第3話〔ハッカー〕
汎田部長の話はおそるべきものだった。すでにYBMとの電脳
戦争は始まっているというのだ。
「この企業秘密を探り出すために、YBMは全世界から凄腕のハ
ッカーをやとい、電話回線を通じて、わが社のホストコンピュー
ターに侵入し、既にいくつかのプロテクトは破られている。
またYBMの産業スパイ衛星エクスカリバーは地上の3センチ
の物体まで識別するカメラで24時間わが社を監視し、人の動き
物の動きを追跡している。
まだ機密は破られていない。しかし、残されたプロテクトが
破られるのは時間の問題だ。われわれはKINDOWSの機密
を安全な場所に退避させる必要がある。
そのために君を呼んだのだ、魚住君。君はハビタットのオラ
クルをしていたね。」
あっ、そうだったのか。と俊一はようやく呼ばれた理由に気が
ついた。ハビタットは富痔痛ビジュアル通信ともいい、基本的
にはアミューズメント専用のパソコン通信ネットである。しか
しハビタットには隠された裏の機能があった。それは富痔痛
の極秘書類をデジタル化して保存する情報金庫としての役割で
ある。
「もはや、今となっては、YBMのハッカーの手を逃れるには
あそこしかない。君にわたすフロッピーの内容をハビタットで
保存してくれ。そしてフロッピーは燃やして処分してくれ。」
「では・・・」と俊一は言った。
「あれを使うのですね。ハビタットの裏掲示板に書き込むの
ですね。」
「そうだ。どんな凄腕のハッカーも、あれを破ることはでき
まい。」
フロッピーを手にして俊一は、富痔痛ビル88階にあるハビタ
ットコントロールルームに向かった。責任の重さに膝が小さく
震えている。
「裏掲示板か。これでまた、掲示板が重くなって、アバタた
ちから抗議のメールが押し寄せてくるだろうな。」
掲示板はアバタたちの相互の連絡用に、ハビタット内部に設け
られたBBSである。わずか30桁45行の書き込みが40本
しかはいらない伝言板の読みだし、書き込みが、信じられない
ほど遅い。しかし、その本当の理由が、誰にも知られないとこ
ろに設置された企業秘密保存用の裏掲示板の容量負荷のせいだ
とはアバタたちは知らない。
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