第4章 *4*

「うーん、アイツが遅刻なんて、めずらしいこともあるもんだな?」

(ホント、セオってば、どうしちゃったのかな……?)

 始業時間になっても一向に現れないセオに、グランディは首をひねっていた。セオよりも先に家を出てきたサミルも、彼がいないと、そわそわと落ち着かない気分になってくる。

「でも、今朝は私より先に起きて、優雅に朝食をとってましたよ。急に具合でも悪くなったとか……?」

 その何げないサミルの説明に、グランディの目がキラリと輝いた。

「ふむ。ところで、一つ聞いていいか?」

「はい?」

「先に起きて朝食をって……お前ら一緒に住んでんのか?」

「……あっ! えっと、それはその、ですね、色々と深〜い事情がありましてー」

「ほぉぉ。まぁ、その話は今度じっくり聞くとして、とにかく何かあったら連絡くらい寄越すだろ。それより、お前は二日も休んでたんだからな、今日はしっかり頑張れや」

「はーい!」

 などと素直に返事したものの、なんとなく胸騒むなさわぎを覚えたサミルは、昼休みになるとすぐに家に帰ってみた。が、そこにセオの姿はなく、いつも通り綺麗な部屋が広がっていた。

(体調を崩して休んだわけじゃない……っと)

 しかし、家にも想伝局にもいないなら、どこへ行ったのだろう。

 もしやと思ってリルカの店に寄ってみたがそこにもおらず、顔を出してもいないという。他にセオが行きそうなのは実家だったが、場所を知らないのでどうしようもなかった。

 そして、落ち着かないまま午後の仕事を終え、想伝局を出たサミルは、不意に路地から伸びてきた手に腕をつかまれた。

(な、何っ!?)

 とっさに上げそうになった悲鳴は、しかし直前で口をふさがれ止められる。そのまま強引に路地へと引き込まれたところで、サミルの耳元でささやく声があった。

「サミルさん、わたくしです。手荒てあら真似まねをして申し訳ありませんでしたが、奴らに見つかりそうでしたので……」

 振り返ってみれば、そこには漆黒しっこく外套がいとうを着たシェルスが立っていた。

「……奴ら?」

 眉をひそめてつぶやくサミルに、シェルスは大通りの方を視線で示す。

 見れば、群青色ぐんじょういろの制服に身を包んだ王立警備局員たちが、キョロキョロと辺りを警戒しながらあわただしく駆け回っていた。

「もしかして……セオに何かあったの?」

 ただならぬ様子にサミルが青ざめると、シェルスは一瞬、躊躇ためらうような素振そぶりをみせながら、ぽつりとつぶやいた。 

「セオ様は……第一王子暗殺未遂犯として、拘束されてしまいました……」

「ええっ!?」

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