七百九十三話 沸騎士の進化<魔界沸騎士長・召喚術>


 ヘルメと一緒に沸騎士たちの横に着地。

 <血想槍>で浮いている夜王の傘セイヴァルトをアイテムボックスに仕舞ってから、


「沸騎士たち、ただいま。今消えた魔術師は予想通り異端者ガルモデウスだった」

「やはり!! 消えたようですが、そのガルモデウスをお仲間に?」


 黒沸騎士ゼメタスが気合いの入った重低音で聞いてきた。

 少しびびったが態度に出さず、


「まだ仲間ってわけではないが、縁は得たと思いたい」

「そうでしたか! 魔力の質が尋常ではないガルモデウスが敵ではなくてよかったです」


 赤沸騎士アドモスも気合いの入った重低音だ。

 隣の黒沸騎士ゼメタスが赤沸騎士アドモスに向けて「うむ!」と頷くと俺を見て、


「少し心配しましたぞ。閣下ならば余裕で対処が可能だとは思いますが……装備の質は閣下が持つ神話ミソロジー級の代物ばかりと見ましたからな……」


 あぁ、たしかに。

 あの魔法の鏡はかなり特別だろう。

 二十四面体トラペゾヘドロンとパレデスの鏡系?

 ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡系?

 杖もあったし、たぶん相当な強さ……。


 当然か、単体で闇神リヴォグラフの勢力と戦える存在だ。


「……悪いな。で、そのガルモデウスさんは、闇神リヴォグラフの勢力と戦っている。そして、転移魔法で消えた」

「はい。神々が使うような大魔法にも見えましたが」


 黒沸騎士ゼメタスの言葉を聞いてヘルメを見る。


 ヘルメは神妙な顔付きで頷いていた。


「……そうみたいだな。惑星セラと星々と通じた<古代魔法>とか? 大魔法とか? 惑星魔法とかもありそうだな……」

「はい。神々の式識の息吹が弱まる塔烈中立都市セナアプアですが、あまり気にしていない素振りでした。どこに転移したのでしょう」


 大魔術師を複数相手にして生きている大魔術師がガルモデウスさんだ。

 当然か。


 ヘルメに、


「次の標的を。と語っていた。闇神リヴォグラフの勢力を追える特別なスキルがあるってことだろう」

「では魔迷宮があるところにガルモデウスがいるということですね。ヘカトレイルの魔迷宮サビード・ケンツィルのところでしょうか」

「その場合は、手段を選ばずと語っていたから気になるな」

「あ、冒険者ギルドと転移陣で繋がるヘカトレイルの魔迷宮には冒険者たちも多いです」

「そうだな。ガルモデウスさんと知り合えたが……とはいえ、数多くの冒険者たちの命を奪っているサビード・ケンツィルの味方もありえない」

「はい。冒険者側も魔迷宮サビード・ケンツィルを利用しているので、なんとも言えませんが」


 たしかに、魔迷宮サビード・ケンツィルは冒険者たちとヘカトレイルに多大な利益を齎している。

 だからこそ、領主のシャルドネ・フォン・アナハイム侯爵も、冒険者ギルドマスターのカルバン・ファフナード経由で当時のクナに転移陣作製を促した。


「ま、ガルモデウスさんとは交渉ができるだろう。大魔術師たちとも交渉を試みていたことがなによりの証拠だ。それに魔迷宮は他にもあるだろうしな」

「はい、しかし、西の帝国からは距離的にヘカトレイルの魔迷宮のほうが近いはずですが、ガルモデウスは塔烈中立都市セナアプアを優先しました」

「それもそうだな。地上なら人工迷宮を使った魔迷宮への侵入方法があると言っていたし、魔迷宮サビード・ケンツィルに突入するなら、塔烈中立都市セナアプアの浮遊岩にある魔迷宮リフルより楽なはず……あ、七魔将の存在を探知できる何かのスキルかアイテムを持つのかも知れないな。ガルモデウスが西から東に向かう際、ヘカトレイルの魔迷宮には、七魔将サビード・ケンツィルはいなかった可能性もある」

「あ、なるほど! きっとそうですよ」


 ヘルメと頷き合う。


 クナもサビード・ケンツィルは必ず魔迷宮にいるわけではないと話していた。


 黙って聞いている沸騎士たちに視線を向けて、


「で、そんなガルモデウスさんから七魔将リフルを倒したお礼にアイテムをもらったんだ」

「その輝く骨と蜂蜜に、指輪ですな! どの品も最低でも伝説レジェンド級クラスと推測!」

「閣下が闇神リヴォグラフの勢力の討伐を果たした、いい記念ですな!」


 沸騎士たちに頷きつつ――。

 その輝く骨と蜂蜜ではなく、もうひとつの、マグトリアの指輪を凝視。


 これは眷属、仲間にプレゼントか。

 ヴィーネ、エヴァ、ユイ、レベッカ、ミスティ、メル、ヴェロニカ、ビア、フー、ベネット、サザー、ララ&ルル、ルシェル、ゾスファルト、キサラ、キッシュ、カットマギー、カルード、ママニ、レイ、クエマ、ゼッファ、マジマーン、ソロボ、アンジェ、キトラ、ポルセン、ツラヌキ団、ナーマさん、モガ、リツさん、ナミさん、ラファエル、エマサッド、トロコン、カリィ、ベニー、レンショウ、ゼッタ、カズンさん、猫好き空戦魔導師、新入りたち、タルナタム、ぷゆゆ……。


 うーん。

 なぜか小憎たらしい小熊太郎の姿を思い浮かべてしまった。

 気を取り直すようにマグトリアの指輪を見る。


 二本の指を通す指輪。

 

 魔法を蓄積できて、その魔法を無詠唱で使えるのはかなり便利だ。

 数には制限があるとは思うが……。

 強力な魔法を指輪に溜めておけば、いざって時に連続発射できる。


 そのマグトリアの指輪を仕舞った。


「輝く骨のアニメイテッド・ボーンズと、特殊そうな蜂蜜のプレインハニーを沸騎士たちにプレゼントしよう」

「――な、なんと!!」

「――我らに、ぷ、ぷれぜんと!!!」


 ドッした重低音の声が周囲に谺するように響き渡る。


「おう」

「「ありがたき幸せ!!」」


 沸騎士たちの渋い重低音の声が再度響いた。


「しかし、我らに」

「ふむ、使えるのか……」

「輝く骨は武器として使いたいのか? その場合は魔界セブドラには運べないだろう。だが、輝く骨のアニメイテッド・ボーンズの溶けたモノを沸騎士たちが飲めばどうだろう?」

「それは!」

「我らでも!」

「そうだ。そして、アニメイテッド・ボーンズが溶けたモノを飲めば、生命力が増える。そして、魔法の盾を生成できるようになるらしい。だから、魔界セブドラにも持ち帰ることはできるはずだ」

「「おぉぉ」」


 沸騎士たちの驚く顔が面白い。


 が、あまりに驚いたせいか、二人の頭蓋骨にひびが入ってしまった。


 驚いて頭蓋骨にひびが入るのは初めて見る。


 それほど驚いたということだろう。


 更に眼窩の奥にある炎が小さくなっていた。


「落ち着け、まだ魔界に戻るなよ」

「「ハ!」」


 沸騎士たちは、自らの滾る気持ちを落ち着けるように眼窩の炎を少しずつ炎を増やすように拡大させた。


「ふふ」


 ヘルメも笑顔だ。

 思わず自然と頷いた。


「私たちは閣下からアイテムを得られるのですな……」

「……我は嬉しすぎる」


 静かな声で気持ちを込めて語る沸騎士たち。


 体から出したぼあぼあの魔力の煙のせいで、その沸騎士たちの姿が見えなくなった。


 暫し落ち着くのを待った。

 

 煙か、蒸気か、沸騎士たちの体から出ている、ぼあぼあの魔力の噴出が弱まったところで、


「輝く骨の名は、アニメイテッド・ボーンズ。蜂蜜はプレインハニーだ。で、アニメイテッド・ボーンズにプレインハニーを塗るとアニメイテッド・ボーンズは溶けるらしい」

「溶けたモノで生命力が増すと……」

「我らの生命力が増える?」

「そうだ。同時に<血魔力>を込めるが、生命力って観点だと不死系だと逆にダメージとかがあるのか? 先の元リフルの肉スライムも水の浄化魔法で大ダメージを喰らっていた」

「閣下、大丈夫ですよ。闇は闇でも沸騎士たちと閣下には闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの縁がある。その縁は言わば閣下と沸騎士たちの神霊を帯びた楔が結ぶ合同の魂魄。そして、その魂魄の縁は、狭間ヴェイルを貫く輝かしい特別な縁なのですから」


 水飛沫を発したヘルメがそう熱く語る。


「「合同の魂魄!」」


 沸騎士たちが大興奮。

 煙のような魔力でまた姿が見えなくなった。


 が、そんな沸騎士たちよりもヘルメを見た。

 

 自ら発している水飛沫で、おっぱいさんが見事にプルルンと揺れている。俺は目が点となったように魅力的なおっぱいさんを凝視。


 ヘルメは俺の視線に合わせて腰を振って、って、鼻血が出るだろうが。

 

「ありがとうヘルメ」

「ふふ。閣下ならいくらでも……そして、今は眷属たちがいませんので、閣下の自由に……」


 腰を捻る仕種がエロい。


「嬉しいが、それはあとでだな」

「はい……」


 沸騎士たちを見て、

 

「ヘルメは常闇の水精霊として力強く語ってくれたが、アニメイテッド・ボーンズが沸騎士たちにどんな影響を及ぼすかは不明。不安なら止めておくが」

「否、否ァ! 不安なぞ微塵もありませぬ!」

「閣下! 我らの魂魄は熱く燃えておりますゆえ、ご安心を!」

「ふふ、閣下、心配しすぎです」

「はは、実は俺のほうが不安だった」

「閣下……嬉しいお言葉です! が、ご安心くだされ」

「そうですぞ。閣下の<血魔力>を内包するアイテムの施しを受けられるのは恐悦至極……嬉しすぎる!」

「おう! 我もだ! 胸が破裂してしまう勢いで滾っておりますぞ!」


 右肘に付着している肢のイモリザも蠢いた。

 沸騎士たちの興奮度合いが伝わっているようだな。


 すると、ヘルメが胸にハートマークの水滴の魔力を創って、


「ふふ、お胸がどっきりんこだったのですね」

「「ハイ!」」


 また沸騎士たちから蒸気が溢れて姿が見えにくくなった。


 すると、グラマラスなヘルメが、俺に投げキッスをしてきた。


 ドキッとしてしまうがな。


 魅力的なヘルメから視線を逸らして沸騎士たちが落ち着くのを待つ。


「――よし! 早速<血魔力>を込めたプレインハニーをアニメイテッド・ボーンズに塗る。塗ったら直ぐに渡すぞ」

「ハッ! 閣下ァ!!」

「ハイッ、我らは閣下と共に!」


 両者の気合いを見てから――。

 ――<導想魔手>を発動。

 <導想魔手>の上に輝く骨のアニメイテッド・ボーンズとプレインハニーを置く。


 プレインハニーは小さい瓶の中だ。

 革の蓋は紐で結ばれている。


「<導想魔手>が錬金術の台のように!」

「色々と便利な<導想魔手>だ」


 そう言いながら……。

 紐に括られていた油で湿った紙を見る。


 紙に記されている文字は見にくいが……。


 次元の窯に高濃度の熱したドメンキル、アムロス真珠の欠片、鳳凰角の粉末、などの素材名がびっしりと記されているのが見えた。

 

 さて、その革の紙を破らないように――。

 慎重にプレインハニーの瓶の蓋を外した。

 

 一気に、蜂蜜のいい香りが漂う。

 豊潤な果実的な香り。


「いい匂いです」

「ングゥゥィィ、マリョク、アル! ピカピカ、ツブツブ、オイシソウ!」


 ハルホンクが反応。

 プレインハニーはたしかに魔力が凄まじい。


 匂いといい、最高の部類かも知れない。

 

 見た目は、星々の輝きを再現しているようなキラキラと輝く粒々が半透明の粘液の中にびっしりと詰まっていた。

 

 これを塗るとして……。

 マイ箸はあるが、スプーン的なモノはない。

 

 ま、プレインハニーに<血魔力>を送ってすべて使うから――。

 ――と、そのプレインハニーが詰まった瓶の内部に指を突っ込みつつ<血魔力>を直にプレインハニーの粘液に送った。


 血色に輝くプレインハニーが熱を帯びた。

 同時に、いい匂いが増す――。


 ――ヤヴェ、すげぇイイ匂い。


 食欲どころか、股間が反応する。

 こりゃ、精力剤の効果もあるようだ。


「まぁ! うふふ……閣下の一物様が、とても熱そうです♪」


 ヘルメの目がハート状態。


 俺の股間を凝視しつつ水をぴゅっとかけてくるのには参った。

 かけられるたびに、腰がびくついてしまう。


 気持ちいいが、正直、皆がいなくてよかった。

 

 ディアがいたら失神していたかも知れない。

 ヘルメを半笑いで睨みつつ頭部を振るうと、


「あぅ、はい……閣下」


 と股間辺りから熱を帯びた飛沫を発したヘルメさん。

 水をかけるのを止めてくれた。


 少し笑いつつ――。

 指に絡むプレインハニーを持ち上げた。


 ねばねばが強い。

 

 そして、美味しそう。

 その血色に輝くプレインハニーをアニメイテッド・ボーンズの輝く骨の表面に塗りまくって、使い切った。


 <血魔力>を有したプレインハニーは、輝く骨のアニメイテッド・ボーンズの中に瞬時に浸透。

 

 輝く骨のアニメイテッド・ボーンズが吸収したと言えるか。

 輝く骨のアニメイテッド・ボーンズが強く輝いた。

 

 アニメイテッド・ボーンズと<血魔力>の相性がいいと分かる。

 

 この相性の良さをガルモデウスさんは予測していた?


 そう考えた直後――。

 血を吸収したアニメイテッド・ボーンズの表面に、ルシヴァルの紋章樹の印が刻まれる。


「「おおぉ」」

「ルシヴァルの紋章樹の印が!」

「<血魔力>の吸収具合といい、光魔ルシヴァルと相性がいいということですね!」

「そうだな。さて、溶けるのは――」

「あ――」


 そのアニメイテッド・ボーンズを沸騎士たちに渡そうとしたが、一瞬でアニメイテッド・ボーンズが溶け、その溶けたモノはぷかぷかと浮いた。


「浮きました! 閣下が<血魔力>の思念で操作を?」

「いや、自然と浮いた」

「まぁ!」


 ヘルメが口に手を当てて驚く仕種が可愛い。

 

 依然と、溶けたアニメイテッド・ボーンズだったモノは、丸い形のまま無重力状態のように浮いている。


 驚く皆と視線を合わせて頷き合う。


「ちょうどいい」

 

 俺は体を退いて、


「ゼメタス、アドモス。この輝く液体を受け取れ」

「「――承知ッ」」


 沸騎士たちは揃って突進するように前進。

 溶けて輝いているアニメイテッド・ボーンズだった水のようなモノと重なった黒沸騎士ゼメタスと赤沸騎士アドモス。


 その沸騎士たちの体の中に溶けたアニメイテッド・ボーンズが染みこむと、沸騎士たちの体を構成する骨と鋼に光の亀裂が走った。


 沸騎士たちから重低音が轟く。

 不思議と俺の脳と心臓に重低音的なモノがエコーで響いた。


 ※ピコーン※<魔界沸騎士長・召喚術>※スキル獲得※


 おぉ、スキルを!


 更にぼあぼあ魔力を噴出する沸騎士たち。

 一瞬、沸騎士たちの姿が見えにくくなった。

 が、煙か蒸気的な魔力を体内に戻した沸騎士たちは素早く姿を現す。


「お~」

「新しい鎧、体です!」


 沸騎士たちの見た目は変化していた。

 頭蓋骨の兜も鎧も変化。 

 額の前立と繋がる眉庇が少し前に出た。

 前立の飾りは鍬形か。


 黒沸騎士ゼメタスの色は前と同じく漆黒の色合いが主力だ。

 その漆黒に銀色と金色に赤色の肉体を構成するパーツが増えていた。

 筋肉のような組織が増えている?

 更に、鋼と骨が融合した洗練された新しい骨盾を掲げると、その新しい骨盾の縁から虹色の魔力が放射状に飛び出ていた。


 放射状の魔力の形はルシヴァルの紋章樹に生えている枝模様か。

 

 魔界沸騎士長だし、<従者長>的な意味もあるのか?


 かなりカッコいい。

 骨剣には血も滲んでいる。


 赤沸騎士アドモスも前と同じく赤色だったが、赤色の中に銀色を帯びた黒色の太い溝が増えていた。肉鎧の一部には肌色、いや、ルシヴァルの紋章樹を意味するような浮き彫り加工された渋い意匠がある。


 ヤヴァい、総じて素晴らしくカッコいい。

 魔界黒沸騎士長ゼメタス。

 魔界赤沸騎士長アドモス。

 

 名実共に大眷属の誕生だ。


「新しい兜と体と、虹色っぽいフォースフィールド的な魔法力を得た骨の盾か。魔法の骨盾という感じか。そして、骨の剣には光魔ルシヴァルの血を得たようだな」

「「ハイッ!」」

「俺の血も取り込んだようだし、素晴らしい成果だろう。本当の魔界騎士と呼べる。おめでとう! 魔界黒沸騎士長ゼメタスと魔界赤沸騎士長アドモス!」

「「――ハハッ、ありがたき幸せ!!」」


 沸騎士たちは即座に片膝で床を突いた。


 渋い頭蓋骨を下げてきた。


 後頭部とポールショルダーの首辺りも流線形で細まっている。

 そして、星屑のマントの外側が煌めいた。


 血色の煌めきが増えたか。


「閣下の愛を感じますぞ……」

「我もだ! 閣下の<血魔力>が、我らにも宿ったのだろうか」

 

 沸騎士たちの体から沸き立つ蒸気のような煙。

 胸元の輝く肋骨が少し蛇腹機動を起こした。

 何か秘密がある?

 

 そして、沸騎士長としての魔力の高まりかぼあぼあが激しい。

 嬉しさの感情を表しているのかな。

 あ、急激にぼあぼあが減ったが、まぁ、魔力の質は格段に上昇していると分かる。

 

 すると、ヘルメが抱きついてきた。

 

「ふふ♪ わたしにも愛を――」


 唇を奪われたが――。

 素早くヘルメの背中に右手を回して、ヘルメを抱きつつ一回転しながら、ヘルメとキスを続けた――。

 ヘルメの体を労りつつ――。

 そうして、ロロディーヌが呆れるほどの激しい一夜をヘルメと過ごす。



 ◇◇◇◇



 濃厚な匂いと共に暁光を浴びた。

 ヘルメは尻を突き出した格好で気を失っていたが、旭日を浴びた直後、


「……あん……」


 と悩ましい声を発して突き出した尻を震わせると意識を取り戻した。


「ヘルメ、大丈夫か?」

「……ふふ♪ はい。あ、沸騎士たちは?」

「気付いていなかったのか、夜のうちに閣下ァァァと叫びつつ魔界に去ったぞ」

「あ、そういえば……」


 惚けた表情のヘルメ。

 寄り添ってきた。

 

 そのヘルメの肩に手を回しつつ一緒に旭日を見る。


「ぁ……」

「まだ感じやすくなっているか」

「すみません。でも、閣下が激しかった……」

「そりゃな。ヘルメは可愛いし、刺激も強かった」

「ふふ、ありがとうございます」


 ヘルメの満足そうな表情が愛しい。

 艶が出て輝いている。

 そのヘルメは旭日を見て、


「……ここは上界の端のほうでしょうか」

「どうだろう。浮遊岩と奥の魔塔がありすぎてな……」

「はい。昼までは何事もなく過ごせそうですね」


 ヘルメの言葉に頷いてから、ヘルメと離れて、


「たまには、こうまったりするのもいい……」

 

 塔烈中立都市セナアプアを見る。

 皆がいる方向はどちらだろう。

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