第49話〔星のディスプレー〕

不吉な音楽にせき立てられるようにジーンはコックピットに座っ

て発進の用意をし、エスキモーに別れを告げた。

「いいわね。あたしが戻って来るまで都市に近づいてはだめ。テ

レビ画面、電光掲示板なんかに近寄るんじゃないよ。」

「心配ねえだよ。もともとわしらはそんなものには縁がない。星

ばかり見て暮らしてる。星空がわしらのディスプレーだよ。」

見上げると夜空が広がり星々が美しくまたたいていた。しかしそ

の中でいくつかの星が不審な動きをしているのをジーンは見逃さ

なかった。

「なんだあの動きは?人工衛星か?」


はるか宇宙空間で、数百の軍事衛星や気象衛星・通信衛星が一斉

にその軌道を変えつつあった。その中には企業の民間偵察衛星で

ある富痔痛の「なんの1号」やYBMの「エクスカリバー」も含

まれていた。それらははるか赤道上空に集まって静止衛星の軌道

をとり、今や整然と編隊を組みつつあった。


「そうか!しまった!」ジーンは星々の編隊の意味を悟りあわて

てステルスを発進させた。激しいGを感じながら一気に上昇する

。ここにいては危ない!再びラジオから不吉な音楽が流れた。

「アバタノコドモガアバタノコドモガアバタノコドモガシニマシタ・・・・ジュウニンキュ

ウニンハチニンノコリ・・・ヒチニンロクニンゴニンノコリ・・・ヨニンサンニンフタリノコリ・・・

ヒトリニナリマシタ・・・・・・」


地平線近くに人工衛星の群れの編隊が作る巨大な星座が出来上が

った。それはアルファベットで、「GET」と読めるのだった。

「ぎゃああああああああああああ」

地上ではさっきのエスキモー達が首を引きちぎってピョンピョン

とジャンプしていた。そして地球の夜半球のいたるところで、空

に浮かぶGETの文字を見たわずかな生き残りの人類達は、次々

と首を引きちぎり死につつあった。


「くそおっ!」ジーンは進路をTOKYOに定めた。TOKYO

はまだ夜になっていない。しかし後6時間で夜になり星座のGE

Tを見れば、生き残っているうをも死んでしまう。

「いそがなきゃ。時間との戦いだ。TOKYOが夜になる前に、

TOKYO上空にたどりつき、核ミサイルを発射し電霊を抹殺し

なけりゃすべて手遅れになってしまう。たったひとりで生き残っ

てもおもしろくないよう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る