七百四十五話 銀河騎士専用簡易ブリーザー

 

 右腕の戦闘型デバイスに浮かぶ多面球体クリスタル。

 その名はフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタル。


 その多面球体クリスタルから三つの魔線が外に出た。


 一つの薄い魔線は奥の空間へと向かう。

 二つの魔線は右上と左上に伸びていた。


 右上と左上に伸びる二つの魔線は動いている。

 この動いている魔線はネーブ村とセナアプアでフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルが出した魔線と同じ魔線だろう。


 そして、この多面球体から出ている魔線の意味は、


『星系の範囲内にいる銀河騎士ガトランスの資質と特殊マインドを持つ者たちに反応を示すアイテム。そして、銀河騎士マスター評議会から秘密裏にカレウド博士に託されたスーパーアイテムでもあります!』


 とアクセルマギナが前に教えてくれた。

 だから、この先には、銀河騎士ガトランスか、銀河戦士カリームの超戦士の資質と特殊マインドを持つ存在がいる?

 薄い魔線だから、それなりの素養を持つ人物か?

 またはアイテムの可能性も?


 そして、フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルは、実際の世界に魔線を放つ場合と、『ドラゴ・リリック』の将棋盤のようなホログラム投影装置に向けて魔線を放つ場合がある。


 更にアクセルマギナが、


「この烈戒の浮遊岩での音波探査では、通路の先に岩が前後していると分かりました。岩を越えた先にあるシークレットルームの前に板状の薄い水域もあるようです」


 板状の水域?

 背後から、


「では、波の音の正体はその水域でしょうか」

「そうかもな」


 そうヘルメに返事をすると、立体的な簡易地図に青白いマークが出現して点滅が始まった。

 

 これは、フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルの影響か?

 

 立体的な簡易地図にある俺たちの位置を示す赤い点は変わらない。

 ペルネーテの邪界ヘルローネでは、敵の位置も赤い点として表示されていたが……この青白い点は初めてだ。


 青白い点はシークレットルームを示す?

 それとも生物だろうか。


 掌握察だと魔素の形はボケて分からない。

 右腕の戦闘型デバイスに浮かぶアクセルマギナに、


「アクセルマギナ、この反応は、ある程度予想はできるが、やはり、選ばれしフォド・ワン銀河騎士・ガトランスと関係するモノか?」

「はい、その可能性が高い。銀河戦士カリームの超戦士に関わるモノと推測。今さっき、エレニウム粒子、バイコマイル粒子、メリトニック粒子の微かな反応を、この先のシークレットルームから得ました。アンノウン・ソルジャーの可能性も……」


 アンノウン・ソルジャーなら、罠が心配だ。

 偵察用ドローンで奥を偵察するか?

 ま、狭いし必要ないか。


 振り向いて、皆を見た。


 ヘルメ以外は足を停めて周囲を警戒中。

 背後の通路の幅は、狭いし暗い。

 波打ち際の音も怪しさ満点。


 妖怪的な怪物が出現したら、ビビる自信がある。


 アンノウン・ソルジャー対策に、ヘルメに左目に戻ってもらうとしよう。


 <精霊珠想>を準備。

 精霊の目も使うか。


「ヘルメ、左目に」

「はい――」

 

 液体状のヘルメを左目に納めた。

 素早く振り返って奥を観察。


『ヘルメ、精霊の目を貸してもらう』

『はい』


 左目は瞬時にサーモグラフィーの視界となった。

 直ぐに微かな熱反応を示す。

 同時に頬の十字の金属に指を当てた。

 金属は瞬く間に卍の形に変化。

 カレウドスコープを起動――。


 一気に解像力と視力が向上する。

 ――お?

 

 青白い点の周囲は扉か?

 シークレットルームか。

 一瞬、奥のほうに、それらしきフレームが透けて見えた。


 フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから出ている魔線は、その扉らしき場所に続いている。


 よしよし――。

 観察で事前に分かるのは面白い。

 皆に向けて右腕を伸ばした。


 皆に戦闘型デバイスの真上に浮かぶ立体的な簡易地図を見せる。


「――ディメンションスキャンを見てくれ」

「あ、青白い点がある!」

「はい、赤い点の位置がわたしたち」

「青白い点は、点滅しています。初めてですね」

「ん、青白い点が聖櫃アークの印?」

「たぶんな。カレウドスコープで扉のような形の線が一瞬だけ見えたんだ。ヘルメの精霊の目も、熱反応を示した」

「わわ、熱って、生物とか? だとしたら、ワクワクするんだけど!」


 レベッカの気持ちは分かる。

 俺も同じく、冒険者魂だ。


「熱源は魔機械などの可能性もある。波の音は、水脈を利用した魔機械を冷却するための装置の音とか? 薄い板状の水域もあるとアクセルマギナは言った。フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから伸びた魔線の反応もある。アクセルマギナも言ったが、奥のシークレットルームには、俺の戦闘型デバイス関係か……選ばれしフォド・ワン銀河騎士ガトランス銀河戦士カリームの超戦士と関わるモノがあるってことだろう。とにかく、このシークレットルームには……何かがある」

「ん、楽しみ! 魔銃のアイテム?」

「ムラサメブレードとか、鋼の柄巻?」

「ご主人様が持つ戦闘型デバイス系のアイテムだとしたら凄い! 聖櫃アークには期待ができそうです」

「おう。そして、奥は狭そうだから、俺の後続は一人か二人。残りはここで待機となる。そして――」


 心臓と髑髏のマークのバッジだ。


「ハートミットに連絡する」

「「はい」」

「艦長さん。シュウヤに反応を寄越してこないってことは、忙しいのかな」


 レベッカの言葉にヴィーネが頷きつつ、


「はい。前回、ハートミットは、マハハイム山脈の一部である【フォルニウム火山】と【フォロニウム火山】へと移動中のご主人様の位置を、正確に把握している印象でしたが……今回は反応がありません。ですから、バルスカルという盗人を捕らえることに苦労していると判断します」


 そう発言すると、キサラも、


「バルスカルは、ムラサメブレードのような光刀の武器を持っていたと聞きました。ハートミットが手こずっているのなら相当な強者と推測できます」


 キサラの言葉に皆が頷く。

 ハートミットは特殊部隊のセクター30でナパーム統合軍惑星同盟上級大佐だ。


 それでいて宇宙海賊の【八皇】の一人。


 同時に惑星セラではハーミットの名で海賊団を指揮している。

 その忙しいだろうハートミットに連絡だ。

 

 トールハンマー号にいることを願って――。

 心臓と髑髏のマークがあるバッジを指の腹でタッチ。

 

 バッジはオカリナに変化。

 ――お猪口的な出っ張りに口をつけた。

 息をオカリナの中に吹き込む。

 

 点滅するオカリナの孔をリズム良く指で塞いで音楽を奏でた。

 すると、


「――シ……ャ!」

「にゃ?」


 相棒が驚いている。

 ハートミットの声が途切れて届いた。

 オカリナの孔の煌めきも薄い。


 構わず、


「ハートミット。今、大丈夫か?」

「……え? な……今……」


 まだ途切れている。

 ま、伝えるだけ伝えておくか。


「第一世代のレアパーツの反応か、銀河騎士か、銀河戦士の超戦士の反応か。とにかく怪しいポイントをセナアプアで見つけた」

「――お……バル……あぁ……って……な……だ……そこ……あぁ、むか……」


 音が途切れて光が消えた。

 もう一度、オカリナに息を吹いて、


「怪しいポイントを見つけた、探索しとくぞ」

「あー……」


 また途切れた。

 皆を見る。

 オカリナを心臓と髑髏のマークのバッジに戻した。

 

「ここはセナアプアだからな……」

「はい、次元障壁か結界か。神々の式識の息吹も弱まることが多いセナアプアですから」


 皆、ヴィーネの言葉に頷いた。


「アクセルマギナの見解も同じか? 前にも、セナアプアでは、フォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルの反応は途切れていた」

「はい、同じかと。この【塔烈中立都市セナアプア】の次元軸は、他とかなり異なるということでしょう。転移するならば特別な魔法力が必要なはず……が、不思議と、この烈戒の浮遊岩の内部ではセンサーが利く場合があります。何かしらの特別な力が働いている? しかし、セナアプアではわたしのセンサーの反応が悪いです」


 そう機械音声で語るアクセルマギナ。

 軍服が似合う。

 背後の銀河を意味する宇宙の星系が綺麗だ。

 

 アクセルマギナを作ったフーク・カレウド博士は特別に工夫を凝らしたらしいが……。


 俺とアクセルマギナの能力が完全ではないから、まだ背景の意味は分からない。


 そのアクセルマギナの足下のガードナーマリオルスは、球体の体を活かすように、くるくると回ってはパラボナアンテナを小さい頭部から出し入れしていた。

 

「ん、だから、ネドーは烈戒の浮遊岩の権利を持ってた?」

「うん、きっとそうよ。辻褄が合う。回収した神々の残骸とかもいっぱいあったし、様々な金属類の鉱石もあった。ってことで、奥に行くのはシュウヤと、いったい誰なのよ! 未知のお宝発掘にワクワクしてるんだけど!」


 ハイテンションなレベッカさん。

 ワクワクの言葉に合わせて、腋を晒すように両腕を激しく動かしていた。

 天然な動きで、ギャグっぽい動き。

 しかし、綺麗な腋と鎖骨が少し見えてエッチなレベッカだった。


 皆も微笑む。

 そのレベッカを見て、


「レベッカが来るか?」

「うん! いいの?」

「俺はいいが、皆は?」

「ん」


 エヴァも頷いている。

 待機でもいいって表情だ。


「キサラはどうする?」

「わたしもここで待機します」

「ヴィーネは?」

「ご主人様と一緒に調べたい。が、わたしもここで待機しよう」


 そう発言。

 イモリザは? と見たら、すぐに黄金芋虫ゴールドセキュリオンに変身。

 銀髪を住み処にして、毛繕いをしていた荒鷹ヒューイは驚いて床に落ちた。


 が、急いで翼をバサバサさせつつ急上昇。


「チキチキ――」


 と不満そうな鳴き声を上げていた。


「――ヒューイ、俺の肩に来るか? それとも誰かの翼になっているか?」

「ピュゥゥ」


 ヒューイは高い声を出すと急降下。

 ヴィーネの背中に付着した。


 <荒鷹ノ空具>は素早い。

 ヴィーネの背中に白銀色の翼が誕生。


 天使的なヴィーネだ。


 すると、腰のフィナプルスの夜会が震えた。

 魔女フィナプルスはマジで翼が生えているからな。


 魔女フィナプルスも意識したんだろうか?

 使ってないから使え?


 俺がそう考えると、ヴィーネは、その白銀色の翼を皆に見せるように横に一回転。


 背中を反らして、腕を斜め上に上げて指先まで美しさを意識した横回転だから、絶妙だ。

 

 美しい。


「ん、ヴィーネは綺麗」

「うん、天然で美しいってどういうこと?」


 あんさんも十分に美しいんだが?


 と、心の中でレベッカに突っ込むと、キサラもそんな目でレベッカを見ていた。

 そのキサラと目が合うと、俺たちは頷いてから「ふふ」と笑う。


 キサラと同じ気持ちだった。

 そのキサラは、


「ヒューイはヴィーネのことを気に入っているようですね」

「にゃお~」


 相棒も何かを発言。

 ヴィーネはいつもバニラ系のいい匂いを漂わせている。


 俺も好きだが、動物も好む?

 

 すると、俺の足をツンツクツクと突く柔らかい触手的な感触が。それは足下に来ていた黄金芋虫ゴールドセキュリオンだった。

 

「イモちゃん、指か右腕だな?」

「ピュイ♪」

 

 黄金芋虫ゴールドセキュリオンのイモリザは、瞬時に跳ねる。

 俺の右手に付着しつつ滑るように戦闘型デバイスを避けて袖の内部から右腕の表面を移動しつつ肘辺りに付着した。


 俺の動体視力だから今のイモリザの動きを追えたが……普通の人族では捉えることが難しい速度だった。

 

 そんな右腕を振るってから、エヴァを見て、


「エヴァ、行こうか。レベッカの背後を頼む」

「ん、分かった! レベッカと一緒にイノセントアームズ!」

「ふふ、うん! エヴァっ子と一緒!」

「ん、少し怖いけど楽しみ!」

「そうそう。怖さもあるけど、ワクワクよね!」

「ん!」

「そして、イノセントアームズのお宝探索隊長が先陣を切る!!」

「にゃおお~」


 そう宣言したレベッカさん。

 相棒も横に並んで吼えていた。


 レベッカは蒼炎弾を目の前に作る。


 その蒼炎弾を絵の具の種にするように操作しつつ、蒼炎で丸い輪を幾つも作った。


 そして、細い腕を伸ばしつつ、蒼炎の輪の中に細い腕を軽やかに通した。


 更に、蒼炎弾を無数に作っては周囲に浮かせつつ、自分の身長を超える蒼炎の塊を作っては、両手を左右の腰に当てて胸を張った。


「ジャジャーン、ふふーん」


 楽しそうなドヤ顔だ。

 しかし、それじゃあ入れないだろう。


「可愛い蒼炎の継承者よ! それじゃあ奥に入れないだろう」

「あ、うん」


 頬を赤くしたレベッカ。

 恥ずかしいのか、レベッカは蒼炎の操作に失敗したように体から蒼炎を消すと、蒼炎の塊も消えた。


 俺に近付いたレベッカは、


「これで大丈夫?」

「あぁ」

「さ、奥に行こう?」


 と、俺の腕を引っ張る。

 相棒はもう奥の壁の下だ。

 肉球パンチを壁に繰り出している。

 

「おう。じゃ、皆、ここで待機な」

「「はい!」」


 トコトコと歩く黒猫ロロを先頭に、エヴァとレベッカと一緒に狭い通路を進み出した。


 レベッカのシトラスの香りとエヴァのシャンプー系の香りがいい。


 すると、アクセルマギナが、


「水域はハイドレートの罠の可能性もあります」

「スキャンでの分析は無理なのか」

「現状では無理です。フォド・ワン・ユニオンAFVがあれば可能です」

「装甲車はここでは出せない。罠は、ハイドレート系なら延焼系か。もしくは粘土系モンスターってのもありえるわけか……」


 すると、戦闘型デバイスの真上に浮かぶ銀河騎士専用簡易ブリーザー。


「防御能力の底上げに銀河騎士専用簡易ブリーザーを装備しますか?」

「おう」

 

 壁際を歩きながら銀河騎士専用簡易ブリーザーが自動的に口に装着される。

 すると、背後のレベッカが、


「シュウヤ。顔を見せて」

「ん?」

「その新しい装備は、小さいけど<霊血装・ルシヴァル>と似た効果を持つ?」

「吸血鬼武装ほどの防御力はないと思う」


 俺がそう言うと、アクセルマギナが、


「今のように頬の上部と耳を塞ぐ吸着変化も可能。メタンor酸の海でも耐えられる代物ですから、かなりの防御能力を誇ります」

「ハルホンクに喰わせたらどうなるだろ」

「……」


 アクセルマギナは沈黙。


「ングゥィィ……ピカピカ、タベル?」

「いや、タベナイ」


 と、竜頭金属甲ハルホンクを消した。


「ふふ」

 

 物真似を理解したレベッカ。

 笑顔で俺の肩に顔を寄せる。

 

 壁の幅も狭くなってきたから、そのレベッカを守るように胸に抱いた。


「……ありがと」

「いいさ」


 レベッカの抱きしめを強めて歩いた。

 レベッカは俺の胸に頬を当てつつ擦る。

 

 猫のような動きで可愛い。

 揺れた金色の髪からイイ匂いが漂った。


「ん、わたしが前がよかった」

「悪いな」

「ふふ」


 微笑むレベッカ。

 俺の頬にキスしてくれた。

 そのレベッカの唇を奪おうと思ったが――。

 狭い壁から怪物が出現したら大変だ。

 

 レベッカとエヴァが傷を受けてしまう。

 レベッカの唇は奪わず……。

 その愛しい吐息を胸に感じつつも周囲の警戒は解かない。

 

 慎重に前に進んだ。

 先を行く相棒に、


「体重か魔素に反応する罠があったら危険だから、相棒、俺の肩に来たほうがいい」

「ンン、にゃ」

 

 相棒は左肩に乗ってくる。

 前方の床に<鎖>を放ちながら、足下に注意しつつ進む。


 ――狭い壁を抜けた。

 ――広い空間か?

 

 しかし、多少広いだけだ。

 足下は黒曜石?

 魔素が感じられない?

 魔力を完全に弾く絶縁体的な魔宝石なら価値は高いはず。

 が、罠の仕掛けか? 何も反応はない。

 そして、狭いことに変わりはない。

 密閉性が極めて高い。

 空気とかを考えると光魔ルシヴァルで良かった……。

 

 もしかして、ここは、当初予想したように『王の墓』のようなクフ王的な人物のピラミッドなのか?


 ということで――。

 抱いていたレベッカを離した。

 レベッカは「一緒がいいのに……」と言って、うっとり顔から残念そうな表情に変えていた。


 分かりやすい。


「それは今度な」


 そこで少し試す。

 眼球を意識。カレウドスコープもタッチ。

 素の裸眼に戻すと、真っ暗だった。

 素早くカレウドスコープをタッチして精霊の目を意識。あえて<夜目>は使わない。

 視界は直ぐに明瞭となった。


「ん、ここは何かを封印する石室?」


 そう発言したエヴァが手を握ってくる。

 顔に『ん、次はわたし』と書いてあるような表情を浮かべている。


 少し嫉妬顔で可愛い。

 そのエヴァに微笑みを返してから――。

 岩が並ぶ奥のほうをチラッと見つつ、


「そうかもな。そして、あの奥がシークレットルームだろう」

「ん」


 すると、左目に棲まうヘルメが、


狭間ヴェイルが薄くなっているようです』


 と、警告。


「モンスターの気配を感じられない……魔素の感覚も何かオカシイ」

「あぁ、狭間ヴェイルが薄いとヘルメが警告してくれた。魔素も僅かに感じるが……それが、まったくない部分もあれば、密集しているところもある。動いている魔素は少ないから分かりやすいが……」

「ん、見て、水の音が強まった」

 

 エヴァが俺たちが見ている方角をトンファーで差した。

 縦に長い岩が前後に並ぶ。


「行こう」

「うん」

「ん」


 皆で障害物のような岩を避けて進む。

 ――見えた。板状の薄い水域。


 カーテンのような水の膜の背後にはシークレットルームの金属製の扉があった。


 その金属製の扉の表面には古いセンサー類の魔機械がある。

 

 熱源はそこか。

 ディメンションスキャンの青白い点は、あの金属製の扉の中か、その魔機械からだ。


 戦闘型デバイスに浮かぶフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから伸びている薄い魔線は金属製の扉の魔機械に当たっていた。


 そのフォド・ワン・マインド・フィフィスエレメント・クリスタルから左右の方角に出ていた二つの魔線は消えていた。


 残った薄い魔線と、消えた二つの濃い魔線の違いはなんだろうか。


 このシークレットルームの中に存在するモノが薄い魔線の意味を表すと思うが……。


『閣下、水のカーテンに、古い水の精霊ちゃんを微かに感じます』

『古いか……』

『はい』


「水の壁?」

「一見は、ただ流れているように見えるが、水圧が高い場合、かなり危険な水のカーテンとなる」


 俺が警告するとレベッカは驚いて、近くにくる。

 蒼炎の槍を頭上に作っていた。


「ん、どうやって奥に? 蒸発させる?」

「まずは、俺が扉付近に近付いてみる。ここで待っててくれ」

「分かった」

「ん」


 エヴァとレベッカを置いて、水のカーテンに近付いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る