六百三十七話 無双
<
<導想魔手>を蹴って宙空を駆ける。
血の匂いを辿った。
<鎖>の絨毯かスケートボードの<鎖>でも移動できるが<鎖>は使わない。
標高が高いマハハイム山脈は北東へとずっと続いている。
白帆のような雲の峰がかかる山々は、神界セウロス的な雰囲気があった。
そして、標高が高くなればなるほど……マハハイム山脈は凶悪な地帯に変わる。
モンスターがうようよ飛翔していた。
長細い胴体を持つ中華系の巨大な龍が、これまた巨大な蛾を食べている。
喰われている蛾は蝶族の親玉だろうか。
巨大な龍は、そんな蛾を豪快に食べる度に頭部付近から新しい頭部が生えた。
八岐大蛇状態に変化すると、その鱗から突起状の刃物が飛び出る。
飛び出る度にマハハイム山脈の一部を削る刃物の群れ。
あんな攻撃は喰らいたくない。
正直、怖すぎる。そんな蛾を食べて急成長する巨大な龍の後部に噛み付く猛禽類の巨大な大鷹モンスターもいる。弱肉強食というより、強肉強食かよ。
カオスだ――<導想魔手>を蹴った。
調子に乗らず高度は下げる。
――麓付近のフサイガの森も自然豊かな場所だ。
高原地帯があちこちにある。
点在した拳の形の岩は、天辺が平らだ、ゴルディーバの里にそっくり。
高原地帯に住むゴルディーバ族たちか。
アキレス師匠から【修練道】でゴルディーバ族たちが集まる祭りがあることは聞いている。
あの天辺にも、頭に角が生えた一族が住んでいたりして……。
あぁ……師匠たちの顔が見たくなった。
厳しく叱ってくれたアキレス師匠。
元気な妹のような存在だったレファ、元気かなぁ……。
兄貴のような存在だったラグレン。
料理が滅茶苦茶美味しかったラビさんにも会いたい。
皆で、一緒に楽しく酒を飲んだ時の顔を想起する。
今の俺の原型を作ってくれた家族たちのことは永遠に忘れないだろう。
――ラ・ケラーダ!
――頬に暖かい風を感じた。
硫黄の匂いもある。
もう、フォルニウム山とフォロニウム山の火山地帯の範疇だろう。
気温も少し上がった。
『ヘルメ、デビルズマウンテンとは環境が違うが、常闇の水精霊としての活動はどうなんだ?』
『火口のような場所では、魔力の消費が激しくなるかと』
『分かった』
鳥帽子の反応が強まった。
ママニとビアの血の反応も濃くなった瞬間――。
いた! ジョディたちの姿が見えた。
ここも、モンスターたちが無数に犇めく環境か。
魔境の大森林に近い――。
視界に浮かぶ小型のヘルメちゃんも反応。
『いました!』
『おう』
ヘルメがママニたちを指す。
戦闘型デバイスの上に浮かぶアクセルマギナも下を指す。
肉肢のイモリザがピクッと動く。
皆は、倒れた大きな魔樹のモンスターの幹の上で、蝶族とリザードマンのモンスターと戦っている。まずは観察――。
ママニはアシュラムを蝶族に向けて<投擲>。
その蝶族のモンスターの頭部をアシュラムで潰して倒していた。
ビアが<麻痺蛇眼>でリザードマンの動きを止める。
と、ジョディが素早く前進しつつサージュで、そのリザードマンの首を刎ねた。
振るった大きな鎌から魔力の刃状の筋が至る所に迸る――。
迸った魔力の刃が、背後の無事なリザードマンたちを傷つけた。
<光魔ノ蝶徒>に血文字はないが、戦闘に関しては、やはり凄まじい実力を持つジョディ。
そして、<従者長>だろうと<
再び<霊血装・ルシヴァル>を意識――。
血の因子を含む魔粒子が口元から放出。
血魔力時空属性系<血道第四・開門>によって得られた吸血鬼武装。
『皆、上についた、今から周囲の敵の掃討にかかる』
『――承知』
ママニの短い血文字が浮かぶ。
まだ、右斜め前方にモンスターが密集している。
蝶と人が合体したようなモンスター。
蜥蜴の人型が、リザードマンだろう。
蝶族の見た目は死蝶人っぽい。
人と蝶が融合した姿で背中に羽根がある。
口は尖ってストロー系。
クンナリーの刃とそっくりだ。
ジョディとシェイルを初めてみた頃を思い出す。
が、死蝶人のシェイルとジョディとはまったく違う。
魔力云々を含めて、知性があまりないようだ。
俺は<導想魔手>を蹴ってジョディたちの下に向かった――。
<魔闘術の心得>で全身の魔闘術を活性化。
<
右手に雷式ラ・ドオラを召喚――。
左手にムラサメブレード・改を出す。
仙魔術を発動すると同時に<水神の呼び声>も連続発動――。
濃霧が俺ごと皆を一瞬で掴む。
「――水神様ぁぁぁぁ」
「――うぉぉぉ、水神アクレシス様だぁぁぁ」
ママニとビアが霧の内部で発狂。
<水神の呼び声>を使ったから当然だ。
が、その濃霧ごとぶった切る<雷水豪閃>――。
水蒸気を纏う雷式ラ・ドオラ。
黄色い杭刃の先端から――。
チューブ状の水を帯びた眩い雷撃の刃が迸った――。
光線のような一閃が、霧を切断。
水と雷が共鳴したような凄まじい音が響く。
右側のモンスターの一部を両断することに成功。
奥の樹木も<雷水豪閃>の切れ味を物語るように輪切り状態だ。
すると――。
左の視界に出現した小型のヘルメが、指を差しつつ。
『雷精霊ピルシィンちゃんを発見!』
『あ、ボドィーちゃんとローレライちゃんも!』
『――お胸がどっきりんこです。水精霊プットンチーンもいます! あぁ、ラランとペリューに似た水精霊ちゃんが!』
常闇の水精霊ヘルメが、やけに興奮している。
『閣下、あそこの泉から雷が迸っている箇所に、精霊ちゃんが、いっぱいです。あー、今も、見たことのない赤ちゃん雷精霊が!』
確かに森の中に泉があった。
水面からキラキラと輝きを発する泉の水面から雷状の何かが真上に伸びていた。
なんだろうか。
一瞬、光の十字丘の話を思い出す。
が、眩い光とかではないから失明の危険性はないだろう。
『……へぇ、赤ちゃん雷精霊って、デボンチッチとかじゃないのか』
『同じかもしれません。無垢で極めて小さいですが、雷属性の精霊ちゃんです』
右側の樹木の隙間から小屋が覗く。
誰かが棲んでいる?
火山の麓で、モンスターが大量なフサイガの森だが……。
『家もあるが……』
『はい、こんな辺鄙でモンスターがいる場所で、生活を? 興味があります』
『あぁ』
ヘルメが語るように、まだ蝶族とリザードマンはいる。
左に集結したリザードマンに向けて――。
左手を翳す。
思念の拳をぶつけるイメージで――。
<
衝撃波を喰らわせてリザードマンを吹き飛ばす。
更に追撃――。
ムラサメブレード・改を<投擲>――。
衝撃波で気を失ったリザードマンたちの胴体を青緑色のブレードが突き抜けていく――。
サラテンを操作する感覚があるからスムーズだ。
まさか、ここでサラテンの訓練が活かされるとは――。
ま、何事も訓練は大事だということだな――。
数十のリザードマンの胴体を貫いたムラサメブレード・改。
そのまま背後の硬そうな岩の崖に突き刺さった。
まさか、刺さった岩は神々の残骸?
と、すぐに<
サラテンのように刺さったまま抜けない。
とか、アホなことはなく――。
一瞬で、左手に戻ってくるムラサメブレード・改。
即座に、両手から武器を消す。
『――ぬぬぬ、と、言うべきかの?』
『俺の心を読んだか?』
『器よ! 妾と器の関係を何だと心得る!』
『……じゃじゃ馬娘ちゃんを使役する、苦労が多い器さんかな?』
『ふん! 素直じゃない器め! 妾は、堕ちたとはいえ、神剣サラテンぞ!』
『はいはい――』
左手に棲まうサラテンの沙との念話はそこでシャットアウト。
続いて――。
右斜め下の蝶族に――。
《
が、円の魔法陣的な防御を繰り出して防ぐ蝶のモンスターがいた。
その次は――。
空の上に現れた蝶のモンスターだ。
<
そして、左の空に現れた小さい竜には――。
<
真上の蝶族には<鎖>だ――。
蝶族の股間を<鎖>がぶち抜いた――。
四枚の羽根を持つ大きな蛾のモンスターを両断。
<鎖>は有効――。
「皆、前に出る――」
そう宣言しながら――。
魔法を防いできた右斜め下の蝶族に向けて――。
人差し指と中指を揃えて、銃のハンドサインを作りつつ――。
<鎖型・滅印>を繰り出す――。
両手で二丁拳銃を扱うように――。
右手首の<鎖の因子>から<鎖>を出す。
左手首の<鎖の因子>からも<鎖>を出す。
続いて身を捻りながら回し蹴り――。
蝶族の胴体を蹴りで破壊しつつ前転から――違う蝶族の頭を踵落としで踏み潰して――跳躍――。
<導想魔手>で、他の蝶族が放った魔力の波動を防ぎつつ、その魔力の波動を繰り出した蝶族に向けて<鎖>を迅速に返して、その蝶族の頭部を破壊――。
いつの間にか背後に転移してきた蝶族には、これまた、回し蹴りで対処。
続けて、左手に召喚した神槍ガンジスで――。
<水穿>を繰り出す――。
蹴りを喰らって動きが鈍った蝶族の頭部を穿った。
その神槍ガンジスに魔力を通す――。
フィラメントのような蒼い槍纓が放射状に展開。
毒々しい蝶の形をした飛び道具のすべてを、その放射状に出た槍纓で消去。
右手にトフィンガの鳴き斧を召喚――。
転移してきた蝶族の肩口をトフィンガの鳴き斧で薙ぐ。
更に、イモリザの第三の腕に聖槍アロステを持たせて近寄ってきた三体の蝶族目掛けて<豪閃>を喰らわせる――。
三体の蝶族の胴体を真っ二つ――。
刹那、転移しながら出現してくる蚊のような群れの飛び道具が迫った。
ガンジスの蒼い槍纓の隙間を通り抜けてくる――。
さすがにすべてを防ぐことは不可能――。
無数の傷を全身に喰らう――。
毒の攻撃もあったのか、頭がクラクラするが、すぐに回復――。
痛みも増してくる。身を捻りつつの、膝で受けた異常に長いストロー刃――。
痛いが<鎖>を突き抜けたストロー刃に絡ませる。
その絡んだ<鎖>を収斂――絡んだストロー刃で、俺の膝が更に裂かれたが、構わず蝶族の怪物を手前に引き寄せたとこで――ルシヴァルの面頬を活かす――。
ストロー刃にキスでも行うように噛み付きを敢行。
歯と面頬に備わる牙のような部位で、そのままストロー刃を破壊しつつ蝶族の首下をも破壊。
ガブッと蝶族に噛み付いた瞬間――<吸魂>を実行――。
蝶族の命のすべてを頂く――。
<吸魂>によって蝶族は塵となって消えた。
両手と第三の腕から武器を消去――。
その時、俺に近付いてくる存在感のある蝶族が現れた。
蝶族は異常に長い触角。
二体の蝶族が合体して頭部が二つある。
胴体の幅も大きい。
六枚の羽根が輝いている。
「ウギャァァァァァ」
あいつだけ声の器官があるのか?
不気味な声を出しつつ音波を放つ。
『閣下、音波攻撃です』
音波は一瞬で弾け飛んだ――。
『大丈夫でした』
常闇の水精霊ヘルメは<精霊珠想>を準備してくれていたようだな。
そして、合体蝶族の見た目からして、あれは吸いたくない。
<導想魔手>を蹴って前進。
ぶれる速度で飛来した魔力の刃を仰け反って避けつつ――二つの頭を持つ合体蝶族目掛けて――。
中段蹴り――。
続いて、右肘の打撃から逆回りの裏拳を、その合体蝶族の胴体に喰らわせて吹き飛ばす――その吹き飛んだ蝶族目掛けて<鎖>を連続的に射出した。
直進する梵字に輝く<鎖>は不気味な蝶族の頭部を破壊。
頭部を失った蝶族は<鎖>の梵字効果か?
胴体に切れ目が走り、その切り目を裂くように閃光が生まれてから、胴体が爆発。
――<鎖>も進化している。
何気に一番進化しているのかもしれない。
そのまま、周囲の蝶族目掛けて、リズミカルに両手首から<鎖>を連続的に発射する。
右手――。
左手――。
<鎖型・滅印>の型を意識した連続の<鎖>。
そして、<魔人武術の心得>も加わった攻防一体を軸とした動きだ。
更に<
光槍の狙いは――素早さが異常に高い蝶族。
<鎖型・滅印>の<鎖>がすかった。
<
蝶族のモンスターも千差万別――。
死蝶人のように強いモンスターもいる――。
<鎖>と<
が、視界が揺れて、不意を突かれる――。
反応できない攻撃――。
防御層を作るように左手で蝶族の攻撃を受けて、喰らった。
シュレゴス・ロードやサラテンを使う暇もなかった不意打ち。
痛い――我慢だ。
クンナリーのような刃か――。
が、その痛みを噛みしめてやろう。
ルシヴァルの特性を活かす。
貫かれた左手でクンナリーのような刃を掴む――。
痛みが倍増するが構わねぇ――。
そして、イモリザの第三の腕で、その攻撃を繰り出してきた蝶族の羽根を掴んでは――。
その羽根をへし折った。
羽根をへし折った蝶族を振り回しつつ――。
右手に出現させた血魔剣を真上に突き上げた――。
その振り回した蝶族を下から血魔剣で両断――。
真っ二つにした蝶族から紫色の血飛沫がドヴァッと迸る。
その血を一瞬で吸い寄せた――濃密な魔力を獲得。
が、蝶族はまだまだ多い。
群がってくる。
蝶族にとって俺たちは美味しい餌に見えるのか?
アルマンディンの魔宝石を取った俺たちに憎しみを抱いているのか?
リザードマンとの争いの結果か?
カイのような人族憎しの結果か?
単に、縄張りを荒らす怪物たちと認識したのか?
ま、どっちでも構わない――。
一瞬、《
――血魔剣を用いる。
<血外魔道・石榴吹雪>を発動――。
突き上げた血魔剣の剣身が膨れ上がった。
その膨れた血魔剣の剣身から――血の
血色の石榴は転移をくり返しつつ、俺の周囲に展開――。
ドドドドドドッと鈍い音を響かせながら、血の吹雪と化した<血外魔道・石榴吹雪>が、俺に群がる蝶族と衝突して、爆発していく。
鈍い音が響き谺する。
山間部の環境だから、当然か。
リザードマンを含めて蝶族のモンスター軍団の出現は鈍化した。
しかし、さすがに……マハハイム山脈に連なるフォルニウム山とフォロニウム山の兄弟山の麓。
モンスターが大量だ――。
ビアが残っていたリザードマンを袈裟斬りで斬り伏せる。
戦場を把握するように掌握察を行いつつ、皆が、くるのを待つ――。
「――ご主人様の無双は凄まじい……モンスターが近寄ってこなくなりましたね」
「あぁ」
背後から近寄ってきたママニにそう返事をしながら――。
血魔剣をアクセルマギナに格納。
すると、ジョディも、
「――あなた様、これがシェイルの治療に使える赤心臓のアルマンディンです」
ジョディが赤い魔法石を差し出してくる。
受け取って、
「お、これか」
シェイルのと少し形が違うが色合いは同じ。
「よし、アイテムボックスに入れよう」
と、戦闘型デバイスのアクセルマギナに入れる。
「主――リザードマンはしつこいぞ」
俺は森の泉を指しながら、
「追ってくるのは処分して、逃げるのは放っておけ。とりあえず、そこの泉の先で少し休憩しようか」
と提案しながらポーションを出しては投げていく。
ルシヴァルだが、傷は負うことに変わりはない。
各自ポーションを受け取った。
「はい、ありがとうございます」
「小屋がありますし、石碑のようなモノもあるようです」
石碑? そんなのがあったのか?
と、泉の近辺を探る。
「……石碑か? どこだろう」
「さっきチラッと左上の辺りに見かけました」
と、ママニが指摘するように、樹木の影に隠れていた石碑があった。
「――本当だ」
と、皆でフサイガの森を歩き出す。
まだ残っていたリザードマンをビアがシャドウストライクで袈裟斬りに処分。
そのビアは、振り向くと、蛇のような舌をシュルルと伸ばしつつ、
「――主、我の故郷を奪ったリザードマンだ」
「あぁ、前に聞いた。で、そのリザードマンだが、グルドン帝国の〝侵略王六腕のカイ〟と関係するのか?」
「そうだ。グルドン帝国の尖兵となった腐った奴らだ」
ビアは憤怒の形相を作りつつ語る。
仇が取りたいビアには悪いが、
「ビア、悪いがリザードマンの追撃はしない」
「分かっている。我は光魔ルシヴァルの<従者長>である」
ビアは真顔で語る。
眷属としての表情だ。
「よし、これでアルマンディンの魔宝石探しは完了――」
「はい♪」
ジョディとハイタッチ。
その瞬間、微かな旋律が響く。
ジョディの鼻歌だ。
俺と契約をした時のような悲しげな歌ではない。
嬉しさと幸せを感じさせる歌……。
心が温まる。
「あなた様――」
と、唇を奪われた。
ジョディと濃密なキスをしていく。
同時にジョディは抱きしめを強めてくる。
背骨が折れそうな勢いだが、強い感謝の気持ちを感じられた。
そんなジョディの背中を撫でて、落ち着かせる。
んだが、白蛾で構成しているとは言っても、感触は、完全に生身の裸の女性を抱いている感触だ。
偉大なおっぱいの感触を、削れたハルホンク衣装から直に感じて、股間が反応してしまう。
ジョディは微笑むと、俺の股間をわざといじるように腰を押し当ててくるから、また反応。
ジョディの双丘の感触もいい……。
おっぱい教の秘技が詰まっているような巨乳様の感触だ。
が、今はまだお楽しみの時間じゃない。
ジョディの体を離してから皆に向けて、
「あとは、ハーミットから連絡が来るのを待つか、極大魔石をアクセルマギナに納めるか、フォド・ワン・プリズムバッチを試すか、ヴィーネたちと合流して、サイデイルに戻るとしようか。そして、その前に、そこの小屋と色々な精霊が湧く泉と、石碑を調べようか」
「「はい――」」
わくわくする。
精霊が湧く泉とか、その畔にある小屋と石碑とか。
雰囲気ありまくりじゃんか!
秘境染みた環境もいい!
『器よ。石碑ならば『神仙燕書』や『神淵残巻』と関係があるかもしれぬ』
サラテンの沙が報告してくると――。
腰の魔軍夜行ノ槍業も揺れながら、なぜか俺の股間を突く。
そのまま上下する魔軍夜行ノ槍業が股間のマッサージを始めてくるが……。
『……立派な一物を持つ使い手よ、触媒の匂いが強い。妾の……女帝槍の一片があるかもしれぬ……妾を強く……感じておくれ……』
と、悩ましい八怪卿の女性の声が響く。
レプイレスさんか。女性なら万事ウェルカムなゾウさんだと自負がある。
が、この魔軍夜行ノ槍業の中には、おっさんの八怪卿も混ざっている……。
おっさんに大事なゾウさんを、撫でてほしくない。
俺の股間は女性専用だ。
いやすぎる! と、魔軍夜行ノ槍業を払った。
『……いけず……』
そうは言ってもなぁ。
更に、胸元が揺らぐ――。
心臓と髑髏のマークのバッジだ。
宇宙戦艦に乗っている上級大佐&宇宙海賊のハートミットからの連絡か。
心臓と髑髏のマークがあるバッジを指の腹でタッチ。
バッジはオカリナに変化。
そのオカリナの孔が煌めく。
「――シュウヤ、近くに第一世代のレアパーツの反応があるんだけど、大丈夫かな」
と、孔の煌めきと同時にハートミットの声が響く。
孔の回りにLEDでもあるのか、音声と連動して光る仕組みが面白い。
そのオカリナ越しに、宇宙戦艦にいるだろうハートミットに、
「いいぞ、艦長。ここに転移するのか?」
と、聞く。
「うん、テスファオメガは使わず、わたしだけね」
「転移方法にも種類があるのか」
「そうよ、今回は容易なタイプ」
ハーミットこと、ハートミットの声がオカリナから響く。
ミホザの古代遺跡の探索か。
宇宙海賊が望む
遺跡では、シャルドネからもらった
「それじゃ、転移するけど、びっくりしないでよ?」
オカリナを通した宇宙船からの声だ。
俺はジョディたちを見て、
「だ、そうだ。ハートミットが転移してくる」
「「はい」」
刹那、泉の近くに樹状突起の淡い筋が生まれた。
それらの樹状突起の群れは霞か靄に変化して、人を象りつつ集結する。
ハーミット、こと、ハートミットだ。
無事に転移してきた。軍服の見た目が前と違う。
戦闘服かな?
右手に持つのは見たことのない銃だ。
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