第2話 浪人生の恋愛事情
「ちょ、あの子かわくない?」
例によってアサノである。
「あー、悪くないけどタイプじゃないわ。」
「何が不満なんよ。」
「あんまり鼻が高いのはちょっと......。」
「それがええんやんけ!美人の象徴やろ。」
「えぇー、美人よりもかわいい子のが好みやわ。」
タチバナは今日は機嫌がいいのか、アサノの話につきあっている。
もともと彼らは同じ高校に通っていた。
普通に仲がいいくらいの友人関係であったが、示し合わせてまで同じ予備校に通うほど仲がいいわけではなかった。
しかし、現在同じ予備校に通っているのは全くの偶然である。
「なんし美人は俺みたいなん相手にせんやろしな。」
「そんなことゆうたら、俺もやんけ。
ちょっとくらい夢見ようぜ。」
「いやでもアサノならあの子いけるんじゃない?
お世辞とかじゃなくて、わりとガチで。」
タチバナはアサノのこのなんでも話せる性格をある意味買っている。
「いやいや、それは無理や。
俺とあの子の間に何があったか知ってんか?」
「なんやねんそれ。もう何か行動起こしたんかよ。」
「それは話せば長くなる......。
じゃああの子、名前は知らんから仮にサクラコとしよう。」
「なんやそれ、センスなさすぎやろ。」
「おまえは全国のサクラコさんに謝れ。
まぁええわ。とりあえず、俺が彼女に会ったのは英語の授業のこと。」
タチバナとアサノは英語のクラスが違うので知らないのも無理はない。
「そっからはもう一目惚れやで。休憩中も授業中もずっと見てたわ。」
「相変わらず、授業はまともに受けてへんのね。」
「城銅鑼も進まんかったわ。それくらい見てた。」
「キモすぎやろ。」
「そう!話が早い!キモすぎてん。
もう今はちょっと目が合ったら、すっごい嫌な顔される。」
「お疲れ様です。」
「その反応はあんまりやで。
もっとこう、慰めてほしい。」
「それで?自分は嫌われてるってことね。」
「無視かよ!
まぁ、ええわ。そうゆうこと。」
「まぁ、ここおんのも一年間だけやし、気にすることはないやろ。
逆にずっと見といたれ。ストレスで禿始めるかもよ。」
もちろん、タチバナは冗談のつもりで言ったわけだが。
「おっし、サクラコちゃん(仮称)を禿げさせるでー。」
いつも通り本気か冗談かわからない反応をする。
「その前におまえはまじめに勉強しろ。」
とタチバナの的確なツッコミもいつも通り冴えわたっていた。
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