危険な恋のはじめかた
悠木葵
第1話 出会い
幼い頃に両親が交通事故で他界し、一人娘であった
高校入学前に二人は続けて亡くなり、頼る親戚もいなかった朱里は天涯孤独となった。悲しみにくれている彼女の前に現れたのは一人の男性。「お前が佐倉朱里か?…確かに似てるな」
朱里は涙でにじむ目で男性を見上げて言った。「あなた、だ…れ」
男性はしゃがんで朱里の
「
事態がのみ込めずに放心状態となっている朱里の腕を引っ張り立たせた聖はそのまま彼女を車に乗せて走り出した。しばらくして我に返った朱里は言った。
「どこに連れていく気?ウチに返してよ!」
「無理だな。あの家にはもう帰れない。諦めろ。」
朱里はルームミラーに映る彼を
「あきらめろ?…ふざけないでよ!あの家はおばあちゃんたちとの思い出が詰まった場所なの!そんな言い方するな!」
聖は一瞬驚いていたがふ、と笑い
「冗談だ。真に受けんじゃねぇよ。相続の手続きはきちんとしてある。帰りたきゃ自由に帰れる。ただし、保護者ってのは本当だ。俺はお前のことを
そう言った聖はカギを朱里に投げて寄越した。それをキャッチした彼女は聖をまっすぐ見つめて言った。
「…どうしてあなたがおばあちゃんの名前を知っているの?あなたいったい何者?」
朱里は自分でも怖いくらい冷静なやり取りをしているのに気がついた。
「ここだと目立つ。場所を変えるぞ」
聖の言う通りだった。そこはタワーマンションのエントランスであり、端からみればトラブルになっていると思われかねない。聖は朱里にエレベーターに乗るように言って15階のボタンを押した。エレベーターを降りると部屋に案内される。鍵を開けた聖は言った。
「今日からここがお前の家だ。高校を卒業するまではここに住め。荷物は明日届くようにしてある。」
「意味わかんないだけど?それよりさっきの私の質問に答えてよ!」
「俺はお前の父親の弟だ。だから柊子さんを知っている。昔からよく世話になってたからな。」
「ウソ?おばあちゃん、そんなこと一言も言わなかった。なんで?」
「兄貴が言わないでくれ、とでも言ったんだろう。お前に“久瀬”という
そう言った聖の表情はどこか寂しそうだった。理由を聞こうかと思ったがなぜだか聞いてはいけないと思いやめた。そして違うことを口にする。
「ねぇ、ここに住めって言うのは決定事項?」
「ああ、お前に拒否権はない。高校を卒業したらお前の好きにしていい。」
拒否権はないと言われれば従うしかなかった。ここで独りになるよりはマシだと思い朱里は聖と同居することを渋々承諾した。
高校の入学金、生活費などは全て聖が出してくれた。その代わりに朱里は家事全般を引き受けることを条件にされた。
こうして朱里と聖、二人っきりの同居生活が始まったのである。
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