第1章 *7*
ウェール城の大時計台が、夜明けの
豪勢な調度品に囲まれた室内で、その部屋の
窓辺から
振り返った瞬間、
――と、早朝にも関わらず、
「まったく、朝から
「はい、証拠はありませんが」
「証拠など、やり方次第でいくらでも作れるものだよ。例えば、これ――」
膝をついていた青年は、わずかに顔を上げ、男の手のひらに乗せられていたモノに目を
「それは……種?」
「ああ、ただの種じゃなくて、『
「本物、でございますか?」
「まあね。
男は口元に
廊下を騒がせている問題のひとつに、実はこの件も含まれているのではないかと青年は思ったが、あえてそれは口にしなかった。その代わり、種を見せられて思い出したことを報告することにした。
「ヴァンゼス様、実は昨日、非常に興味深い人物を見つけたのですが……」
「へぇ、どんな?」
「彩逢使の力を持った少女で、名をサミル=シルヴァニアと」
「シルヴァニアというと……まさか彼の血縁者?」
「それはまだ何とも。お調べ致しますか?」
「ああ、頼むよ。とすると……この種の行く先はそれで決まるかな?」
ヴァンゼスと呼ばれた男は、転がしていた種を握り締めると、ふと息を吐いた。
「ところで、彼の様子はどうだい?」
「……あんなに楽しそうに過ごされているのを見たのは初めてです」
「ほう……それは私も見てみたいものだね」
報告している青年の目元が嬉しそうに細められたのを、ヴァンゼスはどこか
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