しているんだろう。
ハルホンクは優秀だ。
そのアメンディの魔法布を強く意識すると、布から虹色の魔力が迸り、斜めに上昇してバーヴァイ城の方向に伸びていた。
ヘルメがその虹色の魔力を追うように急上昇してから、直ぐに降下して、
「――閣下が言われたように、そのアメンディの魔法布から出ている魔線はバーヴァイ城の地下に続いているようです」
「【闇雷の封泉シャロアル】のような場所が、バーヴァイ城の地下にあるのは確定ですね」
「あぁ」
ヘルメとバーソロンの言葉に頷いた。
「……バーヴァイ城の地下回廊に、瞑界シャロアルと【幻瞑暗黒回廊】が存在する……皆さん、とんでもないところを拠点にしているような……」
「数千年の間封じられていたのだから、それは仕方がないだろう。そして、【幻瞑暗黒回廊】と言えば、ラ・ディウスマントルを思い出すぞ」
ネドーの分霊秘奥箱が解放されたことで網の浮遊岩に住んでいた方々は多数犠牲になった。その魂を得たラ・ディウスマントルの一部が復活……。
そのラ・ディウスマントルとは激戦だった。
「五分の一にも満たない魂が元の復活ですから、魔界セブドラに、そのラ・ディウスマントルはまだいる?」
その生の太股が美しいアイドル的な
「壊槍グラドパルスでかなりダメージを受けたと思いますから、いたとしても、弱くなっているはずですよ」
「弱くなったラ・ディウスマントルか」
俺がそう言うと、
「十層地獄の王トトグディウスと関係はあると思いますから、案外、力を取り戻している可能性も」
その言葉に皆が神妙な顔付きとなった。
魔元帥級のラ・ディウスマントルは結構強かったからなぁ。
アドゥムブラリが、
「【幻瞑暗黒回廊】か。その中に瞑界シャロアルの出入り口があるのかも知れないな」
「【幻瞑暗黒回廊】は様々な世界に通じているような印象だったからの」
アクセルマギナが、
「そして、魔法学院ロンベルジュにも通じている【幻瞑暗黒回廊】を利用するには、ディアさんが必須ですから、今は、地下回廊に行っても使えない」
「あぁ、<覚式ノ理>と<覚式ノ従者>によるセンティアの部屋での移動。セナアプアに戻ったらディアに告げるとしよう。魔法学院に戻るにしても、魔界セブドラに来たいです。と言ってきたら、眷属になってもらうしかないだろうな」
「お、ディアをか。主的に人並みの人生を送ってほしいとか考えている節があったが、ついに光魔ルシヴァル一門に誘うか」
「ミスティに勧められていたこともあるからな。ま、追い追いだ」
「あぁ」
と、アドゥムブラリと野郎会話を行って少し落ち着いた。
「だから、先にバーヴァイ城の地下回廊を調べてみるのもいいかもだ。デラバイン族の兵士が地下回廊を探索して行方不明とか、勘弁だからな」
「あ……」
「「「……」」」
バーソロンが俺の言葉に反応していた。
兵士の行方不明には覚えがあるか。
黒狼隊の面々も『開かずの間』のホラーな話があるような顔付きとなった。
ビュシエが少し前に出て、
「魔界王子テーバロンテが【幻瞑暗黒回廊】を利用できない且つ封印するしかなかったほどに瞑界シャロアルが近いと言うことですから……バーヴァイ城の地下回廊の【幻瞑暗黒回廊】に近付くのは危険かと思います」
経験豊富なビュシエの言葉に皆が頷く。
が、ビュシエは俺の横に来てバドマイルの魔棍棒を左手に召喚。
そして、
「しかし、シュウヤ様と私なら大丈夫かと、うふふ」
「わたしもいるのだが?」
バーソロンとビュシエはライバル意識があると分かる。
ビュシエは、
「そうですね、バーソロンも一緒なら確実です。攻めますか? 地下に」
「いずれは攻めると言うか、魔裁縫の女神アメンディ様を救いに向かう」
すると、微笑んで見ているヘルメが、
「魔裁縫の女神アメンディ様を封じることが可能なボログ・ガンバードとその勢力の討伐ですね」
と発言。頷いた。
両手を組んでいる
「地下といい、悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターの勢力が来ないといいのだがな」
「あぁ、グラドとも合流しときたいが、それに合わせて魔傭兵ラジャガ戦団の団長ミジャイ・ド・ラジャガの件もある。だから、塔烈中立都市セナアプアに一旦戻るか」
「ふむ、妾も少々気まずいほどに、<
「あぁ、ま、分かってくれるさ。皆に大量のお土産もあるからな……〝試験管のような瓶が詰まっている箱〟、〝<血魔力>を独自に発している怪しい長い箱〟、〝魔宝石が入った箱〟、〝拳用武器〟、〝古文書のような書物〟、〝魔刀〟、〝薙刀〟、〝大きな魔斧〟を見せたら喜んでくれるはず」
俺がそう言うと、
「【吸血神ルグナドの碑石】で色々と回収したアイテム類か」
と発言。
頷いた。すると、ヘルメが、
「閣下、魔傭兵ラジャガ戦団の団長ミジャイ・ド・ラジャガの件は、他の部下に任せるのも手ですよ?」
「ラジャガと話をして約束したから、俺が行くべきだろう。それに、バードイン迷宮に囚われている仲間が生きているのなら、その救出任務の場合、俺と相棒が行ったほうが確実だ。魔の扉でバードイン城から向かえば、たぶん目的地は近いということもある。が、まずは、先に戦力をセナアプアから呼ぶことが先決か」
「分かりました」
ビュシエたちは胸元に手を当て、俺に敬礼しつつ黙って聞いている。
俺もラ・ケラーダの気持ちを皆に返し、その想いを更にエミリアへと贈るように、視線を向け、
「エミリア、アメンディの魔法布を本当にありがとう。何か困ったことがあったら、俺か皆か、バーヴァイ城にいる者たちに相談するといい、どんなことでも協力しようと思う」
「……はい。ありがとうございます、魔英雄様……」
と涙ぐむエミリア。
そのエミリアを見て、悩み事があるなら手助けしたいと思った。
が……どんな風に声を掛けたらいいのか。
まぁ、皆に任せようという思いで、バーソロンと黒狼隊のリューリュ、ツィクハル、パパスに視線を向けた。
「陛下の言葉を、皆にしっかりと伝えておきます。エミリアの相談に乗るようにと!」
「「「はい!」」」
バーソロンはそう喋りつつ黒狼隊の面々に目配せを行う。
すると、リューリュとケンが前に出る。
「エミリアさん、わたしはリューリュと言います。城に戻ったら、仲間たちに陛下が綿花畑や紡績職人エミリアのことを気にかけていたと、重々伝えますので。後、わたしも城にいる時に声を掛けてくれたら、相談に乗ります」
「ウォン!」
「わたしはツィクハルといいます、リューリュと同じく相談に乗りますよ。エミリアさん、これからもよろしくね」
「ウォォン!」
「俺はパパス。周辺にモンスターが現れたら即座に城にいる皆のところに逃げてこい、俺もいたら直ぐにエミリアの下に駆けつけよう」
「ワン!」
え? コテツが犬のような声を発していた。
一瞬、膝から崩れそうになったから、柔道の受け身のボケをしたくなった。
エミリアは気にしていない。笑顔となる。
尻尾をぶんぶん振りながら近くに寄ってきたケンとヨモギとコテツを撫でていくエミリアは、
「ふふ、皆さん、黒い狼さんたちも、ありがとうございます」
と言うと、バーソロンたちに何回も頭を下げていた。
そのエミリアと魔裁縫の女神アメンディ様の像と壁画を見てから、
「では、城に戻ろう」
「「「はい」」」
「ヘルメ、お年寄りたちを<珠瑠の花>で運んであげてくれ」
「あ、階段がありますからね、分かりました――」
「おぁぁぁ」
「紐がぁ~」
「あへぁ……イイ匂いじゃ……極楽極楽……」
<珠瑠の花>の輝く紐が魔雷教の名の知らぬお爺さんの体を妖しく縛る、亀甲縛り気味だ。しかもアヘ顔を見てしまった。面白いが、直ぐに隣にいるビュシエとバーソロンとナギサを見る。ふぅ……癒やされた。
「――シュウヤ様と皆様方、お元気で!」
「おう~、エミリアも元気でな〜」
「「「エミリアさん、また~」」」
「「お元気で!」」
「エミリアさんと皆さん、失礼します~」
「では――」
エミリアの家屋から離れた。
そのエミリアの家屋の中は、開いた木窓から少し覗けた。
銀色に光る糸車は自動的に動いている状態で、白銀に輝く布が生成されていた。
魔法の糸車の性能と、エミリアが持つ生産スキルも色々とあるんだろう。
家屋と家屋の間の土の道を戻る。
土手を二段ジャンプで駆け上がって、最初に進んでいた砂利道に戻った。
デラバイン族の民と警邏部隊の押し問答はもうない。
踏み潰された麻袋と洗濯物が散乱している。
観衆に近いデラバイン族たちは少なくなっていた。
――家に戻ったか仕事かな。
動物のアヒルの親子たちと、渡り鳥に蜻蛉のような虫を見ながら……。
砂利道を進みバーヴァイ城に近付いた。
城壁は三十メートル位ある。
半筒形の半多角形の小塔が城壁と城壁の間に聳え立つ。
前方の城壁は大きく瓦解していた。
俺と魔界王子テーバロンテが戦った跡だ……。
ゲドロンのような装置と修理の過程の城壁もあるが、まだまだ手付かず。
その城壁から離れて、【ケーゼンベルスの魔樹海】がある左側のほうに視線を向けると、疎らに点在していたと分かる家屋が潰れているのが目に入った。
気付かなかったが、テーバロンテとの戦いでデラバイン族の民間人に被害者が出ている可能性があったか……お祈りしておこう――。
バーヴァイ城に更に近付いた。
先を浮遊しているバーソロンが、半身の姿勢で振り向き、
「一番門と二番門が直ぐそこです」
「了解」
魔雷教の一部の方々を<珠瑠の花>で運んでいるヘルメが先に移動していく。
グィヴァとアクセルマギナとフィナプルスの後ろから、俺たちも続いた。
太いが短い木製の橋を渡ると、見知ったバーヴァイ城の食料庫やバタリー飼育されていそうな鶏舎や兵舎などの内側が見える。
二番門を潜って進むと、
「ンン、にゃ~」
「ウォォォォン!」
と、先にバーヴァイ城に戻っていた
「「「ウォン!!」」」
ケン、ヨモギ、コテツが大きい黒狼の魔皇獣咆ケーゼンベルスに寄っていく。
頭部と背中を合わせて匂いを嗅ぎ合う。可愛い。
「よぉ、相棒とケーゼンベルス、縄張り作りはしたのかな」
「ンン、にゃ~」
「主、我らの習性をよく分かっているな! 城の魔猫たちの縄張りを、友は己の匂いを付けて支配下に置いたぞ。ついでに、我も匂いをつけさせてもらったのだ!」
嬉しそうに語る黒狼ケーゼンベルスが犬に見えてしまうがな。
「にゃ~」
と、その
頬と首にこれでもかと頭突きされ、ぺろぺろと舐められてくすぐったかったが、頭部を撫でながら好きなようにさせた。ゴロゴロ音を聞きながら、ケーゼンベルスと共に大ホール前の広場に向かう中、
「ケーゼンベルス、ツアンは?」
「ツアンはイモリザとなっている。大ホールの中に極大魔石を積み上げる遊びをしていた。ここに送る前に、【ケーゼンベルスの魔樹海】で極大魔石を採取したからな」
「あ、そうだったのか、ありがとう」
「ウォン!」
しかし、極大魔石で遊ぶか、イモリザらしい。
広場には、隊列を組んでいたデラバイン族の兵士たちがいた。
魔傭兵ラジャガ戦団の方々もその中にいた。
その一部が、
「「おぉ、報告通り、陛下がお帰りになった!」」
「「バーソロン様たちもだ!」」
「「「魔皇帝様、お帰りなさいませぇぇ」」」
「「「シュウヤ陛下ァァ」」」
デラバイン族の兵士たちの声が広場に谺する。
ヘルメが<珠瑠の花>を解放し、【魔雷教団】の方々を広場の一部に下ろすと、宙空を直進し、デラバイン族の兵士たちに向け、
「閣下のご帰還です! 【メイジナの大街】と【サネハダ街道街】には行っていません。が、新たに【源左サシィの槍斧ヶ丘】の源左サシィと交渉し、同盟を結びました。更に源左サシィは閣下の<
「「「「おぉぉ~」」」」
【闇雷の森】は少し違うような気がするが……。
まぁ、【源左サシィの槍斧ヶ丘】に近い場所だから良しとしておくか。
レンブリアさんかバスティアンさんがこれからも留まるのなら、話を通しておけば良かったか。
「あ、あの、御使い様……」
「グィヴァ、ヘルメはヘルメ、グィヴァはグィヴァ。気にするな」
「は、はい!」
可愛いグィヴァに抱きつかれた。
胸の柔らかさがタマラナイ、と、体がビリビリと痺れてしまった。
雷属性を得ても痺れるほどに闇雷精霊グィヴァの雷属性は強力ということか?
グィヴァの背中を撫でてから離れてもらう。
皆と広間の横を歩いた。
ヘルメは、
「皆さん、お留守番のご褒美ですよ!!!」
と兵士たちに水を撒いていく。
「「「うぁぁぁぁ」」」
「「「水だぁぁぁ」」」
「「うまぁぁぁぁぁ」」
「え! 尻が……」
「きゃぁ、尻が輝いてる……」
「本当だ、しかも女子だけか?」
と、常闇の水精霊ヘルメの洗礼を受ける兵士たちは放っておき、大ホールに向かう。
そこにアチとグラドにイモリザの魔素を察知。
バーソロンの護衛部隊だったターチベル、デン、ドサチ、ベイア、キョウカ、ベンも寄ってきた。
すると、馬蹄が響いてきた。塔と塔の間から広場に突入してきたグラドと馬魔獣ベイルだ。
迅速な機動力で迫力ある走りだから、少し怖かったが、俺たちの前で急ストップした馬魔獣ベイルは「ブルルゥゥ」と馬独特の鳴き声を発して頭部を振るっていた。
鬣がブルッと揺れる。
グラドは乗っていた馬魔獣ベイルから飛び立つように華麗に降りる。
と、速やかに俺の前に来て片膝を突け、
「陛下! お帰りなさいませ――」
「ヒヒーン――」
馬魔獣ベイルも両前足を曲げて頭部を下げてきた。
可愛い――と駆け寄って、
「おう、グラドもベイルも立ってくれ――」
と言いながら、ベイルの体を撫でてあげた。
すると、肩にいた
「ンン、にゃお~」
黒馬に変化するとベイルの横に並んで対抗心を見せていた。
はは、嫉妬が可愛い。その
「グラドとアチに皆、城の内部から変わりない様子に思うが、一先ずは、バーヴァイ城とバーヴァイ城周辺地域の防衛をありがとう。そのことから、魔神殺しの蒼き連柱の影響が功を奏していると判断したが、何か報告があったら聞こうか」
俺がそう言うと、片膝を床につけているグラドとアチは一瞬顔を見合わせる。
グラドが頷いてから、先に、
「バーヴァイ平原の北にある【古バーヴァイ族の集落跡】と、更に北に超えた、北西、北、北東に駆けて広い【マセグド大平原】のことで報告があります」
「頼む」
「ハッ、生き残りのテーバロンテ残党軍の百足高魔族ハイデアンホザーの部隊と戦い撃破。一部を捕らえて尋問、隊長はこちらの言語を話せるようで、降伏しました。城の離れにある牢屋に入れてあります。そして、【マセグド大平原】での戦いですが、【マセグド城】を制圧したのは、恐王ノクターの勢力で確定のようです。バーヴァイ族の恐蒼将軍マドヴァの名も得ました。また、その恐蒼将軍の軍から撤退しつつゲリラ戦の反撃を繰り返している魔傭兵部隊がいるようです」
グラドはそう報告すると、視線をアチに向けた。
アチはバーソロンをチラッと見る。
「構わぬ、先に陛下に報告を」
バーソロンの言葉を受けて、アチは俺を見て、
「ハッ、陛下、報告いたします」
「よろしく」
「【マセグド大平原】にて、ゲリラ戦を展開しているのは魔傭兵部隊が主力のようですが、元テーバロンテ王婆衝軍のマセグド城常備軍の残党も加わっているようです。その統率者は不明です」
と報告してくれた。
「アチ、報告をありがとう」
「ハッ――」
バーソロンは俺を見て、
「恐蒼将軍マドヴァの軍に抵抗し続けるのは相当練度が高い部隊でないと無理です。統率者は、土地勘がある存在か、魔傭兵にしても、それを飼えるだけの存在となれば……マセグド城城主ヘゲルマッハ・ローランドを思い出す。が、バビロアの蠱物で死んだはずだからな……」
「はい、配下に優秀な存在がいたのかもしれません」
「ふむ」
バーソロンとアチはそう語る。
「グラド、防衛任務だが、まだ暫し続けてくれ」
「分かりました」
すると、イモリザが一階大ホールの出入り口から現れる。
「使者様ァァァ」
「よう、イモリザ、【ケーゼンベルスの魔樹海】で極大魔石を集めたって?」
「はい~、ケーちゃんにお願いして、がんばってもらいました!」
ケーちゃんって、
「ウォォォォン! なんのことはない!」
「うふふ~♪」
「にゃ~」
「あ、神獣様、縄張りは増やせたんですね」
「にゃおぉ~」
「そうですか、新しい魔猫の親分さんですね~♪」
「ンン、にゃ、にゃ~」
なんか普通に会話しているし。
「大ホールの中に行くぞ、アドゥムブラリの眷属化もそこで行うか」
「お、おう」
アドゥムブラリは少しびびっている様子だ。
一方ヘルメは兵士たちの洗礼の儀を終えて、グィヴァと会話をしながら指先を合わせている。
互いの魔力を交換している?
「グィヴァちゃん、指ちゃんが綺麗です」
「ヘルメ様も、御指様が美しく綺麗です……」
精霊同士の繋がりか。
水と雷は、感電などで相性は悪いと思うが……。
闇という点はほぼ同じだ。
相性は良いだろう。
「ヘルメたちも来い」
「はい、《
「た、たのむ」
アドゥムブラリらしくないが、まぁいいか。
そのまま大ホールに移動した。
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