六百三十一話 ガードナーマリオルス
残っていた極大魔石を四つ◆に入れた。
――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:完了。
報酬:格納庫+300:フォド・ワン・プリズムバッチ:解放
――――――――――――――――――――――――――
中央の窪んだ部分から、また、灰か銀に近い色の粒子が出た。
それら銀色の魔力粒子は、アイテムボックスの真上の一点に収束すると――。
瞬く間にナパーム統合軍惑星同盟と似た小さいバッチとなった。
これがフォド・ワン・プリズムバッチか。
そのバッチを掴む――金属か、魔力を感じた。
ハーミットの海賊徽章的なバッチと似ている。
真ん中に小さいボタンがあった。
これを押したら、いや……ボタンを押す前に聞くか。
ハーミットこと、ハートミットに。
黙ってバッチを見ているヘルメとヴィーネに向けて、
「この新しい徽章だが、ボタンを押す前に、このアイテム類に詳しいかもしれないハーミットに聞くことにする」
「宇宙海賊でありながらナパーム統合軍惑星同盟の上級大佐の……何か理由が?」
「このボタンを押して、遠隔通話ができるだけのアイテムなら心配はない。しかし、俺が知らない場所に転移してしまう可能性もあるかと思ってな」
「金属の徽章を用いての転移……小さいですが、転移魔道具か遠隔通話が可能なアイテムなのですね」
「地下遺跡から宇宙船に転移をしたように、他の場所に閣下が転移してしまう?」
「そうだ。未知の場所か宇宙船に転移しても、サイデイルの鏡に戻れるとは思う。が、今はもう、マハハイムの東にきている。俺だけの転移の場合、また皆と合流する時間が勿体ない。それに俺のアイテムボックスの戦闘型デバイスは初期型のようだからな……アクセルマギナのようなことが、転移で起きることは勘弁だ」
アクセルマギナが言語学習中なだけなら心配はないと思うが。
故障だった場合は、転移失敗を、どうしても考えてしまう。
「転移の失敗……他の次元世界に渡ってしまう可能性も?」
「さすがに他の次元世界はないだろう。この惑星内か、惑星外の遠い銀河とか? どこか、ワープした先でバラバラとかな? 再生はすると思うが、絶対はない。痛いのもいやだ」
「ですね……」
「……だからナパーム統合軍惑星同盟の上級大佐でもあるハートミットに、このアクセルマギナのことも聞いてみる」
「「はい」」
二人の声を聞きながら――。
心臓と髑髏のバッチのボタンを押した。
バッチは瞬く間にオカリナに変形。
お猪口的な出っ張りに口をつける。
――早速、その出っ張りに口をつけた。
オカリナの指を置く孔の位置が点滅する。
その孔を指で押さえると音が鳴った。
点滅に合わせて指を順繰りに置いて息を吹く。
合わせた音が響いた。
ゆっくりと点滅する位置が変化。
リズムよく視界と切ない音色に指を合わせつつ息を吹いて奏でていった。
素人ながらのオカリナの演奏となった。
刹那――。
そのオカリナから心臓の鼓動音が響く。
そして、
「――シュウヤ♪ 早いわね、連絡ありがとう」
ハーミットの上ずった声がオカリナから響く。
サジハリと通じるレーレバの笛を想起するが、言わず。
「おう、こちらこそ。早速、聞きたいことが」
「何?」
「銀河騎士のアイテムのフォド・ワン・プリズムバッチを手に入れたんだ。で、ボタンがあるんだが、このボタンを押したらどうなるのかな? と」
「プリズムバッチ? 徽章のような物?」
「そうだ」
「それ、機能するなら船に転移する装置or通信装置だと思う。
「戦闘型デバイスからだ」
「……やはり普通の戦闘型デバイスではないわねぇ。ナパーム統合軍惑星同盟の上層部がわざわざセクター30を使う
ハーミットは、ぼそぼそと独り言が増えて声が聞こえなくなった。
偽クナ曰く、この
そして、転移する可能性があるなら……。
このフォド・ワン・プリズムバッチのボタンを押すのは、後回しか。
「そっか、教えてくれてありがとう。もう一つ、アクセルマギナを手に入れた」
「アクセル? マギナなら人工知能ね。マギナ系は色々と種類があって、ナパーム統合軍惑星同盟では高度な人工知能の名として有名。トールハンマーも最新型の簡易AI〝マギナ〟が備わっている』
「そのマギナなんだが……小さい女性の極めて精巧なホログラムが出ては、言語パターン認識中と文字が出たままで動かない。壊れたのかなと」
「壊れた可能性は否定できないけど、星ごとに言語が異なるし、地方によって多種多様だからねぇ……学習と認識に時間がかかるとして……戦闘型デバイスも創られてかなりの年月が経っているし……元々の持ち主が死んだ際とか? 色んな
それもそうだな。
イレギュラーは俺も含むって意味もあるのか?
いまいち声のイントネーションだけでは、把握ができない。
「……分かった。質問は以上だ。情報をありがとう」
「うん、構わないわ。それで東のほうに向かっているようだけど、めちゃくちゃ移動速度が速いわね。何か
「相棒の力だよ。神獣ロロディーヌに乗せてもらっている」
「へぇ……」
オカリナ越しに宇宙船で俺に対応しているハートミットの表情が見えたような気がした。
惑星セラの空域は凄まじい生存競争があるからな。
普通は地上からゆっくり行くことが絶対条件だろう。
だからこそ、
「それじゃ、連絡を終わらせるが、何か連絡事項はあるか、艦長」
「ある。実は、第一世代のレアパーツがあるだろう反応が火山地帯にあるの。そこで第一世代のレアパーツの回収に協力してくれない?」
「いいと言いたいが……俺も用事があっての移動中。その用事次第となるが、それでも?」
「うん、それでいい」
「分かった。近付いたら連絡してくれ」
ま、そう話しているが……。
マハハイム山脈の北東にあるフォルニウムとフォロニウムの兄弟山は火山。
その巨大な麓に広がるフサイガの森に蝶族の魔宝石としてのアルマンディンがある。
そこの近くなら寄ってもいい。
「了解、それじゃあとで」
「おう」
そこでオカリナのスイッチを押す。
目の前で聞いていたヘルメとヴィーネは頷き合う。
「今の女性の声が、艦長のハーミットこと、ハートミット」
「綺麗な声でした」
「声もいいがハーミットは美人さんでもある」
俺の言葉を聞いたヴィーネは、一瞬、銀色の虹彩が鋭くなった。
……俺は無難に笑顔。
ヘルメは微笑む。
同時に、右手の指先から水が出てヴィーネの尻を濡らし輝かせていた。
「……ということで、このフォド・ワン・プリズムバッチもアクセルマギナと同じく、後回しとなる。先に残りの極大魔石をアイテムボックスに放り込む」
「はい」
「見学します」
まずは、
―――――――――――――――――――――
――音声認識可能。
――≪フォド・ワン・ガトランス・システム≫可動中。
――
――カレウドスコープ連携確認。
――フォド・ワン・ガトランス専用オービタルシステム連携確認。
――フーク・カレウド博士・アイランド・アクセルマギナ……簡易AI確認:起動準備中:
――偵察用ドローン……連携確認。
――船体リンクシステム……エラー確認できず。
――ナ・パーム統合軍惑星同盟衛星連動……エラー確認できず。
――敵性銀河帝国軍衛星反応……エラー確認できず。
―――――――――――――――――――――
というか、アクセルマギナが表示されてるやん!
と、自分にツッコミを入れたい。
簡易AI確認がされて起動準備中だった。
フリーズはやはり学習途中ってことか。
「皆、壊れているかもと思ったアクセルマギナだが……起動中のようだ」
「まぁ!」
「よかった。動くのに時間がかかるということですね」
「そういうこった。創った人物も、まさか俺のような存在が本当に出現するとは思わなかったのかもしれない」
ハーミットはこのことを、暗に指摘していたんだろうか。
たまたま、か。
次の表示をチェック。
◆:エレニウム総蓄量:5346→11346
―――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン大:10000:未完了
報酬:格納庫+350:ガードナーマリオルス:解放
必要なエレニウムストーン大:50000:未完了
報酬:格納庫+400:マスドレッドコア:解放
必要なエレニウムストーン大:130000:未完了
報酬:格納庫+500:フォド・ワン・ユニオンAFV:解放
―――――――――――――――――――――
マスドレッドコアはなんだろう。
エンジンか? ゴツそうなイメージ。
AFVのほうは、名前からして戦車か装甲車かな。
それにしても要求されるエレニウム量が多い……。
最後に残った大きい極大魔石が、どの程度と認識するか……。
中くらいの極大魔石は千五百だった。
大きい極大魔石の数は十六個ある。
大きいだけにエレニウムも大量に入っていると嬉しいが……。
まずは、一個ずつ入れて確かめる。
「この大きい極大魔石で◆にブッコミをかける。バイクに乗らないが」
「はい!」
「ブッコミです!」
「おう!」
と、笑いながら――。
スピードの向こう側の〝臨界〟を超える!
―――――――――――――――――――――――
◆ ここにエレニウムストーンを入れてください。
―――――――――――――――――――――――
大きい極大魔石を◆に入れた。
――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:完了。
報酬:格納庫+350:ガードナーマリオルス:解放
――――――――――――――――――――
Wow!
大きい極大魔石は一万か!
即座にアイテムボックスの中央と縁から魔力粒子が噴き上がる。
なんか派手だ。
噴き上がった粒子はヘルメの隣に集結し収束。
なんじゃありゃ、鉄の球体?
まさか、割れてスーツとか出ないだろうな……。
予想外すぎる。
「アドゥムブラリのような眷属でしょうか」
「そうかもしれない」
「鉄球……もしや、何かの卵でしょうか」
「さぁな、異星人の卵とか、おっぱい星人を倒す任務とかあったらいやだな」
球体は、成年した猫ぐらいの大きさだ……。
小さい。
「……」
球体は動かない。
とりあえず、挨拶しとくか。
「……球体さん。あなたが、ガードナーマリオルスですか?」
すると、球体が俺の声に反応――。
球体の表面に溝が無数に走る。
まさか、本当に強化アーマー的な物が入っているとか?
小さいしただの機械だと思うが……。
球体の表面に矢印のマークと円のマークが生まれていく。
色合いは銀色と白色に赤色と黄土色。
何かのユニフォームのコスチューム的な色合いだ。
続いて、球体の上部から液体金属らしきモノが滲み出る。
それは瞬く間に変形した。
球体に合う形だが、平たいルンバ的な印象を抱かせる。
その金属の帽子か、小さい頭なのか、不明な円の金属は、球体に沿って移動しつつ回転。
そんな円状の機械を誕生させた球体の上部に小さいアンテナも二つ生えた。
ミニチュアのパラボラアンテナも増えた。
その直後――。
飛行中の相棒が頭部を少し傾けた。
鼻先で
球体のガードナーマリオルスも傾く。
「ンンン」
神獣ロロディーヌはガードナーマリオルスの位置を分かっていた。
触手ではなく、頭部の黒毛を伸ばし壁のような傾斜を形成。
球体のガードナーマリオルスはスケートパークのボウルのような形状の傾斜からスムーズに下りてきた。
モーターでも内蔵しているのか駆動音が響く。
その時、俺の右肘が反応。
イモリザだ。
ガードナーマリオルスを近くで見たいのかな。
出してあげるか。
『イモリザ、出ていいぞ』
と、一瞬で、塔雷岩場とクレインとの戦いで地味に活躍したイモリザが地面に落ちていく。
落ちながらイモリザに変形。
変身が速くなった?
「――じゃじゃーん♪ 使者様!」
「よ、イモリザ」
「イモちゃん、久しぶりです」
「イモリザ、ご主人様のフォローは見事でした」
ヘルメとヴィーネが早速挨拶。
「うふふ♪ 当然~。ツアンとピュリンと一致協力して使者様の第三の腕として槍使いになった気分でした!」
「ピピピ……ピー……」
お! イモリザの声に反応?
ガードナーマリオルスの球体の上部にカメラが一つ。
いや、二つに増えた。
「ガードナーマリオルス、それは目か?」
「ピピピ……ピー」
カメラは少しだけ拡大した。
俺を見ていると分かる。
可愛らしい機械だ。
「可愛い! ガードナーとは、使者様の新しい眷属なのですか?」
「そんな感じだと思うが……ぷゆゆ系かもしれない。油断はするな」
「え!」
と、ヴィーネは胸元を押さえる。
キサラの話を覚えていたようだ。
ま、ぷゆゆは、不思議な杖の力を至るところで使用していたからな。
「ぷゆゆちゃんと同じなのですか!」
イモリザは人差し指を伸ばす。
ガードナーマリオルスはその場でくるくる回って、カメラが点滅。
「ピピピ――」
カメラの先が少し光ったが、それだけだ。
否定したのか、肯定したのか、分からない。
「ガードナーマリオルス。どんなことが可能だ?」
「ピピピ……ピー」
音を鳴らしながら――。
小さいほうのカメラから放射状に光線が出た。
ディメンションスキャンか?
いや、違うか。
その放射状の光線は一人の女性らしき姿を映し出す。
映像はかなり粗いが女性と分かる。
ガードナーマリオルスは、予めホログラムの映像を保存していた?
背後の部屋も朧気に映る。
ハーミットの艦長室にあったようなアイテム類が転がっていた。
オフィスにあるような机もある。
書類に散っている。
コンピューターらしき物もあった。
女性は急いでいるのか?
カメラを弄るがピントは合ってない。
……なんだか、とても焦っている?
あ、背後の壁から真っ赤なブレードの刃が突き出た!?
更にその壁が爆風で破壊された。
戦争中なのか。
「……ピー……わたし……フー……カレ……ド……遠隔……銀河帝……され……最……託し……」
と、そこで炎に呑まれて真っ暗。
小さいほうのカメラの照射が終わる。
「……女性は……」
「……メッセージですね。最期は……」
ヘルメとヴィーネの音容は暗い。
俺は黙って……頷く。
粗いホログラムを投影する光線を発していたガードナーマリオルスは球体をキュルキュルと回す。
その可愛らしいガードナーマリオルスに向けて、
「ホログラムのデータはもしかして、フーク・カレウド博士か?」
そう聞くと、ガードナーマリオルスは、ぐるぐると激しく回り始めた。
「ピピピ、ピピピ、ピピピ――」
音が変わった。
まるで『そうだ、ワン』と犬が吼えているような印象だが……。
「言葉は理解できる?」
「ピピピ……ピー」
逆方向に球体が回る。
が、球体の回転が止まった。
いまいち分からない。
俺の態度とリップシンクからの推測だろうか?
どちらにせよ、意味は通じているからこその反応だと思いたい。
さっきのアクセルマギナを出してみるか。
ポケットからフリーズ中のアクセルマギナを出して、
「――これ直せるか?」
「ピピピ――」
ガードナーマリオルスは球体の真ん中から細い管を出す。
管はアクセルマギナの指輪の下部と繋がると……。
指輪の表面に出現していた軍服を着た女性が動き出した。
動きは早送りだが、直った?
ガードナーマリオルスが強制的に動かしたのだろうか。
「……強制リブート完了・認識シマシタ」
アクセルマギナの声か。
「アクセルマギナ、俺を認識できているか?」
「ハ・イ――
「おお」
「閣下! やりましたね」
「不思議な音声で、たどたどしいですが、マハハイム共通語です」
「アクセルマギナ、君は何ができる?」
「ワタシ・ヲ……デ・バイス、ニ、サシコミ・クダ…サイ」
ん? 表面にできた窪みか。
そのままアクセルマギナをアイテムボックスの表面の窪みに差し込んだ――。
その刹那――指輪は光を帯びてアクセルマギナのホログラムは消える。
同時にアクセルマギナを映していた指輪が窪みの中に消えた。
ウィンドウも消える。
すると、アイテムボックスの表面の中が変化した。
ガラスの内奥にアクセルマギナが映る。
立体ではなくこのアイテムボックスの中に入ったのか。
瞬く間に、その表面から立体的なアクセルマギナが浮かび上がった。
おおぉ、リアルティある動き。
続いて、上部に≪フォド・ワン・ガトランス・アクセルマギナ・システム≫と表示。
更にアクセルマギナの周囲に立体的な数値と地図。
アイテムボックス内にあるアイテム類が階層ごと可視化された状態で羅列表示された。
背景は流動した流星群と太陽系のような宇宙が映る。
OSが書き換わった?
「――マスター、お待たせしました。簡易AIアクセルマギナ・プロトゼロです」
おお、言葉が流暢に!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます