第006話「非常識の境界線」
どうやら辺りを見回すと、…
「戸塚さん」の姿を一目見ようと他部署から大勢の社員が入れ替わり立ち替わり総括グループを訪れているらしい、
優先度の低そうな雑用業務の依頼と挨拶と雑談が途切れる事なく続き、気の弱い「鈴木さん」は、いよいよ半泣きの視線でアシマネ(注、アシスタントマネージャ)に救いを求める、
流石に業を煮やしたのか「長谷部さん」は財布から社食用のプリペイドカードを取り出すと、派遣社員の「山河さん」に何やら耳打ちする、
山河:「二宮クン、一寸コーヒー飲みに行こうか、」
手を止めて顔を上げると「山河さん」の隣で「戸塚さん」が可愛らしく手を振っていた、
僕と「戸塚さん」は「山河さん」に連れられて、地上階のカフェテリアまで散歩する、
山河:「何でも好きなモノ頼んで良いよ、」
僕はカプチーノを、「戸塚さん」はキャラメルフラペチーノを注文、
マドカ:「ありがとうございます、」
シノン:「済みません、」
山河:「良いの良いの、気にしないで、「長谷部さん」の奢りだから、」
お客様の待ち合わせ用のロビーには…見ると結構沢山の人達が、遅い軽食をとったり、コーヒーを飲んだり、中にはパソコンを持ち込んで打ち合わせしているメンバーもいる、
真剣な顔で書類に目を通している人、ぺこぺこと若い社員に頭を下げている明らかな年長者、…よくよく耳を傾ければ、日本語以外の会話も聞こえてくる、
シノン:「何だか凄いですね、」
山河:「そうかな、一応親会社はグローバル企業だからね、…直ぐに慣れるよ、」
(作者注、親会社とは母体となった自動車会社とIT会社)
いや、そっちでは無くて、何が凄いって、…
何にも解らない筈の僕でさえ一目見ただけで分かる、身分の差?立場の差?
少なくとも大学では、どれ程研究成果に開きが有ったとしても、こんな風にアカラサマに年長者が若者に媚び
僕は、胸を締め付ける様な違和感をどう受け止めるべきなのか測りかねる、
山河:「それにしても二宮クンって可愛いよねー、モテるでしょ?」
マドカ:「あー、やっぱり先輩もそう思います? 私も激しく同意!」
僕は、…
この手の話題が大嫌いだ、…
僕は確実に男(注、XX染色体)なのに、どちらかと言えば小柄且つ華奢な体形で顔も女の子っぽくて、時々知らない人から女子に間違えられる事がある、
喋り方もナヨッとしていて性格もネガティブで、僕はこんな自分が大嫌いだった、
「ナギト」みたいに細マッチョで、優しくて、竹を割った様な性格に憧れるのだけれども、人間思う様には生きられない、そう簡単には変われないと思い知っている。
シオン:「で、全然モテないですよ!だいたい可愛いってなんなんですか、…心外!」
女子二人が何だかホンホンと意気投合するのを疎ましく思いながら、僕は眉を
マドカ:「何だか、肌もすべすべしてて羨ましいー、それって化粧してないんでしょ?」
山河:「髪の毛もめっちゃ綺麗だよね、目鼻立ちも整ってるし、宝塚ミタイ?」
シオン:「化粧なんかしないよ! 僕は男だってば!」
山河:「男の娘?」
マドカ:「もしかして、この前一緒に居たあのイケメンと付き合ってるとか?」
山河:「プロ担の川崎クンでしょ! 知ってる!」
シオン:「戸塚さん!怒るよ! 山河さんもいい加減にして下さい!」
山河:「ねえねえ、ちょっと抱っこしても良い?」
マドカ:「山河さんダメです、先ずは私の許可を取ってください!」
シオン:「二人ともセクハラだよ!」
女子二人、両手を繋ぎ合って、目を潤潤させながら、うっとりと、…僕の顔を見つめている?
シオン:「可愛いっていうなら、戸塚さんの方がずっと可愛いじゃないか!」
自分で自分の顔が、きっと真っ赤になっているのが分る、…
マドカ:「なに、二宮クンもしかして私の事、口説いてるの?」
女子二人、ニヤニヤ笑いながら、…
シオン:「知らない…!!!」
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