第6話 [たまねぎマウス]
このようにして富痔痛独自のマウスが開発された。それはちょうど
たまねぎのような形をしており、底面にボールが露出している。こ
の底面をボードの上にこすりつけて画面上のカーソルを移動するこ
とができる。
このたまねぎの上部のとんがりをおしりにはさむ。そして中腰に
なっておしりを動かし、椅子の表面をボードとして使ってマウスを
操作するのだ。では、クリックはどうするのか?とんがりの部分は
中空になって内部につながり、そこには小さな風船が隠されている
。おなかに力を入れて
ふんっ!
ときばるとこの風船がふくらみスイッチが押されてクリックが働く
のだった。
「さあ、今日もがんばるぞっ」
俊一はオラクルとしての仕事を開始した。
電源を入れると犬のマークが現れ、ハビタットのテーマ曲が流れる。
上下左右天地にはめこまれた300面のディスプレイが一斉に発光す
る。俊一の分身のアバタがゴーストとして泉のリージョンに現れる
。時間がまだ早いせいか他にアバタはいない。
ふんっ!
とマウスをクリックしてアバタを実体化させ俊一は叫んだ。
「うをです!21才です!本物です!」
いかん、誰もいないのについ口癖になってしまった。と、うをは
思った。今日はアバタたちとのお相手はあと回しだ。預かった
機密を裏掲示板に書き込まなくてはならない。
そのためにはテレポートブースに行かねばならない。
ふんっ!
ふんっ!
ふんっ!
マウスをクリックすると軽快なリージョンチェンジの音楽が鳴り響
いた。それがハビタットを血で染める惨劇の一夜の始まりであると
は、さすがのうをもまだ知らない。
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