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 その夜、僕は彼女と寝た。

 いや、寝た、という表現はもしかすると正しくないのかもしれない。僕と彼女は、手をつないだまま、布団の中で、朝を迎えた、ということだ。弁解のように聞こえるかもしれないが、僕たちは口付けすらしていない。僕たちは、ただ、手を離したくなかったのだ。僕の意識を開放してくれた彼女と、その意識を共有していたかったのだ。僕たちは寝た後も、互いの位置を正確に把握することが出来た。左手と右手に違った動作を行わせるのと同じように、僕らは無意識のうちに互いを思いやって、ひとつの布団で寝ることが出来た。それは、とてもすばらしいことだった。本当に、すばらしいことだったのだ。そして、そんな夜がいつまでも続かないということも、僕らにはわかっていた。

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