7B

 チーク材の天井から。よくあるドーム状の監視カメラが生えていた……のは、シャッターのすぐ裏側で。黒光りするは、スツールの位置で振り向けば、すぐに発見できただろう――それほど目立っていた。


「ずっと? 見てたんですか……」


 そう言ってから(しまった!)と思った。ジェンのことだ……また、カマをかけてきたかもしれないじゃないか――?


「ぐるぐる廻りながら、立ったり座ったりと。随分ご熱心なことでしたねぇ。」


 言いながら、ジェンが差し出してきたファブレットには。まさに、不審な路駐車を見つけた警察のごとく執拗に車内を検分する僕……の映像が早回しでループ再生されていた――うわぁ、顎髭の先まで。録れてるじゃーん!!


「す、スマートホームって奴ですか? すごいじゃないですね……」

「ふっふん、ここもD&Dの施設だし。自分が未だ、管理者アドミンか何かだと……錯覚してたんじゃない。」

「勘弁して下さい。」

「まあでも見たんでしょう、車の中。配線の跡……何があったと思ってるの?」

「盗聴用の受信機です。」


 サラッと言ってから。

(あれっ? 僕は……今、何を……?)


「ふぅん。何でそう思うの?」

「第二から盗聴器が出ましたから。」

「それだけで?」

「この車は、第二から直に見えない処に停めてましたし。シートバックを倒して、後席を見えないようにしてありましたので。」

「それは単に……ビルに見つかりたくなかっただけなんじゃない? マニュアル車に乗ってるなんて知られたら、超面倒じゃない。」

「確かにそうですが……」

「まだあるの?」

「ええ。僕が留守をしていたとき、ロージーを激怒させる事件があったようで。飛び出して行ったきり、二度と帰ってこなかった——という。」

「へぇ、そうなの。」

「その前に相当、荒れたようで。内装とかが二か所、壊れたんですが……後になって、その両方から。盗聴器らしきものの痕跡が見つかってるんです。」

「つまり。去り際に隠滅した……って、言いたいの?」

「はい……」


 え、何で僕は……ファーレル主任から「誰にも言うんじゃない」って命じられたことを。ロージーの所為になるように、ペラペラ喋ってるんだ?―——―というか。今の今まで、まさか自分がロージーを……に疑ってるなんて、気付いていなかったのに。の――妙じゃないか?


「うーん、以前……あの子が、安全セイフティローヤーの事務所とこで働いていたのは知ってるでしょう? やっぱり、ことなのかしら。」

「おそらく、なんでしょう。ロージーは昔――――」


 やっぱり

 何で僕は、バーキンさんから聞いたことまで喋りそうになっている? 今は、バーキン氏のことを……一体、どう説明したものか悩んだから止められたけど。両親と、その仇が。どちらもUAの事故で——なんて、本来なら超絶プライベートなことじゃないか。だいたい、どうして……ジェンは、のような顔をしてるんだ?


「むかし、なに?」


 どうして、ジェンの顔……には、――


「ほら、震えてないで」


 ――何でも言うことを聞いてしまいそうなフレームレスの——


「聞かせて?」


 ——のだろう……?

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