八百九十九話 対鬼魔人急襲作戦
倒れた木々は通路にも見えてくる。
岩も増えてきた。
上のほうから木の葉がハラハラと落ちてくる。
「皆、待った――」
皆、足を止めた。その皆を見ながら、木の葉を見て――。
あれもサデュラの葉なのか?
と、フリッカージャブの練習がてら、左手でジャブを繰り出して、葉を幾つか掴む。
ハルホンクに「サデュラの葉だと思うが仕舞えるか?」と聞く。
「ングゥゥィィ、ポケット、イレルダケ、ダイジョウブ」
と言ったので、防護服の上着のポケットにしまった。
そのポケットは消える。消え方が布が掃除機に吸い込まれたような感じだった。
そして、神界セウロスの物でも少しは仕舞えるようになったということ。
<四神相応>の効果だろう。
<玄武ノ心得>や<玄武ノ纏>に<白虎ノ纏>と<青龍ノ纏>で確実に成長している。
皆はそんな俺を凝視している。
その皆に、
「敵の強さの質は判断しかねるが、ここから先は俺が一人で突っ込むべきだろう」
「魔線の数は多い……シュウヤ、一人で勝てるという自信があるんだな?」
「ある。冥々ノ享禄を持つだろう存在のアドオミは俺が倒そう。そして、冥々ノ享禄を奪う」
「……分かった。信用しよう」
「シュウヤには考えがあるのでしょう?」
「おう。後で大まかな作戦は説明する。その要として、俺には<無影歩>がある」
「それは知っています。あらゆる状況下で使える気配殺しスキルで、本拠地に忍び込むのですね」
エンビヤの言葉に頷いた。
「ザ・忍者マン。と笑いながら模擬戦で使っていた気配を消すスキルか。あれは強力だ……我はあのフェイントが入ると必ず負けていた……屈辱だ……」
「わたしとの戦いでは……使っていなかった」
「ふむ、クレハも強いことは強い。が、我のほうが数十倍強い。それだけの事」
「はぅ……はい」
素直と言えばそれまでだが、イゾルデの言葉は直球すぎる。クレハさんは少し顔が引き攣っていた。
プライドが傷付いていそうだ。
武王院最強の武双仙院筆頭院生のクレハさんだからな……。
イゾルデは真顔のまま、俺を見て、
「そのスキルを使えば、急襲は必ず成功するだろう」
「あぁ。で、俺が突っ込んだ後、その<無影歩>がバレた後だが、イゾルデ、皆を頼むぞ」
「任せろ」
イゾルデは光魔武龍に変身が可能。
いざとなったら光魔武龍で玄智の森の幻瞑森の一部を焼き払ってもらおうか。
すると、ダンが、
「環境次第だが俺たちにもできることはある」
洞窟のような狭い場所なら、ダン、エンビヤ、クレハさんも戦いようはあるだろう。
「そうだな。ま、俺とイゾルデ次第か。俺たちの狙いは冥々ノ享禄。それが最優先だ」
「あぁ。その二人次第の言葉には、『俺たちを残して、皆は退くことも考えろ』という指示も入っているんだろう?」
「そうだ」
「ダン、わたしは退きません」
「……エンビヤ、仮定の話です。シュウヤ殿は私たちだけで対処が難しい場合を想定しています」
「わたしはシュウヤと命運を共にします」
「……エンビヤ、何度も言うが、武王院、ホウシン師匠のために退くところは退いてくれ、頼む」
「……シュウヤ……」
「分かったな?」
「分かりました。無理せず、クレハとダンと連携します。とにかく、イゾルデとシュウヤの働き次第ですね」
「おう」
エンビヤの気持ちは嬉しいが、彼女は守りたい。
その想いのまま、
「<無影歩>で突入後、すぐバレた場合でも、派手に暴れる。そうなった場合はイゾルデと皆は俺を信じて、無理に突っ込まず撤退すべきところでは撤退してくれ」
「それはそれで……」
ダンは迷うような喋り。
エンビヤは俺をジッと見たまま、唇が少し震えている。恐怖か。が、この段階での作戦確認は重要だ。
「……」
「逆に足手まといになると言いたいんですね」
クレハさんがそう告げた。
頷いた。
「そうとも言える。では、対鬼魔人急襲作戦の概要をもう一度。俺が一人<無影歩>を用いて敵の本拠に突っ込む。そして、冥々ノ享禄を持つ存在を見つけ次第急襲後、冥々ノ享禄を奪取。そのまま派手に暴れながら鬼魔人たちを引き寄せる。その作戦が上手く運んだ場合は、イゾルデは一人で俺に群がる鬼魔人たちの背後を突け。光魔武龍と化して構わない。で、そのイゾルデと俺に敵さんが集中したところで、更に敵の背後を突くように皆が暴れてくれ。暴れるといっても、鬼魔人たちとの数的優位を確保しつつの各個撃破が理想だ」
「一対多ですね」
「分かっているが、それもシュウヤとイゾルデ次第か」
「そうだ。撤退は冥々ノ享禄をゲットした後の状況次第、イゾルデの光魔武龍化を予定しておこう」
「任せろ!」
イゾルデがそう発言。
皆が頷く。そのイゾルデは強きな表情を浮かべて、
「次は乗り心地が悪いとは言わせん。皆の足下に毛を出しておく!」
そう発言。エンビヤは「ふふ」と笑顔を見せた。
「あくまでも撤退は予定。敵を倒しきることになるかもだ」
「……鬼魔人を倒しきる……」
鬼魔人に恨みはないが、エンビヤたちのために光魔ルシヴァルらしく闇に染まろうか……。
そのエンビヤは、
「……信じます。シュウヤの水神様の化身としての力を……」
水神アクレシス様の化身か。
闇に染まろうとする俺の心を天使の梯子が貫いた感がある。
鬼魔人とも分かりあえる?
一種の啓示として、最初は光魔ルシヴァルの前に、俺らしくいくか……。
「……はい。シュウヤ殿の戦闘能力と判断力なら信じられる」
クレハさんの言葉に頷いた。
「では、皆、後で会おう!」
あ、その前に――。
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