失恋王

ランプライト

第一章「失恋王の春」

エピ001「プロローグ」

有人:「よう「失恋王」また同じクラスだナ、よろしく頼む、」


同中の大して仲良かった訳でもない知り合い(鎌塚有人)が、馴れ馴れしく声をかけてきた。



宗次朗:「その二つ名は正しくない、何故なら俺は恋愛した事ないからな、従って失う事は不可能だ。」


今日は高等学校入学初日、始業式が終わって初めてのホームルーム教室へ辿り着いたばかりの所だ。

最初の席順は出席番号だった。しかしよりによってこんな軽薄な奴と前後の席になるとは、



有人:「お前が卒業式の日に「西野敦子」に告白して振られたのは、南中全校生徒が知ってんだぜ。」


そうだ、そして俺は後悔し、猛省し、確信したのだ。

この俺が「西野敦子」に、どんなに酷い事を続けてきたのか、どれほど長く苦しませ深く悲しませてしまったのか、と言う事を、


だからもう二度と、俺は恋愛など信じない。


全ての恋愛は、独り善がりな好意の押し付けにすぎないからだ。

貴方の事が好き、いつも貴方と一緒にいたい、貴方の為なら何でもしてあげたい、、

その強い思いの中に「貴方」が入り込む余地などまるでない。



宗次朗:「だからもう、俺は二度と恋愛などしない。」

有人:「大袈裟な奴だナァ、…それに俺は褒めてんだぜ、あんな格好良い事出来る奴、お前以外に居ないって。ある意味伝説だナ。」


如何にもチャラオっぽく軽薄に学ランを着こなして、微妙な焦げ茶に前髪を染めた「有人」が、椅子の背もたれに立て肘を付いてニヤニヤ笑う。

一体お前が、俺の何を解っていると言うのだ、気持ち悪い。



早美都:「ナニナニ、面白そうな話してるね。 伝説って、一体何が有ったの?」


其処へ、隣の席の見知らぬ可愛らしい男子(高野早美都)が混じってきた。

どうやら周りに知っている顔が居なくて、暫らくボッチで悩んでいたらしい。



国分:「ほら、席につけぇ!ホームルーム始めるぞ。」


如何にも温厚そうな中肉中背の男性教諭が教壇に立つ。

危なかった、…それでこれで、俺の黒歴史の事などさっさと忘れさられてしまえば良い。


俺はもう生まれ変わったのだ、 中学までの俺とは違う。

そう、今日からの俺は「完全恋愛否定主義者」なのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る