第24話 ダリア遺跡~過酷なる運命~

【前回のあらすじ】

 サファイアの遺跡情報によりメンバー選抜をする鏡太。サファイアの公園案内の途中、ノヴァとセラに遭遇しメンバーに加える。その後ルビーの実家へ行き一日を過ごすが、ルビーは遺跡行きに不穏な空気を感じていた。ルビーを説得し遺跡行きを決行する。鏡太はバレンタインから帰り、アリサと岬をメンバーに加える。こうしてパーティーは結成された。そして休日。公園に集まった6名は遺跡攻略の為、バレンタインのダリア遺跡を目指す。


【バレンタイン・ダリア】

 ここは農園都市ダリア。穀物、野菜、果物と数多く栽培されている都市。収穫されたものは主に他国へ輸出したり、商店区画にある多数の商店で現地売買されている。

 鏡太・岬・アリサ・ノヴァ・セラ・ルビーのパーティーは商店がある区画にやってきていた。

「まずは遺跡の場所を知る人を探す事からはじめよう。ついで何か遺跡の内部情報が聞ければいいけど」

「そうね。じゃ手分けして探しましょう。わたしはコチラに行ってみるわ」

「それじゃ、みんな頼んだよ」

 皆それぞれ聞き込みに走った。


 穀物を売っている店を数件回った鏡太。今のところ有力な情報は無い。鏡太は果物屋さんで話を聞く。

「すみません。ダリア遺跡の場所知ってる方、存じませんか」

 店主:兄さん1個買ってくれよ。そしたら教えてもいいよ。

「それじゃこの果物もらいます。コレ何ですか?」

 店主:毎度~。それはプーナて南国の果物だよ。それと遺跡のことなら、その先    の路地を曲がった先にいる爺さんに聞きな。

「わかりました。ありがとう」

 道すがらプーナを食べる鏡太。『梨みたいな味だな~』


 路地を曲がると年老いた老人とルビーがいた。

「ルビーも来てたんだ。そのお爺さんが場所知ってるみたいだけど聞けた?」

「聞けたわ。ムギ畑を超えた丘陵の先にあるらしいわよ」

「よし!あとは集合して向かうだけだね」


 一同と合流した鏡太。遺跡の場所を教え、他に情報がないか聞いてみる。

「ノヴァさん、岬さん、セラさんは情報なしか。アリサは何か聞いた?」

「遺跡から逃げ帰った人の話だと大きな花のモンスターがいるそうですわ。仲間がバタバタと眠ったと言うことよ」

 アリサの話を聞いたセラ。モンスターが何かわかったらしい。

「多分、ドリームフラワーです~」

「それって、どんなのですか?」

「甘い匂いで旅人を眠らせて食べるらしいです~」

「それヤバイですね。何か対処方法ありますか?」

「私がファイヤーで焼いてみるです~」

「倒せないでもひるんだら先へ行けますね。それじゃフラワー出てきたら、セラさんお願いします。後は各自、状況判断で行動して」

「了解」と一同返事をする。


 鏡太達は麦畑を過ぎ、丘陵を越え遺跡の前まで来た。遺跡は不規則に巨大石が重なり、所々にコケが生えている。石の隙間から入り口らしい穴が見えている。

 鏡太は遺跡入り口前の立札に気づいた。

「何か立札があるね。なになに推奨LV30。子供には無理。てなんだ?」

 立て札を読んだ後、なぜか全員がノヴァを見る。

「なんで私を見るのよ!LV30くらいあるわよ」

 皆が反応したのは子供の事だとノヴァは気づいていない。

「いや~そのLVてのは何ですか?僕たちランク制なんですけど」

「知らないのよ。私の遠耳Cランクだから、そう思ったのよ」

「1ランク10LVくらいの計算なのかしら?私も初めて聞きましたわ」

「う~ん。その計算だと僕とかLV20くらいだよ。負け確定じゃん」

「それだけ強い敵がいるって事でしょ。一応入りましょうよ」

「そうだね。では探検出発!」


 鏡太はダンジョンを進んだ。宝箱発見!ノヴァは食われた。一同は逃げた。


「んなわけあるか!作者。手抜き過ぎだよ!マジメにシリアスで行こうよ~」

 作者:面倒なんだもんテヘッ。

「テヘじゃないよ。僕はマジメに探検したいの!お願い。泣」


 作者:はいはいギャグ縛りね。じゃシリアスに序盤で主人公殺しちゃうね。

「シリアス過ぎ!バット・エンドだよ!」


 作者:贅沢な主人公だね~。これでどうよ。

「俺はカミュを愛する男ハードボイルド鏡太。今日も冒険という航海へ」

「作風違うよ!頼むから~お願いしますよ~作者様~」

 作者:仕方ねえな~。んじゃマジメに書くか。


 鏡太のパーティーは入り口へと足を踏み入れる。

「別れ道とかは無さそうだね。直進で助かるよ」

「つる草が多くて絡まります~」「邪魔なのは先頭の私が鎌で切るわ」

 ルビーが大鎌を振りツルを切っていく。その後方を進むパーティー。

「ほとんど手付かずって感じですわね。服が汚れますわ」

「足元にもつるがあるから転ばないようにね」

「もう転んだのよ。鏡太おんぶなのよ」「はいはい」

「道は少しずつ右へ曲がって行ってるようね」


 つるをかき分けパーティーは広間にでた。一面には色とりどりの花畑が広がりを見せている。

「お花畑だわ。洞窟の中にあるなんて信じらんない」

 ルビーは日頃から草花に慣れ親しんでいるが、遺跡の中でみる風景には驚いている。

「もしかしてココにドリームフラワーがいるのかな?」

 鏡太は情報どおりならと警戒した。

「わーい。お花畑なのよ~」

「あっ!ノヴァさん迂闊うかつに飛び込んでは危険です!」

 花畑に飛び込んだノヴァに注意下が遅かった。ノヴァに異変が起きる!

「キャー!何よ、この触手!離してなのよ~」


 突如、地中から食中植物マンイーターみたいな巨大な花が現れ、ノヴァを触手で絡ませ持ち上げている。パーティーは身構えた。

「やはりココにいたのか!速くノヴァさんを助けないと!けど相手には睡眠攻撃があるから無謀むぼうに突撃できない。どうすれば」


 鏡太は思いついた作戦を実行にうつす。みんなに指令をだした。

「セラさんファイヤーで援護を頼みます!」

「了解です~」

「僕は持ってきた剣で触手を何とかしてみます。ルービーも触手をお願い」

「わかったわ」

「岬さんは背後に周り、隙を見て、思いっきり鉄拳ぶち込んでください!」

「了解よ。任せておいて」

「ノヴァさんを救出できたら、全員で奥に見える入り口へ逃げ込み、しばらく様子を見ましょう。ではみんな作戦開始!」「了解ですわ」「わかったわ」

 返事をするとセラ、ルビー、岬は散らばった。

「エイッ!エイッ!エイッ!お花さん倒れろです~」

 セラはファイヤー攻撃を連続で放つ。怪物の動きがにぶくなる。

「セラさんいい調子だ。怪物がひるんでいる。僕もハー!(ブシュ!)」

 鏡太は何とか触手を避けながら剣で攻撃を繰り返す。

ひるみはするけど、この触手、何度切っても再生するから厄介だわ」

 大鎌で連続攻撃を繰り出すルビーも苦戦している。

「ダメだノヴァさんのところまで辿り着けない」


ファイヤーを連続して使い援護するセラ。鏡太、ルビーは切りつけ攻撃するも再生する触手にさえぎられ、ノヴァ救出へと行けない。皆は焦りを感じていた。


「怪物がみんなに気を取られてる隙に背後にきたわ!」

 タイミングを見計らう岬。そして行動にでる。

「圭介にも使わない特大のやるからね。岬ちゃんいっくよ~。ハッ!」

 岬は大きくジャンプすると怪物の後頭部へと怒涛の攻撃!

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!オラーーー!(ドゴーン!)」

 無数の強打炸裂!岬のオラ攻撃により怪物の動きが一瞬止まった。


「今だ!動きが止まってる!ルビー!ノヴァさんの触手を頼む!」

「わかったわ!」

 そう言うとルビーは触手の上を軽々と飛んでいく。そしてノヴァを捕まえている職種の場所まできた。大鎌を振り上げるルビー。

「行くわよ~(シュピン!)鏡太お願い」

 触手は切り落とされ、ノヴァは落下していく。

 落下地点に目駆け走り出す鏡太。

「ウオーーー(ボスッ!ノヴァをキャッチ)ノヴァさん大丈夫?」

「ウッウッ・・・。食べられると思ったのよ。ありがとなのよ」

「安心するのはまだ速い!みんな奥へ逃げるよ!」

 鏡太の指示に『了解!』と答え全員は奥の通路へと走る。


 だが、逃げ込んだ通路は蔓草に覆われ行き止まりだ。

「クソーなんてことだ。通路は狭いから怪物は追っては来れないけど、あの触手は僕たちを狙ってくる。どうすれば・・・。戦うしかないのか」

「あんな怪物が守っている遺跡ですもの、他に入り口があるかもですわ」

 絶望的な状況からアリサの言葉で皆は少し期待が持てた。

「私が透視で見てみますわ。・・・ありましたわ!そのツルに覆われた先に扉がみえますわ」

 アリサは行き止まりに見えていた蔓草を指差す。

「ほんと!ありがとうアリサ。みんなで蔓草をどけよう」

 蔓草を排除すると先に石扉が見える。岬が扉を開けると狭い部屋の中央に地下への階段が見えている。


「地下へ降りるしかないみたいだね。何があるかわからない用心していこう」

 パーティーは地下への階段を下りると、直線通路へと出た。すると左右の端にずらりと奥まで並ぶ石像群。

「石像たくさんなのよ~。鶏さんなのよ」

「不気味な石像よね。体は人で頭が鶏だわ」


 一同は石像が並ぶ通路を注意しながら奥へと進む。すると大広間にでた。

 まず初めに一同の目に飛び込んだのは部屋の中心にある大型の鳥型石像。

  鏡太:な、なんだこの巨大な石像は!何か嫌な気がすけど。

 ルビー:これってあれよね。

 ノヴァ:あれなのよ。

  セラ:アレなのです~。

  鏡太:やっぱそう思う?では、岬ちゃん出番です。

   岬:は~い。


 突如、巨大石像は動き出した!

「何すんじゃわれーーー!」

 バラバラだった。

「やはりパターンだね。さあ先行こうか」「は~い」

「ワシにも出番ください。セリフが少ないです・・・泣」


 石像をやり過ごし、部屋の奥の通路を進むパーティー。気味が悪い虫が地面に徘徊している。

 ルビー:うげ~。この通路気持ち悪~い(プチプチ)

 アリサ:虫唾がしますわ!

   岬:これ食材かしら?

 ノヴァ:鏡太。絶対に下ろさないでなのよ。

  セラ:ワームの大群なのです~。

  地面にはミミズの大群。踏みつけながら通路を歩くと扉が見えてきた。

「扉があるね。でも取っ手が無いな~。んっ?これは見覚えがある!」

 鏡太は扉の左下にある台座に気がついた。

「鉱山の仕掛けと同じだ!ココに剣を差し込んでと」(ゴゴゴゴゴ。扉が開く)

「やった!扉は開いたけどミミズは以前いるな~。我慢して先へ進もう」


 パーティーはまた花畑へでた。辺りには虹色の蝶が舞っている。

「あれ戻ってきたのか?おかしいな~」

「何か違うわ。奥をみて!無数に入り口らしきものが見えるわ」

「ホントだ!あの入り口のところまで行こう」


 蝶が舞う花畑を進んでいくパーティー。体の異変に気がつく。

「なんか体が思うように動けない。何が起きてるんだ?」

「これヤバいわ!多分この蝶よ!鱗粉に麻痺効果があるんだわ!」

「このままでは全滅だ!みんな急ぐぞ!」

 パーティーは洞穴へ向け走りだす。

 セラは走りながら辺の蝶が来ないようにファイヤーで牽制している。


  パーティーは洞窟の入り口が複数ある地点まで来た。 

 「穴に来たけど。どちらへ行けばいいんだ!」

  迷う鏡太にノヴァが方向を知らせる。

 「こっひの先からガサガサおひょがするのよ」

  ノヴァが指す方向は右奥から2番目の穴。

 「ノヴァさんの遠耳を信じよう。みんな急ごう!」


 鏡太パーティーは通路を進みかろうじて休憩出来そうな空間にたどり着いた。

「痺れがあるうちは危険だ。ここで休憩していこう」

 鏡太がそういうと全員が腰をおとす。

「くらぶれたのよ。ここはらいびょうぶなの?」

「おらおら。らいひょうぶなのれす~」

「セラさんとノヴァさんは再生できないから言語麻痺までしてる・・・」

「じっとしてたら確実に動けなくなったわね」

「危ないところでしたわ。不死族のおかげで助かりましたわね」

 ルビーとアリサは再生でき麻痺は軽めで言葉は大丈夫だ。

「二人の回復を待って先へ進みましょう」

「そうしよう。ここは今までとは違うし危険だ。用心に越したことは無い」

 ルビーの言葉に同意した鏡太。数々の試練を乗り越え、リーダーとしての自覚が出てきていた。


 遺跡に入ってどれほどの時間がたったのだろう。今まで出会ったモンスターは危険なものばかりだ。この先も困難が待ち受けてるかもしれない。もし勝てない相手なら命をかけても時間を稼ぎ、みんなを逃がそう。と心にちかう鏡太。


 全員が回復した。パーティーは先へと進む。すると大きな扉の前へでた。

「大きな扉だ。ここが最終地点かもしれないね。みんな準備はいい?」

「大丈夫よ」「任せておいて」「いいのよ」「大丈夫ですわ」「行くです~」

 皆の返事を聞くと鏡太は岬に扉の開閉をお願いした。

 岬が大きな扉を開ける。(ギイーーー)中央奥の台座に石棺が見える。

「あそこにある石棺に遺産があるのかな。行ってみよう」

 石棺へと駆け寄る一同。

「あれ開かない。岬さんお願い」「わかったわ・・・ダメね」

 岬がフルパワーで数分、頑張ったが石棺はびくともしない!アリサが透視してみると言い出した。

「中を見てみますわ。棒見たいのが見えますわね。これが遺産かしら?」

「多分そうだろうね。仕掛けがあるのかもしれない。みんなで探索しよう」

 仕掛けを探しに四方に散開するパーティー。


 皆から離れた岬に突然、上空からシュル・シュル・シュルと、白い糸状の物が飛んでくる。岬に絡みつく糸。

「キャー!鏡くーん!」

 ヒュンと岬は上空へと引っ張りあげられた。 

「み、岬さーん!なんだアレは!」

 異変に気づいた鏡太は叫び声をあげ上空を見上げる。そこには巨大な蜘蛛くもが糸の網に張り付いていた!


「離しなさいよ!むむむ・・・ダメだわ。この糸ちぎれない」

 岬は怪力で糸を千切ろうと試みるが何度やって無理なようだ。


『フシュー・フシュルシュル』

 上空にいる大蜘蛛は岬へとジリジリと距離を詰める。


「あんな高い所にいては攻撃が届かない。セラさんファイヤー届きますか?」

「やってみます~。ファイヤー!当たりますけど威力が落ちます~」

 セラのファイヤーは蜘蛛の巣に届きはするが少し焦がす程度だ。

「どうすればいいんだ・・・」

 鏡太たちがあせる中、網に掛かった岬へとにじり寄る巨大蜘蛛。

『フシュー・フシュー』

「いや!いや!こっち来ないで!助けてー!」

 足をばたつかせ、蜘蛛を近寄せまいと牽制する岬。そんな岬へ無情の一撃!

(ジャキン!)

『ギャーーーーーーー!』岬の絶叫ぜっきょう

 右足は蜘蛛くもの牙により切断された。鮮血で白い蜘蛛の巣は赤く染まる。

「た・たす・けて・・・鏡・・・」

 涙を流し助けを求める岬。その光景を目撃した鏡太。怒りがこみ上げる。

「チクショーーー!よくも!よくも!岬さんを・・・」


 蜘蛛は岬のちぎれた足を食べ。さも、ご馳走を最後に取って置くかのように岬から目を離し天井から地上へと飛び降りてきた。パーティーは散開し身構える。

「降りて来たぞ!みんな注意して!」

「地上なら当たります~ファイヤー」

 セラ連続攻撃。だが威力が足らないのか大蜘蛛はひるまない。

 そしてセラの攻撃に目もくれず、大蜘蛛は小さな標的に狙いをつけ突進した。

 ドドド・・・。ノヴァに急接近する大蜘蛛。

「キャー!こないでなのよ!助け・・・(ドカン!)ゴフッ」

 無情にもノヴァは跳ね飛ばされ壁に激突!意識を失った。


「ノヴァさん!」

 鏡太はノヴァへと駆け寄ると抱きかかえ叫ぶ。

「目を、目を開けてノヴァさん!」

 だが、ノヴァは目を覚まさない。ノヴァをその場に寝かせると鏡太は行動にでた。

「こいつノヴァさんまで!こっちだ怪物!僕が相手だ!」

 怪物の興味を自分に向けようと剣を構え走り出す鏡太。だが狡猾こうかつな大蜘蛛は次の狙いへと忍び寄る。ガサガサ。アリサを助けようと走る鏡太。

 だが、アリサに近づいていく大蜘蛛の行動は巨体に似合わず速い!


「嫌ですわ。こっちに来ないで・・・」

 逃げるアリサ目掛けとがった腕を振りかざす蜘蛛。瞬間!

『ギャーーーーー!』アリサの絶叫!行き場を失った右足がパタリと倒れる。

「い、嫌ーーー!わ、私の足・・・だれか・・・たすけ・・・」

 無残にも片足を切られ、鮮血を吹き散らしながら、のた打ち回るアリサ。

「アリサーーー!ちくしょう!ちくしょう!」

 半狂乱はんきょうらんの鏡太。

 

 

 それを見たルビーは大蜘蛛めがけて攻撃する。

「アンターーー!許さないわ!(バシュ!)何て硬いのビクともしない」

 ルビーの大鎌による斬撃は大蜘蛛の装甲を打ち破れない!

「くそー!アリサまでも・・・なぜ。なぜ僕を狙わない!」(カキン!)

 仲間を守れずパニックになる鏡太。泣きながら剣を振り蜘蛛へと突進する。

「鏡太!迂闊に近づいてはダメ!」

 ルビーの注意もむなしく、隙だらけの鏡太に大蜘蛛の一撃!

『グサっ!ズブズブ』大蜘蛛の尖った脚が鏡太の腹部を貫通。

「鏡太ーーーー!」

「グッ・・・何が・・・ガハッ!」口から吐血とけつ

 大蜘蛛が足を引き抜くと腹部にポッカリと穴が空いている。

『嫌ーーーーーー!』ルビーの叫び!

 ルビーは怒り打ち震え血の涙を流す。そして蜘蛛へと飛びかかる。

「お前は許さない!よくも。よくも。鏡太を!殺してやる!殺してやる!」

 鏡太を失うかも知れない恐怖と怒りにルビーは我を忘れている。

「許さない!絶対に許さない!八つ裂きにしてやる!」

 怒り狂うルビーの多数の斬撃!だが蜘蛛は微動だにしない。そして、攻撃を避けていた大蜘蛛は糸を吹きかけた。大鎌を振り上げたルビーは手と足を糸で縛られ身動きができない。

「う、動けない!この!この!離しなさいよ!」


 無抵抗になったルビー。近づく大蜘蛛の足による斬撃が空を切る。(ザシュ!)

『ギャーーーー!』ルビーの絶叫!鎌を持つ両腕は切られ真っ赤な鮮血が吹き出している!

「イ、イヤーーー!私の・・・腕・・・腕がーーー!きょう・・・た」 

「ルビーーー!チクショウ!チクショウ!許さない!ゴフッ・・・殺してや・」

 怒り。血だらけで泣きながら、ルビーの元へいずって行く鏡太。

「ルビー・・・今助けにゲホッ・・・ゲフッ。みん・・・すまな・・」

 辺りにはおびただしい血。倒れて身動きできない仲間の嗚咽おうと混じりのうめき声や助けを呼ぶ声が聞こえ、まさに地獄である。


繰り返される惨劇と絶望感で心が折れてしまっていた鏡太。

何とか無事でいるセラだけでも逃がそうと気力を出し叫んだ。

「この・・・全滅だ・・・セ・セラさん・・・ゴフっ・・逃げてください!」


だが、惨劇を目の当たりにしたセラには異変が起きていた。


「鏡太さん。嫌です。逃げません。私だけ逃げることはできません」

「私がどうなろうとも皆を守ります。私に残された最後の禁呪きんじゅで・・・」


いにしえに眠りし至高の炎よ。セラ・スカイの名の元に爆炎となり。

災いと成りし者を討て」

『ミゼル・イー・ラー・セル』いでよ!『ボム・グランド!』

 セラが呪文を唱え終わると上空に巨大な炎の塊が形成されていく。小さな太陽と思う程の巨大な炎の塊になると『ハッ!』セラは大蜘蛛へと投げつける。

「キー、キキキーーーー」

 爆炎に包まれ悶え苦しむ大蜘蛛。燃え盛る炎によりジリジリと燃えただれてていく。

 そして苦しみもがいた末、大蜘蛛は断末魔の叫びと共に爆発し消滅した。

 蜘蛛が倒れたのを見届けるとセラは意識を失い、その場に倒れたまま起きることは無かった。

 極限状態に置かれたセラ。隠れた人格が姿を現し、禁呪を使用し皆を救う。


 どれほど時が過ぎたのだろう。言葉が話せるくらいに回復した鏡太はセラに駆け寄る。

「セラさん!セラさん!しっかりして!目を開けてセラさん!」

 鏡太が何度も呼びかける。生きてはいるが一向に目を覚まさないセラ。

 満身創痍まんしんそういのパーティー。


 回復に数時間?数日が過ぎたのだろうか。


 不死族以外は目を開けず眠っている。怪物が消滅したあと石棺の封印は解かれていた。鏡太は石棺の中より鎌の柄の部分らしき棒を見つける。

 鏡太はノヴァを、岬はセラをかつぎルビー、アリサと共に先の通路を進んだ。そして鉱山と同じ仕掛けを見つけ遺跡入り口へと転送される。ノヴァを抱きかかえ入り口に立ちすくむ鏡太とそのパーティー。

 その姿は衣服はボロボロ。顔は憔悴しょうすいしきっており、壮絶な冒険を物語っていた。

 そしてこの時、セラのみならず皆にも異変は起きていた。極限状態に置かれて能力が向上していたのである。だが、それを気に止める余裕は誰にもない。


 鏡太はこの後、自責の念にらわれる事となる。


 鏡太の冒険は苛酷かこくさを極めて行くが、同時に強さも身につけていく。

 謎に立ち向かう、鏡太の冒険はまだまだ続く。

























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