第2章 *8*
深夜――。
まもなく満ちようとしている月を窓越しに
「失礼致します、ヴァンゼス様」
足音を立てずに入ってきたのは、涼しげな顔をした黒髪で
「彼女について、何かわかったのか?」
「はい。それから、ガレス=シルヴァニアの行方についても」
「ほう、それは興味深い。母上が昔、
「申し訳ございません」
頭を垂れてはいても、この青年が
きっぱりと断るその揺るぎない姿勢と、彼の
「……まあいい、今言ったことは忘れろ。報告を続けてくれ」
「はい。まず、サミル=シルヴァニアについてですが、彼女はやはり、
「なに、ラエル様の妹? では彼らは……
「城から逃げ、シルヴァニア一家が暮らしていたのは、ヒエムス国にほど近いウェール国北部、名もなき霧深い森にある、
「ほう、彼は今もまだ現役で?」
「……それが――」
その先を言いづらそうに
それから長い沈黙を
報告を終えた青年は、次の指示がないと判断するや、それきり何も言わず、本来の
広い部屋に一人残ったヴァンゼスは、窓をそっと開け、夜空を仰ぐ。
獣人を獣の姿へと変えてしまうという満月の光は、人間をも狂わせるか――。
「……獣人狩り、か。まことに恐ろしいのは、獣ではなく、人間の方なのかもしれんな」
静かに輝きを放ち続けている月を見上げ、ヴァンゼスは
その
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