五百十四話 善と悪
状態は目に余る。
だが、気を失った女性たちの命は無事だ。
生活魔法の水で屑な野郎共の血を吹き飛ばしていく。
即座に中級:水属性の《
――上級:水属性の《
女性たちに金色を帯びた綺麗な蒼色の水のシャワーが降り掛かっていく。
続いて右手首の血鎖だけを引く。
アイテムボックスを露出させた。
そのアイテムボックスを壊さないように、左手の血鎖を引いて、指で素早くスマホを操作するように――動かし、皮布やら毛布やらを取り出す。
気を失っているあられもない姿の女性たちにかぶせていった。
そして、
「血の甲冑を身に纏っているだけだ」
と、背後の声の主に向けて振り向く――。
「ひやぁ――」
ラファエルはたじろぐ。
小銃を構えるように杖先を向けていたが、その杖ごと身体を震わせた。
おしっこ、ちびったかもな。
彼は、団子虫、もとい『ドザン』の盾を回収したようだ。
もう彼の側に浮いていない。
浮いているのは、魂王の額縁と印籠のような魔眼アイテムだけ。
……魂王の額縁と印籠は魔力が帯びて怪しく煌めく。
魂王の額縁の中にある〝立体絵の箱庭の世界〟は動いてる。
ラファエル自身は驚き怯えていても、魂王の額縁の力は発動した状態を維持していた。
彼は、魂王ファフニールの力があると語っていた。
あの額縁と印籠は、他と同様に、生きた魔道具なのかもしれない。
そのラファエルは、口を震わせて喋ろうとしているが、喋れない。
俺が代わりに、
「この血の惨状と血の甲冑で驚いたって面だな」
と、告げる。
ラファエルは身体を震わせながら何回も頷く。
血の惨劇と俺の姿を重ね合わせるように凝視し、魔眼と連動している魂王の額縁を使う。
しかし、彼の青ざめ表情と筋のひきつった動きから恐怖をはらんでいると分かる。
瞳孔も散大していた。
彼特有の魔眼の虹彩にも瞳孔と似たようなモノがあるようだ。
魔眼の文字の大きさが、歪に湾曲し、拡がり狭まったりと乱回転をもくり返す。
その効果か不明だが、
「うん」
と、ラファエルは、落ち着くようにため息を吐きながら、両手を下ろす。
周囲を確認していた。
そして、気を失っている女性たちの様子を見て、怒りを覚えたような面を作る。
再び、俺を見たラファエルは恐怖と戦うような色を目に宿らせた。
ま、たんに女性に乱暴した男たちを見て、嫌悪感を抱いたんだろう。
「彼女たちは生きているぞ」
「そのようだ。屑な囚人たちに警備兵も交ざっていた……だけど、シュウヤは回復魔法も使えるんだね」
そう答えるラファエルは安堵感を出すが、まだ恐怖の色もある。
俺も、一応、声だけは明るさを意識して、
「おう、見て分かると思うが水属性なら一通りは使える」
「槍使いでありながら高位魔術師か……」
と、俺を分析するラファエルは、俺の頭部を見て、また「……怖ッ」と呟き、ぎょっとした。
当然だな。眷属たちならいざ知らずラファエルは眷属じゃない。
そして、今の俺は<霊血の泉>の効果も加わった血鎖鎧だ。
と、周囲に散ったぶっ殺した囚人たちの血を弾き、貫くように、血鎖で吹き飛ばしていく。
俺が言えたことじゃないが、尊厳を踏みにじる屑野郎どもの血なんて欲しくねぇからな……何回殺しても気が済まねぇ気分だ。
すると、
それは大狼が遠吠えするようなポーズにも見えた。
ロロディーヌも血を吸わず、弾き飛ばしていった。
俺はそんな苛立ちを発散するような相棒から視線をラファエルに向けて、あえて、
「どうだ? お前は
と、血鎖鎧を纏った状態でラファエルに聞いていた。
「……」
明らかに恐怖したと分かるラファエル。
俺の問いに答えず。
「ンン」
遠吠えスタイルを止めた
髭を震わせたように揺らして優しげな表情に戻ると、ラファエルの様子が気になったのか。
筋肉質な胴体が張る四肢の動きで華麗にターン――。
血の軌跡を宙に発生させながら素早くラファエルの足下に移動した。
そのロロディーヌはラファエルの細い足に頭部を衝突させていく。
ラファエルは脛と脹ら脛に打撃に近い
が、動じず。
相棒は、筋肉質な後脚をぷるぷると震わせて立つと、ラファエルの下ろしていた両手を勢いよく食べるように舐めていく。尻尾も上げている。
もし、今の相棒が雄だったら、ωの字と似た金玉ちゃんを覗かせていたはず。
ラファエルが握る短銃のような杖は勢いよく揺れていた。
刹那、ラファエルの双眸に力が宿る。
俺を睨むような視線だ。
「……僕を舐めないでくれ、いや、神獣ちゃんのことじゃないぞ」
相棒に甘えられている状況だが、よく耐えている。
自分の意見を通すラファエルか。
双眸に力を宿した彼の視線はイケメンだけに非常に鋭く感じた。
「……分かってるよ」
と、俺が答えたところで、ラファエルが、
「うん。シュウヤはここでの暮らしを知らないから仕方がないんだけど……僕は、本当にどうしようもない毎日の繰り返しだったんだ。肉体的に精神的にもね。人生の無意味さを痛感したよ。虐めを受けるし、ゼットンは取り返せないし、ゼレナードには睨まれるし、人生に憔悴しきっていた……そんなどうしようもない状況の中……君は僕を救ったんだ。だから、シュウヤが喩え十二支族と繋がる吸血鬼の新種族だとしても、尊敬を勝ち取った偉大な英雄は変わらない。ということで、僕の血を吸ってもいい」
そう真面目に語るラファエル。
「……すまんが断る。女性の血なら吸うがな。野郎の血はあまり好みじゃない」
「にゃ、にゃお」
「あッ」
フック気味の肉球パンチを手に受けたラファエル。
短銃のような杖を地面に落とした。
そして、「ンンン――」と喉声を発したロロディーヌは、その床を転がっていく杖をネコ科動物らしい反動で追い掛けていく。
両前足をステッキ代わりとしたアイスホッケー的な遊びを始めてしまう。
ラファエルは自分の杖が転がされても、怒らずに微笑みながら、
「はは、神獣ちゃんは『トルーマン』が気に入ったのかな?」
遊ぶことに夢中な相棒――。
そのラファエルの言葉には応えず。
玩具と化した転がる杖を両前足の肉球で持ち上げるように掴んだ。
しかし、杖は滑って持ち上がらず、その片足をぷるぷると震わせて杖を叩く。
と、その杖が跳ねた。
宙に跳ねた杖を左フックでバシッと叩くロロディーヌ。
また杖を転がした。
「ンンン――」
鼻息を荒くした相棒ちゃん。
その転がった杖を、追い掛けていった。
しかし、相棒の玩具と化した杖の名はトルーマンか。
見た目は短銃のような杖だが。
名前があるということは、もしかして、他のアイテムと同じく生きているのか?
と、疑問に思ったら、床を転がる短銃のような杖が変形した。
杖の端に植物のような足たちが生えると、シュタタタッと音を立てるように、その二つの足を分裂させるように素早く交差させながら走って跳躍――。
肉球パンチを器用に避けて床を滑りながら着地した。
足が生えた杖ことトルーマンは、ロロディーヌからそそくさと逃げていく。
忍者バッタのようなモンスターの杖も気になったが……。
俺はラファエルを見た。
彼は火の蜥蜴たちを手首に戻し、ブレスレットのように仕舞いながら、
「はは、トルーマンが逃げるとは、神獣ちゃんが怖いらしい。トルーマンを捕まえてくれたら、ご褒美をあげよう!」
と相棒に語りかけている。
しかし、あの言い方だと、トルーマンこと走って逃げている杖は、普段もラファエルの手から逃げることでもあるのか?
ラファエルは、俺のそんな疑問を浮かべている視線を受けて、
「君の相棒ちゃんも、ある意味、強烈すぎるね?」
「まぁな、神獣と説明しただろう」
「うん。黒猫ちゃんから黒豹。そして、黒馬から黒獅子、黒色のグリフォンを超えた巨大な姿に変身が可能とは驚きだよ。まだ巨大化した姿は見てないけどね。そして、黒天鵞絨のような艶と気品のある獣としての立ち姿……実に素晴らしい……絵画に欲しいなぁ。まさに英雄が使役するに値する神の獣様だ」
魂王の額縁を持つだけに、視線が怖い。
しかし、また英雄か。
この血鎖鎧の姿を見ても、そこは変わらないらしい。
「はは、沈黙して……血鎖の兜で覆われているからシュウヤの顔色は見えないけど、どんな表情を浮かべているか想像できる」
「そうなのか?」
「そうだとも、魔眼の力は弾かれているから、あくまでも、漢としての勘だけどね」
冗談だと思うが、イケメンの勘ってのがあるのか?
「……英雄、救世主という光溢れた言葉を、頑なに否定する気持ちを、その悪魔のような血の甲冑で隠した面に出しているんだろう」
そうかもしれない。
そこで眠っている女性たちを見てから、
「否定はしない。だが実際に救世主なんてもんはいないからだ。この血濡れた姿を見れば、俺の本質が理解できるだろう?」
「血濡れた鎧、悪という闇と血を具現化したような鎧か……でもね、僕は君に光を見いだしたんだ」
説教師のような語り口調だな?
血鎖鎧で胸元は隠れているが、今のラファエルは胸元を見ている?
魔眼の力で<光の授印>を見抜いた?
「それは〝たまたま〟
「……その光の裏に深淵の闇があると言いたいんだな?」
鋭いな、漢の勘か。
ラファエルは続けて、
「シュウヤなりの僕に対する警告の意味もあるのかな」
「……そうかもしれない」
俺の言いたいことを態度を見て推察したようだ。
「誤魔化しても、そんな脅しは無駄さ。確かにシュウヤとロロちゃんは怖いけど……闇に生きる者が、そこで気を失った女性たちや、危険を冒してまで、何の関係もないナナのことを救ったりはしない」
ナナは一応、首の傷繋がりで関係があるんだけどな。
ま、そこまでの推察は男の勘が鋭くても無理だろう。
そのことは告げずに、笑いを意識しながら、
「ははは、さすがに分かるか」
と、答えた。
「そりゃね。なんだかんだいって、僕のことを信じて助けてくれているじゃないか」
「だったら察しろ、英雄とか栄養だとか持ち上げるな」
「はいはい、何が栄養だよ。照れ屋で、ふざけて、ほんっと強情な英雄さんだよ」
笑うラファエルを、俺は照れもあり、強く睨んだ。
俺の照れ感情が出ているだろう双眸は、血鎖の兜の僅かな間から、彼に見えているかもしれないが……。
「……ハハ、怖いけど無駄だよ? その血の鎖鎧から血の煙のようなモノを背中から無数に生み出してもね……」
自然とラファエルを睨んだ時に背中から血鎖を生み出していたらしい。
この身に纏っている血の鎖の鎧は感情と連鎖しているような技でもあるからな。
「それにさ、さっき卵を投げて逃げていった力のないメイドたちのことも、シュウヤは責任を感じているんだろう?」
顔に出ていたかな。
「ラファエルは俺の心を読んでいるのか?」
「いや、そんな便利なスキルはない」
「また漢の勘か?」
「そうだよ。君の優しさを真に受けたからね」
「ずいぶんと、便利な勘を持つようで……」
と、ラファエルの魔眼というか双眸を睨む。
だが、俺の視線は彼に届かない。
「……僕はモンスターたちの心と通じ合うことができるスキルを持つからね」
「俺はモンスターかよ」
「うん! って、血鎖をよこさないでくれよ。冗談だって……ハハ」
ま、冗談だと理解しているが血鎖鎧とはいえ、ちゃんとツッコミのポーズはとらないとな。
ラファエルの眼前に伸ばしていた血の鎖を引っ込めた。
「ふぅ……でも、シュウヤはさ……」
「なんだ?」
ラファエルは気を失っている女性たちを見ながら、
「すべてを背負う必要なんてない。と、いいんだよ。ゼレナードを倒してくれただけで十分なんだから」
「しかし」
「いいんだ。必要ない。気を失っている彼女たちは、皆、何かしら特別な力を持つ。上で遭遇したメイドたちより安全に避難できると思うよ」
「……だが」
「シュウヤは極端だな。血の残虐を起こし嗜虐を好んでいるかと思いきや、今度は、その女性たちを救う気なのかい? 優しすぎる……光と闇、極端な善と悪が合金したような性格の持ち主だな」
善と悪……か。
「それは、すべての人にも言い当て嵌められるけどな」
「そうだけど、君は極端だと思う」
俺は<光闇の奔流>を取り込んだ<光魔の王笏>があるからな。
ステータスの説明では……。
※光闇の奔流※
※光と闇の属性を魂に持ち、その魂の激流を表した物。光と闇の魔法が使用可能となる。光属性と闇属性の攻撃を吸収&無効化、精神耐性微上昇、状態異常耐性微上昇。しかし、光と闇の精神性に影響されやすくなる※
という内容だった。
「何回も言うけど、すべてを救う必要はないんだ。ということで血の英雄シュウヤ。まだ僕たちには目的がある。だから、その下方を指している血鎖探訪の方向へと向かうとしよう」
血の英雄か。このラファエルの柔軟な思考も……。
また「闇のリスト」ってことかな。
単に、俺の行為と瞳の力を受けて、影響を受けているだけかもしれないが。
寝ている女性たちに向け「すまんな」と謝ってから――。
もう歩き出しているラファエルの背中を追い掛け、
「――ラファエル。血鎖の方向はゼットンとかいうモンスターが閉じ込められている隔離部屋と同じ方向かな」
と、質問した。
ラファエルは扉の前で、振り向く。
前髪が揺れていた。
端正な顔立ちがさまになるな……
こりゃ、女性たちも放っておかないと思う。
「そういうこと。魔物隔離部屋は、地下宮殿の側にある地下の保管庫の近くだ」
「そこに幹部とか強い魔兵たちのような敵が居るのか?」
「まだ残っていると思う。だから、シュウヤとロロちゃんを頼りにしている……シュウヤの潜入している眷属さんたちも強いだろうけど、ここは広いからね」
ラファエルは俺の姿を改めて見て語っていた。
そして、左手の月狼環ノ槍と右手の魔槍杖バルドークを見て、
「……でもさ、魔守備兵長ルクネスを多重魔法の連撃と魔槍の一撃で、瞬殺したかと思えば、今度は男の囚人と警備兵の悪漢たちを無慈悲に殺す血の鎖の連撃に……最後の、その紫色の魔槍杖に血を纏わせながら放つ矛技は本当に凄かった。唸り声が聞こえたような気がしたし」
ラファエルは、そう言いながら腰を落とし、片腕を突いて引く動作をくり返す。
<刺突>系の槍技を出す真似をした。
一瞬、可愛いエヴァも車椅子に乗りながら俺の真似をしていたことを思い出す。
「……あれか」
ここでは<血穿>を自然と使っていた。
「うんうん、痺れるほどの強さだった。その血の甲冑も強烈だけど、よく見たら流れの魔界騎士って感じだし、滑らかな胸甲から脇腹にかけての鎧の表面は、魔界八賢師がこしらえた専用の肉鎧みたいで、凄くカッコイイ!」
……。
ラファエルが異常に興奮した様子を見て、今度は俺がチンモク。
エヴァと共に待機中のエルザの左腕に棲むガラサス君を思い出す。
そして、目元の血鎖兜のバイザー部位を操作し、双眸を晒した。
「おぉ、目元も操作できるんだ。というか目も怖いね。血走っているし、さっきと違って星のマークが螺旋しているところもある」
本当に怖がっているのか疑問なラファエルだ。
しかし、<血鎖の饗宴>の血鎖鎧中に、観察をされたことが少なかった面もあるが……。
俺の双眸に星のマークが螺旋した箇所があったのか?
成長した証拠なのかな?
「ま、俺の怒りバージョンって甲冑であり鎧だ」
ラファエルとそんな会話をしていると、部屋の隅に追い詰められていた『トルーマン』を捕まえたロロディーヌが足下に戻ってきた。
ロロディーヌの口に咥えられている『トルーマン』こと小さい杖もヘンテコだが、可愛い。
団子虫、もとい盾となった『ドザン』も可愛らしいモンスターだった。
ラファエルが使役している魂王の額縁の中に生活しているモンスターたちは可愛い系が多いのか?
彼が、白鼬の剣精霊イターシャを見たら欲しがる可能性があるな。
「可愛い系のモンスターが好きなのか?」
「自然とそうなっただけ。僕のピュアで無意識の心が、可愛いモンスターを引き寄せてしまうのかもしれない」
ラファエルは俺の左腕を注視してくる。
血鎖鎧で隠れているが、サラテンの出入り口が分かったのか?
『……器よ、妾は使役はされないから安心しろ』
『大主さま~サラテュンさまが、わたしを離してくれないんデュ!』
『しらんがな』
サラテンとイターシャのやりとりは無視。
ぺしぺしと、乾いた音が聞こえた。
相棒が咥えた杖の端から出ているバッタのような足先が、バタバタと動いて相棒の顎と鼻をぺしぺしと叩いていた。
ロロディーヌは鼻をむずむずさせて、くしゃみが今にでも出そうな感じだ。
だが、ちゃんと、つぶらな瞳ちゃんを向けてくる。
それは『褒めて褒めて』といったような可愛いらしい表情であると同時に、ドヤ顔ぎみな
そして、いつものように頭部を寄せてくるといった甘えた行動は取らない。
なぜなら俺は血鎖鎧を展開中だからな。
相棒はネコ科動物らしく瞳孔を縦に細めた。
不機嫌ぎみだ。
そのまま、口に咥えていた『トルーマン』をラファエルに向けて放ると、触手を左右に激しく動かし、
「――ンン、にゃお」
やや荒い雰囲気で鳴いた。
『その血鎖を早く解除しろにゃ~』とアピールしているのだろう。
「はは、分かった分かった、今、解除する」
真っ裸に移行。
掌で暴れたトルーマンでお手玉をするように魔力を注いで大人しくさせていたラファエルは、突然、スッパマンと化した俺を見る。
股間を凝視してきた。
「……な!」
驚いた面だが、
「なんだ?」
と、聞くと、乾いた笑い声を出すラファエル。
ショックを受けたような面を浮かべている。
風は吹いてないが、風でも受けたように、前髪ごと、おでこを片手で押さえたラファエル君。
「いや、恥ずかしくないのかと」
「いまさら、羞恥心を見せたところでな、と強がるが、野郎に見られてもな、見んな!」
「僕もそれなりに自信はあったのだが……」
「……そんなことはしらんがな、ハルホンク――」
瞬時に暗緑色の防護服を身に纏う。
右肩の
暗緑色を基調としつつ、ところどころに銀色の葉が生えた枝の模様がアクセントとなった戦闘服バージョンだ。
紫を基調とした魔竜王タイプの鎧バージョンとは、少し違う。
そして、ヘルメじゃないがヘルメ立ちを意識しながら、
「さぁ、行こうか、魔物隔離部屋に」
と、ラファエルに促した。
俺の言葉を聞いたラファエルは、
「……あぁ」
と、力ない返事を寄越す。
明らかにテンションが下がっている。
「にゃお」
「あ、ご褒美がお望みかな? だけど、今は案内を優先するよ……」
相棒が慰めるように彼の肩を肉球タッチでぽんぽこぽんを行うが……。
何か、哀愁が漂っていた。
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