エピ030「とある日常が非日常と繋がる瞬間」
宗次朗/早美都/相田:「ご馳走様でしたぁ。」
涼子:「どう致しまして。」
ファミレスの玄関で奢ってもらったお礼を言って、俺達はトボトボと駅へと向う。
相田:「宗次朗、明後日、3時集合だからね、遅れないでよ。」
宗次朗:「早く無いか?開場は夜の6時だろ。」
日曜日の学校説明会で、俺は当日の「スナップ写真他を撮影する係」に抜擢されていた。
相田:「私は3時に呼ばれてるの。…良いから来て。」
博美:「あ、上り電車来たみたいよ。…」
JRの上りホームに到着したばかりの電車に、「早美都」、「相田」、「博美先輩」が駆け込んで、
俺と「円先輩」は下りホームから手を振って3人を見送る。
宗次朗:「先輩も、帰りこっちなんですね、…」
涼子:「うーん、そーだねえ、…」
確かに「幻の芸能人」とは言え同じ高校出身なんだから、住んでいる所が近くても何ら可笑しくは無いのだが、何だかちょっと不思議な感覚だ。
涼子:「ねえ、京本クンって、あんな事言ってたけどさ、本当は相田ちゃんの事、好きなんでしょ?」
宗次朗:「そんな事無いですよ。」
「元学園のアイドル」が、悪戯っぽいニヤケ顏で俺の事を見詰める。
涼子:「隠したって駄目よ、お姉さんにはバレバレなんだから。…多分、皆にも、相田ちゃんにもバレてるよ。」
宗次朗:「アイツは、友達です。 結構良い奴なんですよ、…腹黒いけど。」
俺は、
だから、俺は、アイツに、そんな辛い想いをさせるのは嫌だ、…友達だから、
そう、俺達は、ずっと友達の侭で良い。
下りの列車が到着し、通勤帰りのサラリーマンの波がホームに溢れ出す。
で、車内も未だ未だ、結構混雑している。
俺達はドンドン奥へと押しやられて、俺は「円先輩」が圧し潰されない様に、ドアの隅っこで壁になって隙間を作る。
涼子:「ありがと。でも大丈夫だよ。私だって満員電車で通学してたんだから。」
そう言って微笑む「円先輩」に、駄目押しで乗り込んで来たサラリーマンに押された俺は、…思わず密着してしまう。
涼子:「きゃっ!」
宗次朗:「すみ、ません。」
密着して、俺の腹に当たった「円先輩」の胸が、…異様に柔らかい。
チラリと襟元から覗く素肌の谷間、もしかして、…ノーブラ?
涼子:「京本クンって、結構背、大きいんだね。」
宗次朗:「え?…あ、170一寸ですから、そんなでもないですよ。」
何故だか「円先輩」は、俺の脇腹の肉を、摘んでる?…
涼子:「ほんとだ、もう一寸肉が有った方が良いわよ、痩せ過ぎだよ。」
身長20cm差の「円先輩」の頭が、俺の鼻先を擽って、…良い匂いしかしない。
当然、会話なんて続かない訳で、俺は只ひたすらに、沈黙に耐え、…
「円先輩」は、上目遣いに俺の顔を覗き込みながら、苦笑い、…
宗次朗:「じゃあ、俺、ココなんで、…」
涼子:「待ってよぉ、…私も、」
宗次朗:「もしかして、…同じ駅なんですか?」
涼子:「そうよ、」
「円先輩」は、少し困った様な、いや、一寸怒った様な、顰めっ面で、俺を睨みつける?
何故? 俺、何か悪い事しちゃっただろうか?
改札を出て、終始無言の侭に歩き出す。
って、何を話せば良い? 俺の間抜けな話?可哀想な話?憐れな話?
…て言うか、もしかして、俺に付いて来てるの?何故?
さっきから「例の噂」が、気になって仕方が無い。
「聞いた? 円先輩って本当はすっごいビッチなんだって、」
「知ってる! 手頃な男なら誰でも構わず直ぐにやっちゃうんだってさ、」
そんなの、やっかみ女子の都市伝説的うわさ話でしかない事は、百も承知な筈なのに、…
それなら、此の状況は一体どう言う事なんだろう?
もう、辺りは真っ暗だと言うのに、どうして、俺なんかに、付いて来る?
俺は、とうとう立ち止まり、勇気を振り絞って、尋ねてみる事にする。
宗次朗:「あの、…俺んち、この直ぐ先なんですけど、」
宗次朗:「もしかして、何か俺に、用があったり、…します?」
「円先輩」、深い溜息を一つ。
涼子:「そんなの、知ってるよ。」
何故に?…ちょっと切なそうな顔?
涼子:「もう! 本当に鈍いんだから、…」
涼子:「私よ、私!「すず姉ちゃん」よ、…本気で忘れてた訳? 宗ちゃん!」
「すず姉ちゃん」?…
小学校3年生の頃の登校班の班長さんの事を、覚えているかと言われると、
誠に申し訳ないが、…否である。
諸々の恥ずかしい記憶と共に、7年前の記憶など遥か宇宙の彼方だ、…
でも、こんな美人、居たっけ?
と面影に頼っても無駄な位、時間は人を変えてしまうらしい。
そう言えば、…居たかも知れない、
宗次朗:「すず姉ちゃん?…」
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