七百七十二話 血文字による情報交換とミスティの鼻血
そこから皆に向けて覚えた魔法の実験結果を報告。
相棒は月を追い掛けつつ、ゆっくり飛行に切り替えてくれた。
惑星セラの大気圏的な高度にはエイリアン風のモンスターがいるから気を付けたいが。
ロロは俺の気持ちを読んだ。
「ンン――」
急降下。
雲の中に突入――楽しそう。
ま、皆に報告を急ぐか。
最初は王級:水属性の《
《
水と氷の魔法が鎧として俺の体とその周囲に展開する。
その水と氷の魔法の鎧は、攻守に応用が可能。
俺が扱う水系の魔法も強化しては<精霊珠想>の常闇の水精霊ヘルメをも強くする。
何気に重要でスペシャルな魔法だと情報を伝えた。
次に皇級:無属性の
『皇級の魔法書は一種の罠だった。フィナプルスの夜会的と言えばいいか……魔力を込めつつ読んで覚えようとした時、墨の点が頁の中に出て、右手に穴が開いては、色々とあった後、無属性の
『『!!!』』
そこからギャーギャーワーワー。
特にレベッカが怒っていたが、暫し待つ。
『これは推測だが、たぶん、大魔術師ラ・ゾンが、無名無礼の魔槍を扱うナナシという名の魔人か、怪人を、皇級:無属性の
『聞いてない! でも、店主も秘蔵の品だからシュウヤに売ったのよね、かなり得したってこと?』
『サキアグルの店主には鑑定眼はないようだが、商売柄慧眼はあるってことだろう。で、その取り込まれた
『凄い! スキルを二つも!』
『おう。無名無礼の魔槍も入手した』
『あ、武器召喚系のスキルと連動しているのね。慧眼といったけど、サキアグルの店主は、シュウヤなら獲得できると分かってて売ったようね』
『あぁ、彼女の冒険者パーティーも強そうだ』
『うん』
そこから、無名無礼の魔槍の穂先には『バイ・ベイ』のような梵字が刻まれており、俺の知る戦国時代の頃に使われていたような渋い槍。
柄の一部には骨の絵柄もあるから、魔界セブドラ風でもあるかな。
と血文字で伝えた。
その無名無礼の魔槍の柄には、
天下八槍八翔槍、桜花鷹揚、義紫苜蓿、無名無礼。
天下御免ノ槍商売、ナナシノ権兵衛、無名無礼トハ俺様ヨ――。
そんな文字が刻まれてあるとも告げる。
更に無名無礼の魔槍から水墨画風の燃える魔力が放出されること。
その変わった珍しい魔力は、油煙墨、松煙墨、彩煙墨、などの墨を基調にした浮世絵風でもあると血文字で伝えたが、伝わるか微妙……とにかく墨が燃焼しつつ蒸気的で沸騎士たちが放出するような、ぼあぼあの燃える絵柄の魔力だと一生懸命に伝えた。
レベッカは、
『アドゥムブラリのような炎? 血文字だけでの想像は難しい』
『ん、墨汁の液体で描かれた立体的な炎!』
『不思議だけど凄そう!』
『ぼあぼあ! 魔界のかっこいい炎!』
エヴァも感心したような血文字を寄越す。
そして、ナナシの魂が宿る鬼の仮面が、墨の魔力と共に出現して、鬼の仮面が喋ることも告げた。
性格は歌舞伎者風と言えるか、俺様口調。
アルルカンの把神書よりも怖い印象だったと告げると、レベッカから、
『シュウヤは鬼神キサラメ様の装備を獲得しているから、オーク系のスキルと相性がいいのかな』
『そうかもな』
ユイからも、
『ミレイヴァルさんの魔界版、あ、オーク版か。墨汁の魔力もだけど、面白い眷属化ね。でも、その鬼の仮面と魔槍に宿るナナシさんって、無名無礼の魔槍と鬼の仮面の、いったいどっちが本体なの? シュウヤが獲得したのは<召喚魔槍・無名無礼>だから、魔槍?』
『無名無礼の魔槍だろう。鬼の仮面は、その無名無礼の魔槍から出る燃える魔力から出現するからな』
『へぇ、帰ってきたら無名無礼の魔槍を見せてね』
『おう』
『ん、ナナシさんは、魔界セブドラとベファリッツ大帝国と関わりがあるオークの戦神の眷属だった?』
『ナナシからは、まだ詳しくは聞いていない。戦っている最中に、<グンダルンの嘶き>というスキルを使用していたし、オークの戦神様と関わりはあるだろうな』
『ご主人様が新しく獲得した<戦神グンダルンの昂揚>を使用した際、オークに変身を?』
『あぁ、オークに変身したかもな。<戦神グンダルンの昂揚>を使用した時……不思議と体幹の筋力が増して速度も加速したんだ。だから、鬼の仮面を被る怪人ヴェクサードさん風に、怪人シュウヤ・カガリへと変身を遂げちゃったかも知れない』
『なんと!!』
『ヴィーネ、冗談だ。本気にするな』
『……はぃ』
安心したような血文字を寄越すヴィーネさんだ。
レベッカから、
『ちょっと! わたしもびっくりしたんだけど』
『すまん』
『ん、わたしはシュウヤの冗談だと分かった』
『血文字で分かるなんて、さすがね』
『わたしも心配しました。しかし、同じシュウヤ様の<
『キサラ、気にしない。エヴァだからこそよ』
『はい』
エヴァは<
たまたまだとは思うが……。
エヴァも<
着実に強くなっている。
そして、棒術や金属の精錬以外にも超能力系が発展する可能性は非常に高いか。
そこから大魔術師ラ・ゾンの所属先の予想として、優秀な大魔術師でサークル・オブ・エルンストのメンバーかも知れないと告げた。
そして、王級:水属性の《
その《
《
戦いつつ
読んだ内容が……。
《
その内容の、
『善美なる氷王ヴェリンガー、
だったと難解な内容を伝えた。
読んでいる時に胃がキリキリ痛み、魂がすり減るように魔力を失って、デボンチッチたちが周囲に出現。
しかし、そのデボンチッチたちは混乱したように萎んで消えた。
その当時、傍にいたヘルメも途中で、
『閣下、その魔法書の理解を進めてください。回りは、わたしにお任せを。そして、同胞のような精霊ちゃんたちが、閣下とわたしに、何か……あ、消えていく……』
水の大眷属たちがヘルメに見えていたことも皆に血文字で告げた。
そうして……。
危うい魔法書でもあったが、
しかし、読み終えた
『
『ん、たぶん、触っていないから詳細は分からないけど、今後の付き合いを兼ねているから、マイナスにはならないとシュウヤだから判断したのかも知れない』
『はい。肩書きだけで決めたわけではないはず。魔察眼からの推察はそうとうな修羅場を潜っている証拠かと。レベッカが得た、その火属性の魔法書も、かなり強力なはず』
『うん、楽しみだけど、今はシュウヤの結果を聞きましょ』
『はい』
『ん、シュウヤの手元に残った
『実は魔造書とか?』
皆の血文字に頷きつつ、
『魔造書でもあるのかも知れないが、沙、羅、貂がいうには、
『『ええ!!』』
『驚いているところ悪いが、説明を続けるぞ。残った
『凄すぎる、そんな魔法書を……ラ・ゾンといい、超が付く<製錬魔師>の戦闘職業を持つ大魔術師が造ったのね。古代の魔法書でもあるのかな……』
『あぁ、不思議だ。魔法を覚えても残る魔法書。では、威力を説明しとく。王級:水属性の《
『驚き!』
『凄まじい』
『近くで見たいけど威力が高いならロロちゃんの炎と一緒で使う場面は限られるわね』
『たしかに使い所はセンスが求められるだろう。その威力には、俺も正直驚きだったよ。烈級:水属性の《
『なんで、しもうたのじゃ……とか、お爺ちゃん口調の血文字を寄越すのよ』
『大魔術師風に。まぁスルーしてくれていい』
『ふふ、凄いから分かるけど、ツッコミたい!』
『我慢しろ』
と笑う。
『ん、抱きつくツッコミ?』
『うん!』
エヴァとレベッカの笑顔が見えた気がした。
『抱きつくツッコミなら賛成ですが、その《
『そういうことだ。そして、
『魔竜王バルドークが棲んでいたバルドーク山……』
『へぇ……って、短い間に大冒険を行うシュウやん! ムカつく! 早く抱きしめさせなさい!』
『無理だ。で、そんな山と渓谷が織り成す景勝の地には滝があって、滝壺と綺麗な泉を滝が隠す標高のある崖には洞穴が存在した。その洞穴の奥へと氷の道は続いていたんだ。そして、氷の道をたどると天道虫が現れた』
『え!? 水の眷属たちではなくて、光の精霊様の眷属たち?』
レベッカがまたも驚く。
まぁ無理もない。
『まさか、
キサラも関係がある宝石の名を告げる。
『まぁ聞け。その天道虫と氷の道に誘われるまま、洞穴の奥に進むが行き止まり。が、天道虫がアピールを始めて、触れた岩壁が消えて、魔族の幻影も出現しては、岩壁が消えて封印が解けたんだ。天道虫はそのまま開けた地底空間を進むと、奥には大きな地底湖が存在し、中心に小島があり、その小島に架かる石橋があった。幻想的な場所だった』
『本当に凄い冒険譚じゃない……』
『ん、精霊様とロロちゃん以外にもイモちゃんが活躍?』
『イモリザは出してない。で、石橋は歴史感のある古い石橋だった。端にはエルフの欠けた石像と家紋が刻まれていて、
少し間が空いた。
『バルドーク山の地下に地底湖と古代遺跡なんて……』
『はい、ドミドーン博士とミエさんが聞いたら、大変なことに』
『あぁ……たしかに。で、そんな歴史のある石橋と小島がある地底湖には、蟲鮫系のモンスターがウヨウヨと泳ぎ、湖面の表面には霧が
『幽体……』
『シャプシー?』
『ロシュメール古代遺跡に多いと聞いたことがあります』
『シャプシーではなかった。その幽体たちの戦いは、不思議な戦闘の音楽となって地底湖は一種の劇場と化していたんだ。で、地底湖の中心にある小島には霊槍ハヴィスが封じられていた巨大なオベリスクがあった』
この霊槍の血文字を書いたら、
キッシュ、レベッカ、キサラ、ヴィーネ、エヴァ、ユイ、ミスティ、ヴェロニカ、メル、ベネット、ソロボ、ルシェル、サラ、ブッチ、ベリーズ、フー、サザー、クエマ、ビア、ママニ、カルード。
皆が驚く。
――血文字が凄まじい勢いで展開。
強引にその血文字たちを打ち消すように――。
ガセイコズの眷属と激闘を行ったと血文字で伝える。
そのガセイコズの眷属は『フォルトナー! アァ! ガモルザク様の封印ヲ!!!』
そう必死に喋りつつ巨大なオベリスクを攻撃したことを告げた。
『……ミスティやクナではないですが、少し鼻血が出る勢いです。ガセイコズの眷属と戦い、他にもガモルザクという名の魔界セブドラの諸侯がいると。そのガモルザクは、霊槍ハヴィスを封じる能力を有しているのですね……』
『たぶんな』
そうキサラに伝えて、蹴り技の<蓬莱無陀蹴>を獲得したことと、無名無礼の魔槍で<水穿>を放ち、ガセイコズの内臓と心臓部のクリスタルを破壊し、そのお陰かも知れないが<火焔光背>を獲得できたことも伝えた。
銀光を発している金属も回収。
で、今に至ると血文字で伝えきった。
『……』
『買い物は買い物で楽しかったけど……』
『ん、少し残念?』
『エヴァ、少しじゃない』
『ん、でも、限定の巨大イチゴーンが付いたココナッツパンケーキは、さっきのタイミングじゃないと食べられなかった』
『それはそうだけど……シュウヤの血文字の語りが上手いのか、面白くて……』
『はい、わたしは一緒に行きたかった!』
『仕方ありません。皆の買い物もありましたし、情報も得られた。わたしたちはわたしたちにできることをしたのです。が、一緒に行きたかった』
『キサラ、真面目に語ってるけど、こっちでは顔が笑っているからね』
『はは、キサラらしい』
『ちょっと~? 皆は皆で楽しそうね』
ペルネーテに居るミスティから血文字が来た。
『ミスティも塔烈中立都市セナアプアに来るんだろう?』
『その件を話す前に、マスター! 新しい魔槍と魔法の獲得おめでとう。大金を支払ったようだけど、それ相応の魔法と魔槍よね。私的には、鋼のケースが気になるけど』
『鋼のケースはおそらく保管アイテムで、開けられるか、試してはみるつもりだ。で、アス家のディアは、どうなった?』
『ディアと話をしたわ。シュウヤとの経緯を簡単に説明した。明日、また会う予定。そして、もうディアの家と魔法学院にも外出許可を取ったし、こちら側の時間は大丈夫。小型魔導船の設計図も仕上げたし、ゼクスの改良も大丈夫。気がかりは、アメリちゃんの周囲にいるヴェロニカを追う聖鎖騎士団関係との戦いと、アマハークの魔印の調査ぐらいかな』
『ヴェロニカと小競り合いする聖鎖騎士団か。ペルネーテなのが幸いか』
『うん。教会勢力には敵が多いから』
『そうそう!』
ヴェロニカの血文字だ。
続けてヴェロニカは、
『何回も告げているから分かっていると思うけど、邪神系の眷属は色々なの。魔界セブドラの眷属よりも、暴虐非道な行動を取る場合がある。その点、聖鎖騎士団が活躍してくれるから、楽って言えば楽かな。総長が居れば~、もっと楽なんだけど~』
『こっちも色々あるから、すまんが』
『うん、分かってる、ラファエルたちもいるから戦力は十分』
そこで、ミスティやペルネーテ組に向けて、
『移動だけなら、魔塔ゲルハットにゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡を設置予定だ。だから、ペルネーテの屋敷→サイデイル→セナアプアで、直ぐにセナアプアに来ることは可能となる』
『うん! 小旅行を兼ねてサイデイルとセナアプアで過ごすのは楽しそうだけど、わたしはアメリちゃんを見守る。アメリちゃんは聖女として有名になってきてるから、邪神や魔界に関わるクズっぽい連中が目を付け始めているし……』
それを聞くと、アメリの顔を見に行きたくなる。
<光神の導き>は、アメリの聖眼があったから獲得できた。
すると、
『総長、総長が持つアイテムボックスに貿易の物を入れて、転移を繰り返して、ペルネーテ~セナアプア~ヘカトレイルで売り捌けば、船の貿易以上に儲けることが可能かと』
メルの血文字も浮かぶ。
俺は頷きつつ、
『そうだな。今回散財したから、それも手ではある。が、それはそれだ』
『ん、シュウヤらしい。冒険者魂』
『ふふ』
『おう。んだが、俺の戦闘型デバイスにも入らない場合もある。魔竜王の巨大な頭部は無理だった』
『大量に荷物を詰められる魔法袋を一つのアイテムとして仕舞えることが可能なアイテムボックスがあれば』
『その貴重なアイテムボックスを複数用意できれば大儲けはできそうね』
『アイテムボックスの容量と、その数次第か。ま、船商会の仕事を奪うつもりはない。あくまで緊急時にメンバーの移動ができる手段として活用しよう』
『はい』
『オットーたちもいるし賛成。ホルカーバムに転移する場所はいまのところないし、黒猫海賊団は重要! 傀儡兵やポーションの材料になる、ホルカーバムの資源は大切なんだから』
ヴェロニカがそう血文字を寄越した。
船商会&黒猫海賊団には、東経由の海路も考えてもらわないとな……。
『おう。で、話を切り替えるぞ。皆、魔塔ゲルハットは見たいだろう?』
『『はい!』』
『『勿論!』』
『わたしは特に見たい!』
ミスティだ。
強く頷いた。
そのミスティは、
『軍の工廠が使う
『ミスティ、ディアと明日会うんだろう?』
『あ、そうそう、その件。各都市の魔法学院は【幻瞑暗黒回廊】で繋がっているらしいから、調べる価値があると思うの』
『【幻瞑暗黒回廊】か。たしかにそうだな』
『そのディアと少し話をして、打ち解けたの。ディアはわたしと違ってとても善い子。同調圧力が強い子供たちは、自然と個性的な子を虐めの対象にするからね。ディアは虐めを受けても気にしていないけど、心の傷はなんとなく分かる。だから、わたしなりに協力したいなって』
ミスティにも兄がいたからな。
……重に気持ちは分かるつもりだ。
俺はミスティの兄を……。
『そのディアの兄のクシュナーさんの行方の手掛かりも、その【幻瞑暗黒回廊】の内部で掴めるかも知れない。更に言えば、その【幻瞑暗黒回廊】の内部でマスターの
『よく分かった。ディアの兄に関してだが、ミスティの推測は? 第二王子は王都のようだが、メルたちのコネは十分だ。ある程度情報は得ただろう?』
『うん。過去、クナからの話があったように、オセベリア王国の宮廷魔術師と中央貴族審議会と、一部の【魔術総武会】の連中が怪しいと睨んでいる』
魔法ギルドを厳しく監視している権力か。
安直に権力者がアス家の魔法技術か秘宝を狙っていたとか?
<覚式ノ従者>を獲得したディア。
〝異端者ガルモデウス〟のレプリカの魔造書と〝稀人の血〟の本物の魔造書を持つらしい。
ディアは【幻瞑暗黒回廊】を突破した。
学院でもかなり珍しい部類の生徒だろう。
『【魔術総武会】か、色々と絡むな。では、その【幻瞑暗黒回廊】で、
『うん。センティアの手の使用は、【幻瞑暗黒回廊】の内部にある【センティアの部屋】で試す方向で』
『その【幻瞑暗黒回廊】だが、ペルネーテの魔法学院ロンベルジュから向かうんだよな』
『そう。セナアプアにある魔法学院から試す方法もあるかとは思うけど、ディアは、ロンベルジュから進む方向で突破しているからね。念のため、そして、クナが〝相反する異獣の触媒力が強まる場所がセンティアの部屋のはず〟と教えてくれたの。あと、東邦のセンティアに伝わる偉大な時空属性がある<覚式ノ従者>とマスターが獲得した<覚式ノ理>の効果なら、センティアの手を用いた転移が変化して親和性が強まることによって転移力が強まる。だから、各都市の魔法学院にある【幻瞑暗黒回廊】の次元通路を簡単に利用できるようになるかも知れない。と助言をしてくれた。……要するに【幻瞑暗黒回廊】とセンティアの手を通して、各都市の魔法学院に転移が可能ってことね。ペルネーテからセナアプアへの直結ってこと』
『それは凄い!』
『素晴らしい効果の予想。転移力の高まりの相乗効果でしょう。遠い魔法都市エルンストへも気軽に転移が可能となれば、クナの転移陣作製コストも大きく下がることに繋がる』
聡明なヴィーネがそう指摘してきた。
『でも、【幻瞑暗黒回廊】は罠が多いから危険よ?』
レベッカの心を映したように、いつもと血文字の感じが違う。
『不安は不安。でも、シュウヤもディアもいるし、わたしも<
ゼクスもかなり強い。
『わたしも行く……魔法上級顧問のサケルナートもどんな悪さをしているのか』
レベッカと魔法上級顧問のサケルナートか。
因縁があるとは聞いている。
レベッカの学生時代が気になった。
『ん、わたしも』
『はい、わたしも【幻瞑暗黒回廊】には興味があります』
『わたしも行きます。【幻瞑暗黒回廊】は【魔術総武会】にも繋がる。クナさんの転移陣の移動手段と同じく、移動手段が増えることは、かなり重要かと』
キサラの血文字を見て頷いた。
クナが調整したセーフハウスの転移陣も重要だ。
樹海のサイデイルからセーフハウスを二つ利用するが、湾岸都市テリアに行けるんだから。
空旅よりも速い。
城塞都市ヘカトレイルと湾岸都市テリアへのルートを持ったことになる。迅速に移動ができればキッシュも動きやすくなるし、軍師のトン爺の献策も増えるだろう。
『わたしも行きたいけど、セナアプアの戦力も考えないとね』
『そうだな。まぁ、まだちょい先だ。そして、ディアには悪いが、センティアの手は、一度セナアプアで試すとしよう』
『え、あ、うん。変態お兄様にならないように』
『笑わせるなっての。状況によるが、多分大丈夫だろ』
『はは、うん』
「にゃお~~」
お、セナアプアが見えた。
が、まずはステータスをチェックするか。
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