春へ

@nonn

第1話2016年2月 眠りの端

眠りの底の少し手前で、

天井の一番大きな木目のほうに

焦点をあわせてじっとしていると、

見えているのかいないのか、

わたしはいま眼をあけているのだろうか

わからなくなってしまって

自分の全部が一瞬だけ

世界の目になるのを感じる。


こんなときにおもうのは、

だいたいがあなたのことでそちらでどうか

元気にやっていますようにとかそんな

月並みなことばばかりが気持ちのなかにならぶ。

あなたがそちらに向かったのは、

あなたがそうしたいと願ったからで、

不本意とか無念とか

やりきれない感情とは全く無縁のものであったとわたしはいま本当に信じてる。


あなたの笑ったときの目尻にできるくしゃっとした皮膚のおうとつの肌触りを思い出そうとしてみるけれど、

そろそろおもいだせないところにまできてしまったみたい。

声はもう、ずっとまえにわすれた。



頭がおもい。ああ、沈んでしまう。

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