千三十二話 ハザルハードの落とし物


 ハザルハードの残骸の肉片から複数の魔素を感知した。

 腰の魔軍夜行ノ槍業が光る。


『弟子、タフなハザルハードを撃破したか、良くやった!』

『我らも膨大な魔素を得たぞ』

『魔界九槍卿の名に相応しい壊槍グラドパルス。進化したから螺旋壊槍グラドパルスか』

『うん。それより、あの肉の塊の中に、オベリスクと吸血神ルグナドの眷族の肉があるかも?』


 と思念で伝えてきたので、


『回収に向かいます』


 と八槍卿の師匠たちに思念で伝えた。

 魔軍夜行ノ槍業に棲まう師匠たちは頷くように静かになった。

 螺旋壊槍グラドパルスを肩の竜頭装甲ハルホンクに当てて仕舞う。


「相棒、あの残骸と肉を調べようか」

「ンン、にゃ~」

 

 相棒と共にハザルハードの残骸と肉片の下に向かう。


「――器、マーマインの親玉をぶち抜いたな! 大勝利か!」

「【ローグバント山脈】の地形の一部が変化しまくりだ」

「ウォォォン! 主、大勝利!!」

「にゃおおお~」

「器様、血の回収ですか?」


 皆もそう言いながら付いてくる。

 肉片が落ちた衝撃で周囲の地形が削れていた。

 窪んだ中心は肉片どころか肉の塊か。

 周囲には残骸と肉片が多い。

 中心は光を帯びて、少し動いていた。

 

 沙・羅・貂が横に来ると、


「残骸とハザルハードの肉団子か!」

「動いた! ハザルハードの復活でしょうか」


 沙と貂がそう発言すると、


「おいぃ……」


 アドゥムブラリは警戒を強めた。

 偽魔皇の擬三日月を目の前に再出現させる。


「器様はハザルハードを倒したと思いますが……」


 ハザルハードを倒した時……。

 称号やスキルの獲得はなかったが、手応えと膨大な魔素を吸い取った感覚はあった。

 

「倒したとは思う」

「はい」


 羅は頷く。

 やはり羅の双眸は細かな魔線が網目模様となっているから結構不思議だ。

 

「……あの肉の塊を調べようか」

「はい、濃密な魔素に、小さい魔素も複数感じます」

「どれも歪な形の魔素だ。マーマインの蟲が飛び出てくるとかあるのか?」

「……邪神ヒュリオクスの蟲眷族のようにか」

「それは嫌ですね、斬ります」


 貂が神刀を右手に召喚。


「……嘗ての俺のような単眼球体となった武装魔霊がいるかもだぞ!」

「魔素の内包量が膨大な長い物もありますが、額にあったオベリスクでしょうか。周囲の肉片の中にも、ハザルハードの体内にあったアイテムがあるかもですね」


 貂がそう発言しながら右の地面に付着していた肉片に神刀を突き刺すと、肉片は蒸発するように消え、勾玉のような物が現れた。

 

「「おぉ」」

「他の肉片も突いてみようか」

「「はい」」


 羅と貂は他の肉片に向かう。

 沙は、


「先ほど器が言っていたが、魔皇ローグバントと愚王バンサントに吸血神ルグナドの碑石などから集めた神遺物や秘宝が……この肉の塊の中に?」

「……あぁ、そうだろうな。俺はあの肉の塊の光っている部分を突いてみる。爆発したり蟲が飛び出てくるかもだから、沙は少し離れててくれ」

「ふむ」


 いいアイテムなら、ハザルハードの落とし物を頂くとしようか。



「「閣下ァァ」」


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも背後から寄ってきた。

 ツアンとサシィに黒狼隊の魔素もゼメタスとアドモスの背後に感知。


 とりあえず、


「ゼメタスとアドモス、ハザルハードという名のマーマインの魔君主は倒した。今、その残骸を調べるところだ。何か湧くかもだから、警戒してくれ」

「「承知!」」


 光を帯びている肉の塊を右手に出した螺旋壊槍グラドパルスで突いた。

 すると、二つのオベリスクが姿を覗かせた。白い魔宝石も先端にある。

 更に、血が噴出している細い片腕も見えた。すべて膨大な魔素を内包している、お宝か。

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