八百六十五話 モコ師姐とソウカン師兄

「初めまして。名はシュウヤといいます。槍使いですが、剣も格闘も学んでいます。先ほど武魂棍の儀を済ませました」


 と挨拶。


 モコ師姐とソウカン師兄は顔を見合わせてから俺たちの前にきた。


 畳を進む歩法は洗練されている。確実に強者の二人だ。


「武魂棍の儀を済ませたのか」

「へぇ――」


 そう喋った二人は軽やかな歩法で前進。

 体が浮くように畳に乗った二人は、


「俺の名はソウカン、よろしく。エンビヤから聞いていると思うが、八部衆の一人。お師匠様の弟子だ」

「わたしの名はモコ、同じく八部衆。ホウシン様の弟子よ。よろしく」


 二人のことはエンビヤからはまったくもって聞いていない。

 両者は頭を下げつつ礼をしてくれた。


 ラ・ケラーダの気持ちを込めて礼を返して、


「はい! よろしくお願いします!」


 気合いを込めて挨拶した。両者は笑顔を浮かべてくれた。

 ソウカン師兄とモコ師姐は拱手に近い仕種の挨拶を行う。

 武王院式、玄智の森式の挨拶かな。


 その挨拶をしたソウカン師兄とモコ師姐が、


「いい面だ」

「うん。武芸者、既に仙槍者で仙剣者なのね」

「それでもシュウヤは新入生なんだろう?」


 ソウカン師兄の疑問気な言葉。頷いたモコ師姐は……。

 双眸を斜め上に向けて、


「優秀だからここにいる?」

「それをいったら身も蓋もない」

「たしかに、修業蝟集部屋に新入生が現れたのはいつ以来かしら……イスラ、ライファ、ラチ、エンビヤ、クレハ……」


 エンビヤを含めた院生たちの名を呟いていく。

 クレハってのは武双仙院の筆頭院生か。 

 あの美人さんも、ここに訓練しに来ているんだな。


「いつ以来って程でもないだろう……」


 そう語るソウカン師兄は魔力を目に留めてジッと俺を見ている。

 魔察眼。ここでは違う名かも知れない。


「シュウヤの血の魔力を使う闘法それは……鬼魔人衆のスキルか?」


 ソウカン師兄は俺の魔力を分析したようだ。


 更に鋭い眼光を寄越して観察を強めてきた。 

 イレギュラーな俺を怪しむのは当然だ。

 <血液加速ブラッディアクセル>と<水月血闘法>の使用を止めた。


 開祖の独自闘気霊装の<水月血闘法>。


 モコ師姐は「ふふ」と笑って、


「ソウカン大師兄? 心配しすぎ! たしかにシュウヤは凄みのある血の魔力を纏う闘法を使うし、飄々とした雰囲気も怪しい。けど、ここでエンビヤと仲良くしてる時点でね?」


 語尾のタイミングでウィンク。

 そのモコ師姐は左手の掌を右腕の肘に当てて、その右手の人差し指は顔付近にある。


 年若い先生が生徒に注意するようなポージングと言えるか?


 素直に可愛い。

 そんな女教師もとい、モコ師姐。


 髪形はショートでマッシュウルフ気味。


 ソウカン師兄はモコ師姐を心配そうに見て溜め息。

 少し遅れて笑顔を見せると肯首こうしゅ


「……たしかにそれはそうだ」

「うん。で、エンビヤ。既にお師匠様と?」


 モコ師姐の問いにエンビヤは微かに頷く。

 俺をチラッと見てから、


「――はい、その点ならご心配なく」

「了解した。シュウヤ、すまん」


 ソウカン師兄は頭部を下げて謝罪してくれたが、必要ないだろう。


「はい。気にしていませんのでお気遣いなく」


 笑顔でそう答えた。

 ソウカン師兄とモコ師姐は笑顔を見せる。

 二人は良い人だ。


 体格的にラグレンを想起する。

 俺にとって第二の兄貴、第二のお父さん的なラグレンは元気にしているだろうか。


 斧を振るう姿は今でもハッキリと覚えている。

 会いたいな。


 そのラグレンと重なるソウカン師兄。


「……はは、ありがとう。安心したが、余計に経緯が気になるぞ。これほどの魔力を体に秘めたシュウヤには武術家の気配もある。非常に興味深い」


 と言ってくれた。

 隣のモコ師姐も、


「……うん、わたしもよ! 凄腕のシュウヤのことが知りたいわ。組み手の修業をしていたようだし、わたしも参加したいかも」


 ソウカン師兄とモコ師姐は体に纏う魔力を強めた。

 二人ともエンビヤ以上に強そうだ。


 エンビヤは少し前に出て、俺を守るように腕を拡げると、


「――シュウヤは、わたしの命を救ったのです!」

「えぇ!?」

「本当なの?」


 両者はかなり驚く。

 エンビヤは強いからな。


 俺は頷く。

 エンビヤは俺の手を握ってきた。


 積極的だな。

 が、凄く嬉しい。


「はい、本当です! シュウヤは凄く強い。お師匠様もシュウヤを認めて武王院に入学を勧めていました。シュウヤ自身も武術を学びたいと言いました。だからここにいるのです!」


 モコ師姐に対して必死なところが可愛い。

 俺は頷いた。

 モコ師姐は気合い溢れるエンビヤの姿勢に目をぱちくりとさせて驚いていた。


 そして、


「あぁ、だからお師匠様も……」

「シュウヤを認めたんだな」


 モコ師姐に続いてソウカン師兄がそう発言。


 ソウカン師兄は、


「先の<魔力纏>は<闘気霊装>系だろうし、シュウヤの強さはなんとなく分かる。しかし、【仙影衆・暗部】にも抜擢されるエンビヤが追い詰められるほどの相手となると……」

「限定されるわね」

「カソビの街で任務中だったエンビヤ。だとすると、追っ手はダンパンの手合いの者で鬼魔人か」


 ソウカン師兄とモコ師姐がそう語る。

 目配せをしあうと、モコ師姐が、


「鬼魔人衆の強者なのは確実。<黒呪強瞑>を使う相手だった?」


 追跡者を知っているような聞き方だ。

 エンビヤは、


「はい。<黒呪強瞑>で体を強化していた」

「双角強症の相手か」


 ソウカン師兄がそう発言。


「はい」


 双角強症は結構有名か。


 俺が倒した連中の中には額に小さい角を生やしていた人物がいた。


 皮膚にも黒っぽい染みの魔印のようなモノが刻まれていた。

 浮き出ていたと言えるか。


 ソウカン師兄とモコ師姐の両者は頷き合う。

 モコ師姐が、


「<黒呪強瞑>の使い手なら、わたしやソウカンも苦戦は確実の相手。エンビヤが倒れてしまうのも分かるわ」


 そう発言。

 エンビヤは、 


「……わたしを追い詰めてきた第二波の追っ手は、<玄智魔覚>を使いつつ<幻破バハル>と<玄智・幻打殺>も使う幻火流の強者たちでした。雷牙流もいたかも知れません。そして、かぶり笠を被った仙剣者は二剣流と飛び道具の使い手。凄く強かった」

「笠か! 道理で! 鬼魔人の<黒呪強瞑>の使い手連中だ」

「<幻破バハル>の使い手とも辻褄が合う。わたしたちが追っていた鬼魔人の小隊と符号する」

「え? 師兄と師姐が追っていた?」


 ソウカン師兄とモコ師姐は頷く。


「ハルハル村の連絡員が宿屋で殺されたんだ」


 ハルハル村?

 エンビヤが察して、


「シュウヤ、ハルハル村とは武王院とカソビの街の間にある農村です。お米が美味しい」


 おぉ、お米だと!


「……素晴らしい」

「え?」

「白米が好きなんだ。炊きたてのご飯が!」

「ふふ、ご飯が好きなのですね。わたしも好きです!」

「俺もご飯は好きだ。が、エンビヤとシュウヤ、それはあとで」


 さすがソウカン師兄。

 話の途中だし、当たり前だがイチャイチャモードには入らせねぇよ?


 って面だ。

 エンビヤは俺を強く見てから、


「はい、すみません」


 と返事。が、少し傍に寄ってくるエンビヤ。

 自然な行動と分かるが、素直に可愛い。


 エンビヤの温もりを少し感じつつ、頷いた。


「結果は分かっているが、俺たちが追っていた連中は全員死んだんだな?」

「逃げた連中もいない?」

「全員、倒しました」


 そう発言した俺を、三人は見てくる。

 あの時の戦いを間近で見ていたエンビヤは頷いた。


 証拠の装備品を出すか。

 竜頭金属甲ハルホンクを意識。

 軽装のまま腰元に回収していた魔剣を出した。


「「な!」」

「あ、二人とも、シュウヤの装備は特殊です」

「そ、そりゃ、見れば分かる」

「うん、あ、追っ手の魔剣ね」

「はい」

「わたしは武王院の裏手から【武仙ノ奥座院】に向かっていたんです。しかし、着いた場所は地形が異なる場所で少し混乱しました」

「お師匠様は<隠形・アブサミ>を使われたのか」


 ソウカン師兄が発言。

 エンビヤは頷く。


「はい。お師匠様は、わたしの動きを察知していたようですね。お陰で助かりました。勿論、わたしを実際に救出して敵を倒したのはシュウヤですが」

「……なるほど」


 皆、俺を見てくる。

 再び竜頭金属甲ハルホンクを意識。

 軽装にチェンジ。


「一瞬裸になるのは」

「……うん。ってか久しぶりに一物を見た」


 ソウカン師兄とモコ師姐とエンビヤは目が点だ。

 ソウカン師兄は、


「なかなかのモノだ」

「ってソウカン、まじまじと語らないでよ、可笑しい。そして、一物は立派だったけどシュウヤ、わたしたちに見られて恥ずかしくナカッタノ?」


 笑いを堪えているモコ師姐が面白い。

 エンビヤは、俺の股間辺りを凝視中。


 もう衣服はチェンジしているが、


「……シュウヤの……」


 とエンビヤは呟いていた。


「済みません。装備の能力ですので……因みに裸族趣味ではないです」


 と真面目に語る。


「そ、そうなのか?」

「ははは、ギャップがありすぎだわ。でも、面白い男を捕まえたわね?」


 笑いながらエンビヤに聞く二人。

 エンビヤは、少しびびったような表情で、


「はい! シュウヤは面白くて強くてカッコいい男性です!」

「あはは、言い切るところが師妹らしい」

「うん。まだ出会って間もないけど、エンビヤがシュウヤに惹かれる気持ちは分かる」

「ほぉ……モコのその表情は……」


 ソウカン師兄はモコ師姐と俺とエンビヤを交互に見る。

 モコ師姐は、


「そうよ? 裸だろうが衣服を着ていようが関係ないって態度には武王院にいない野生の男を強く感じた。威風堂々さ、武人の兵って印象が強まった」


 そう褒めてくれたモコ師姐。


 チラチラと股間を見る回数が増えていた。

 その視線に気付いたエンビヤはモコ師姐を睨む回数が増えていく。


 ソウカン師兄は目を細めて頷いていた。


 話を変えるか。


「ソウカン師兄とモコ師姐とお呼びしても?」

「うん」

「構わんさ。お師匠様の弟子となったのか?」

「まだです」


 ホウシンさんの弟子となれるなら嬉しい。


「あ、まだなの?」


 エンビヤに聞くモコ師姐。

 エンビヤは頷いて、


「はい」


 と答えて、俺を見た。

 そのエンビヤの瞳には熱が籠もっている。


 ホウシンさんに弟子入りしてほしいって顔に書いてあるように見えた。


「ふふ、シュウヤはエンビヤを救ってくれた強者のようだし、可愛い師弟が増えるのは大賛成♪」


 モコ師姐は声を弾ませてくる。

 エンビヤよりも歳は上だと思うが、可愛い女性だ。

 声もちょっとハスキーボイス。


 皆が嵌めている腕環のことを聞くか。


「その腕環はエンビヤと同じですよね」


 そう聞くと、三人とも頷いて腕環を見せてきた。


「うん、そうなの」

「そうだ、八部衆の証し」

「シュウヤ、言うのを忘れていました。これは弟子の証拠。武王院の印章と同じ役割。しかし、普通の院生の印章ではないのです。院長と師範とも区別された、お師匠様の魔力が込められた特別な印章です」

「エンビヤは、ここの敷地に入る前に、その腕環を翳して紫色の濃霧を消していた」

「はい。封を解くにはこの腕環が必要です。ですからお師匠様もシュウヤに渡したいと思っているはず」


 ホウシンさんもここに来ると言ってたから、来られたら頼んでみるか。


 武魂棍の儀の結果も伝えたい。


「やはり、新しい弟子を取るつもりなのか」

「お師匠様のことだからそうだろうと思ってた」

「はい。お師匠様は武王院のため、玄智の森のことを考えているはずです」

「そうねぇ。お師匠様の読みは神懸かっている。シュウヤの気質を一瞬で理解したのかしら」

「だから、シュウヤにエンビヤの命を託したのか」

「うん」


 モコ師姐とソウカン師兄が語らう。

 エンビヤも俺をジッと見てから何かを考えるように頷いた。


 読みか、ホウシンさんは勘が良いのか。

 ホウシンさんは優れた弟子たちを持つ。

 凄く慕われて尊敬を受けている偉大な方がホウシンさん。


 アキレス師匠のような存在がホウシンさんだ。


 そして、俺が倒したダンパンの勢力は印章以外にも狙いがあったということか……皆の腕輪をチラッと見てから、


「腕環の話ですが、敵の大半はエンビヤの体や印章を追うチンピラに見えましたが、笠をかぶった仙剣者は少し様子が異なりました」

「へぇ、え? あ、笠……」


 モコ師姐はそう語りつつソウカン師兄を見る。

 ソウカン師兄は頷いて、


「先の、鬼魔人衆の強者で<黒呪強瞑>を扱う追っ手の話の続きとなる……追っ手の一人が笠を被っていたのなら色々と話が合う。エンビヤ、もう一度聞くが、玄智山に入った直後、お師匠様の<隠形・アブサミ>の幻術世界の地形に迷い込んだんだな?」


 エンビヤは俺を見てから頷き、二人に向けて、


「はい。位置的に武仙ノ奥座院に到着したはずでしたが、着いた場所はまったく異なる地形。そう、お師匠様の<隠形・アブサミ>の幻術世界だったのです。そこでシュウヤに救われた」


 皆が頷き合う。


「ハルハル村の連絡員を殺した連中ね」

「……同時に【武仙ノ奥座院】の秘宝を狙う存在。お師匠様の命を狙っていた?」

「防御が厳重な正面ではなく、武王院の裏を狙ったのかもね」

「どちらにせよ、ダンパンの勢力だけではない。魔界王子ライランの眷属たちが、裏の存在で間違いないだろう」


 ソウカン師兄がそう発言。

 モコ師姐とエンビヤは顔色を変える。


「シュウヤ、改めて礼を言うわ。大事な妹弟子のエンビヤを救ってくれてありがとう」

「はい」

「ふふ。シュウヤに助けられて嬉しかった」


 そう語るエンビヤ。

 微笑むとエンビヤも微笑みを返してくれる。


 ソウカン師兄とモコ師姐は微笑んでくれた。

 暫し、清々しい空気となる。


「……で、シュウヤ……先ほど使用していたスキル。血、鴉、月などの魔力の形が不思議だったんだが、それらの魔力を活かす闘法系統を既にマスターしているのか?」

「はい。<水月血闘法>というスキルです。霊水体水鴉などの複数の影響があります」

「……水鴉……水属性の精霊様? 同時に魔界王子ライランの諸勢力に多い魔人武術の使い手でもある?」

「はい。魔界セブドラの勢力とは戦ったことがある」


 俺の言葉を聞いた三人は顔を見合わせる。


「……しかし、先の話に通じるが、今の今までシュウヤのような人材を知らなかったってのは……」

「あぁ、シュウヤを信頼したが、おかしいことはおかしい、不自然だ。お師匠様や【玄智仙境会】が隠していた?」


 ソウカン師兄とモコ師姐がそう語る。

 エンビヤと同じ疑問だが、八部衆の立場なら当然か。

 モコ師姐が、


「シュウヤ、鬼魔人と接触が多い【仙影衆・暗部】の人材なの?」

「違います。ホウシンさんもエンビヤも俺を知らなかった。ホウシンさんとエンビヤにもある程度の説明はしましたが、俺は異世界からの転移者。簡単に言えば夢追いの異邦人strangerが俺かと。といっても余計に混乱するだけかと思います」

「……召喚魔法や伝送魔法、または奥義書と関連した作用でシュウヤが出現した?」

「正確ではないですが、似たような印象です」

「分からないわ」


 ま、当然だ。


「済みません。分からないと思いますが、夢魔の曙鏡や<夢送り>などの複数の能力を使用した【夢取りタンモール】の優秀な部下のスキルが大本です。俺はスキルを獲得できる夢が入った水晶を選択して、眠っているはず。ですから、惑星セラの【塔烈中立都市セナアプア】から、ここに、玄智の森の世界に来たということになる」


 夢、幻の如く。

 織田信長が歌った『敦盛』を想起した。


「……」


 ま、当然の反応か。

 エンビヤが、


「……分からないことは分からない。そして、先ほどと被りますが、シュウヤは【武仙ノ奥座院】に突然現れたと聞きました。そこでお師匠様と出会い、色々と話をされて、そのお話の最中に逃走中のわたしの気配を察知したんですよね」


 頷く。

 ソウカン師兄とモコ師姐も頷いた。


「へぇ……強者の理由……いきなり出現とは、まさか」

「……水神アクレシス様の使者とか?」


 モコ師姐はソウカン師兄の言葉を続けるように疑問気に聞いてきた。


「水神アクレシス様の加護はあります」

「「え!?」」


 皆、びびる。


「それは凄い……シュウヤのことをますます知りたくなった!」


 モコ師姐は前進。

 側転しながら、俺の周囲を回り始めた。


 その側転機動に驚きを覚える。


 モコ師姐は華麗に側転を続けて、両手で畳を突き、跳躍。


 天井の白蛇の模様が輝いて見えた。

 その天井付近のモコ師姐は――。


 体に魔力を纏うと、


「<玄智羅仙・武双身>――」


 いきなりスキルを使う。

 模擬訓練するつもりか?


 モコ師姐は分身するように体がブレた。

 加速しただけかな。

 しかし、微妙に俺の知る加速技と違う。

 あ、ハートミットが用いた銀河剣術と似ている!


 と、華麗なモコ師姐は、二重、三重となった体を曳航するように畳から縁側へと移動。


 そのモコ師姐はブレた体を一つに重ねて振り返ってきた。


「水神アクレシス様と縁を持つ人物と話ができるなんて、少し興奮しちゃった」

「俺もだ……」


 モコ師姐とソウカン師兄が語る。

 ソウカン師兄は角張った顔で体格がいい。


 一見は全身の魔力操作が拙く見えるが、フェイクだな。


 筋肉質な腹筋の奥の丹田に感じる魔素量は桁違いだ。


 エンビヤは俺を見つめ続ける。

 そのエンビヤは唇を少し震わせて、


「……武魂棍の儀の結果……納得です」

「あ、まだ位を聞いていなかった」

「あぁ」

「二人とも、位を聞いたら驚くと思います」


 と、間を少し空けた。

 そして、


「シュウヤの武魂棍の儀の位を聞きますか?」

「うん」

「もったいぶるなエンビヤ!」


 ソウカン師兄は少し怒る。

 エンビヤは「ふふ」と笑ってから、


「……白炎仙を超えて、諾尊風槍、仙極神槍など、複数の位を得ています!」

「「おぉ」」


 両者、驚きのあまり、後退していた。

 モコ師姐は縁側でこけそうになる。


 けっこうお茶目か。

 そのモコ師姐は両耳にイヤーカフを嵌めていた。

 衣装はエンビヤと同じ。


 すると、庭に魔素が!


「――ふぉふぉ」


 ホウシンさんだ。

 って、細長い添水の上に乗ってるがな!

 

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