九百九十五話 重戦車のようなイモリザ無双と一階大ホールの戦い
右側ではイモリザ&ヘルメ組が連携攻撃を繰り出す。
百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの連中を倒していた。
バーソロンとバーソロンの部下組は、その更に右側で百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの兵士と戦っている。
大ホールには不規則な位置に四つの太い柱がある。
地下に向かう階段も左奥に見えていた。
大ホールの横幅は百メートル前後ぐらいかな。
バードイン城を支える四大支城と呼ばれているバーヴァイ城らしいが、結構な大きさだ。
そんな大ホールには数百以上の百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンが犇めいている。皆と戦うことを楽しみにしているような雰囲気だ。
バーソロンの部下たちが、そんな敵に押され始めた。
蜘蛛魔族ベサンの連中が吐いた糸を体に喰らったバーソロンの部下は体が切断されてしまう。
と、その切断された箇所から体が腐り始めていく。
他のバーソロンの部下も、百足魔族デアンホザーの連中が繰り出した斧槍のような鎌腕に体が貫かれてしまう。
バーソロンが直ぐに反撃を行い事なきを得たが、大ホールの横の出入り口から新手の百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの兵士が現れた。
大ホールの内部にいた百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの兵士に新手を合わせると、かなりの数となった。
その敵兵力をすべて駆逐するには、少し時間が掛かるかもしれない。
バーソロンを見ると、二振りの炎の魔剣を振るっていた。ギザギザの炎の剣刃で百足魔族デアンホザーの多脚数本を捉え斬る。
その左右の炎の魔剣を迅速に返す。
真一文字の剣閃を宙に描くと百足魔族デアンホザーの体を両断。続けて両腕が縦に動くや一瞬で百足魔族デアンホザーの体は幾重にも分断された。
卍斬りにも見える炎の剣術を見せたバーソロンは苦戦している部下を守ろうと前進――。
炎の紐を四方に伸ばした。
その炎の紐に触れた百足魔族デアンホザーは体が分断される。レーザー光線が通ったような印象だ。
――俺もデラバイン族のバーソロンの部下たちを助けようか。
そのバーソロンの部下たちが戦っている百足魔族デアンホザーの中隊に向けて片手が持つ魔槍杖バルドークを差し向けた。
上級の《
《
《
「「「おぉぉ~」」」
百足魔族デアンホザーの中隊と戦っていたデラバイン族の兵士たちは歓声を上げる。
「魔法の連射で敵の体が穴だらけだ!」
「シュウヤ様は我らを守って下さった!!」
「――シュウヤ様、ありがとうございます!」
百足魔族デアンホザーの環節にある伸縮自在の多脚の名は、斧槍の鎌腕ではなく腕槍が正式名なのかな。
ま、どちらでもいい――。
<水神の呼び声>を意識し発動。
《
《
《
を連射していく。
<水の即仗>の効果の無詠唱は、やはり便利だ。
百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの氷の彫像を作り上げる勢いで、《
デラバイン族のバーソロンの部下たちを助けていく。
相棒も触手を伸ばして、デラバイン族と戦う蜘蛛魔族ベサンの体を貫いていた。
「ンン、にゃお~」
「ふふ~♪」
右の前方にいるイモリザの鼻歌が響く。
そのイモリザは、バーソロンの部下の女性と戦う蜘蛛魔族ベサンに近付いた。
蜘蛛魔族ベサンの爪の剣にバーソロンの部下の女性は刺されそうに見えたが、イモリザの黒爪のほうが速い。黒爪が蜘蛛魔族ベサンの体を貫く。
一気に、その死体を遠くに運ぶように黒爪が伸びた。
その黒爪が突き刺さっている死体を他の蜘蛛魔族ベサンに衝突させる。
そのイモリザはバーソロンの部下の女性に何かを語り、伸ばした黒爪で前方の床を刺した。
その黒爪に向け両手を収斂させる勢いで前方へと低空移動を行いながら百足魔族デアンホザーに向かった刹那、イモリザは宙空で前転を行う。
揃えた短い両足を伸ばし、その百足魔族デアンホザーの頭部に盛大なドロップキックを喰らわせた。
その百足魔族デアンホザーは頭部が両足裏の形に凹み潰れながら吹き飛び、他の百足魔族デアンホザーと衝突。
そのイモリザは左手の黒爪を下の床に伸ばして刺して小さい体を少し反らし、右腕を真上に突き出すガッツポーズから、
「<光邪きっく>が決まったァ!」
そう喜び叫ぶ。
更に右手の黒爪を伸ばし天井に突き刺した。
その黒爪を収斂させる。
天井にぶら下がったイモリザは、両足をバタバタ前後に揺らしながら、
「ここの百足軍団はわたしが、たおーーす!!」
高々と宣言。
大ホールにいる百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの部隊から注目を集めた。
イモリザは、そんな百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンたちに向け頭部を斜め下に差し向けた。
銀髪で攻撃?
そんなイモリザに向けて、大ホールにいる一部の百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンが、糸の攻撃と斧槍のような鎌腕の攻撃を繰り出していく。
急ぎフォローするため、両手首の<鎖の因子>マークから<鎖>を射出。
続けざまに《
その間に、天井にぶら下がっているイモリザは、髪を刃付きのブルドーザーの排土板のような形に変化させていた。
天井に突き刺していた黒爪を指に収斂させる。
その勢いで天井に両足を突けたイモリザは、
「イモリザ、いっきまーす♪」
と大声で宣言しながら天井に突き刺していた黒爪を抜き、天井を蹴って斜め下へと急降下。
両手を左右に拡げ、十本の黒爪を回転させていく。
上から強襲を狙うイモリザに対して、一階大ホールの床にいる蜘蛛魔族ベサンたちは糸を吐いて迎撃を狙う。
百足魔族デアンホザーたちもイモリザに向けて鎌腕を伸ばしていく。
イモリザの排土板になったような銀髪と、それらの糸と鎌腕が衝突を繰り返したが、排土板の形の銀髪はビクともしない。
すべての糸と鎌腕の遠距離攻撃を弾いていた。
ブルドーザーのようなイモリザは、排土板の銀髪を活かすように、そのまま斜め下に向かう。
イモリザの排土板の銀髪は、斜め上に伸びた百足魔族デアンホザーの鎌腕と衝突し、それを折り、蜘蛛魔族ベサンの爪も折ると、百足魔族と蜘蛛魔族の頭部と衝突し、その二体の頭部ごと上半身を潰し倒していた。
イモリザは二体の死体を排土板の銀髪で押し潰しながら体を捻って着地すると、重そうな排土板の銀髪を擁した頭部を横に傾けながら、
「いえーい♪ <真・ぎったんばったん>、大成功♪」
歌うようにスキル名を発言。
銀刃を有した排土板の銀髪を前に出しながら突進を開始。
巨大ヘラジカの突進にも見えた。
排土板の銀髪と衝突した百足魔族デアンホザーたちは悲鳴的な叫び声を発して四方に吹き飛んでいた。
排土板の銀髪の刃に引っ掛かった百足魔族デアンホザーは、頭部の触角と甲皮が潰れ、斧槍のような鎌腕の多脚と節足が折れ曲がり体も潰れながら転がり死んでいく。
排土板の銀髪に百足魔族デアンホザーの死体が積もるように重なり塊になっていった。
凄まじい攻撃だ。
重戦車風のブルドーザーと化したイモリザか。
「ぎったんばったん♪ 敵を薙ぎ倒す――」
イモリザは歌いながら拡げていた両腕を狭めて腕を引く。
その引いた両腕の手を前に突き出す。
と、その十本の指から黒爪が前方へと伸びた。
排土板の銀髪に引っ掛かっていた複数の百足魔族デアンホザーの体に、その黒爪が突き刺さっていく。
容赦ないイモリザは魔界の重戦車と化して一階大ホールの床を削る勢いで直進を続けた。
イモリザの排土板の銀髪に押し出された無数の百足魔族デアンホザーの塊は大ホールの壁と衝突し、重低音が響き渡った。
壁と排土板の銀髪に挟まれた大半の百足魔族デアンホザーは押し潰されて死んだだろう。
そのイモリザは「ふふ~ん、ふふ~ん、魔界の斜陽さん、こんにちは♪」と歌いながら銀髪を排土板の形から美しい長髪のスタイルに戻す。
同時に、十本の黒爪を縦横無尽に振るい回し――。
まだ生きていた百足魔族デアンホザーの体と百足魔族デアンホザーの死骸の塊を一気に細断に処した。
「――作戦成功♪」
「ふふ、イモリザ、良い攻撃です――」
イモリザを褒めたヘルメは一階大ホールの天井スレスレを飛翔しながら《
下にいる百足魔族デアンホザーの連中は、斧槍のような鎌腕で飛翔するヘルメを撃ち落とそうと狙うが、ヘルメの《
穴が空いた鎌腕は萎むように縮み元の百足の多脚に戻る。
蜘蛛魔族ベサンの連中もヘルメに向け糸を吐く。
ヘルメは下から飛来してくる糸を《
そのヘルメは糸と鎌腕の遠距離攻撃を往なし、天井に足を突けてポージング。
逆さまのヘルメに対して百足魔族デアンホザーが、
「「「「フシャァァ――」」」」
と叫びながら複数の鎌腕を放った。
ヘルメは軽やかに天井を離れる。
水飛沫を発して飛翔しながら両手の指から生えている<珠瑠の花>を下に展開させると、飛来してきた複数の鎌腕に、その輝く紐の<珠瑠の花>を絡ませた。
鎌腕を<珠瑠の花>の輝く紐で一纏めにして再び天井に両足をつけたヘルメは、両肘を上げて、<珠瑠の花>を少し引く。そして、てぐすでマグロの一本釣りを行うように<珠瑠の花>を勢いよく引き上げた。
下にいた多数の百足魔族デアンホザーが持ち上げられて天井と衝突し、重低音が響く――。
複数の百足魔族デアンホザーの頭部が潰れた。
更に鎌腕は<珠瑠の花>に切断されるか締められ折れ曲がった。そこからヘルメは百足魔族デアンホザーの体にも<珠瑠の花>を絡めると、その<珠瑠の花>の輝く紐を勢いよく下げながら<珠瑠の花>の拘束を解いて、複数の百足魔族デアンホザーを床に投げつけ衝突させていた。
多数の百足魔族デアンホザーは、体が折れ曲がり死んでいた。まだ生きている百足魔族デアンホザーもいるが、多脚的な鎌腕はもう伸びないようだ。
ヘルメは、そんな生き残りの百足魔族デアンホザーの部隊に向け両手を翳すと十八番の無数の《
無数の《
<魔骨魚>に乗っていたイモリザが感心するように、
「精霊様の氷槍は凄い♪ 百足氷の串刺し祭り♪」
そう歌いながら宙空から二体の百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンに黒い爪を突き刺していた。
――ヘルメとイモリザの活躍で、一階大ホールはほぼ占拠したか?
が、まだ正面口と横の出入り口から百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンは現れている。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。
「相棒、イモリザのフォローを行う」
「にゃお」
相棒は途中で後脚を滑らせつつも横に曲がる。
転けそうだったが、大丈夫だった。
俺も走りながら魔槍杖バルドークを消して聖槍ラマドシュラーを召喚。
相棒が少し先の奥で「ガルルルゥ――」と獣の声を発して蜘蛛魔族ベサンに飛び掛かっていくのを見ながら――。
手前の蜘蛛魔族ベサンが槍圏内になった刹那――。
右足の踏み込みから左手が握る神槍ガンジスを前方に突き出す<光穿>を繰り出した。
蜘蛛魔族ベサンは、神槍ガンジスの動きに反応し、左手の爪を伸ばしてきた。
神槍ガンジスの穂先の<光穿>と、蜘蛛魔族ベサンの左手の爪の切っ先が衝突――神槍ガンジスの穂先は、その爪を裂いて蜘蛛魔族のベサンの腕を穿ち、腹をも突き抜けた。
「ひげぶぁ――」
と叫んだ蜘蛛魔族ベサンの体が脊髄を露出させながら上下に分断された。
裂けた爪の剣が太股のハルホンクの防護服と衝突し、軽い衝撃を受けた。
上下に分かれた死体を吹き飛ばすように<
「ンン――」
神獣の加速力を活かしている相棒は魔雅大剣を持つ触手を右斜め前方へと振るう――。
飛来してきた糸の遠距離攻撃を魔雅大剣で防ぎながら斜め前に跳躍――。
蜘蛛魔族ベサンへ飛び掛かる機動で間合いを潰す。
クレインがいたら口笛を吹くだろう
感心しながら蜘蛛魔族ベサンの集団に近付いた。
蜘蛛魔族ベサン一体が槍圏内となる。
即座に、左足の踏み込みから右腕を引く――。
その右腕でコークスクリューパンチを放つが如く聖槍ラマドシュラーを突き出す<攻燕赫穿>を繰り出した。
突き出した聖槍ラマドシュラーの穂先から幻想的に赫く大きな燕が出現し聖槍ラマドシュラーと重なった。そうしてより赫いた聖槍ラマドシュラーは蜘蛛魔族ベサンの爪の剣を溶かすように弾き、腹を貫く。更に聖槍ラマドシュラーから小さい燕たちがパッと現れると、聖槍ラマドシュラーが貫いていた蜘蛛魔族ベサンの体が爆発して派手に散った。
その爆発を打ち消すように、大きな燕と一体化した聖槍ラマドシュラーを持った俺は爆発的な加速で自動的に前進――。
聖槍ラマドシュラーと俺は蜘蛛魔族ベサンたちを吹き飛ばす。
<紅蓮嵐穿>に近い機動力で次々と敵を貫き倒す聖槍ラマドシュラーから神々しい光を得るのを感じた。
続けて、穂先から大きな
その燕の魔力は穂先側に逆流し、蛇鎌刃の溝を埋めると、新しい聖槍ラマドシュラーの穂先を形成。すると、蜘蛛魔族ベサンたちは左右に逃げるように散る。
「ひぃ、仲間がぁぁ」
「一度にたくさんの同胞たちが溶けるように消えただと……」
「あの燃え輝く槍は、神槍か……」
「神槍……では、神界セウロスの女神の幻影を纏う槍使いは……」
「では、女神のような幻影は戦神の一柱か?」
「怯むな、神界セウロスの神が直に乗り込んでくるわけがない。こやつは神界の尖兵にすぎん!」
「その通り、幻影は幻影! 動きは直線的だ! 終わり際を皆で叩け!」
「「「おう!」」」
左右に逃げた敵はそれぞれそう発言してから、俺を追ってきた。
奥にはまだ逃げていない蜘蛛魔族ベサンたちがいる。
その新しい穂先となった聖槍ラマドシュラーを活かすように――。
前進――正面から爪の剣を伸ばしてきた蜘蛛魔族ベサンの爪を弾き体を貫く聖槍ラマドシュラーと俺はそのまま直進、蜘蛛魔族ベサンの体は蒸発するように消える。
聖槍ラマドシュラーの穂先から無数の燕の魔力が周囲に飛び立つ。
飛翔していく無数の燕が爆発を繰り返す。
その爆発の連鎖は不知火のような炎の衝撃波となって周囲に
俺を攻撃しようと集まってきていた蜘蛛魔族ベサンと百足魔族デアンホザーたちは、その<攻燕赫穿>の衝撃波と火山の爆発的な炎を喰らい、体が溶けるように燃焼しつつ派手に吹き飛んだ。
炎に耐えた蜘蛛魔族ベサンたちは百足魔族デアンホザーたちと衝突。
敵が大ホールの床を転がっていくのを見ていると、背後から
「にゃお~」
と右足の脹ら脛に頭を衝突させてきた。
「ロロも、百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンを倒したか」
「ンン」
すると、横の出入り口から蜘蛛魔族ベサンと百足魔族デアンホザーの中隊が一階大ホールに入ってくる。聖槍ラマドシュラーを消した。
魔槍杖バルドークを召喚。
「ロロ、大技を横の出入り口にぶちかますから、右側にいてくれ」
「にゃお」
相棒の声を聞きながら、蜘蛛魔族ベサンの部隊と出入り口の位置を把握。
その距離と幅を考えながら――。
前進、幅が合う位置にいた蜘蛛魔族ベサンを狙うとしよう――。
「チッ、仲間を大量に屠る槍使いめが――」
「無双の槍使いがこちらに向かってくる、銀髪と黒い爪を扱う少女は放って、こちらに対処しろ――」
蜘蛛魔族ベサンが槍圏内となった刹那――。
神槍ガンジスで、<光穿・雷不>を繰り出した。
光を帯びた方天画戟と似た穂先が蜘蛛魔族ベサンの剣のような爪と腹を穿つ。
蜘蛛魔族ベサンの体が上下に分断された。
ほぼ同時に神槍ガンジスの斜め上の空間が裂ける。
裂け目から八支刀の光が出現すると、八支刀の光は巨大な光雷の矛へと変化を遂げながら直進し、体が分断された蜘蛛魔族ベサンの背後にいた蜘蛛魔族ベサンの頭部と衝突、その頭部ごと上半身を溶かすように爆発させる。
直進する<光穿・雷不>は蜘蛛魔族ベサンたちを次々に穿ち溶かす。
そのまま一階大ホールの床を削りながら横の出入り口の壁の上部を貫いて上昇し、虚空の中に吸い込まれるように消えていく。
横の出入り口は、壁の瓦礫が重なり塞がった。
これで大ホールはほぼほぼ制圧したか?
一階大ホールを見るように振り向くと、
「にゃお~」
相棒が寄ってくる、その相棒の背後には蜘蛛魔族ベサンの部隊がいた。
大ホールの中央の柱の横には地下の階段があるから、そこからも敵が現れているんだろうか。
蜘蛛魔族ベサンの部隊は、
「あの<光槍技>か<神槍技>と似た槍スキルを扱う神界セウロスの者を先に始末しろ」
「「おう」」
そう発言。
あの蜘蛛魔族ベサンの部隊は元々ここにいた部隊か。
糸を俺に向けて吐き出す。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを振るい――。
糸を切断、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の大きな駒を再度召喚し、盾として使いながら蜘蛛魔族ベサンが吐き出す糸の攻撃と短剣などの<投擲>の攻撃を防ぎ続けた。
蜘蛛魔族ベサンの部隊は、さすがに俺の近距離攻撃を警戒したようだ。
俺と距離を取ることが多くなる。
代わりに糸と短剣などの<投擲>の攻撃を強めてきた。
魔雅大剣と触手骨剣を上下左右に振るい回し糸の攻撃を魔雅大剣の刃で切断しながら前進を行う。
と、触手が持つ魔雅大剣が急激に伸びたようにも見える魔雅大剣の切っ先が蜘蛛魔族ベサンの体を貫く。蜘蛛魔族ベサンを串刺しにしていた。
すると、左にいた百足魔族デアンホザーの鎌腕が、俺に飛来――。
足下に<生活魔法>の水を撒いて滑る機動のまま――。
鎌腕の遠距離攻撃を掻い潜り、その百足魔族デアンホザーの懐へと潜り込みながら――。
縦長の百足の節腹に向け魔槍杖バルドークを突き出す<血穿>を繰り出した。
<血魔力>が覆う魔槍杖バルドークだったが、血を吸う魔槍杖バルドークは、聖槍の如くキラキラと輝きを発していた。その漏斗雲のような形の穂先が百足魔族デアンホザーの腹の甲皮をぶち抜く。
その一弾指――魔槍杖バルドークの柄を少し引く。
<柔鬼紅刃>を発動――。
穂先の形を紅斧刃と紅矛へと変化させた。
斧槍、ハルバードの代名詞たる紅斧刃を擁した魔槍杖バルドークを斜めに振り上げた。紅斧刃が百足魔族デアンホザーの体を一瞬で斜めに両断にせしめる。
目の前で物別れた二つの百足魔族デアンホザーの死体から迸りゆく血飛沫をすべて吸い取った。
――<闘気玄装>を強めて干からびた死体を吹き飛ばしながら――周囲を見渡し相棒、ヘルメ、イモリザにバーソロンの位置を把握。
跳躍先は一階大ホールの壁。
その壁に四肢をつけ、その壁を斜めに昇るように走りながら、その壁を蹴っての三角跳びを行う。華麗に宙空で身を捻り、可愛い腹を晒しつつ百足魔族デアンホザーに近付く。と、唸り声を発して、その頭部を魔雅大剣で両断していた。
可愛さと強さを併せて持つ
しかし、あの魔雅大剣の扱いは、どこで習ったんだってぐらいに凄い。
ま、利口な
ユイとヴィーネの剣の機動は見ているし、色々な戦いを体験しているから自然と身につけたんだろう。
頼もしい相棒の動きに心強さを得ながら――。
一階大ホールの正面口付近に回っていたバーソロンとデラバイン族の兵士たちを見る。
バーソロンが主力のデラバイン族たちは、正面口に現れている百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンたちを倒していた。
デラバイン族の武器は魔剣が多い。
百足魔族の斧槍のような鎌腕の攻撃を複数人の魔剣持ちが往なしつつ前進し盾代わりとなる。
すると、他のデラバイン族の強襲前衛部隊が裂帛の声を発しながら、盾代わりのデラバイン族の横を駆け抜け、百足魔族デアンホザーの懐に潜り込みながら魔剣を振るった。
百足魔族デアンホザーの体を斬って倒す。
バーソロンは二つの炎の魔剣はあまり振るっていない。
炎の魔剣は<投擲>を繰り返しながら、両手首から伸びている炎の紐を主力攻撃に使っていた。
炎の紐は、レーザー光線のようで、宙空に幾つもの渦の波形を描くように展開される。
その炎の紐に百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンが触れると、一瞬で、百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの体が輪切りのように両断されていた。
炎の紐を両手首に収斂させながら、足を止めるバーソロン。
顔の炎のマークが輝いていた。
鞭使い的にも見えるし、美しい戦闘スタイルだ。何度見ても魅了される。
すると、正面口と横の出入り口から一階大ホールに現れる敵が零となった。
「ヘルメ、イモリザ、ロロ、正面口に行こうか」
「「はい」」
「にゃ」
正面口に向かった。
すると、正面口付近にいたバーソロンとバーソロンの部下たちは、俺たちに気付いて寄ってくる。
バーソロンは、
「陛下! 一階大ホールは占拠完了です」
「おう、先ほど正面口から少し広場が覗けたが、デラバイン族と百足魔族デアンホザーの部隊が戦っていた」
「はい。広場と兵舎も押さえれば、我らの勝利は確実」
「城門はどうなっている? 地下も気になる」
「地下はまだ不明ですが、城門の一番門と二番門はデラバイン族と魔傭兵が守備についていたので味方のはず。第三~第六を担当する百足魔族デアンホザーと蜘蛛魔族ベサンの主力部隊も、この大ホールに入り込んでいたようですが、外の広場でも同胞と戦っている可能性があります」
「分かった。では広場に出ようか。広場の敵の掃討が完了次第、皆は地の利に詳しいバーソロンの指示に従ってくれ。俺は相棒を連れて、兵舎にいるだろう敵を倒しに向かうとしよう。そして、余裕が出来たら空からバーヴァイ城を見て回るつもりだ。が、まぁ、敵も考えて動くから、臨機応変に対処だな」
「「「「ハッ」」」」
「にゃごぉぉぉぉ」
黒豹ロロディーヌは頭部を上向かせて、一足早い勝利の咆哮を発している。
「相棒、正面口から外に出るぞ」
「ンン――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます